中華連邦総領事館にある1室でアキラはパソコンを操作していた。
パソコンのディスプレイからはエリスのヘルハウンドの映像が流れている。アキラはヘルハウンドの動き1つ解析しながらこれをメモリースティックへ記録させる。
「相手の手の内を知る。元レッド・ショルダーだけのことはあるな。」
ソファーに座っている黎星刻は黙ってアキラの作業を見ていた。
「1年前、治安警察と軍を相手に1人で戦い壊滅させたのがレッド・ショルダー…いや陽炎にいた人間と噂では聞いていたが……君のような少年だったとは。紅月カレンといい君達は……」
「部屋を提供してくれたことに感謝するがあんたと無駄話をするつもりはない。」
そう言うとアキラはまたディスプレイと向き合い作業を続ける。アキラの態度に星刻は苦笑いをしソファーから立ちあがった。ドアノブに手をかけようとした時カレンが慌てて部屋へと入ってきた。突然入ってきたカレンに星刻は驚いたがカレンは星刻に目もくれずアキラの名を叫んだ。
「アキラ、大変!一緒に来て!」
アキラは深い溜息を吐き
「……どうした?」
「C.C.が……。」
カレンはメモ書きをアキラに見せ置き手紙の内容にアキラは眉を潜めた。
ナイトオブセブン、スザクの歓迎会が行われている中、アキラは帽子を深く被りサングラスもかけ人混みに紛れていた。
その中で緑の物体をした着ぐるみを見つけ近づき耳打ちをする。
「アキラどうだった?」
「いないな。あいつ…たかがピザのために…。」
「とにかく早く見つけないと私もうちょっと奥のほう行ってみる。」
そう言うとカレンはアキラと別れてアキラは校舎近くのほうを歩いていった。
学園の中を歩くのも1年ぶりだとアキラは思い出していた。
ライ・バートラーなど偽名を使って過ごしていたが今まで戦場しか知らなかった自分の中でここが一番穏やかに過ごした日々はなかっただろうとアキラは思い返していたが我に返り今はC.C.を探すのが先決だとアキラは露店等が並ぶ広場へと足を運んだ。
「いや~、結構楽しいものだなぁ、庶民の学校も。」
陽気にはしゃいでいる男と隣には携帯のカメラでまわりを撮ってる少女が楽しくに学園を見てまわっていた。
アキラは露店の周りを探りながら歩き2人とすれ違うように去っていく。
少女は何かに気づきアキラの後姿を見た。
「アーニャ、どうしたんだ?」
「………何でもない、ジノ。」
「ん?そうか、おっ!あっち行ってみよう。」
ジノが先に歩くがアーニャはアキラの姿をじっと見つめていた。
「………イヤなにおい…。」
そう小さく呟きアーニャはアキラの横顔を携帯のカメラに収めた。
この2人がナイトオブラウンズであることはこの時のアキラは知るはずもなかった。
なかなか見つからないC.C.にアキラは巨大ピザをつくる会場近くの校舎裏を散策していると巨大なコンテナを持ったKMFが現れシャリーと着ぐるみを着たカレンが追いかけるように走る姿を見て気になりついていこうとするが直後にスザク、ミレイも続けて来てアキラは身を隠した。
どうしたのかとアキラは息を切らしているルルーシュを見つけ姿を出した。
「ア、アキラか……。お前も…ここに。」
「何があった?」
「あいつ…C.C.がコンテナの中に…。」
先程KMFがコンテナを持って去って行くのを思い出しアキラは舌打ちしアキラはルルーシュを残し走り去っていった。
アキラが会場に着いた時に既にKMFはコンテナの中のトマトをピザの生地に入れるところであった。
その直後スモークがかかり辺りが煙に包まれる直前トマトまみれになっているC.C.を見つけ煙に紛れ込み彼女を抱えて脱出した。
「また、お預けか……。」
「……一生ピザ食べてろ。」
