最強を目指して   作:匿名希望ただの人

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第1ノ世界 精霊(エレメンタリア)

「……で、俺の所にいると?」

「そうね」

龍我の目の前に町田と見覚えのある1人とそのツレの2人がテーブルを挟み正面に座っている

事情はわかる、何しに来たのかも予想はできた。

来るまえにコイから重大な事を聞かされ唖然としちまったが、恐らくそれの事だろう。

ちなみにコイは今にも泣きそうな顔をしている、これは俺が怒る事ではないので何も言わないが…まぁ兄貴に怒られるだろうな、ナンマイダー!ってかハクロウも知っていたはずなのに初めて聞いた反応していたな。

おっと、話はずれたな。集中集中!!

「ねぇ、本当にあのリューガ様なの?」

「さぁ、私は会った事がないからわからないわ」

「噂じゃ、巨大な竜の姿って聞いたぞ」

「私は禍々しい鬼だよ」

ティナのツレがコソコソと話している

「やめないか、リューガ様に失礼だぞ」

「す、すみません」

「気にするな、今は人間なんだから同族同士気軽にいこうや」

コチコチに固まっているのでリラックスしろと言うが正座で座っているティナ、緊張しているというより恐怖に近い感情に縛られているな

「リューガ様に知らせなけばならないことが」

「わかっている、カグヤが行方不明になったんだろ、コイから聞いた」

「え!?」

知っているとは思わなかったのか、驚いた顔をしている

「この世界にいることもですか」

「あぁ、可能は高いな」

他の世界は探したのだが見つからず残るはこの世界と自然に絞られる。いままで異界の奴らが多いと思ったら、管理者が拉致られ監禁されてちゃ来るわな

「あれはワシらの不始末だ、任せておけ」

「それと、もうひとつ…この世界を除く全ての世界が異界から襲撃を受けています」

「なんだと…」

それは予想外ではなかったが、今このタイミングでの襲撃はちとまずいな

「戦姫はどうした」

「全戦力で今戦っています、姉上も」

「あいつらがいても鎮圧できないのか、神共はなにをしている」

「私がいた時はなにも」

苛立った声をあげた龍我に怯えた声で言ってくる

「口先共が…まぁええ、ゴミクズ共はあてにしてなかった。」

さすがは無駄に力を持っただけの害虫共だ。内心で激怒しつつも今やる事を考える

「…よし、まずは風呂だな!」

龍我の言葉に周りが黙る

「そんな事をしている場合ではないのですよ」

「御祓はお前らにとって大切なことだろ!戦いにいくのに戦力にならんやつはここで死ね」

「………」

「コイ、ハクロウ、町田も一緒に銭湯行けや、セツナは服を洗ってやれ」

財布とシャンプー、石鹸が入った籠とタオルが詰まったカバンをセツナに渡す

「御主人様はどうなされますか」

「俺は考えなければならない事がある、後の事は任せたぞ」

「かしこまりました」

「わ、私も行くのか!?」

町田が言う、本人は送り届けて終わりだと思っていたらしい

「これも運命だ、折角だし付き合えや」

「だが」

「戦争に出るなら、味方になるやつらだ。交流を深めて損はないぜ」

この少女達が戦いにでるのか!?その事に驚く町田 

「さぁ行った行った」

「弟様」

コイが声をかけてくる

「コイ、お前は責めすぎだ…風呂に入って気持ち入れ換えろ」

「ですが」

「お前に全てを押し付けた兄貴が悪い。当たり前だよなぁ」

コイはプレッシャーに死ぬほど弱い。兄貴の代理に加え通常業務、他のやつらの指揮をとり仕事をこなす。逆によくやってのけたと感心する、あのドジなコイが…成長したな

今回の件は俺達が悪い、兄貴が怒る事は万にひとつないだろう…いやあるかも。

「まぁええ、さぁ行動開始だ!」

龍我の声に促されそのまま銭湯へ向かう一行、部屋にポツンと一人残った龍我

「…………」

カグヤが扉の管理から拉致されるのはほぼ不可能、人間なんてもってのほかだ、誰が何のためにやったのか

相手の考えてなんて考えてもしゃーねぇ、とにかくやってはいけないことをしたんだ、それ相応の罰を与えなければならない

聖皇の神代やレオルド帝国のエミリア、ネーシャルムーンのアリス、ドルツェのサブレット教官やグラーフェンツ、など当てはあるからとにかく情報を得なければ。知っている権力者に片っ端から話聞いてみる、顔と情報を教えれば探してくれるかもしれない。まぁアリスと神代はカグヤと知り合いだからそんなことはしないと思うが裏のやつらかここに住んでいる化物共のせいかもしれない。とにかくやれだ

