一般人15歳で〝ちょっと〟変わった彼のIS生活(完結) 作:A.K
我らと主は一つになった
それは我らが創造主が望んでいた
我らが創造主と我らが原因で起こしてしまった『あの事件』
その事件の唯一の生存者である主
我らは主に仕えるために生まれてきた
だからこそ示そう
全てを超えた超越者の力の片鱗を
澪がアンノウンで空を飛んでアリーナに入って来ると、澪に向けての罵声が一斉に鳴り響く。澪はそれに対して「織斑には言わないで、俺だけこうかよ」と内心苛立ちながら、セシリア・オルコットの方に飛んで行く
「このセシリア・オルコットをいつまでも待たせるとは、一体どういうことですの!?」
アリーナ上空にいるセシリア・オルコットの元にたどり着いて、そして言われたのがこれだった。一文字も間違える事もなく、セシリア・オルコットは先ほど俺が予想した言葉を喋る。
まさかここまで予想が当たるとは……少し怖いな。つか、何だ?全身装甲型があーだこーだって……、あー
『……五月蝿え』
あまりにも五月蝿かったので、俺は思わずそう呟く。
「……ッ!」
────主。敵機よりロックオンされています。
────追加報告、あと五分程で最適化と一次移行が完了します
『(了解)……何だ?俺に五月蝿いと言われてキレたか』
おうおう。白人特有の白い顔が、茹でたカニ並に赤くなってやがる。あれだけの肩書きをも出ていたとしても、所詮はこんなか……
「……やはり一夏さんの方が素晴らしい殿方のようですわね。貴方にはさっさと負けてもらって、国際IS委員会の研究施設に送らせていただきますわ!」
セシリア・オルコットのその言葉と同時に、試合開始のブザーが鳴る。
『……』
その態度、俺達男を見下すようなその視線。俺はそれが気に入らない。男だからという理由だけで、男をゴミのように家畜のように見るその目が!
「喰らいなさい!」
そう澪に向けて言って、ブルー・ティアーズの専用武装である六七口径特殊レーザーライフル《スターライトmkーⅢ》を撃つ。この時のセシリア・オルコットの表情が、澪の古き忌まわしき記憶を呼び戻す。
真っ赤に燃え、黒煙が立ち上る町
その上空で笑いながら俺達に銃火器を撃つIS
そして、その光景を見て笑うISパイロット
────アハハハッ!ゴミ掃除だぁ!
それから逃げる人々の叫び声
そんな人々はISによって次々に殺されていく
その殺されていった人々の中には、俺の友達や家族も居た
────父さん!母さん!桜!
当時幼かった俺は、その時のISパイロットの目を今も覚えている
あの目は
────死ねよ!死ねよ!ゴミ共オォォォ!
『……巫山戯るな』
迫り来るレーザーを前にし、澪ことアンノウンはそう呟く。それと同時に、手に赤と黒の近接ブレードである『復讐者の剣』を展開し……叫ぶ。
『……巫山戯るなぁぁぁぁぁ!』
その叫びと共に、頭部のバイザーが真紅に光り輝く。それは澪の怒りを表しているかのように……
澪は目の前まで迫りつつあったレーザーを、脚部スラスターで上に上昇する形で避けた。しかし、まだアンノウン(仮)が最適化及び一次移行をしてない為、澪の反応に追い付けず何発か掠る
『(シールドエネルギーが削られていく……!)』
「無様に踊り、惨めに落ちなさい!」
更にその場から上昇後、背中の非固定浮遊部位の中型スラスターを最大まで吹かしてセシリア・オルコットに接近。それに対し、迎撃するようにスターライトmkⅢのレーザーを撃ち続ける
