一般人15歳で〝ちょっと〟変わった彼のIS生活(完結)   作:A.K

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どうも長らくお待たせ致しました。
少し、仕事と事故に巻き込まれて執筆時間が無くなってしまった為ここまで時間がかかってしまいました。
明日、もう1話投稿します。

それでは本編、どうぞ
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世界の下僕となろうと

永遠の戦いに身を任せようとも

弱者の怒りがある限り

我が身は敵を撃ち砕く


果ての世界で何を望む?

 艦内の案内と自室の案内をされ数時間。夕食時になり館内にいる人々が食事の為に、食堂に集まり食事をしている頃澪は一人格納庫に向かって歩いていた。

 

 澪は別に食事等は必要としない身体となったが食事は出来きて学園にいた頃、一応食事はとっていたが宇宙で目覚めた以降身体が食事を受け付けなくなった。

 ノーネームに聞いた所、どうやらIS体と人間体の同調率が問題との事だ。一応今まで同調率は90%をキープに、感情の高まりで100%となっていた────が、それは『名前無き破壊者』の時だ。名前無き破壊者の異常移行によって誕生した『殲滅』の同調率は、常に100%オーバーなのだ。つまり、完全に想定外のことが起きておりノーネーム達も対処不可の為に直すことが出来ないとの事だ。食べることは出来るが、なぜか胃の中で残り続ける。結果、永久に食事をとる機会が失われた。

 

 

 この基地の戦力であるEOSがあるハンガーに到着。澪は機体でも見るかと考えていたら、背後から「やあ」と女性の声が聞こえた。気配無し......敵か?と澪は考えた。

 だが澪の体は反射的にPICを応用した裏拳で背後に向かって攻撃してしまった。ヤバイ......そう思ったが、背後にいた女性は「おっと」と呟いてそれを簡単に片手で受け止める。背後を振り向くとそこには己の拳を受け止める女性が一人。女性は紫色の長髪に黒いスーツ姿で、穏やかな表情をしながらこちらを見ていた。

 その声と特徴的な紫色の長髪に澪は気付く。

 

 

「やっぱり凄いね君は」

 

「......篠ノ之束」

 

 

 IS────『Infinite Stratos』を開発した天才or天災こと『篠ノ之束』その人が澪の目の前に立っていた。澪は己の目の前に立つ束に対して、隠しきれぬ怒りが湧き立つ。

 

 

「こうして直接会うのは初めてだね榊君」

 

 

 澪は拳を下げ、束の言葉に「そうだな」と言う。

 

 

「俺は思いもしなかった。

あの地獄を知る者が俺以外にいた事、あの地獄をISを通して見ていた者が居たことが」

 

「あの子達────コア人格達が教えてくれたんだよ......『恐ろしい男の子が居る』って。

私も最初は理解出来なかった。だって、生身の......まだあの頃小学生だった君にあの子達は恐怖した。有り得ない事だけど、ISにある電脳ダイブ技術で見て分かったよ。

 君の────その身に宿る常を超えた感情の力が、その力を通した激しい『怒り』があの子達を、私を恐怖させた。束さんは細胞レベルで最強規格なのに、あの一回で私は君に恐怖した。そして、我が子当然のISが世界に何を与えたのかもその時になって『初めて』理解したよ。」

 

 

 澪は『常を超えた感情の力』という言葉に首をかしげた。感情が力になる────それは『怒り』なら力が、『冷静』なら判断力・感覚と言ったものが挙げられる。だが、それは常である。目の前にいる束は『常を超えた』と言っている......それ故にいまいちピンと来なかった。

 

 

「君の専用機────元は『名前無き破壊者』、それに搭載されている私が制作した感情の力を引き出すシステム『feelings. control. system』がまさにそれ。上手い具合に隠してあるから、気付いてないと思うけど。

外部的には言えば、機体各所にある発行部分がそのシステムと連動してるよ。ついでに『A.I.S.S』もね」

 

 

 俺はすぐ様ノーネームに確認させる。瞬時に 『有りました。こんなに上手く隠れてるとは』 とノーネームが言っていたので、余程上手く隠していたのだろう。というか、さり気なくこのシステムを作ったと言ったなコイツ。

 

 

「名前無き破壊者を作ったのはAE社と表示されていたが、まさか......」

 

「うん。AE社もそうだけど、その機体製造には私も参加しているよ。

表沙汰になると困るから製造標記はAE社になってるけど」

 

