いい匂いを漂わせる屋台が並び、そこに多くの人々が列をつくっている、あぁ混雑している
お目当ての花火が打ち上げられる時間はあともう少し、はやく見る場所をみつけなければ
「どこで見るんだよ」
「わー、屋台だ屋台」
「俺焼きそば買ってくるから待ってろ」
ルナは屋台に興味深々、鬼豪は焼きそば買いにいってしまった
「・・・はぁ」
「ねぇ龍我ぁ」
「なーんだよ、金魚すくいはダメだぞ」
「え!?なんでわかったの」
「だいたいお前がやりそうなのはわかる、つーか俺の家で飼う場所なんてねぇ!」
「ちぇ、こんなにかわいいのにゃ~」
金魚が優雅に泳いでいる中ジ~っと見つめると
バシャバシャバシャバシャ
金魚が急に暴れだした
「うわ、なんだこれ」
「こんなのみたことないぞ」
金魚が連続で跳ねているこれは屋台の店主もビックリだ
「な、なにしてるんだルナ」
「ほら、私に飼ってほしいんだよ」
いや、絶対に違う気がする、よし
「ルナ、ちょ~とこっちおいで」
「どうしたの?」
金魚からルナを遠ざけると
シ~ン
金魚は飛び交うことはなく
「近づいてみて」
金魚にルナを近づけると・・・
バシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャ
「はいきまり、ルナお前金魚に嫌われてる」
「うそ・・・」
「金魚が暴れているのが証拠さ、諦めろ」
「うぅ、だから魚類は嫌いなのよ」
「はいはい、魚類が嫌いなら食べるなよ」
ルナの手を引っ張って人混みのなか突き進んでいく
「あ、飼う以外だったらいいぞ、食べ物とか、食べ物とか食べ物とか」
「はいはい、食べ物ね・・っと」
ルナは、何が美味しそうが鼻をよく効かせていると・・・
「あそこが美味しいわ」
向かった先は屋台の一番奥にある誰も客が来てないお好み焼き屋
うわ、捻り鉢巻きをした強面のスキンヘッド親父が腕を組んで立っている
「確かに、すげぇ威厳がある人がつくってるけど・・・入るの怖いな」
「ほーら龍我いくよ」
「はいはい」
恐る恐る行くことに
「すいませーん」
ルナが超気軽に声をかける
「なんじゃ、ワシになにかようか」
「いやいや、何がようかって、あんさんお好み焼き屋でしょ?だから買いに・・・」
「じゃがらしかぁ!」
「うえ?」
急に叫ばれてもなぁ、本当のことだろ?
「テメェらみてぇなガキがワシのお好み焼きを食おうなんざぁ100年はやぃんじゃ!」
ひゃ、100年って・・・なんで客をこう追っ払おうとするのか不思議でしょうがない
「ん~・・・美味しいわね」
龍我と屋台の親父が話している間にお好み焼きを食べているルナ
「おいこら、何食べてるだ!」
「お金なら払うわよ、龍我が」
「うおい!」
「私お金持ってないのよ」
「なら食うな」
「ふん」
モグモグ
再び食べ始めた
「ん~お好み焼きの中に焼きそばが入っていてボリューミーだよ、龍我も食べな」
ルナが持っているパックを見ると、蓋するところまでお好み焼きが乗っている、屋台の上に置いてある作りおきもそうだ、蓋用と皿用のパック2つ使っている
なになに値段は~と・・・ろっ、500!?
「凄い値段だな、しかもこの量・・・赤字になるんじゃね?」
「うるせぇ、たわけが!」
「な、なんだよ」
「ワシァ皆が腹一杯に食べてくれることを望んでいるんだよ、客の食べてる笑顔をみれりゃ儲けなんざぁ関係なかぁ!」
「それがどうだ、『量多すぎるだろ!』『食べられねぇよ!』とかいいやがって、しまいには捨てるんだぞ」
「なに!?食物様を捨てるだと・・・許すまじ・・・!!」
「確かにワシは自分の理想を押し付けてるかもしれないが、それが喜びなんじゃないかと思う」
「おじさんおじさん」
「なんじゃい」
「おかわり~!」
「なっ!?」
「お、おま、ルナ、もう食べたのか!?」
「美味しいからね」
美味しいからねって・・・
「このお好み焼きは中に焼きそばもはいっていて、材料全て合わせると800gは越えているのに、おかわりだと」
「うん」
「へへ、嬉しいねぇ、あいよ」
「ありがとう」
バクバクバクバク
「いい食べっぷだったよお嬢ちゃん」
「まだ食べる~!」
おいおい4皿目食べ終えたんだからいいだろー
「あいよ、じゃんじゃんくってやるけん、まっとれい」
「あぁ、ちょー、まてや、まてまて」
「なんじゃ」
「俺はそんなお金無い、2000円、もうこれ以上は払えないぜ!」
「うるせぇい、金なんざぁいらんわう」
「え?」
「この小麦粉、肉、魚、卵、野菜は全て自分で育ててる」
「全部育ててるだぁ?」
「肉は余ったやつ、野菜も形がダメで売れないやつ、魚は自分でつったやつ、卵は産ませた、小麦は大量に育てている」
す、すげぇ、ザ・農林だな
「だから逆に食べてもらわんと困るのじゃ!」
そういって、龍我に特大のお好み焼きをわたす
「無料ってことかぁ~・・・無料・・・無料・・・食べよう」
龍我も食べる食べる!食べるっ!!
ルナは超ハイペースで休むことなく食べ続ける、龍我も食べるがやはりお箸は遅くなる
「ぷはぁーーっ!!もー食えねぇ。大満足だぁ!!」
脅威の5皿、約4kgは腹に納めた脅威の胃袋、しかし
ルナはいまだに食べ続けている
「もーいいだろ」
「あと1つ、いや2つ・・・」
「もういいだろ、親父さんありがとな!」
サイフの中の2000円を置いて去る
「またおいでや、今度ぁギブアップさせてやるわい!」
腕をくみ豪快に笑いながら見送る
「なぁ、ルナ」
「なに」
「おれさぁ、うぷっ・・・ぐぬおお」
「だ、大丈夫?」
「や、やすもう、座ろ・・う」
ここで座るのはまずいので近くの坂を登り、椅子が置いてある場所にいき、座った
「はー、うまかったけどしんどかった、だが嬉しかったな」
「ほんとそうね、今度は全てを食べ尽くさなきゃ」
「せやな」
次食べる時はそれなりのお金を用意してな
「それより鬼豪は?」
「さぁ?」
ヒュ~・・・ドオォン
急に花火がうち上がる、誰もいないし、静かで見やすい最高の場所に龍我達はいた
「綺麗ね」
「・・・そうだな」
ヒュ~・・・ドン
つづく