相変わらずの調子にアキラは皮肉を込めて悪態をついた。
迎えの車を星刻が用意してくれるとのことで待つことになったアキラはルルーシュ達がいる学園の屋上へとあがって行った。
「アキラ、ご苦労だったな。」
ルルーシュはアキラに労いの言葉を送ったがアキラは不機嫌な表情を隠さなかった。
「こんなのはもう御免だ。」
アキラの態度にルルーシュは苦笑いをする。
「わかってる。それとアキラもう1つ頼みたいことがある。」
「今度は何だ?この歓迎会の後片付けか?」
「ふふっ、そう怒るな。アキラ、そろそろ鳥篭から出ようと思うんだが。」
その言葉でアキラの表情は変わり眼光も鋭くなった。
「手伝ってくれるか?」
「こっ…これは?」
機密情報局の地下司令部に入ったヴィレッタが見たものは銃を構えたロロと局員を抑え拘束しているアキラであった。
「ロロ…寝返ったのか……!? それに流崎アキラ…!?」
「ヴィレッタ・ヌゥ、ゼロの正体を突き止めた功績として、男爵位を得て中佐に昇進。だが裏では黒の騎士団と通じていた。」
「ルルーシュ、あとは任せる。」
アキラは司令部から立ち去ろうとヴィレッタの横を通り過ぎる際静かにつぶやいた。
「あんたには聞きたいことがある。」
ヴィレッタはアキラの言葉に悪寒のような寒気がした。
領事館へと戻ったアキラは疲れたようにソファーに腰を落とした。
「疲れたの?」
「KMFの整備するほうが楽だ。」
「アキラらしい。」
アキラの姿にカレンは苦笑いをする。
「だが…。」
アキラは学園での事を思い出し口元が緩んだ。
「相変わらずだったな。」
カレンは嬉しそうに微笑んだ。
「また戻りたくなった?」
「さぁ、どうだろうな。」
そう言うが満更でもなさそうな表情であった。
カレンは汗を流そうと部屋を出て1人になりしばらくして自分の携帯が鳴り発信者がルルーシュだと知りアキラは携帯をとった。
「どうした?」
『アキラ、明日作戦会議を開く。C.C.とカレンと一緒にだ。』
「……藤堂や扇には?」
『お前達だけだ。』
その言葉にアキラは怪訝な表情をした。
「………何かあったな。」
『あぁ…やってくれたよスザク。あいつが教えてくれた。今度エリア11の新しい総督は……。』
-数日後-
領事館から抜け出した黒の騎士団は租界地下に作られた地下施設で身を潜めていた。
この場所は黒の騎士団が、非常時逃走用として用意されていた施設の1つで横幅はちょっとした体育館ぐらいの広さがあり、黒の騎士団のKMFである無頼と月下が所狭しと並べられていた。
出撃数時間前となりカレンは紅蓮の最終チェックを行っていた。
-3日前-
「俺は反対だ。」
「アキラ!」
「今の戦力でやる価値はない。」
深夜、学園の機密情報局の地下司令部でアキラとルルーシュの言い争いが続きカレン、C.C.が溜息を吐いていた。
「ナナリーを黒の騎士団に取り込めばこちらにも有利になる!」
「有利になる?お前があの女を手元に置きたいだけだろ。ナナリーを救うのは結構だがゼロならもっとマシな戦術を考えてもらいたいな。」
「何だと!!」
「俺は降りる。」
「降りられると思うのか!」
ルルーシュは左目に手をやった。
「ギアスか…!」
アキラはホルスターからショットガンを取り出した。
「ちょっと!?」
慌ててカレンがショットガンを持ったアキラの右腕をおろそうとする。
「お前にはまだギアスは使ってない。」
「だから効くと?……だが俺がこいつを撃つほうが早いじゃないのか。」
「お前……。」
「さぁ……どうした!」
ルルーシュの額から汗が滲み滴り落ちてくる。
(どうした、あとはコンタクトを外して……恐れているのか俺は?アキラを?………くぅ……!!)