それぞれの人物にテレパシーを送る、ほぼ一方的なので相手の会話を聞くことはないが驚いたり怒ったりしているのかもしれない。ついでに敵が攻めてくるかもしれないことも伝えておこう

「……よし。」

多分送れたであろう、次は襲撃を受けている世界のことだ。ひとつの世界を何とかすれば戦姫が加勢できる、そうすればスムーズに戦える

だが、学生を旅団として俺の所に来させるとはよほど苦戦しているのだろう。王達も全力で戦っているのは間違いない

「…飯でもつくってやるか」

風呂に入っているやつらの為に晩御飯をつくる、どうせ食ってないし腹も空かしているだろう

俺はセツナが作ったもの食べている、簡単で栄養がとれる料理…鍋だな、よし決まり!風呂入った後に鍋を食べば汗かくけど気にしない!知らん知らん!!

そうと決まればさっそく材料をみるがなーんもねぇ、仕方ない、買い出しじゃー!

「あっ!?」

そういやセツナに財布ごと渡したんだっけ?

「…………。」

え、えーっと確かにタンスにへそくりがあったな、あ、あれない?つかった?じゃあテレビの下もない、あっ襖の裏にあったって封筒だけかい!下駄箱なんてないしうーん洗面所は前使ったし、そうだ床の下だ!

なんとかお金を見つけ出し食材を買い急いで作り上げた!さすが!!

完成したのでこの後の事を考える、カグヤは兄貴に任せて俺達は加戦する、今洗濯乾燥を終えたセツナに戦況を調べさせている。場合によっては俺の戦力、兄貴の従者、六聖獣(ろくせいじゅう)も戦場に出させなければならないかもしれない

