最強を目指して   作:匿名希望ただの人

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番外編 44

「■■■■■■■■■■■■■」

「なんという戦闘力、これが龍我の隠し持った力なのか」

おぞましい咆哮に耐えながら龍我の進化に驚く龍那

「■■■■■■■■■■■■■■」

両手をクロスし合わせエネルギーを溜める

咆哮を止めた瞬間一気に溜めたエネルギー波を放つ

ドゴオオォォン

かわす龍那との距離を詰め禍々しい色へと変わった悪魔のような右手を大きく振り下ろす

ズバアァンッ

知ろへ下がりかわした龍那だが腹部に爪の傷がつけられている

「ぐっ」

「壊神」

ボゴオォン

右手を振るうと大気、空間に亀裂が入りそこから凄まじい衝撃が放たれその場を破壊する

「神裂き、壊神…鬼塚さんが神を殺す為に編み出した技、なぜ龍我が使えるのだ」

見覚えのある技を使いこなすのを見て疑問に思う龍那、考える前に目の前の敵を倒す事に集中する

「はあぁ!」

「はぁ!」

蹴りを顔面に当てるが龍我は怯むことなく突き進み顔面を掴み地面に叩きつける

「がっ」

「フハハハハハハ」

地面に押し付けたまま走り続け最後に地面をえぐり持ち上げ投げ飛ばすと同時に赤いエネルギー弾を投げ爆発させる

「ハアアァァァ!!」

爆発した場所まで飛びあがり両手を合わせ殴り追撃する

ドゴオォ

「神潰」

グシャアン

一気に加速し落ちて蹴りを落とす、地面を蜘蛛の巣状に亀裂が入り砕き沈む

それをかわし距離を取る龍那だが

バグウゥン

右手を振るうと遠くにいた龍那が龍我の目の前に移動している

「神殺」

体から放たれる禍々しい波動に吹き飛ばされる

「一切の不純物の混じりが無い純粋なる自分勝手という悪の塊、私と同じニオイがする…、私が認め好いた理由はここにもあったか」

「はああぁぁぁっ!!」

「4姉妹達でも私に纏わさせなかったこれを纏わせるとはな、本当に強くなったな…龍我」

ブワアァァァッ

放たれるオーラは生ける生命を枯らし殺し生を奪う

黒よりも黒い濃く真っ黒なドス黒い全ての光を飲み込むように黒く暗い、悪、闇、苦、禍々しい、非、災い、負、痛、辛、厄、不、魔、凶、悲、恐怖、絶望、それら全ての言葉を当てはめるには最も相応しくそれじゃ足りないほどの絶対な悪の力を秘めた衣を纏った龍那、瞳は深く暗く青く輝いている