 

 やはりそうだったか。名前無き破壊者の性能は一次移行する前までは普通だったものの、一次移行してからは異常過ぎる性能だった。『契約 』の件もそうだが、無限機関もこのシステム、なおかつ『無世代多進化型』ISなんて聞いたことも無かった。そんな機体を作れるのはコイツしか有り得ないと思っていたからある程度は分かっていたが......だが

 

 

「それも────贖罪の一つか?篠ノ之束」

 

 

 俺が聞きたいのはそれだ。コイツは以前マドカから己の犯した罪を償う為に、亡国に所属していると聞いた。ノーネーム達が、名前無き破壊者が何故か俺に渡ったのも、俺が何故かISを動かせるのも篠ノ之束の贖罪の一つなのか?俺はそれが知りたい......知らなければならない。

 

 

「うん......これも、贖罪の一つかな。」

 

「そうか......なら、もう一つだけ聞く。

俺がISを動かせるのは何故だ?」

 

 

 名前無き破壊者がクラス代表決定戦時に、厳重拘束されていた部屋から脱出。その後、俺と契約した時のことだ。

 ノーネームは俺に対し、何故主であるかを説明してくれた。俺が主である理由......それは『ISが認め、創造主によって決められていた』からだった。しかし、それでは『俺がISを動かせる理由』にはなってはいない。

 

 

 

「あの子達......ISコア人格達が君に感化されたからだよ。

ついでに教えとくけど、女性にしか動かせない理由はちーちゃん......織斑千冬の思考にNo.001白騎士のコア人格が感化したからだよ。

『女性にしか動かせなくていい』ってね......あの時、まだ学生だった頃のちーちゃんはいっくんを守る為の力が必要としてたからそう願ったんだと思うけど」

 

 

 願いが歪んだ結果、望んだものが歪んで今に至ったか。それにしても......感化された、か。超能力じみたものだと思って馬鹿らしいと考えたが、ISが持つ能力だって超能力じみている。俺の体だって普通の人間から見れば化物だ。

 

 

「榊君。これで私が君やISによる被害者達から許されるとは思ってないけど、私は.....今度こそ正しいことをしてるのかな?」

 

 

 そう言う束の右手が震えていた。

 

 天才故に、常識より非常識的思考故の言葉なのだろう。『白騎士事件』もそうだが、己が信じるISを作った結果が世界を歪ませたのだ。これでも無い、あれでも無い......と、目前に立つ束は言葉通り贖罪の為にその天才的頭脳を持って考え抜いたんだろう。それ故恐れている......また、もしかしたら己の手で酷い事が起こるのではないのかと。

 

 

「アンタがそう思うだったら、それでいいと思う。己が正しいと思う行動をしてると、そう考えたのなら最後までやり通せ。」

 

 

 俺には今コイツのやってる事は正しいとは思っている。だが、数多の人々がそれをどう思うかは分からん。だからこそ、俺はこう言った。贖罪の形は人によって変わるもので、その人が贖罪だと思った形で償うのなら俺は何も言わない。

 

 

「────うん。ありがとう」

 

 

 束はそう言ってペコリとお辞儀した。その時の表情は何処か、晴れ晴れとした表情になっているように澪には見えた。

 

 

「うむ。どうやら悩みが消えた様だね篠ノ之君」

 

 

 また背後から声が響いて今度は何だと思った澪は、その声の主を思い出した。

 

 

「艦長っ!?」

 

「今は休憩中だ。アルベルトで構わんよ」

 

 

 驚く澪を他所に、「君が篠ノ之君と話している途中から既にいたよ」とアルベルトは言う。束は慣れたように「君も大概人外だよね」と言っていたが、澪はお前ら同じだ馬鹿野郎と心の中で叫んだ。

 

 

「篠ノ之君は食事を済ませたかね?

 まだなら早く食べて来なさい。」

 

 

 アルベルトの言葉に「げっ!?」と呟く。次の瞬間には俺の目の前から凄い速さで恐らく食堂に去っていく篠ノ之束の姿が映っていた。

 

 

────────────────────────

 

 あれから俺はアルベルトさんと共にとある機体の目の前に来ていた。それはこの艦に来た時にも見た変態じみたトンデモ機体である......アルベルトさんの機体だ。

 

 

「────さて、調子はどうだ『幽霊』?」

 

 

 アルベルトさんがそう言うと『調子は良好です艦長』と機体から声が発せられた。

 俺の場合は頭の中に直接ノーネーム達の声が響いてるので、機体から声が出る光景には大変驚いた。

 

 

『そこに居るのは......昼間に私を見ていた人ですね?

