一般人15歳で〝ちょっと〟変わった彼のIS生活(完結)   作:A.K

43 / 63
────索敵範囲内に敵対IS反応探知

────マスター、対処方法を求む

「私をマスターでは無く主と言えと何度も言ってます。」

────求む

「......視界内に、支部の100m範囲内までは攻撃禁止。
 一定のダメージを追うまでは戦闘続行。それまでに例の『弾丸』を撃ち込んで......頼むわ。」

────任務開始


単独行動

 世界がその歪みに気付いたあの日。

 

 文字通り世界は火に包まれた。

 物理的に、心象的に。怒りという名の、戦火の火は確実に世界を覆い尽くしていた。数でならこちら側......亡国企業の方が多いが、IS委員会と女権団は『量産型ISコア』の正式生産に成功。発表と共に量産型ISコア搭載機をこれでもかという程に投入し、奴らに反逆する人々を文字通り血祭りに上げた。

 

 数日前、件の傭兵団『鬼兵軍』が亡国企業に密かに合流。常軌を脱した身体能力を持つ集団が仲間となり、これでIS・EOS・歩兵隊の軍事力は上昇。亡国企業合流後、鬼兵隊は『オーガ部隊』と命名され亡国企業に入った新人達の生身での訓練やEOSを使用した訓練を実施。さらに生身でIS相手に戦闘を幾度も無く行っていた為に、生身での対IS戦闘訓練も行っている。

 その様子を艦長室にあるモニターから見ていたアルベルト、そして元IS学園学園長であった轡木十蔵。

 

 

「戦力の方は確実に上がってきてますね。」

「うむ。これからは突出した戦力だけでは敵勢力を叩くのは難しくなる。それ故に全体の戦力を今の内に上げておいて、来るべき決戦に備えなければな。」

「それまではこうして特記戦力を各地に派遣し、敵勢力を叩くと?」

「皆には悪いが、その時までそうさせてもらう。」

 

 

 そう話してる時、艦長室にある艦内電話からコールがなる。アルベルトはそれに出る。

 

 

「『B』からか......作戦領域で一般市民が巻き込まれていて、救出部隊を要請している?

 それと『ドール』を確認しただと!?」

 

────────────────────────

 

 

 

 

 

「......」

 

 

 現在、午前4時頃。ロシア領のとある地域において澪はIS反応を隠す特殊ローブを纏い、IS委員会の支部に単独突入していた。普通なら大き過ぎる己のIS反応をほぼ完全に隠すことが出来るのは凄まじい技術力だ。

 

 

「......駄目か」

 

 

 澪はIS委員会支部に有る亡国企業に属さない民間のレジスタンス組織がいると聞き接触を試みのたのだが、組織があるという場所についた時にはそこはレジスタンスメンバーだと思われる人々の無残な遺体と破壊されたEOSと旧世代兵器の残骸が有るだけだった。

 

 

「刀奈......無事で居てくれ。」

 

 

 そもそも何故この単独突入を行っているのか?それはあの亡国企業公開の日から数週間後、更識楯無が幽閉されていると言う情報が入ってきたのだ。俺が織斑千冬との激戦を繰り広げたIS学園に行ったその日、刀奈は丁度ロシアに居た。どのような方法かは不明だが、何かしらの手段で無力化され現在向かっているIS委員会支部に幽閉されたと言うのだ。

 どうやら武装を見る限り対IS装備ではなく、通常兵器のみでの部隊のようだ。組織の建物内に入ってあちこち調べたが中も無残に破壊されており、金目の物はどうやら持ち逃げされた様だ。さらに通信機器も銃撃により破壊されており、銃撃痕から恐らくIS専用の銃火器によるものだろう。

 

 

「生体反応......見つけた。」

 

 

 周辺の生体反応を探す特殊スキャンを起動させた所、生命反応がこの建物の地下から示されていた。一応中を見てきたが何回かブービートラップによる爆発を受けたが、建物の探索は終わった。どうやら重要な部分は荒らされており、もはや電気設備は使用不可。食料庫があったが燃やされた跡があった。......残るはこの地下だ。

 

 

「ここか」

 

 

 建物の廃品置き場と思われる場所の片隅、その地面のコンクリートブロックが数個微妙に変な置き方になっていた。そのブロックをどかすと隠し扉が出現、澪は扉を開け中へ入る。

 

 

「誰だ!?」

 

 

 中へ入り数分。2〜3人が並んで歩けるような暗い道を進むと、大きな空間がある部屋に入った。そこには一人の男と三人の女性......それと5人程の子供達が居たのだ。男は女性三人と子供達を庇う様に前へ出て、その手に持つAK74mをこちらに向ける。ここで自分がローブを纏っていることに気付いて、頭だけ露出させ自己紹介する。

 

 

「落ち着け。俺は敵じゃない」

 

 

 既に世界レベルで顔バレしてるので、顔を見せると男は驚いた様子で「本当に......?」と呟いていた。そりゃあそうだろ。

 

 

「お前、その顔は」

 

 

 驚くのは無理はない。もう俺の顔は半分程殲滅の部品がくっついてる状態でマトモな顔をして無い。目なんてもう人間としての目ではなく、眼球は機械が混じってISとしてのデュアルアイとしての役目でしかない。そのせいでか今や普通にセンサーとして動いている。ローブで隠しているが腕もISアーム化し、殲滅の同調率が上がるにつれて人間としての体は消えてきている。

 

 

「......むっ?」

 

 