「そして超覚醒…究極の領域(アルティメットゾーン)を使わせるとはな」

「ハアアァァアァァ!!」

バギャァァッ

突進してくる龍我を蹴り飛ばす

「ぐぬっ!?」

「やはり私は父の娘だ…お前を倒したいと言っている!!」

「神剌」

地面から鋭い刃を出し刺し殺そうとするが剣で斬られる

「ハアアァアア!!」

振るう拳を蹴り上げ腹部に連続で拳を叩き込まれる龍我

「ぐはぁ、ぬうぅぅ、うるあぁ!」

ドォンドォンドォンドォンドォン

目にも止まらない激しい打ち合いを始める、ぶつかり合う激しい音と大気が揺れる音が聞こえる

「はあぁ!」

「ぐぐっ…ぬああぁぁ!!」

左右2本づつ手を生やしパンチのラッシュをするがかわされ斬り落とされる

「ぐぬあぁ!?」

「遅い…はあぁ!!」

ドドドッ

「ぐぬぅ…ぐっ…くそがああぁぁぁっ!!」

「■■■■■■■■■■■」

おぞましい咆哮を再び上げると筋肉が急成長し膨張する、体から古傷が赤色に浮き上がり体からは赤黒い稲妻がはしる

「■■■■■■■■■■」

体を捻りパンチを振るうがかわされ地面をえぐるだけになる

「■■■■■■■■」

降りかぶったパンチの反動を利用し大きく踏み込み回転し後ろ蹴りを龍那に当てる

「はああぁぁぁ……ああああああああっ!!」

両手を合わせ造り上げる凶悪なエネルギー、フェクトで集め凝縮して反発させあい更に強大な力へと上げていく

「今…楽にしてやるっ!!」

小さく光輝くエネルギー弾を静かに放つ

「はぁぁ!!」

両手から放つエネルギー波、極限まで凝縮されたエネルギー弾は触れると巨大化し徐々に地面との距離を縮め圧倒する

「ハッハッハッハッハッ!!」

エネルギーを放ち更に地面との距離を縮めゴナゴナに破壊する

「ぐっ…なんという力だ、この世界では1、2を争うほどの威力、異世界でも通じる程だ…」

巨大なエネルギー弾が目の前に迫っているのだというのに冷静な龍那

「だが、私はそれを超える力を経験し超えているっ!!」

力むとエネルギー弾を押し上げ龍我へと近づける

「ふっ、神滅波…はあぁぁっ!!」

両手からおぞましいエネルギー波を放ち再び押し込む

「はあぁぁ!!」

龍那のエネルギー波が黒く輝くドラゴンへとかわり天へと登るかのように放たれる

「うおおおぉぉぉぉっ!!」

「はああぁぁ!!」

壮絶な打ち合いの末龍那がエネルギー弾を打ち砕きそのままドラゴンが押し切る

「こんなもの…はあぁぁぁっ!!」

目の前に迫り来るドラゴンに対して両手を突き出し受け止めようとするがそのまま吹き飛ばされる

ドゴオォォッ

ドラゴンの頭が龍那の後ろから現れ地面に突き刺ささり地面をえぐり爆発する

「はぁ、はぁ…はああああああああっ!!」

「どうだ、地球を一周した気分は?」

「ぬああぁぁ、神烈」

拳を高速で振るいその衝撃で圧縮された大気が弾丸のように放たれ龍那を襲うが斬りすてられる

「うおおおおおおおああああああああ、神越ッッ!」

自らの気を高め身体能力を上げ挑みにかかる

暴風雨のような激しいパンチのラッシュを何の障害も無くかわし距離を縮め斬りにかかる

「はぁ!」

「神斬」

造り上げた赤い刀で受け止め斬りにかかるが刀ごと体を斬られるが龍我はニヤリと笑い龍那の腕を掴み引き寄せる

「神爆」

作り上げたエネルギー弾を0距離でぶち込み吹き飛ばし爆発する

「我が一族の衣は全てを飲み込みどんな攻撃をも受け付けない…私に纏わせた時点で負けなのだ」

衝撃的事実現実を突きつけられた龍我はそれで拳を握り挑む

「ぐっ…うおおぉおぉぉおお」

「はああぁぁぁ」

ブウゥン

バグウゥゥン

削り消し取る力を使ってしても龍那に傷すらつけることはできない

「はあああぁぁぁ!!」

手足体全身を使った無駄の無いラッシュ攻撃、だが受け流されかわされカウンターをくらうばかりである

負ける訳にはいかないんだ、俺は…

それでも怯まず屈っせず退くことなく前へ進み戦い挑み続ける

「はああああああああ!!」

俺は!!

