一般人15歳で〝ちょっと〟変わった彼のIS生活(完結)   作:A.K

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次回は明日と言ったな。


あれは嘘だ

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湧き上がるこの気持ち

憤怒の炎を止めることは出来ぬ

一度湧き上がったこの炎

焼き尽くすまで止められぬ


天を翔ける流星

 電子の星で照らされるコアネットワーク。その中でも我々の母か、主しか知っていない『深層コアネットワーク』に私────名前無き破壊者は居た。深層コアネットワークの電子世界以上の超高密度演算とも呼べる世界。ここは現実世界とは数倍の時間が流れる特殊空間であり、入れるのは私を作った母か主だけだ。だからこそここの存在は公になっていない。

 そんな私の真横の空間には忙しく動くタイマー、そして正面には仰向けて倒れている我々が愛すべき主が居る。私を含めた周囲の地形は斬撃や爆撃によってボコボコに凹んでいた。

 

 

「主、あの......大丈夫ですか?」

 

「大ッ、大丈夫だ」

 

 

 今現在、現実世界では午前三時。通常パイロット達はまだ寝ている時間だ。しかし、澪はノーネームに頼んでここで稽古をつけてもらっていた。

 澪は殲滅になってからノーネームから行く事を許され、宇宙空間に居た期間ノーネームやその他の人格達からの稽古を受けていたのだ。

 

 

「ふぅ......。やはり強いな」

 

「最終手段で単独行動と戦闘技術がインプットされてますから」

 

「インプットだけのレベルじゃないぞ......これは」

 

 

 そんな時だ。澪の目の前の空間に『WARNING!』と表示されたワイプが表示された。

 ノーネームはそれを見て「主の意識を現実空間に戻します」と言うと、澪の姿が分解されこの場から消えた。主の意識データを少し見て緊急招集があったらしい。

 

 

「主の全体的能力の向上を確認。

機体の性能及びシステムのアップデートを開始」

 

 

 一定時期でノーネームが主である澪に合わせて、機体の性能調整を行う。その為、日々この『殲滅』は更なる進化を果たしている。止まることのない無限の可能性────それが無世代多進化型の由縁だ。

 

 

「おっす」

 

 

 そんなノーネームの背後に元『流星の破壊者』の人格である流星が現れ、それに対してノーネームは「なんですか?」と尋ねる。

 

 

「例の『決戦装備』は完成したのか」

 

 

 ノーネームは流星の言葉に絶句した。何故ならそれはまだ誰にも言えない、ノーネームが開発しているこの機体の全ての力を込めた殲滅専用装備だ。

 

 

「何故、貴方が知っているのです?」

 

「なーにそんなの簡単だ。この機体の拡張領域に『変な物』が構成されていたからな」

 

 

 ノーネームは流星が拡張領域の管理役だと言うことを思い出す。それに「そう言えばそうだった」と一人呟く。

 

 

「『殲滅』......ついこの間、機体になってから深層コアネットワークの立ち入り許可。更にはそこでオレ達による強化稽古。

 更にアレを作ってる時点で、お前が何をしようとしてるのかは分かってる。

『アレ』は、オレ達の総意をもって破壊しなければならない。」

 

 

 その言葉が、その場に静かに響いた。

 

 

 

────────────────────────

 

 意識が戻る。瞬時に周辺情報がノーネームから提供、意識と体の同調のズレを修正する。すると、個人間秘匿通信でナターシャから通信が入り、すぐさま通信を繋ぐ。

 

 

『澪、聞こえる!?』

 

『どうしたんですか?』

 

 

 ナターシャの声が慌ただしい。よほどの事なんだろう......なんだろうか

 

 

『貴方が通ってたIS学園から、緊急の救難信号を受け取ったのよ! それと同時にIS学園は女性主義者と女権団によってに占拠されたわ。

 詳しい内容は昨日教えた作戦室で、パイロット達は5分以内に集合する命令が出てるから急いで!』

 

 

 頭が鈍器で殴られたような衝撃に、その場でフラつきそうになるが堪えて『了解』と返事をして通信を切る。

 

 

 「諸君、緊急の依頼だ。

 依頼主はIS学園の学園長である轡木十蔵 、依頼の内容は轡木十蔵及びその妻、更に数十人の教員生徒達の救出である。本人からの連絡がこれだ」

 

 

 あれから数分、俺は五十人程の人が入れる作戦室にて艦長からの説明を受けている。アルベルトさんは作戦室にある超大型スクリーンを起動させ、映像を流す。映像には何かしらの装備を纏う轡木さんの姿が写っており、時折爆音が聞こえてくる。まず何で亡国の事を知っているのかが不思議だが

 

 

『妻と、生徒達の救助を依頼したい。現在、IS学園は学園内に居た女性主義者達と女権団のISと兵士達により攻撃を受け、占拠されてしまいました。IS学園にある特別施設にいた私と妻、それに非女尊男卑の職員と生徒を含む者達は緊急用地下シェルターに退避しています。

