一般人15歳で〝ちょっと〟変わった彼のIS生活(完結)   作:A.K

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お ま た せ (待ってない)


地獄は開かれる。
閉じられた厄災は吹き荒れる。

ああ!!
あの姿を見よ!!

我らが供物
我らの世界の為にある供物。

我等が宿願の為
その身を捧げよ。


EX02︙獄の扉

 天に昇る光を見た。俺、織斑一夏はその光となるかつての学友と世界を混沌に陥れた敵を目に焼き付ける。

 強くなった。決意を胸に抱いたあの日より、それでも尚その男の背は地平線の彼方にあった。

 

 その日、本当の意味で戦争は終わった。

 世界で最も下らない理由で起きた戦争は、元凶の死亡によって完全に終わりを迎えた。

 

 まだ戦闘による異常気象が続いてるが、動くだけなら可能になった我が身を酷使してこの場から成層圏ギリギリまで飛び上がり、ステルスモード移行し一回だけ瞬時加速してから人間態になる。こうすればIS反応をほぼ無にしながら移動出来るから為重宝してる。だが傍から見ればただの身投げだ。

 

 位置からして大体四国辺りの海に落下し、近くの海岸まで泳いで移動してから今後について考える。

 俺は亡国に所属することが一番なのだが、現状一定以上のヘイトが俺に向かっている。そのため所属するとしたら亡国に迷惑をかけることは確かだ。そうなるのは俺の意思に反する、だから俺は一人で勝手に動いてる方が都合がいい。なので暫くは一人で世界を渡る事にする。

 だが鈴には一言連絡を入れておくか・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれから半年が経った。世界各地を転々と移動し千冬姉が作り出した世界の歪みの断絶、ISによって起きた紛争に対しての武力介入を行いながら過ごして来た。

 未所属勢力ということにより世界から名前の一部をとって『サマー』として畏怖された。そんなある日恐ろしい事が分かった。 霧崎がかつて澪の中に侵入した時に使った特殊弾、IS委員会の残党がその特殊弾…今では『電入依弾』として呼称される弾を製造しようとしてることがわかった。

 

 

 

 

 電入衣弾。かつてどんな術を用いたのかは不明だが、霧崎自身を電子情報体とし、電子生命体となりそれを含んだ特殊弾である。 効果はISに撃ち込む事により、文字通りISを内部から意志を持って攻めて破壊尽くし、もしくは乗っ取りISを意のままに操ることが出来る。現在ではその製造方法と効果につき条約禁止兵器に指定される。

 

 

 これが何処の誰に向けて撃たれるのかは不明だが考えられるのは亡国関連のIS、特に現最高戦力IS郡のどれかに撃ち込まれたら甚大な被害が出るのは確定だ。 あそこには大切な者が、今は会えないが愛しい者が居る。だからそれを防ぐために動く。

 

 

『おらァァ!!』

 

 

 追加装備である『High mobility accelerator』、通称『H.M.A.』を装備し、残党勢力が潜伏するドイツ郊外山林地帯に隠れるように建設されている建物に襲撃をかけた。 装備を脱着させ、乗り手の無いH.M.A.を建物に自爆特攻させる。マッハ5を超える超音速で迫った一夏に対応出来ず、施設に直撃し盛大に爆発を起こした。

 しかし、施設は健在である。普通なら大抵の建築物なら吹き飛ばす爆発でも無傷、恐らくSB発生装置でも有るのだろう。だが一夏には関係ない。擬似無限機関を稼動させ続け、本気になればリミッター解除済みのパワー型IS10数機分以上のパワー……その1片程の力と磨いた技術による手部での刺突でバリアーは簡単に破れ、その負荷により発生装置も爆散。

 

 

『いくぞ』

 

 

 そこから先は蹂躙だ。かつての愚行に真っ直ぐに突っ込むような、猪武者の様な戦闘スタイルはしない。圧倒的強者としての、放つ攻撃全てが必殺の力で確実に攻撃を与え撃破する。

 防御壁だろうがバリアーだろうと、ISや強化スーツ部隊やEOSを出そうが一撃の名のもとに全てを破壊した。かつての甘く人を殺す事に躊躇した頃にはない、中身も含めた全てを破壊する一撃を放つ。

 

 

 

『……被検体は全員死亡済みか。

 委員会や女権団のシンパもここまで来ればもはや怨霊だな。』

 

 

 施設には実験に使用される被検体達が数多く居ると入手したデータから判明していたが、被検体達が居る場所に到達した時には腐食した肉塊となっていた。せめての供養として1箇所に集めた後に火葬し、被害者達が味わった無念を奴らに返すことを決意する。

 その後施設を蹂躙尽くし、最後に確認した施設側の生存者も瀕死にまで追い込んだ時にそれは起きた。突然何かが体にぶつかった。

 