「うわああああああああ!!」

気を拳に一点集中し全ての力を使った今までの思いを全て込めた、まさしく全てを賭けた最後の一撃

龍那は纏う衣を解除し受け止める

「はあぁぁ!!」

そして蹴りを横顔に叩き込む

バギャアァッ

後ろにも前にも横にも倒れることなく立ち止まったきり動かない

「その覚悟、思い、しかと受け取った…龍我、やはりお前は私が愛し惚れた男だ」

ピシッ

龍我の元へ近づく為一歩踏み出した時、龍我の体に亀裂が入り古傷から赤く輝くエネルギーが放たれる

「龍我!?」

走り歩み寄ろうとするが

ドオォォッ

まばゆい光を放たれる、おさまるとその場には龍我の姿がなかった

死んだことにより抑えきれなくなった力が一気に解放され体を保つことが出来なくなり爆発したのだろう

「龍我……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

目を開けると白い天井が見える、すぐに病院だとわかった

起き上がるといつもの面子共が居る

「そうか…俺は負けたのか…」

その言葉に誰もが顔を下に向け黙り込む

「………」

「なんで…なんで生きてんだよ…俺…」

布団を握り締め力強くボソッと言う

「情けないだろ、みっともなさ過ぎんだろ…俺…なぁ」

「今生きてるけど、死んだのは確かだぞ」

勇が言う、どういうことだ

「なに?」

「氷堂が堂道館の連中に頼んでこっそり異次元マップを発動させてたんだ」

「氷堂がか?」

座っている氷堂を見る龍我

「私に遺書を渡して死のうとするなんて随分勝手過ぎるんじゃないかな?」

なるほどな、俺が渡した封筒、遺書を見たってことだなこの野郎、信用した俺がバカだったぜ

「けっ、テメェも勝手が過ぎるだろ」

「ならお互い様だな」

「あのな~、まぁいい俺の覚悟を汚した罪は重たいぜ、いつか償ってもらうからな」

「わかってるわ」

「それと、お前への信頼は減ったからな」

「何言ってんのよ、氷堂のおかげで今こうして生きていられるんでしょ?」

「あのな~優香、今こうして生きていられるのがダメなんだよ」

「生きてなんぼなんでしょ?死んで逃げないでまたしっかり立ち上がり歩みなさいよ」

「俺はそれでいいんだがな…今回は違う、俺が居るから龍那さんが苦しむ、だから責めて龍那さんに殺されて死にたかった」

「死んだらなおのこと苦しのよ」

「そうか?手に入らないなら絶対に手に入らない状況にすれば誰だって諦めがつくだろ?」

「そうとも限らないわよ」

「そうか?」

「龍我はどうなの?」

「いや全然、そう思わないぞ」

「言ってるそばから」

「矛盾してるな」

「バカは死んでも治らねぇってことだな」

「腐っても龍我だなぁおい!」

「さすがだな」

その言葉に呆れる者や逆に関心してしまう者が現れる

「はぁ、帰るぞ…」

ベッドから降り立ち上がる

「お、おいまだ動くなって完治してないんだぞ」

タイチが止めに入るが

「あ?んなの知るか!!」

「お、おい」

「やめとけ奴は龍我だぜ、言うだけ無駄だ」

「そうだけどさ」

「帰る前に会わなきゃいけない人がいるでしょ?」

「…誰だ?」

「その人が来るまでベッドで横になってなさい」

「俺達は邪魔だから帰らせてもらう」

「あ、おい」

そう言うとみんな帰ってしまう、会わなきゃいけない人か、誰だろう

よくわからないがとりあえずベッドに横になり待っていよう

窓から光り差す夕日を見る、綺麗だな

ぼーっと眺めているとドアが開く音が聞こえる

振り向くと龍那さんがすぐそばにいる

「龍我」

「りゅ、龍那さん」

思わず声を上げ上半身を起こす、なんでこんな所に、なぜここに来たのか理由が分からないからだ

「どうしてここに、帰ったのでは?」

「愛する夫の安否を確認しないで帰る妻がおるか」

「はは、またまた」

「龍我、私との約束は覚えているよな」

「勿論です」

「じゃあ、私と」

「その前に…ちょっといいですか?」

「…なんだ」

「自分からも言いたい事があるんですよ、先に言いですか?」

「別に構わないか」

「そうですか……」

「……」

「……」

「……なんだ、はやく言え」

「その、なんか口に出すのが恥ずかしいので近づいてくれませんか?」

「わかった」

龍我に顔を近づける龍那、そして

両手を広げ優しく包み込む用に龍那を抱きしめ引き寄せる

「!?」

ぶつけるように勢いよくされども優しく唇を合わせる

「………」

突然の事に顔を赤くする龍那

「俺の事をこんなにも愛してくれてありがとうございます、俺も愛してます好きです大好きです」

「そして、約束を破ってすみません…」

抱えていた手を離し距離を空け

「龍…我…?」

「さようなら」

微笑みながら窓から倒れるように落ちる

「待て、龍我」

窓から下を覗くと龍我の姿は無かった

「龍我…」

夕日が落ち辺りが暗く夜になっていた

 