 我々も専用機持ちがいる為今は持ち堪えていますが、敵勢力の圧倒的数に押されています。』

 

 

 その時、一際大きい爆音が鳴り響いた。それに対して十蔵は「さて、私も行かなければ」と呟いた。

 

 

『私達が避難した地下シェルターが敵勢力に知られ、今現在専用機持ちと、一部の者達によって抵抗を続けています。シェルターの場所はこの通信データと共に送ってあ......(ドオッ!)』

 

 

 通信は今の爆音を最後に途切れた。

 

 

「位置情報については各機体に送信する。

作戦開始時間は0430より、各パイロットはそれまでに機体のチェックをし待機。解散ッ!」

 

 

 それと共に作戦室から出ていく人々の中、澪はナターシャに「ボンヤリしないで早くッ!」と言われながら引っ張られて退室していた。

 

 

 

 現在、俺はナターシャに引っ張られている。その光景に通り過ぎる隊員達から「ナターシャ、お前......それは駄目だろ」と何を勘違いしたのか分からん事を言われた。ナターシャは「そんなんじゃ無いわよ!」と怒り、それを言った隊員達は ヤベッ!? と言いながら何処かに去る。

 

 

「私と貴方には今回先行部隊としての役割が当てられたわ。艦長がブリーフィングの時に個人間秘匿通信でね、任務も追加で私達二人には発令されてるわ。

内容はIS学園地下格納庫の破壊よ。その地下格納庫には織斑千冬の機体『暮桜』が保管されて、これから先のことを考えると此処で潰した方が良いとの判断から。それと、この先あそこが敵勢力の基地となる可能性大だからとの事よ。」

 

 

 成程.....もう学園がアイツらの基地なる前に、ある程度は破壊しとけって話か。

 

 

「殺害許可は?」

 

「......出てる。けど、攻撃して来た人達だけよ?」

 

 

 ここでナターシャの表情が、悲痛に満ちていたことに気付く。それに対して俺はどうしたんですか?と訪ねた。

 

 

「今の貴方の顔、とても怖いわ。

私が今まで見てきた敵や戦いなんて物が馬鹿みたいに思えるぐらいにね。それぐらい、今の貴方......怖いわ。

一体どうしたの?」

 

 

 どうしたの......か。別にいつも通り向かって来るアイツらを根こそぎぶっ潰すだけという事を考えてるだけなんだがな

 

 

「いつも通り、俺を殺しに来る糞共をぶっ潰す......そんな事を考えてただけですよ」

 

 

 心の底から湧き上がる怒りというマグマを抱いて。

 

 

「そう......あっ、そう言えば貴方ちゃんとISステルスコーティング行った?」

 

 

 ISステルスコーティング。ISの反応を激減させる特殊な液体を機体にコーティングする事だ。澪の様に通常を遥かに超えたエネルギー反応を示す機体にはもってこいの物で、殲滅には全体の隅々までコーティングを施してその反応の大きさを3分の2以下まで下げた。これにISに搭載されているステルス機能を搭載する事で一般機と同じレベルまで反応を落とせる。

 

 

「塗ったから、塗ったから頭をワシャワシャするな!?」

 

 

 そうこうしていると、立入禁止と書かれたプレートがある部屋に二人は辿り着いた。澪は先日の案内では教わらなかった部屋である為、ナターシャに尋ねる。

 

 

「ここは先行隊専用の特殊リニアカタパルト。

 ISのPICと超電磁で、通常の倍以上の速力で戦域まで送る亡国でもこの艦にだけ設置されてある特別な物よ」

 

 

 そう言って中へと入ると、某勇者王のカタパルトを彷彿させる物がそこにはあった。その数は二つ。

 

 

「澪は右の、私は左を使うわ。

カタパルトは一般的IS用のカタパルトと一緒、勿論機体は纏ってよ?」

 

 

 澪はそれに了解と答え、人間体からIS体である殲滅になる。カタパルトに脚部を載せると、何故か非固定浮遊部位である大型スラスターが収納された。視界に表示された説明を見ると、どうやら射出時に機体から非固定浮遊部位が離れ過ぎてしまい同調が切れてしまうという事態があった為らしい。この機体は光速まで行って非固定浮遊部位が同調切れを起こさなかったから良いと思うが、後がめんどくさいのでここは従っておこう。

 

 

 

『射出用PIC起動

 超電磁射出機起動

 

 システムオールグリーン

 射出タイミングはパイロットのタイミングに譲渡』

 

 

 カタパルト内に響く音声、それと共に前方の射出口が開かれた。そこには闇夜の大海原が見え、艦が海上に浮上したことを示した。

 

 

『榊澪、『殲滅』出撃する!』

 

『ナターシャ・ファイルス、『銀の福音』出るわよ!』

 

 

 二つの流星が闇夜に輝く。




次回予告

夜空を駆けた二つの流星

邪魔する者は撃ち砕く

そして────


次回=再開は終わりの鐘=

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