『(テメェらみたいのがいるから……俺達は!)』
澪は頭の中でそう考えながら、レーザーを避ける。澪が受けた楯無の訓練では、今の攻撃よりももっと激しい攻撃を避け続ける訓練を行ってきた。その為、今のセシリア・オルコットの一発一発放つ光の光線は澪から見ればまだ避けやすいのだ。先程の初撃もそれが影響し、避けることが出来たのだ。それでも絶対に避けることは出来ない。
その為、今こうしている時もレーザーが掠り表面装甲が溶け、更にシールドエネルギーがガリガリと削られていく
『(このままじゃジリ貧だ……ならっ!)』
澪は背中の非固定浮遊部位の中型スラスターに、シールドエネルギーを注入。次の瞬間に中型スラスターから爆発的なエネルギーの放出、それは自分自身のさらなる加速を促す。
「イ、
『まずは……一撃!』
澪は復讐者の剣を、瞬時加速を使った俺に驚いて固まっているセシリア・オルコットに片手で一閃。それによってブルー・ティアーズのシールドエネルギーが減る。
『オォォォ!』
「ギイッ!?」
復讐者の剣で斬った勢いで、復讐者の剣を持っていない方の手でセシリア・オルコットの頭を拳骨する。それによりアリーナ内のシールドバリアーにぶつかった。ふー……ついカッとなってしまった。反省はしてないがな
「ゆ、許しませんわ!わたくしに、わたくしにこんな事を……!アナタ分かってますの!?」
なんか突然わめき出したぞアイツ。あれだけ凄い経歴があるのにフタを開ければこの始末。男である俺に二連撃やられただけで、怒り狂う……なんとも惨めな奴だ
『男であるから女に手を出しては駄目か?
まあ俺はそんな事は関係なく、間違えた事をすれば男も女も関係無しで打ちのめす』
────もっとも、戦いの中では強いものが残るだけですが
……まあ実際その通りだな
「男は女性に手を挙げないんではなくて!?」
『残念。それは貴様ら馬鹿な女共のせいで、そんなものはとうの昔にお亡くなりになりました。まあその代わりとしてなんだが、今はそれに代わるように新たに違う物が生まれた』
澪はそう言って右マニュピュレーターの人差し指を、ビシッとセシリア・オルコットに向けて指さす。
「それは一体……」
『馬鹿な女を滅する。慈悲は無い……っていう奴だ。
貫け、
その言葉と同時に、右マニュピュレーターの人差し指先が小さな銃口となり、そこから赤黒い光線がセシリア・オルコットの頭部に向けて撃たれる。
それに対してセシリア・オルコットは突然の事で反応できず、頭部の高感度ハイパーセンサー展開機に直撃し爆散した。
「くうぅぅ!?ひ、卑怯ですわ!」
目の前のセシリア・オルコットがそう言うと、アリーナの観客席にいる奴らが「そうよ!」「男だったら正々堂々と戦いなさいよ!」「卑怯者!」「織斑君と違って、汚い!」……ふっ
『卑怯?汚い?そんな綺麗事は戦場やら真剣勝負の中では関係ない。そんな事をいつまでも気にしているようなら、お前ら本当の戦場に行ったら死ぬぞ』
まあ……あんな体験をするのは滅多にないがな。
「きいぃぃぃ〜〜!」
澪がそう言ってもアリーナの観客席にいる女子生徒達の罵倒は止まらない。そんな様子を見て、少しでは済ませられない怒りが澪の心の中に湧き上がる。その様子を見て、セシリア・オルコットは少しいい気分になる。腹いせばかりにへと、澪に対してある言葉を言い放った
「こんな事をするような男の家族は、さぞかし卑怯な方々なんですわ!