 女性達の後ろ側に居る子供達がジッと俺を見つめてくる。その時、子供達からグーと腹の音が鳴り響く。それで気付いた。全員やつれてる事に、食べ物をろくに食べてないことに気づいた。

 

 

「かたじけない......この恩は何かしらの形で返す」

 

 

 そう言うのはアルトゥールと名乗る屈強な男だ。どうやらここのレジスタンス組織のNo.2的存在であることが分かり、現在拡張領域に閉まってあったレーションやら食える物を澪はアルトゥール達にあげていた。

 しかし、これは一体何があったのか......そう思う。

 

 

「別に俺に恩など返さなくていい。

 それより、ここまで無惨に破壊尽くされているが何があった?」

 

 

 俺がそう言うとアルトゥールはこの惨状について話し始めた。

 

 

「俺達レジスタンス組織はこの周辺地域でIS委員会支部と戦闘を行っていた。言わばここは最前線基地の様なものだ。戦場はIS委員会支部のすぐ近くで行っていて、この辺での戦闘は今まで無かった。

 それが突然四日前、突然複数のISと巨大なロボットがこの基地を強襲した。亡国企業みたいに対IS戦闘訓練を受けた訳でもなく、対IS用装備がある訳じゃない俺達レジスタンスは必死の抵抗をした。」

 

 

 アルトゥールはそう言ってため息をつく。

 

 

「そんな時に運悪くこの辺の非戦闘域まで遊びに来ていたのが今いる女らと子供達で、本当に運が悪いとしか無かった。この辺は夜空が綺麗なスポットとしてある程度知られてて、その関係できた人達の様だ。今話したようにここでの戦闘は一度も無く、今回の一件が初めての戦闘だ。だからここはただ支部基地があるぐらいで、観光のスポットとして有名な場所だからな。普通なら護衛の一人や二人連れてくるのだろうが、このご時世だから......そういうのも関係してるだろう。まあ、それで急いでここまで避難させたはいいが.....」

「潜んでいる間に上の階が荒らされて、使い物にならなくなっていたと?」

 

 

 廃品置き場のすぐ前に食料庫があったのだが、燃やされた跡があった。恐らく隠れて生き残っても餓死させるためなのだろう。

 

 

「その通りだ。そんな時にアンタが来た。」

「それでは、あの人達は一般市民という事か?」

「ああ。」

「......本当に運が悪いな。」

「これ以上ここにいても危険だから、なんとか安全な所に避難させたいのだが......」

「流石にこれ以上は不味いからな。ちょっと待て」

 

 

────主。亡国の救援隊を呼びますか?

 

 

 話してる最中ノーネームがそう言ってくる。俺はそれに対して頼むと一言言うと、了解ですと言った。

 

 

「それなら大丈夫だ。今、亡国の救援隊に連絡してここの座標データを送った。」

 

 ノーネーム。駆け付けるまでにどのくらいかかる?

 

────近場からおよそ1時間程です。

 

 了解。ありがとうノーネーム

 

 

「今から1時間程、ここで待機してほしい。そうすれば貴方達は全員助かる。」

 

 

 澪はそう言うとその場から立ち去ろうとして、アルトゥールは何処へ行く?と尋ねる。

 

 

「なに、ちょっと目の前の支部を壊滅させるだけだ。」

 

 

 一機全壊 たった一人で全てを壊し尽くす。澪に与えられた言葉がそれだ。

 

 

「殲滅隊......俺一人にして、俺だけの役目。敵を滅ぼし尽くす部隊としての役目を果たすだけさ。」

 

 

 

────────────────────────

 

「......っ、あれがあの男が言っていた『ロボット』か?

 人型────と言うよりは獣型と呼べるな。」

 

 

 あれから数刻。澪はIS委員会支部付近まで接近していた。そこから見えるのは十数メートルはあろうか巨大な機体で、四脚歩行型のロボットだ。澪はその体にある様々な武装を見てモンスターと呟いた。なにより、その巨体より大きい巨大な超電磁砲が背中から二つ接続されているのが恐ろしかった。アレを撃ち込まれればISだろうが直激すれば吹き飛ぶ。

 

 

────主、どうやら先程の方々の撤退は完了したようです。我々も動きm『そこか』......!

 

 

 閃光────そして俺を爆発が襲う。あまりの威力に空中に投げ出され、瞬間的に体の大部分が吹き飛んだのを理解する。瞬間的にIS体になりPICで体勢を整える。

 

 

「ぐっ!?

 ノーネーム、システムチェックを!」

 

 

 巨大なロボットが体の至る所から銃火器やレーザーを乱射する。どうやら対IS装備であるのか、普通の物より衝撃が凄まじい。

 

 

────機体全箇所問題無し

    全武装展開可能

 

 

「真紅の光壁最大稼働!」

 

 

 体が自由に動く。手を突き出し、真紅の光壁を最大で稼働させる。

 

 

────Anti.

     Infinite.

      Stratos.

       System.=A.I.S.S起動

    機体及び推進エネルギーMAXICIMAM

    主、行けます!

 

 

 体の底から力が溢れる。視界はよりクリアに、感覚は鋭く、目の前の敵を破壊する意志が固まる。

 何故バレた?そして、何故俺とノーネームの頭の中での会話に侵入出来た?

 そう澪は考えたが、支部からの量産型ISコア搭載機からの砲撃が来たので思考を切り替える。敵と会ったらただ一つ────破壊尽くす。




次回予告

それは一人の天才により作られた
究極の機械人形
それが従うはただ一人
卓上の兵器
今ここにその存在を知覚する

次回=オートマタ=

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。