一般人15歳で〝ちょっと〟変わった彼のIS生活(完結) 作:A.K
我らは貴方に扱われるのが一番の喜び
我らは貴方の力になる
我らISと人間である貴方
我らと交わる時、貴方は全てを知る
貴方が、世界を────────────
────我らが主、手を……
そう俺の頭に若干甲高い金属音が混じった、何重にも重なった声が響く。先程までは頭を抱える程痛かったあの甲高い金属音が、ISのコア人格達の声だと思うともう不快に思うことは無い。だけど、俺の人生がまたISによって変えられてしまうことに、苛立ちを覚えるな……
俺はそう思いながら目の前の禁忌と呼ばれるISに手を置く。うん?さっきからあの低脳屑教師五月蝿え
────私達にお任せを
えっ?……って、何やら黒い粒子が壁となって低脳屑教師を通さないようにしている。まあいい。今は早くお前達との契約を結ぼう
────本当に宜しいので?
ああ。
────それがたとえ人を辞めたとしてもですか?
それも承知の上だ。つーか、多分この先それをしなければ生けてはいけない。
────それでこそ我らが主
ならば唱えよう。俺とお前達の契約の印を……
『
そう唱えると俺を目の前の禁忌が、漆黒の光を部屋全体に発する。部屋全体に発せられる光を目の前で見ても、不思議と眩しくともなんともない。何故だ?
そう考えていた時だ。澪の目の前に居た禁忌の体が黒い粒子となり、その体を崩していく。そして黒い粒子となった禁忌は、澪の体にへと入っていった。それに戸惑う澪。しかし、そんな戸惑う澪をまた嘲笑うかのように今度は澪の体全体が黒い粒子化した
(何だ?俺の体に何が入って来る……)
そう考えていた直後、突如黒い粒子となった澪が先ほどと同じ漆黒の光を放つ。澪は自分自身から放たれる光に驚く。その直後、一瞬だけ澪の意識がブラックアウトする。そして再び意識が覚めると……
『な、何だこれ?』
澪の視界には先程まであった人の手ではなく、機械の手が見える。本当に自分の手なのか思い、試しに握ってみた。握るとギュイという音と共に、指の関節が動く。
……やはり自分の手だ。俺の意思通りに動く。なんのズレも無い。試しに自分の腕だと思われるところを殴ってみるか
澪は試しに己の右腕と思われる部分に、左手?で殴る。殴ると金属同士の衝突する重たい音が鳴り響く。
『(……殴っている感覚はあるのに、痛くない)』
何故だ?俺がそう思った時、主……っと頭の中で声が響きわたる。つーか、今俺って頭あるのか?
────主は私達の契約によって完全融合を果たし、主はISと人間の融合体になりました。今現在の主の体は粒子体として存在しています
『(ふむ。なら今の俺はISであるお前達と、粒子体となって融合している。それ故に、お前達の体であるIS本体から送られてくる情報が粒子体となって存在する俺に送られて認識しているのか)』
────その通りです
『(成程、なら現在の状態が理解できる)』
────主は今の状態に驚かないのですか?
『(驚くことは無い。つーか、お前達が言っただろう?それを踏まえてだ。俺は後悔はしていない)』
本当にその通りで、嘘偽りは無い。不思議と自分が人間を辞めたことに、何処か喜んでいる俺がいるのが現状だ。
────主
『(何だ?)』
────足元に……
俺はそう言われて、足元を見る。そこには山田先生が、俺を見上げるように見ていた。表示されている機体データを確認した所、現在俺の身長(機体全長)は3.5m程で山田先生が凄く小さく見える。あら可愛い
「榊君……ですよね?」
どうやらまだ禁忌を纏うのが俺である事を信じれていないのか、俺(禁忌)に質問してくる。まあ纏うというよりは融合しているのが正解だが。とりあえず一回解除したいのだが
────解き方は、主が『解除』と念じれば解除されます
俺は禁忌からアドバイスを貰うと、頭の中で『解除』と念じる。すると、機械の体が黒い粒子となり霧散する。そして、人間としての体に戻る。視界の端には
「榊君!」
「や、山田先生?」
一体なんだ?突然抱きついてきて……一体どうしたんだ?