決戦の前だからできるだけ戦力は温存しておきたい所だが、先手をうたれたからそんか事を言っている場合ではないか。

「弟様、ただいま戻りました」

考えていると、女子達が風呂から帰ってきた

「お、お邪魔します」

「おー、サッパリしたか?」

「はい、気持ちよかったです」

コイが言う、先程落ち込んでいた姿が嘘のようだ

「いいってことだ。さぁまずは飯を食って力つけろ、すぐに出撃する」

テーブルに鍋を置き、それぞれ空のお椀とご飯が盛られた茶碗を置く

「な、鍋!?」

嫌そうな顔をする町田、やっぱ風呂上がりの鍋はよくないか

「馬鹿野郎、鍋は食材の栄養を余すことなく取れておいしく食べれるんだぞ!」

予想通りの文句を他所に皆のお椀に注ぐ

「いただきます。」

龍我の合図と共に食べ始める、なんか文句のようなものがあるようだがみんなお腹が空いていたのですぐに食べ始める

「あぁ、美味しい…。」

肉や野菜の旨味と塩が効いた優しい味が胃に染みる、疲れた体に栄養が行き届き活力が漲る

「弟様、おかわりです」

「おー、沢山食え!」

コイが帰って!お椀に注ぐ、起きてから初めての食事だからな、沢山食べてもらわんと

「そんな、リューガ様にやっていただくなんて」

「気にすんな、ここは俺の部屋だ。客をもてなすのが普通だろ?」

そういいティナの茶碗にご飯を盛る

「それに見てみぃ、従者なのに遠慮ないぞ」

空の茶碗を持って龍我に突き出すコイ

「はやく盛ってください」

そしてこの台詞である

「こいつ昔からこうなんだよな。」

「ほら、ハクロウも食べないと無くなっちゃうよ」

「は、はい」

「ほら、畏まるなどんどん食え!」

クラッカとレイスにも注ぐ、こっちの方は慣れてくれたのか気安く話かけてくる。

「町田もくえや」

「お腹一杯だわ」

「ならばよし!」

「それにしてもこんなに美味しいなんてね」

「あるもん適当にぶちこんで煮れば誰でもできら。」

たわいもない会話をしながら食事は終わり、それぞれ休憩を取っている

「御主人様、集めてきました」

そこへ龍我の背後にセツナが現れる

「ご苦労、それで」

「やはりここ以外襲撃にあっています。特に戦局が不利なのは17世界です」

17世界は武力思考の人が少なく治癒に特化した世界だ、発展もしてなければ高性能の武器もない、戦姫も確か死の力を与えたが戦力的に一番厳しい所だ

「あそこが落とされるのはまずい、セツナ、ハクロウ…悪いが加勢に行ってくれ」

「かしこまりました。」

「任せてください」

「俺と町田で1世界に行く」

「弟様、私は」

「お前は兄貴の所へ行ってすべて教えろ」

「そ、そんな」

与えられた役目に青ざめるコイ

「ケジメはきっちりつけろ」

「は、はい」

「各自行動、武運を祈る」

龍我の言葉で、それぞれ動き出す、セツナとハクロウはすぐに移動しコイも重い足取りで向かう

「町田、本当に行くんだな」

「えぇいいわ、覚悟はできてるわ」

「戦場では何が起きるかわからん、だが無関係なお前は死なせはせん」

「あら、じゃあ気軽に行くわ」

「リューガ様、準備できました」

ティナ達も支度を済ませてある

「さぁて食後の運動と行こうじゃあねぇか!!」

龍我は手で何かを掴む動作をすると下へ一気に落とす

ビリビリビリッ

「!?」

町田達は目を見開く、目の前には無限に広がる黒い異空間。龍我は空間を破き強引に1世界に通じる道を造ったのだ

「こっ、これは」

「時間がない、さぁいけ」

「…先に行くってるぞ」

ティナが先に足を踏み入れると、その姿はすぐになくなってしまう

「こんな所通ってきてないよ~」

「見た目じゃないだろ、ほらいくぞ」

禍々しい空間に入る事を躊躇うレイス、その手を取り一緒に入るクラッカ

「だ、大丈夫なの、これ?」

「当たり前だ、さぁいけ」

「龍我は最後なの?」

「誰がこれを直すんだ」

「………」

観念したように先に町田は入る

「!?」

瞬間、すぐ目の前に森が広がっている。そこにはティナ達もいる

「無事成功と、戦場を案内してくれ」

「は、はい」

「襲撃の中心は帝都で起こっています」

今龍我達が歩いているのは帝都の近くにある森だそうだ、よくわかったな。

「他の大陸はどうした」

「わかりません、援軍を要請したのですが来るかわかりません」

「向こうも精一杯ってことか」

「強い精霊も自主的に戦ってくれてるんだけど、それでも間に合わなくて」

「精霊王はなにをしている」

「精霊王様は世界樹で戦っている、姉上も恐らく。だからこっちに手を回す暇もないのだろう」

ティナが知る限りの情報を龍我と町田に教える

森を抜け帝都が見える

「!?」

だが、その帝都は炎の海となり化物達に攻撃されている光景が広がっていた

「そ、そんな、帝都中枢部にまで侵略を許したのか!?」

その悲惨な光景に町田も言葉を喪い立ち尽くしていた

「だ、団長」

「みんなを助けないと、このままじゃ」

「わかっている、いくぞ」

「まて」

帝都へ向かう3人を止める龍我

「止めるな」

「俺が行く…」

「え?」

「結構壊すけど、許せよ…。」

そう告げると燃え盛る帝都に向かって飛び立つ

「な、なにをする気な」

ゴォウ

瞬間凄まじい炎の一閃が空を飛び回る化物達を燃え上がる炎と共に消す

「神紅の壊炎(レーヴァティン)…。」

空には燃え盛る剣を持った龍我が都市にいる襲撃者を見下ろしている

「あれがたったひと振りで都市を滅ぼしたと言われるリューガ様の技…。」

「なんて威力だ」

「まさか、帝都に放つ気か!?」

そんなことをすれば帝都そのものが燃え尽き焦土へ変えられてしまう

「まさか、流石にそんなことしないわよ」

町田はそう言うが

「………。」

彼女達の顔は不安であった、それは恐怖で怯えているようにも見える

一体龍我はこの世界で何をしたのか

 