 

 

 

 

あの戦いからしばらく経ったある日のこと

学校

「龍我今日も学校来ないのかよ」

「今日もサボりかよ、単位落として留年かこりゃ?」

「マジかよ、俺らのこと先輩付けで呼ぶのかよ」

「まぁ、あんなことあったんだから無理もないわね」

「失恋の傷は深い…」

「そもそもあれって失恋っていうのかしらね」

「難しい所…」

などと話していると

「よー、テメェら久々だなーおい!」

教室のドアを開け入ってくる龍我、それにはクラス全員が驚く

「りゅ、龍我!?」

「おーやっと来たか」

「もう大丈夫なの?」

「ん?やっと来た?もう大丈夫?何言ってんの?」

「だって何日も学校に来てなかったじゃん、心配したのよ」

「あれ、先生言ってなかったか?俺農業の実習でしばらく授業公欠するから学校来ないって」

「…え?」

「いやー、カニ漁行ってきたけどよダメだな波が高い高い」

「カニ漁って」

「あと、サメを狩りにも行ったなすげぇよ30メートルのバケモノだったぜ」

笑いながら話す龍我、それを見て

「はぁ、心配して損した」

「言ったろ、心配するだけ無駄だって」

「あれだけでへこたれるタマじゃねぇだろ」

「ん?どうしたんだお前ら、何話してる?」

「別になんでも無いわ」

「そっかー、それより玲子さん」

「なに?」

「玲子さんって伊達ニイの妹さんなんだってな」

「そうだよ」

「いやー、なるほどねまさか伊達ニイの妹さんか」

気合いを入れられたあの時なんか懐かしい気がしたのは兄妹だったからか

「そうかそうか、んー、偶然だな」

「そうね」

「玲子さんを大切にしろよな鬼豪」

「はぁ?どうした急に」

「玲子さん泣かせると伊達ニイがお前を殺しにくるぜ」

「はぁ?知るかんなもん」

「大丈夫だよ、龍我…私は泣いたり不幸せになんてならないから」

そういい鬼豪の手を取り寄り添う玲子

「それもそうか、ははは…はぁ」

「その溜め息、やっぱ心残りがあるのね」

「なんのだよ、」

「そう言えば、お兄ちゃん龍我が学校に来たら教えてくれって言ってた」

「伊達ニイが、何かやらかしたっけな~」

「なんとなく予想はつくけどな」

「私も」

恐らく龍那さんの件だと予想がつく

「まぁ、もう先輩方に会わせる顔が無いからな内緒にしておいて」

「…いいの?」

「次会ったら本気で自分を殺したくなっちまうからな」

「そう、わかった」

「さあて、カニ漁でカニ貰ってきたから今日の夕食はカニ鍋だ!」

「おー、リッチ~」

「何匹貰ったんだ?」

「3杯」

「貰う量少なくね?」

「4杯ほど青空にお裾分けして家に3杯送って柊さんにも2杯あげたからな」

「全部食べればいいものを」

「分けてこそだろ、いやー今日の夕食は腕によりをかけて作らないとなー」

「何か食材買うの?」

「いーやー、農業で野菜は間に合ってるし魚は今日の朝漁行った時の奴があるから基本的には無いな」

「ほぼ無料ってわけか」

「さすが農業科」

「というより野原先生が凄いのよね」

「そこね」

農林水産全てに顔がきく野原先生、適当な性格をしているがその節では結構なお偉いさんだったりするのでないかと思われる、ただ者ではないことは確かだなと思った

「感謝感謝だな、さて今日は何作ろうかなカニクリームコロッケか、カニチャーハンもいいな」

などと期待を膨らませながら授業に出る

 

 

 

福祉室

龍我、学校に来てなかったどうしたの?