ええ、絶対にそu」
そこまでセシリア・オルコットが言った時だ
『黙れよ』
「「「「「!?」」」」」
地獄の底から聞こえてくるような低い声が、ぼそりとアリーナ全域に響き渡る。そしてその声を聞いた者は、己の頭に拳銃をつけられているようなビジョンを見た。それはこのアリーナだけではとどまらず、IS学園の校舎の方にも影響を及び出した。
ほんの一瞬、一秒だけリアルに再現されたそのビジョンが人々の目に焼き付く。それにより、つい先程まであった澪に対しての罵倒は止まった。
『何ボサっとしてんだ』
澪はそう言ってセシリア・オルコットを地面に叩き落とす。普段や先程までのセシリア・オルコットなら、この攻撃でも空中で体勢を立て直すことはできた。しかし、今は先程のビジョンによる恐怖で体が固まり動けなくなってしまっている。
言葉も出ない、体も動かない。それはたった一度のリアルに再現されたビジョンを見ただけで、体を思うように動かせなくなってしまった。
『なぜ動かない?なぜ怖がる?何故馬鹿にしない?お前達は俺達男を馬鹿にしたいのだろう?』
澪及びアンノウンから溢れ出る濃厚な殺意と怒り。それはこの女尊男卑の世界でのびのびと暮らし、男に対して甘い考えしか持っていない十代の少女達にとってあまりにも濃いだろう。
澪ことアンノウンはセシリア・オルコットを追うように、ゆっくりと地面に降り立つ。降り立つ際にガシャンっという音がアリーナに響いた。セシリア・オルコットはその姿を地面に横になりながら見ていた。
「あ、悪魔……」
────主。最適化と一次移行の準備が完了しました。
そうか。なら今すぐ行え
────了解。最適化と一次移行を開始します。
澪がノーネームに最適化と一次移行を開始させる。すると、赤黒い光がアンノウンから放たれる。その直後、アンノウンを中心に光の柱が空に向けて立ち昇る。その色も赤黒い禍禍しい光であった。
この光景に管制室にいた教師、ピットに居た織斑一夏や篠ノ之箒、アリーナの観客席にいる女子生徒達は何も言葉も動く事ができない。そんな時、光の柱が突然消える。
光の中心にいたアンノウンは?この場の全員がそう思ったが、光の柱の後には煙が蔓延して見えない……が
『全システム完全移行』
『機体コンディション、オールグリーン』
突如、煙の中から何重にも重なった男女の声が聞こえてくる。セシリア・オルコットは、その光景を見ながらスターライトmkⅢを杖代わりに使い何とか立ち上がる。セシリア・オルコットは今だに蔓延する煙の奥から聞こえる重なった声に、何か見知らぬ恐怖を心に抱く。
そんな時、煙の中から真紅の光が見えた。セシリア・オルコットはその光の形を見て、澪が駆るアンノウンだと知る。その光景を見て、セシリア・オルコットはステーライトmkIIIを煙の中にいる澪に向けて撃つ。更にこれまで使ってこなかった遠隔脳波操作無線兵器『ブルーティアーズ』を起動させた時だ
『システム『A.I.S.S』起動』
それの声と共に煙が吹き飛ばされる。
まだ若干の煙が脚部に残っているが、その姿が今露になる。特徴的な全身装甲は先程からまた姿・形を変え色も黒一色から、赤・黒・白・橙のカラーリングになった……しかし、それでも黒の比率の方が高い。それに付け加え、頭部に真紅の一本角が、非固定浮遊部位の中型スラスターは大型スラスターに変化した。
『真名
人工ボイスが途中から澪の声に切り替わる。そして澪こと名前無き破壊者は右手に、武器を展開する。それは一見銃口が無いキャノンにも見え、セシリア・オルコットも勿論のことアリーナの人々は困惑する。そんな中、その銃口?から突如真紅の血に似た光が走る。
(構えなさいブルーティアーズ!)
セシリア・オルコットはそれを見た瞬間にブルーティアーズに射撃させる為、ブルーティアーズに構えの体勢をとらせようとする。距離はたった50m……この距離ならば外さないと、セシリア・オルコットは頭の中でそう考える。
しかし、現実は甘くは無い
『突撃せよ。
その言葉の後、突如として真紅の牙らしき物が10機程出現。その後すぐ澪の命令通りに、反逆する血の牙達は目の前の蒼い機体に突撃する。
「くっ……ブルーティアーズと同じ兵器ですって!?」
『お前達に全てを奪われた俺の怒りを……その身を持って知れ!』
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「な、何なんだあれは……」
私こと山田真耶は、現在第一アリーナ管制室で今行われている榊君とオルコットさんとの試合の様子を見ています。
ほんの少し前、榊君の専用機……なのでしょうか?どうやらその専用機が一次移行したらしく、姿を変えています。
『お前達に全てを奪われた俺の怒りを……その身を持って知れ!』
榊君……私は貴方を初めて見た時から何処か悲しく見えていました。それは今日の先程まで気のせいかと思っていました……けど、それが今の試合を見て確信に変わりました。
「榊君……貴方は過去に何があったというのですか?」
私はどうしてここまで貴方が悲しく見えるのか、どうしてそこまで助けを求めてるようにも見えるのか……って!?