 

 

 

 

 

 

帝都では2つの頭をもった蛇や首のない巨人、手だけの悪魔など異界からやってきた化物達が猛威を振るう、どれも強く騎士達も応戦しているが太刀打ちできていない

「ゴミ共が…消え失せろ!」

地上で暴れている異形な形をした化物達を浮き上がらせ炎の剣を振るう

断末魔もあげることなく消滅しあっさりと鎮圧する

「ここはもう大丈夫だ」

残ったやつもいるが、たいした数ではない。ここの騎士なら後は任せてもいいだろう

「町田、ティナ、ここは任せたぞ!」

大気が震えるほどの大声で叫ぶ、しっかり伝わったのか急いで帝都へ向かう町田やティナ達の姿を見届け龍我は飛び立つ

(奴らの目的は世界樹だ)

精霊の森の中央にある樹木、龍我がいる場所からでも見えるほど巨大である。そこは精霊が住む世界に通じる巨大な祠があると言われている、そこから精界に入って強力な精霊を従え戦力にするつもりなのだろう

なら全戦力を世界樹に集めればいいのになぜ各都市も狙う必要がある。それに全ての世界を同時に襲うのもバカげている、普通なら1つの世界に戦力を集中して確実に潰すのがもっとも効率がいいはず。

だが奴はそれをしない、世界を同時に襲い連携をとらせない為か単なる戦力差を見せつける為か…

(何を考えてやがんだ、ガイオーン)

世界樹につくとそこでは森が燃え帝都の数倍近い化物が暴れ回っている

騎士だけでなく精霊も自ら戦いに身を投げている。

「お前達、ここは私に任せてはやく森の火を消せ」

白の制服に白銀の鏝、白の外套を身につけた一人の少女が白銀の甲冑を身につけた十数名の部下に指示を出す

「しかし」

「この森が無くなれば精霊の行き場が失う、この世界から精霊が消滅することもありえる…それだけは阻止しろ」

人間はほとんどやられ今ほとんどの戦力は強力な精霊によるもの、その力の元である森が無くなれば消滅し、すぐに制圧される。どちらにせよはやく消さなければならない

「エメラ様は3日休まず戦い続けています、一度退くべきかと」

「私に構うな、さっさとしろ!」

紺碧色の瞳が部下を鋭く睨む

「は、はい」

慌てて消火にうつる、ある者は水や風の精霊を使って消火を、ある者は燃えた枝を切り広がらないようにしたりと活動する

「私が相手だ、さぁかかってこい!」

右手の鏝で振るう剣を防ぎ片手に持つで斬り倒す

「風よ、敵を蹴散らせ!」

暴風が敵を木々ごと吹き飛ばす

(くそ、ここじゃ全力で戦えない)