教室に入るなり話しかけてくる黎明先輩

「実習に行ってきたんですよ」

農業?

「そうですよ」

ならよかった

「よかったって、何がですか?」

お姉ちゃん、心配していた

「お姉ちゃん…あぁ龍那さんですね…心配していたってどういうことですか?」

龍我がまた消えたから

そう言えば龍那さんの前でちょうどうまいタイミングで実習が入って長い漁に行ったから確かに消えて消息を断ったかのように見えるなと今更分かる

お姉ちゃん勝ったのに喜んでなかった、悲しんでた何かした?

「何かって…あ」

そういやいろいろではないけどやったな、確かに悲しませるような事をした、もはや顔を見せることも出来ない、男として失格今すぐに死にたいという気持ちが高まる

「いえ、特に何も」

俺が龍那さんに結婚してほしいと告げたことは恐らく先輩は知らないと思うし知らせたくないのでごまかす

ならいい

「それより、今龍那さんは?」

休んでいる

「休みですか?」

体調が悪いみたい、だから休んでいる

「………」

今も多分家に居ると思う

「そうですか」

「あ、自分と会った事は言わない方がいいですね」

どうして?

「多分僕のせいで体調を悪くされたと思うので、また自分の話を聞くと悪化しそうですので」

わかった

「ありがとうございます」

これでもう俺と龍那さんが会うことはない、縁も切ったんだ、別れを告げたんだ、悔いなどない、これでいいんだ

「そろそろ授業始まりますね」

そう言うと小さく頷き教科書を取り出す先輩、これで話を止めれる、あまりこの話しをすると俺まで体調を崩しそうだ

 

 

 

 

放課後

はやく帰ってカニ鍋を食べたいのですぐに帰ろうとする龍我

ガラガラ

教室のドアを開け入ってくるスーツ姿の1人巨漢

「花川さん、どうしたんスか?」

「…お前に客人がいる、ついてこい」

「え?客人ですか?」

「わかりました、で、どこに行くんですか?」

「ついてくればいい」

そういい教室から出る

「お前らわりぃな、用事できたからカニは無しだ」

「なんだそれ、カニ食わせろよ!」

「自分で買ってくってくれや」

「カニは高いんだよ!!」

「そうだ期待させてそれかよ、ばーか!」

騒ぐ野郎2人、うるさいのでそれを無視して花川さんの後をついて行く

「最近の剛和会はどうですか?」

「……………」

「そうですか、それにしても珍しいですね花川さんを使って自分なんかを呼び出すなんて」

「…………」

何を言っても黙っている花川、無視しているのかと思われるがこれが普通だと知っている龍我は別になんとも思わない

しばらく歩くと神楽町近くにある建物の中に入り階段を登るとある店につく

「ここって…」

確か花川さん行きつけのバーだったな

中は静かで落ち着いたいかにも大人だけが行く場所という雰囲気である

「………」

無言でカウンターに座りマスターからお酒を頂く、一応未成年だぞおい!

「花川さん」

「………」

無言で親指で左にある非常口を指す、なるほどそこに行けというのか

静かに歩き向かう龍我、ドアノブを握り開けるとボロい鉄階段があるが誰も居ない

「すまないな、マスター…俺達の為に使っちまって」

「いいんですよ、花川さんは常連さんですから」

「あぁ、恩に着る」

 

 

 