 

『っ!?が、ぐがががが!?!??!』

 

 

 例の禁忌弾も破壊尽くした。素材に使われていたもう助かる見込みが無い実験体も介錯した。生存者は今致命傷を与えた敵対者のみ。故に油断した。

 

 ソレは一発当てれば良いだけなのだから。

 

 一夏は最後の生存者が向ける腕、よく見ると腕自体が改造された銃であると理解する。撃たれたのだ。禁忌の弾丸を。

 

 

『ぐっ、ぎぃぃ……!!』

 

 

 凄まじい痛みと灼熱地獄の様な滾るエネルギーが体の底から放たれ、可視化出来るほどの濃密なエネルギーの嵐が吹き荒れる。

 

 

『機体浸食67%』

『行動不能』

『ERRORERRORERRORERRORERRORERROR』

 

『ぐあ゛あ゛あ゛あ゛ぁ!!??』

 

『汚染部分排除・・・・・不可能』

『ERRORERRORERRORERRORERRORERROR』

『機体浸食80%』

 

 

 体が飛び散る様な感覚の中、一夏はどうにかここから離れようとしてスラスターを吹かす……しかし、施設そのものを吹き飛ばしてしまう。完全に暴走し、抑えることが出来ない。視界に移るセンサーには放たれるエネルギーを捉えたISやEOSの反応がある。

 ここはドイツ。ならば元IS学園の黒うさぎが居るのを頭の片隅に浮かべ、これから起こるだろう事に恐怖した。どうかここに来ないでくれと──────────

 

 

 

 

 

 謎のIS反応を捉えたと連絡を受け、亡国ドイツ支部黒うさぎIS部隊隊長のラウラは、EOS部隊も率いてその場所に向かっている。

 

 

『隊長これは……』

 

 

 吹き荒れるエネルギーの奔流が森林を焼き尽くし、大地をも削り破壊尽くす。破壊の波が地表を地獄へと変えていく。

 

 

(このエネルギー……澪?でも、アイツは既に死んでいる。だとしたら、いや……まさか?)

 

 

 IS反応……データ照合該当有り

 その表示にギョッとし、恐れていた事が起きたと理解する。

 

 

『隊長ォ!!』

 

 

 隊員の叫びで現実に戻り飛来する紫の禍々しく光る炎を目視し、それに対し本能的警鐘がラウラの中で響く。

 

 

『全機、あの不可思議な炎に触れるな!

 『OG』と同等の驚異物体だ!触れるとどうなるか分からん!』

 

 

 かつて存在した破壊者、その攻撃と溢れ出す物質はこの世の理に反する現象を引き起こしてきた。最終的に宇宙の次元すら歪ませ修復されることなく、現在も巨大な穴が空いている。

 束は澪が決戦で放ったビームが、重力作用を生み出し、それによる引き寄せがあったと出している。放出され移動しているビームが周辺空間を巻き込むほどの引力を持つなど理に反している。

 これにより、破壊者と同ランクの驚異的攻撃や現象の事を根源たる脅威【ORIGIN】・・・・・通称【OG】と設定したのである。 そして、OGと認定した時コアネットワークを通して束に情報が伝達され直ぐに亡国に連絡され応援要請が出される。

 

 

『ごおっ!?』

『重力が!?』

『支部より各部隊へ、その地域全域に重力変動確認!EOS部隊に支障あり、一部ISにも計器に異状が確認されています!すぐ様撤退を!』

『これが時結晶の本質か!?』

 

 

 束により伝えられた時結晶についてラウラは思い出す。時結晶はISコアに使われ、ISコアの主原料である。同時にこの地球にて存在する唯一の次元物質であり、無限エネルギー存在である。

 時結晶は名前の通り、時が詰められている。そう、時間という唯一無二の絶対的エネルギーが……理の始まりから存在する時間が次元の捻りにより天文的数値の奇跡的な確率で凝縮され物質的形になったのが『特級宇宙物質︙時結晶』である。現在束がこの地球で唯一時結晶を取れる国と取引してそれら全て採掘し終わり、ソレは束が全て宇宙にて保管している。

 

 

 

『近付くだけでこれとは!?