大技を出す度に森を破壊してしまう、多数戦滅の技を使いたくても使えない。

この程度の相手ならどうってことないのだが3日闘い続けても数が全く減らない、そうなれば話は別となる

「苦戦してる見たいだな、エメラ」

「ご、御主人様」

現れた龍我を見て眼を見開く、そして敵がいるにも関わらず片膝を付き頭を下げる

「やろめろ、ここは戦場だ。上も下もない」

「はっ」

「さて、まとめて捻り潰してやるから、退いてろ」

「しかし、ここで使っては」

「浮かせてやっから、騎士を退かせろ」

「わかりました」

「巻き添えをくらいたくなけりゃ退くがいい精霊共」

龍我の声に戦っていた精霊達は光の原子となり消えていく

騎士達も消火活動をやめ龍我の後ろに集まっている

「全員退かせました」

「オーケー、さぁ時間はねぇ。一気に終わらすぞ」

そういうと片手をクイッと動く、すると化物達は空に浮き上がる

「神風烈波(しんくうれっぱ)」

放たれる風の刃が化物達を切り刻む、何もできないまま死に絶え黒の血が雨のように降り注ぐ

それでもまだ全て倒した訳ではない、すぐ隣から剣を持った小柄な化物が龍我を刺しにくる

「ギャッ!?」

「雑魚共が…」

頭を掴み一気に握り潰し地面に捨てる

「神聖な領域が穢れちまうな、精霊がよってこなくなるぞこれ」

狙いが世界樹だから誘導なんか出来ない、もしかしたらここで戦死者を出して精霊の森を穢れらせ機能を失くそうって魂胆かな

「まぁええか、あとで浄化すりゃ」

次々襲いかかる怪物を殺していく、まるで息を吸うように

「すごい…」

その悪鬼のような圧倒的な力による大殺戮に騎士達は震え上がる。

世界の住人として世界を守る者として加勢はしたい、だが手出しは出来ない、巻き込まれる。

「こんなもんか?」

一気に数は減り僅かとなる。龍我は楽に沢山殺せる方法を知っている、人だろうが獣だろうが化物だろうが関係なく殺せる

チュドオォォッ

空からなにかが勢いよく降ってくる、その衝撃で地面が抉れ木々が倒れる

「ヴオオォォッ!!」

クレーターの中心部で頭には螺曲がった2本の角、茂るように生えた牙、巨大な尻尾、コウモリのような羽を持った巨漢の悪魔が雄叫びをあげている

「あれはデスタグル!?」

「ほー、脅威が出てきたか」

「108の脅威は、リューガ様の部下では」

「あくまで抑えてただけだ、まぁ裏切るのは知っていたさ」

「なら、ほぼ全員が」

「そう考えるのが妥当だな、まぁ刃向かうなら消すまでだ」

「コロス、リューガ…ホロボスゥ…」

「エメラ、場所を変える。ここは任せた」

脅威が相手なら周りの被害が大きくなる、なら場所を変えて戦うしかない。化物達はもうそれほど残ってはいないから大丈夫だろう

「わかりました」

「グオオオオッ」

低飛行で飛んでくるデスタグルは龍我に鋭い爪を振りかぶる

「ふん!」

当たる瞬間横になりデスタグルと地面の間に入り腹部を蹴り空へ飛ばす

「吹き飛べ!」

間髪入れず蹴り飛ばし精霊の森から離れる

「敵を殲滅せよ、私につづけ!」

「うおぉおお!」

エメラ達騎士は残った化物相手に奮闘している

 

 

 

 

 

 

 

 

帝都

町田達は残った化物と戦っていた

(数は減ったとはいえ、学生達では厳しいか)

戦場へ出たほとんどの騎士が怪我をして戦う事が出来ない、いま戦う事が出来るのは精霊と契約を結んだ学生だけである

「今よ、さぁはやく!」

町田は茨を出し化物に絡まり動きを止める、その隙にティナが頭部に槍を突き刺す

「こんなんじゃ、きりがないわね」

一体一体倒してたらきりがない、幸い帝都を燃やしていた炎は龍我が消してくれたので思う存分戦える。

だが、町田の今の力でどれだけ力になれるかわからない。

「ゴミ共が、まとめて死ね!」

上半身が像で下半身が牛の化物が手に持つ斧を振り回し建物を破壊していく

「なんてデカさなの!?」

家と同等の高さをほこるその化物。このまま暴れたら帝都は滅茶苦茶になる

「やめろ、化物!」

ティナが化物の肩に槍を突き刺す

「ふん、たわいもない」

ティナを掴み地面に叩きつける、さきほど受けた傷口は塞がる

「団長、このぉ!」

槌を持ったクラッカが化物の足を殴打するが蹴り飛ばされる

「潰れ死ね!」

家を持ち上げ戦っている学生を睨み

「させないわ!」

茨を使って頭上に乗った町田は目に茨を巻き視界を塞ぐ

「ぐぎゃぁぁ!?」

茨から棘が伸び目を刺した、家を捨て茨を取ろうとかきむしるが全くとれない

「まだよ、はぁ!」

ローズレイピアで頭を突き刺す、傷口から血が吹き出るも町田はやめない

(ここで躊躇ったらみんな殺されちゃう、殺されるくらいなら殺してやる!)