アキラの鋭い眼差しにルルーシュは恐怖にも似た感情を押し殺しコンタクトを外そうとする。だが……
「待って、ルルーシュ!!」
アキラとルルーシュの間にカレンが入りルルーシュの視界を遮る。
「ギアスは使わないで!」
「カレン!」
「アキラ、あなたの気持ちはわかるけど今はルルーシュに従って!」
「カレン……!」
「ただナナリーを奪還して終わる訳じゃないでしょ。ルルーシュはゼロなんだからその先も考えてるわ!」
「カレン、今のこいつはそんなの考えてない!あの女を……。」
「アキラ!!私はあなたがギアスで操られる姿を見たくないの!」
カレンの眼差しに見つめられアキラは舌打ちしショットガンをホルスターにしまい司令部から出て行った。その様子を見ていたC.C.は面白そうに微笑んだ。
「カレン、お前も持ってるんじゃないのかアキラだけに有効なギアスを。」
「バカ言わないの。ルルーシュ、私も色々言いたい事あるけどアキラの言うとおりナナリーを救ってそれで終わりにしないでよね。私…いや私達はまだ死ぬ訳にはいかないんだから!」
カレンはアキラを追って司令部から出た。
「今のあいつはあの女しか眼中にない。」
「それはわかってる。けど私だってナナリーをこのままにはできない。あなただって…。」
「救えるなら救う。だが今やるべきじゃない。今俺達に必要なのはナナリーじゃない。」
「アキラ……。」
「指示には従う……そうあいつに伝えておいてくれ。」
(アキラはあぁは言ったけど私達だって…。 ルルーシュはナナリーの為…私達も似たようなもの……アキラ……あなただってそれがわかってるはず。)
今、この場にいないアキラにカレンは彼の無事の帰還と今回の作戦もうまく成功できることを祈るしかなかった。
-ハワイ基地-
ナナリーを護衛中の部隊は途中補給のためハワイで止まることになり太平洋周辺の状況を確認していた。
「黒の騎士団がいなくなった!?」
「はっ、エリア11からの報告によりますと中華連邦の総領事館にいた黒の騎士団は全員抜け出したとのことで…目下捜索中です。」
「それで急遽エリア11から護衛の増援か……。」
この部隊の責任者アプソンは待機しているエリア11から来たカールレオン級浮遊航空艦3隻を窓から見ている。
「だが今の黒の騎士団に航空戦力はない。襲撃するなると空港到着前後だ。今奴らが…。」
「しかし、これはラウンズからの命令で……。」
「わかった。だが航路は予定通りで向かう。」
「おい、その荷箱は何だ?」
エリア11からの増援の空艦より大きな荷箱を運ぶ1人の兵士がナナリーのいる重アヴァロンへ運び出され待機していた兵士が問いただしにきた。
「はい、ナナリー新総督がお花がお好きだとナイトオブセブンから。」
「ラウンズから?」
兵士は荷箱を開けるがそこには様々な種類の花が収められていた。
「検問には通っているので問題ありません。」
「そうか。行っていい。」
「わかりました。」
兵士は貨物室へと運び航空艦を後にした。兵士の瞳は赤くなっていた。
「補給、完了しました。」
「よし、エリア11へ。」
ナナリーを乗せたログレス級浮遊航空艦は基地から離陸し他の部隊も続けていった。
ログレス級浮遊航空艦へ運び出された荷箱が動きだし箱の蓋がずれ隙間から人の手が蓋を取り出し人が姿を現した。
アキラはブリタニアの兵士が着る軍服の格好をしておりアキラは他の貨物の影に隠れ、周囲を警戒しながら貨物室から出て行った。
十分な戦力を持たない黒の騎士団にルルーシュはスピード勝負ということでナナリーが搭乗しているこの重アヴァロンにアキラが先に潜入し作戦開始直後混乱に紛れアキラがナナリーを運び黒の騎士団と合流する。この作戦にもアキラはいい顔はしなかったがカレンの説得もあり渋々顔を縦に振ったのであった。
軍服を着ながらもアキラは敵と接触することを避けながらアキラはナナリーの居所を探る。
その中である扉の前で2人の衛生兵が立っているのを目撃しこの部屋にナナリーがいるのではないかと推測する。
扉周りの構造を確認したあとアキラは時計の時刻を確認し作戦開始時間までもうすぐであった。道を引き返そうと体を振り向きアキラは他の箇所を探ろうと別の通路へと入っていった。物置の倉庫の入り口前を通り過ぎようとした時横からコンバットナイフを構えた兵士がアキラを襲った。