「これやばいのではないでしょうか……?」
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削る
「きゃあ!?」
切り裂く
「あああ!?」
また切り裂く。
『……!』
削る
「うあ……」
『フン!』
思い切り蹴り上げてからの、すぐさま踵落とし
「ぐぇああ……」
その光景は正に一方的だった。試合開始最初の時点では、蒼く光り輝く装甲で、思わず見とれてしまうほど美しいセシリア・オルコットが駆るブルーティアーズ。そんなブルーティアーズも、今や澪が操る名前無き破壊者によって美しい蒼はほぼ色が禿げ、装甲も内部のケーブルが見えてしまうほどボロボロになっていた。更に、この時既にセシリア・オルコットが駆るブルーティアーズの遠隔脳波無線操縦兵装『ブルーティアーズ』も、今では全て破壊されてただの鉄屑となり沈黙している。
どういう事かは不明だが、今ではシールドバリアーや絶対防御越しにセシリア・オルコットに対して名前無き破壊者の攻撃が届いている。
もう……既に結果は見えた。澪はそう思い、その場でローリングキックを行ってセシリア・オルコットを十数m吹き飛ばす。澪はその光景を見た後、雲一つない蒼天の空を眺める
『(お前達はいつもそうだった)』
『(俺達が、俺たちの町の人たちが、男も女も関係無く暮らしているだけで馬鹿にしてきた)』
『(何故だ?)』
────それはいけない事だから
────男は女より下の存在
────それなのに対等に接しているから
『(奴等はそう言った。少し前まで普通だった事なのに)』
────だからそんな男達と平気で接する異分子を消し去る
「貴方のような『物』は消えて無くなりなさい!」
『オルコットさん!それは競技仕様のルール違反ですよ!?
榊君もすぐに逃げて下さい!』
突然だった。さっきまで何もしてこなかったセシリア・オルコットが、突然スターライトmkIIIを撃つ。しかも、よりによって競技用設定解除した状態の、本来の兵器としての威力でだ……それでも澪はその場から一歩も動かない
『……』
目の前に迫り来る先程とは段違いの光の本流。澪はその光景を見て、既に結果は見えている事が分かった。それは決して己のが負ける結果では無い。
『
「あっ……」
突如として現れた真紅の光の膜。それが迫り来る光の本流とぶつかり、光の本流を吸収する。その光景を見てセシリア・オルコットは一言呟く
────主。もうそろそろ終わりにさせるのが得策かと思われます
そうだな。もうこれ以上やっても無駄だ。終わらせる
『真紅の光璧を展開。更に胸部装甲中央部、プロテクト解除』
────外界新エネルギー、内部エネルギーに転換
────このままの威力ではアリーナが吹き飛びます
『なら本来の十分の一の威力に下げろ』
────威力を本来の十分の一まで減少
────荷電粒子圧縮完了
────準備完了
名前無き破壊者の胸部装甲中央部が左右に展開される。展開されると、中央部からは一つの砲身が見え、その砲身からは赤黒い光とプラズマ光が光り輝いて見える
セシリア・オルコットは先程の最後の一撃を、競技ルール違反の攻撃でも澪を倒せなかった事に放心状態になり、その場から離れるという事を考えられない
『開放』
赤黒い光とプラズマ光がセシリア・オルコットの両目に、一際強く光り輝いて見えた時には全てが終わった。最後に聞いた音は、雷にも似た激しい音だった
次回予告
セシリア・オルコットを撃破した澪
次の対戦相手は織斑一夏
織斑一夏は澪に対して怒りの形相を出す
そんな織斑一夏に対して、澪がやる事はただ一つ
徹底的に破壊する
次回=破壊者(前編)=
作者)長ぇ……