無我夢中で頭に刺す、目を塞いでる茨も締め上げる力を強くする。

「ぐぎゃぁぁ!」

ついには倒れ体を悶え苦しんでいる、町田は着地すると同時に地面から茨をはやし足に巻き付け固定する

「今だ、一気にしとめるぞ!」

「はい!」

「風刃(ウィンドカッター)」

「炎の球(ファイヤーボール)」

「雷(サンダ)」

ティナの合図の元、一斉にそれぞれ得意の技を放つ

「残酷な風(クロース・レ・ボーン)」

槍を腹部に突き刺し中で風の刃を流し神経から臓器までズタズタにする

「グガアァァッ」

断末魔を上げるとピクリとも動かない、どうやら死んだようだ

「やっと倒した」

「まだこんなのがいるの?」

町田が聞くと

「今の所は敵は居ないみたいだからな、だが気を抜くんじゃないぞ」

強めに言うティナ、一瞬の油断が命取りとなる戦場、戦場に出たことがあるティナの言葉に重みを感じる

「動ける者は重傷者を連れて拠点へ戻り手当て、1人で絶対に動くな、まだ敵はいるかもしれない3人で行動しろ」

「はい」

「私達は物資を取ってくる」

「お?窃盗ですか団長!」

クラッカが笑い声ながら言う

「緊急事態だ、それに領収書を置いておくから窃盗ではない!」

「おー、かったいなーさすが団長!」

「クラッカ、こっち手伝って」

「はいはい、気をつけてな」

「わかった、町田さん行きましょう」

町田を連れて歩く

「えぇ、いいけど3人行動じゃなかったの?」

「いや、物資補給なら少ない方が敵に見つかりにくい、それに、何かあれば最悪私が囮になればいい」

「自己犠牲ね」

「あぁ、私もリューガ様のように強ければ犠牲にはならないんだけどな」

「…龍我ってそんなに強いの?」

町田は聞いてみた、確かに強い、さっきその力をこの目で見た、だけどまだ実感がないのだ。

「知らないのか?」

「知らないわ」

「…まさか、世界を滅ぼされた事を忘れてしまったのか。愚かな」

「滅ぼす?私の世界は滅ぼされた事ないわよ」

「なっ!?」

「え?」

「滅ぼされたことがないのか!?どういう事だ」

「そのまんまよ。なに、この世界は龍我に滅ぼされたの?」

「私の世界は半日で蹂躙された。最高位の精霊も最強の騎士団も精霊王も倒されてしまった。」

震える声で言うティナ、思い出すだけで倒れそうなくらい悲惨な出来事だ

「私の世界はまだいい方だ、世界を炎で包み全ての生命体を燃やし全大陸を焦土にかえたという話もある。」

「…あ、でも昔、一度だけそんなことがあったかしら」

ある歴史を思い出す町田、一度ドラゴンが現れて都市を破壊し回っていた事を、あれも確かほんの2時間だけの出来事だったらしいが…まさかね。

「ドラゴンか、私と同じだな。」

「詳しくは本人に聞いてみるわ」

「それがいいだろう、そろそろナサスリ区域につくぞ」

そうティナ、だが仲間から方向音痴と言われていたので少し不安だったがら、町田はここのことは全くしらないので頼るしかない

「ここは日用品が置いてあってな、世界の中心部だから種類も豊富だ」

店に入り商品をみる。町田が見たことがある食材もあり、箸とかスプーンもあるので食文化はそれほど大きな違いは無さそうだ。