アキラはナイフを持っている手を取りがら空きとなった腹部に膝蹴りを入れ顔面に拳を叩き込んだ。 倒れた兵士は全身黒ずくめで顔もマスクで隠している。マスクを取ろうとアキラが手を伸ばした時同じ姿をした人間がアキラに向けて銃を構えて撃ちアキラは倒した相手を盾にし敵のほうへと投げ倉庫へ逃げた。銃声がサイレンサーで小さく相手は暗殺を目的としているのだとわかった。
「…俺を狙った?」
撃ってしまい呼びかけをするが既に息が絶えており敵はアキラに標的を定める。
足音が近づきアキラは倉庫の中へと身を隠した。
男は銃を構えながら倉庫へと入っていった。
狭い部屋でアキラがどこに潜んでいるのか注意して探るがアキラは背後から襲い敵から奪ったナイフで銃を持っている右手を斬りつけ相手が銃を落とした。
アキラは腕を首にまわし敵のマスクをとった。
「お前達、何故俺を狙う?」
「くぅ!」
敵はアキラの腹部に肘を入れ怯んだ隙に隠し持っていた銃を取り出しアキラに向けた。アキラも先程敵が落とした銃を拾い備品の裏に身を隠した。敵が2、3発撃ちアキラは裏から身を出し反撃し銃弾が敵に命中した。
「何だ?何か銃声のような…。」
近くに兵士がいたのかこの騒ぎを聞きつけこちらへ来る者がいる。
アキラは倒した兵士2人を倉庫内にあるロッカーへと隠しアキラは急ぎこの場から離れて行った。
空調室へと逃げ込んだアキラは人が入れるダクトを見つける。
「何か見つけたか?」
「いや、特には……。」
「気のせいだったのか……ここにはナナリー様がいる。何か不審なものがあればすぐに伝えるんだ。」
兵士達が騒いでいる姿をアキラは天井のダクト通路の網目から見ている。
先程守衛の兵士2人が立っていた扉の真上に来たアキラはダクトが扉からまだ続いているとわかり先へと進んだ。
-アーカーシャの剣-
神を殺す武器アーカーシャの剣と呼ばれる空間でシャルルと井ノ本と2人で佇んでいた。
「流崎アキラ……奴が現れたと。」
「私の部下からの報告では奴と間違いない。」
「急がねば…。」
「シャルル、焦るとできることもできなくなる。そのためにエリスがいる。」
「パーフェクトソルジャー……流崎アキラに執着してると聞くが果たして…。」
顔には出さないがシャルルの声はどこか弱々しく聞こえる。
「寛司、貴殿もわかるだろ。」
「奴ら
「そして現れたのが流崎アキラ…。兄さんも一度あの男に……。」
井ノ本はシャルルに背を向ける。
「シャルル、ここは奴を殺すためのところでもある。必ず成功する。」
シャルル1人残し井ノ本は姿を消した。
側近と共に廊下を歩く先に2人の男が立っていた。
「いかがしたのかな宰相?」
シュナイゼルは穏やかな表情で返す。
「少しお話でも?」
ダクトの中進むアキラは降りられる場所を見つけ網目の扉を開け顔を少し出して周りを伺う。周りは庭園のように花が植えられておりとても空艦の中とは思えないものであった。
体をダクトから出し庭園に足をつけ近くに敵がいないか確認する。
「誰かいるのですか?」
ハッとアキラは振り返るが誰もいない。しかし、さっきの声は聞き覚えがある。アキラは機械の音がする場所を見た。
車椅子に乗っている少女1人がいる。
「あの……誰か?」
ナナリーの目が不自由なことが幸いとアキラはナナリーに近づこうとした時
「………ライさんですか……?」
「っ!?」
目が見えないはずのナナリーからかつて名乗った偽名を呼ばれアキラは表情が強張った。
少し中途半端ですが今回はここで
ちなみにアキラがダクトを這うシーンは某アクション映画からのアイデアです。
アキラがルルーシュについて批難するようなことを言ってますが今の自分達黒の騎士団の状況で無理にやるべきではないという意味で
自分もあの作戦は空中戦ができないあの時の戦力でやるのは無理があったのではないかと個人的に思ってます(※だからこそ敵も油断してたのですが)。
あの時のルルーシュは完全にナナリーしか見てなかったように見えました。
シャルルがアキラを恐れる理由は追々。