なんとなく階段を登り屋上へ行ってみると、1人の女性が町を眺めている

「来たか、龍我」

「龍那さん…」

龍那が一歩前へ足を踏み出すと龍我は一歩後ろへ足を下げる

「どうして下がるのだ」

「どうしてって、別れを告げたからじゃないですか」

「そのような事を言わないと約束しただろ」

「だから言ったじゃないですか、約束破ってすみませんって」

「そんなので許される訳が無いだろ」

「許されるもなにも本来なら死んでた身ですよ」

あの時氷堂のお節介により俺は生きてしまったのだ、それさえなければ今頃こんな事にもならず楽できたのに、はぁ…やっぱあいつ嫌いだわ

「だがお前は生きている」

「なら今ここで死ぬまで」

手を手刀にして首元を触る

「私の前で自ら自害するのか?」

「その方が諦めがつくのではないでしょうか?」

「確かに諦めはつくかもしれない、だが未練は一生残り続けるだろう」

「未練なんて消えますよ、ワシも5年間引きずり続けた未練も今消えましたから……それにワシが居ない方が龍那さんの為ですから」

「そんな訳ないだろ、龍我お前という存在が私にとってどれだけ大切なものか…」

「それですよ、ワシという存在が龍那さんにとって呪縛にしか過ぎないんですよ、もっと周りを見てくださいよ!!ワシよりもいい男なんて沢山居るでしょ?」

「!?」

「今ワシが死ねば分かるでしょう…今度こそさようならです」

愛する者の幸せの為に俺は死ぬ、自殺という最悪の死に方かもしれないが俺にとっては最高の死だ

「りゅ」

止めにはいる龍那だが龍我の斬る速さに間に合う訳がない

最後に慈愛に満ちた微笑みをし自ら首を斬り落とす時だ

ドゴオッ

花川がその巨拳で龍我を殴り飛ばす

「がはっ…ぐっ、は、花川さん…」

「みっともねぇ…」

「え?」

「もっと自分に素直になれ」

「…へへ、何を言ってるんですか、ワシはいつも素直で自己中心な男ですよ」

「だったら言えよ、お前の本当の気持ちを」

「本当の…気持ち…」

「結果がどうあれ俺が見届けてやる…」

そういうと鉄柵によりかかり煙草に火をつける

「………」

ゆっくりと龍那に歩み寄る龍我、その度に気持ちが溢れだす

「龍那さん、俺は…自分勝手な考えで動き続けてきた、それが最善で良いと思っていたからです」

周りの人が困っているなら自分が犠牲になればいいと常に正しいと思って生きてきた、それが一番良い方法だと思って

「俺は…あなたが思っている程できた人間じゃありません…でも、もしこんな俺でよければ…」

胸から込み上げてくる熱く悲しいこの気持ち、留めるがつらく今にも吐き出しそうだ

これが俺の本当の気持ち…思い…あの時と一緒だ…どんなに無理をしてもどんなに我慢をしてもどんなに俺を殺しても…気持ちは変わってない、俺は、腐っても俺だったのか

「俺と、結婚してください」

手を差し出し頭を下げる

「………」

龍我の手を掴み引き寄せ抱きしめる

「……本当に…いいんですか?」

「当然だ、断る理由が私にはない」

「そうですか………よかった」

「私もだ…」

「…ですが、今すぐに結婚は出来ませんよ」

「そんなことはない」

「2年後、俺も龍那さんも学校を卒業します…その時にお願いします」

「婚約…というものだな、わかった」

「それまでに俺も立派な男になってみせます…、もしなってなければ破棄しても構いません」

「あぁ、わかった…期待しているぞ」

「はい」

 

 

屋上からバーに戻ると

「…マスター、紙とペンをくれないか?」

花川が紙とペンを貸してくれるよう頼む

「かしこまりました」

紙とペンを花川に渡すなり書き始める

「婚約書だ…簡易的なものだがすまない」

婚約書と書かれた本当に簡易的な契約書を見せる

「立会人は俺だ…」

指を爪で切り名前の上に指紋を残す

「花川さん」

「書け…」

ペンを渡す

「花川さん、どうしてそこまでしてくれるんですか?」

「……龍那さんが俺に頭を下げて来た、何より友達の幸せを願って何が悪い」

「ありがとうございます、花川さん」

「………」

こうして俺は密かに龍那さんと婚約を結んだのであった

 

 

 

つづく


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