「さて、皆の分だから相当な量になるな」

「簡単なものがいいよね」

「そうだな」

考えていると外からドゴォッと破壊音が聞こえる

「な、なんだ」

店の窓から外の状況を見る、建物が壊れ一本の道ができいる、ちょうど隣の建物が半壊で止まっている

あと少しでも力が強かったら町田やティナも巻き込まれていたに違いない

「グルガアアアアッ!!」

巨大な羽を羽ばたかせ悪魔が半壊の建物の中から飛び出してくる

「な、なんだあれは!?」

猛スピードでその悪魔に飛び蹴りを入れ更に吹き飛ばす大男

「あれは、リューガ様!?」

その男にティナは見覚えはあった、だが町田には全く面識はなかった

3メートル近い身長と筋骨隆々の上半身裸の青年、腰には小さな服を縛ってあり、鬼と書いてある。凜とした眉毛、紅い瞳、白銀の長い髪、整った顔立ち、そして全身に刻まれた紋章、それは怪しく華やかに光輝いていた。

「あれが、龍我くん!?」

「あれは、神の姿…ついに戻ったのですね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうしたその程度か」

「ゴロス…ウゴオォォッ!」

飛びかかるように近づき腕を振るうがどれもかわされている、それどころか隙をついてのカウンターを受けている

ガシッ

攻撃を耐え龍我の体を掴むデスタグル

「バアァァッ」

そして口から炎をゼロ距離で吐き出す

「ふん!」

顎を膝でかち上げられ、口が閉じる。

吐き出していた炎が逆流しボンと体が弾ける

「惨めな最後だな…。」

自滅にも等しい最後を哀れみながらその場から去る龍我

(戻す感覚はわかってきた、後は馴染ませる事だな)

まだ制御できてないにも関わらずこの姿になっている、いつ力に溺れ自我が失ってもおかしくはない。

元の姿へ戻る龍我

(あとは残党共を蹴散らして終わりだ。エメラは疲労してるから連れて行く訳にはいかない)

それに脅威共が出てくるなら話は別だ、いくら戦姫だからと言って満身創痍の状況で勝てる相手ではない。

ここの世界の戦力は諦めるか

「さて、次はどこだ」

精霊の森から化物の気配を感じない、もうカタをつけたのだろう。帝都からも感じない、王国に若干感じるが精霊王がいるから大丈夫だろう

世界を見てから町田の回収と報告を兼ねて帝都へ戻ろう

 

 

 

 

帝都

「………。」

まだ敵がいるか見回っている町田とティナ、他の人は看護に追われ手が離せないので2人だけである。

最前線となった区域は建前が崩壊し地面は焼け焦げている、そして人間や化物の死体の肉片があちこちに残っている、この吐き気がする程の異臭はそれらが焼けたもの。

初めて目にする悲惨さに町田は絶句する。

「うっ」

そして、我に返った町田はその悲惨な光景に吐いてしまう

「だ、大丈夫か」

町田の背中をさするティナ

「え、えぇ」

「…悲惨だな、争いというのは」

「そうね」

「これが私にとって初めての戦争だ…」

文武共に優秀で将来有望な騎士として皆から期待されてきたティナ、だがいざ戦場に出ればなんの力にもなれなかった。結局は世界を知らない、戦争を知らない非力な少女でしかなかったのだ。