 ISはまだしも、これではEOSや他の部隊は……!』

 

 

 時結晶はISコアを通してISそのものに干渉し、時にパイロットにも干渉する。干渉した際特定条件を満たした場合に限り、時結晶を経由しISコアにいるISコア人格がパイロットに合う、もしくは機体にあった超常現象を発現する。それが『単一仕様能力』の正体である。

 

 原理がほぼ全て解明され、それをを知ったからこそ、ISコアの数量制限や白騎士と破壊者以降の開発機体の性能をわざと低くしている。 理を超えるという事は不可思議な事であり興味深いが、それにより下手をすれば理たるこの世そのものが破綻し崩壊するからだ。宇宙に空いた大穴が現実味を高めたのだ。

 故に第2世代型ISコアは初期型ISコアと比べてもかなり特殊な工程を得て、初期型ISコアと同じ性能でありながらも単一仕様能力発現を破棄した。

 

 

『見えた……っ、やはり貴様か織斑一夏!』

 

 

 織斑一夏。最初の男性IS操縦者にして専用機にして異常形態ISである『夏の思い出』を所持する者だ。そして、そのISに使われているISコアは始まりの2機の片割れ……100%の性能を発揮できる初期型より前から存在するオリジナルISコア。限界なんて知らない無限の可能性を秘める。

 

 

『フォーメーション【DBD】展開!』

 

 

 ラウラの叫びと同時に戦後に開発されたレーゲンの再設計モデルのRシュヴァルツェア・レーゲンを駆る隊員達が、ラウラが駆るシュヴァルツェア・レーゲンにAICを掛け、完全にその場に固定する。

 

 

『EOSや他の部隊は対ショック体勢!』

『注入開始!』

『エネルギータンクよりエネルギー注入……完了!』

 

 ラウラはそれ聞き、ソレを展開する。

 

 

 

 

 それは巨大だった。

 

 ISを超える20数mは有ろう大きな荷電粒子砲。

 

 禁忌の領域を目指し

 現れし禁忌を討つ為の究極の一撃

 

 

『Gottes Schlag 立ち上げ完了……行けます!』

 

 

 ドイツ語で『神の一撃』と呼ばれる、対OG級IS武装である。発射担当機体へのAICによる固定担当が2機、『神の一撃』を行う発射担当が1機、機体エネルギー注入役を持つ大型外部接続Eタンク持ちが5機。

 合計8機のISという大戦前では条約違反する数のISを集めた、超弩級戦略クラスの一撃が今放たれる。

 

 

『発射!』

 

 

 AIC技術も使用したソレは大気を震わせ、空間すら歪ませる異次元の破壊力を持って一夏に突き進みすぐ様その身を呑み込んだ。

 エネルギーは確実に削れていた。

 

 

『反応消えてません!!』

 

 

 その時、紫の煌めきがラウラの目に映った。

 

 

『攻撃中s』

 

 

 ラウラはふと思った。何故自分は地に伏し空を見上げているのか?と。

 そこで己が地面に落下したのだと気付き、遅れてやって来た痛みと攻撃と武装を破壊された衝撃がラウラを襲う。

 

 

「かっ──────ッ!?」

 

 

 呼吸が出来ない程の痛み。なんとか視線を回し、センサーで状況を確認した。自機含むこの場のIS及びEOS全機大破。そして·····

 

 

「はぁ、はぁ·····ぐっ、うっ!

 なんなんだ、何があったのだ貴様は!!??」

 

 

 夏の炎天下の熱波の様な灼熱。

 それをもっと激しくした、まさに炎獄の如き光景がラウラの視界を埋めつくしていた。

 そう、ラウラ達は熱波だけで倒された。そして、センサーが捉える5キロ圏内は灼熱の業火に包まれた。核とは別次元の超兵器を使用したというのに、直撃したというのに倒せなかった。

 

 

『・・・・・』

 

 

 こちらをジッと見つめる『魔王』。

 そこに学園で、最終決戦で見た男の気配は無い。

 ラウラは天高く飛び去る魔王を見て意識が遠のき、目の前が真っ黒になった。

 

 

 この日、亡国ドイツ支部最高戦力『黒ウサギ隊』は勿論、EOSで編成される世界屈指のエリート部隊たる『黒風部隊』の出撃した合計30機全てが大破。 織斑一夏が放つたった一度の熱波で全機落とされ、切り札たる『神の一撃』さえも夏を落とすことが出来なかった。織斑一夏は本当の意味で『魔王』として君臨したのだ。

 

 戦闘ログから亡国は織斑一夏を暴走状態と判断。

 暴走する災厄と化した織斑一夏に対し、国連から亡国のIS部隊に一つの作戦が発令された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『これは国連、否……文字通り世界から我々亡国IS部隊全部に対しての指令だ。

 

 現時刻をもって織斑一夏及び異常形態IS『夏の思い出』を捕獲、できない場合は破壊を最終目標とする……

 

 作戦名【サマーブレイク】を開始するッ!』




次回予告


世界は私たちの愛を許さない。
それでも私は貴方を愛してる。


「世界を守る為にやらなければならないのよ。」


世界は貴方を許すのか?


「罪を払う為に」


貴方と私は踊る。
それは悲しき血の輪廻
それは残酷な現実。


次回=夏の魔王【天】=


「失せろ、亡霊!!!!!!!」
「一夏ァァァ!!!!!!!」

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