澪はそう頭の中で考えていると、自分に抱きついてきている山田先生がよく見れば泣いている事に気付く。何故だ?澪は頭の中で考え始めたその時だった
「私すごい心配したんです。榊君が禁忌のISを纏って、凄い心配で……心配で!」
山田先生……貴女、俺のことを心配してくれたのか?なんていい人なんだこの人。何で担任がこの人じゃなかったんだろうか……
「俺のことを心配して……?」
「突然です!私の大切な生徒の一人なんですよ!?大切じゃない生徒なんていません!」
俺は山田先生のその言葉を聞いて、「あ、ありがとうございます」と言う。本当はもっと感謝の言葉言いたいが、今はどういう訳か言葉が出ない。
今の女尊男卑の時代、そんな時代にここまで優しくいい先生はいない。だからこそ山田先生の言葉を聞いて、思わず目がジーンとした。それよりもだ……
「山田先生。一度離れてくれませんか?さ、先程から……当たってます」
「え?何がですか?」
う……、これは言わないと駄目か?ええい!は、恥ずかしいが言うぞ!
「えっと、その、む、胸が……」
俺がそう言うと、山田先生はその言葉を理解して顔を赤くして俺からもの凄い勢いで離れる。二秒ぐらいで7mぐらいは離れたのではないかと思う。
「一体どうしたんだこれは……」
どうやら禁忌のISの拘束が解けて、いつの間にかこちらの様子を見ていた低脳屑教師がそう言っていた。嫌だけど、俺もそう思う。
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あの後一度アリーナ内の緊急医務室で、身体検査を行い、体に異常がないか山田先生のもと調査した。検査結果は特に悪い所はなく、山田先生曰く俺の体は健康そのものらしい。
俺がアリーナ内の緊急医務室での検査を終えた後、低脳屑教師が来て俺の体調の事を聞いてきた。俺は別に問題は無いと言うと「だったらさっさとBピットに行け。貴様で後がつっかえている」っと、低脳屑教師に言われた。
内心イラッときたが、今はこれ以上低脳屑教師に関わると色々とめんどくさいから不本意ながらも大人しく指示に従う。
そんな訳で、今俺はBピットカタパルトに居る。既にアリーナ上空には、イギリス代表候補生であるセシリア・オルコットが纏う『ブルー・ティアーズ』が佇んでいる。
「……なあ」
────なんでしょうか主
「いい加減お前の名前を教えてくれないか?何時までも『お前』呼ばわりはめんどくさい」
────主に『お前』呼ばわりされるのは別にいいですが、主が困っているので名乗りましょう。
「では聞くが、お前の『名前』を教えてくれ」
────了解です主。今主に話し掛けいる私の名前は『
「そうか、ならノーネーム。人間体から先ほどの機械体になるには、どうすればいい?」
────大まかに言いますと、主がロボットになるイメージを持てば自然に人間体から機械体になります
ふむ?そうなのか……なら、ノーネームの言う通りロボットになるイメージでやってみるか。
澪はノーネームに言われたやり方を早速試す。すると、澪の体が黒い粒子となって霧散し、漆黒の光を放つ。光が止んだ後、そこには先程と同じ黒い禁忌のISが、中型の非固定浮遊部位を浮かせ立っている。その頭部のバイザーが赤く光り輝く。
『おお……』
────主。コチラが現在の機体データです。
澪がノーネームの言う通りのやり方でやって、見事機械体であるISになれたことに衝撃を受ける。そして、澪はノーネームから送られてきたデータを見た。
機体名:
世代 :無世代多進化型
状態 :最適化及び一次移行が行われておりません
SE量 :860
近接武装
・中型近接ブレード
射撃兵装
・一極点集中小型指砲『
『なんか射撃兵装が心許ないが……。それよりもアンノウンって正式名じゃないのか?無世代多進化型って何だ?』
────すみません主。今の最適化と一次移行が終わっていない状態では、これが精一杯です。今私達が頑張って早く終わらせるようにしております
おい。名前と世代については無視か……。まあそれについては後で追求することにしよう
『そうか……なら早めに頼むぞノーネーム』
────了解しました
さて、何時までもセシリア・オルコットを待たせるわけにはいかない。もう奴の表情は怒りに満ちている。
どうせ奴の性格上『このセシリア・オルコットをいつまでも待たせるとは、一体どういうことですの!?』と行ったら言われそうな気がする
澪はそう考えながらカタパルトに電磁式IS発射装置に足部を載せる。暫らくすると発射完了の合図が流れ『発射タイミングをパイロットに譲渡します』と合成ボイスが流れる
『榊澪、アンノウン……出るぞ!』
その存在自体が最高機密である黒き禁忌が今、女尊男卑の腐った世界に解き放たれる。
まずは目の前の腐った存在を破壊しよう……アンノウンの赤いバイザーが、そう言うかの如く一瞬だけ一際強く光り輝いた
次回予告
ついに蒼空に舞った黒き禁忌
「お前達みたいな奴らがいるから……!」
まずは目の前の蒼い装甲を纏う腐った存在を破壊しよう
怒りにと共に真の姿を現す黒き禁忌
その身を怒りに任せ、禁忌は敵を斬り刻む
次回=刻むは怒り、真の名は名前無き破壊者=