「私に、もっと力があれば…こんな事にはならなかった、もっと私が…。」

「お前だけが強くなったってこの結果は覆らない」

龍我が傷だらけの人々をのせた板を持って降りてくる

「リューガ様」

「その人達は?」

「エメラと一緒に戦って生き残った騎士だ」

「姉上と?」

「そうだ、あのエメラもお前と一緒で守れちゃいねぇんだ」

「…なんだと」

「攻めるより守る方が難しいんだ。俺でも守れなかったこともある」

「リューガ様でも、守れない」

「今を受け入れろ、それがどんな結果であろうとも糧となる」

「でも、私には…そんな力はない。私は、私は…弱い、なれるわけがない」

「姉と違って弱い子だ…その弱さを大切にしろ。」

「まぁええ、まずはこいつらの治療が先だ。」

町田とティナに案内してもらい拠点である城へ向かい騎手達を急いで手当てする

「私は……ダメなやつだな」

誰もいない部屋の隅でひとり座りため息をついているティナ

「そう落胆することないわ、初めてなんだから仕方ないないわ」

そこへ町田がパンやハムなどが入ったバケットを持ってやってくる

「その仕方ないで多くの命が失ったのだ、そんな簡単に済む話じゃない」

ひどく自分を責めているティナ、龍我を探しに行く前の3日前の本人はこんな事にはならないないと思っていたのだろう

「私は、何もできなかった。」

「そんなことはないわ、龍我を見つけたら最悪の事態は免れたんでしょ?ティナのおかげよ」

「…もっとはやく見つけれたらよかったのに」

「ほら、食べなさい。」

「…食欲がない」

町田がパンを渡すが首を横に振り受け取らない

「なにシケた面してんだ、ティナ」

そこへ龍我が笑いながらやってくる

「リューガ様…」

「はーあー、引きずりやがって。」

やれやれと呆れながらティナの隣に座る

「…しょうがねぇなー。ひとつ面白い話をしてやるよ。」

「面白い話?」

空気読めよと怖い顔で龍我を睨む町田

「しんみりしてちゃダメだろ」

龍我は笑いながら話しだす

 

 

 

 

 

昔、ある世界で一人の男がいてな。そいつは凶暴な上にバカみてーに強くて誰にも負けた事がないんだ。その圧倒的暴力で世界を恐怖に陥れ誰もが認める最強だ。

そんなある日、その男の前に一人の女が立ちふさがった

かなりの手慣れだったが男には到底敵わなかった。

何度も何度も倒れされそれでも彼女は立ち上がる、泣き叫ぶ事もせずすぐに立ち上がり挑む

立つことでもやっとなはず、それなのにやつは自信と希望的に満ちた目で睨む

本気で戦っているのに決して死ぬことはないその存在に男は初めて恐怖した

なぜ動ける。なぜそんな目ができる。なぜ死なない。

「なぜ立ち上がる」

と男の問いに

「守りたいものがある」

そう彼女は呟いた

男には理解が出来なかった、なぜなら守るものが何も無かったからだ

だから彼が見えた彼女をつつむ暖かくて優しいそれでも力強い、彼にはなくて彼女にはある、その得体の知れない力に動揺した

「次はいいやつに生まれ変われよ」

そして男は『得体の知れない力』その未知なるモノの前に破れた

 

 

 

 

 

「笑えるよな、最強と呼ばれた男には強さ以外に何もない空っぽだったんだ。」

「………」

「ティナ、お前がいう強さの先だ…。一人強けりゃいいわけじゃない、圧倒的力が全てじゃない。守りたい意思が勇気をくれる仲間がいるから強くなれる。お前もこんな奴になりたくなければ考えを改めるんだな。」

「孤独の強さか、可哀想な男ね」

町田がボソッと言う

「お前には覚悟も仲間もいる、決して道を踏み外すな」

「……私は、かわれるのか」

「当たり前だ」

「………」

「今は飯食って力つけろ、こっから忙しくなるんだぜ」

「ほら、食べて」

「ありがとう」

町田からパンを受けとり食べるティナ

「それにしても、詳しく知ってるのね、その話」

「ん?結構有名な話だぜ、俺も教訓として覚えていただけさ」

「へー」

「ほら町田もくえ、すぐに仕事だぜ!」

バケットからパンを取りかじる

「それはティナのよ」

「気にすんな、お前もくえ!」

「いただくわ」

「お前も食うんじゃないか」

「うっさい」

「うぐっ、詰まった。」

「おい大丈夫か、水、水」

「はい水」

「んぐ、助かった」

「ゆっくり食えよ」

騒がしい食事を見て龍我は思わず微笑む

(俺も変われたんだよな……なぁ天和。)

「次は俺が勝つぜ」

「何か言った?」

「なーんも、あっオレンジいただき!」

「あ、それ私の!」

「しるか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、俺は他の世界の所に行くが…町田、どうする」

「私はここでみんなの手伝いをするわ、正直あなたにはついていけないわ」

「ほー、帰るという選択もあったのにな。やるな!」

「乗り掛かった船だからね、少しだけお手伝いするわティナさん」

「ありがとう。」

「ティナ、町田を頼んだぞ。」

「任せてください」

第1世界に町田を残し他の戦争へ向かう龍我であった

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく


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