 私の記録によると今日初めてここに来たと言うことで、自己紹介した方がよろしいですか?』

 

「あ、はい」

 

 

 戸惑う澪はそう言うと、幽霊と呼ばれた機体が『名乗らせて頂きます』と言う。

 

 

『私は EOS/IS―001 特殊機動型『幽霊』Ver.2.5。ISコア名がゴーストの為、皆からはゴーストと呼ばれてます。

 搭乗者及び同調者はアルベルト・マックール艦長

 私達の同類に会えた事に嬉しく思い、これから同じ戦友として仲良くしたいと思っています。』

 

 

「────と言うように、コイツが私の相棒でありもう一つの体であるゴーストだ。」

 

 

 驚いた。アルベルトさんからはEOSだと聞いていたが、実際はISとEOSの半融合的機体だった。まず『EOS/IS』なんて形式は聞いたことが無い。

 

 澪の考えを他所に、アルベルトは「君は......」と喋り始める。

 

 

「知ってるかね?

この世界には一定以上の強さを持つ者達が、世界の意思のもとに下僕になると」

 

 

 唐突な話に頭が追い付かない。世界の意思の下僕?初めて聞く言葉に澪は頭の中が混乱する。 一体何ですか、それは?と澪が尋ねると、アルベルトは重大な事だと言われて失礼だと思ったがそれでも訪ねた。

 

 

「それは俺に関しての事なんですか?」

 

 

 失礼だと理解しているがそれでも澪はそう尋ねると、アルベルトは「君の未来が関わってくる話だ」と言うのを聞いて澪は黙って聞くことにした。

 

 

「これは数年前の事だ。突如、過去に世界で活躍した既に亡くなった偉人達が時折現れるようになったのだよ。」

 

 

 はっ?そう澪は頭の中で呟き、それは死人が復活している事なのかと同時に考えた。

 

 

「我々亡国は、その異常事態を重く捉え、自体の早急な収束をつけるため活動をした。そして我々はついにとある人物により、世界の下僕......守護者を名乗る人物と接触した。」

 

 

 アルベルトは言う

 

 

────それは偉大な事を遂げた者達

 

────死後、もしくは生前に世界に契約した者達

 

────英霊や守護者と呼ばれし者達

 

────死してなお続く永久の戦いに身を置く

 

 

 

「それが今年、君の存在が世間に広まるとその存在の目撃例が急激に減少して、遂には完全に途絶えたのだよ。つまり、その存在に君がなりうるということ私は考えている────そして、それが本当にそうだと思えてしまう。なにせ、今年に入ってから織斑一夏と君の存在が出た後、世界は動き始めた。遂には君を中心として物事が進み、世界が本来あるべき姿に向かって突き進んでいる。」

 

「そこから導き出した私の考えを言おう。

 君はこの世界において今一番重要な役割を果たしているとも言える存在として、世界に認められているのかもしれない。ここまで個人の動きで世界情勢が、風潮が動く事なんてまず有り得ない。それこそこの世界における『意思』が働いているとしか考えられないのだよ。

 もし、今のISによる騒乱が終わったとしよう。その世界の『意思』が英霊や守護者と言った者達と同じように君をその存在にさせるとしたら君はどうする?

 まあ......人々は君を英雄と生じるだろう。」

 

「世界の意思がどうだかは知りませんが、もう俺に残された道は戦う以外ないんですよ。それによって救われる人達が一人でも居るのなら俺はそれでいい────そう思ってます」

 

 

 澪の返しは早かった。迷いなく、それでいて自分がやるべきと思ったことを言ってるのだと理解している。それを聞いたアルベルトは呟く。あの男の言った通りだと。

 

 

「あの男?」

 

「私が会った守護者と呼べる存在だよ。その男は正義の味方になりたくて人助けをして、正義の味方なんて居ない事に気付いたと言っていた。

 そんな彼は君の事を『正義の呪い』と言っていたよ」

 

 

 『正義の呪い』......それを聞いて澪は口に出さずに頭の中で言う。

 

 

「世界が君を『正義の味方』や『英雄』としての存在にし、その者を中心に無理矢理でも今の世界を修正させようとする『呪い』と彼は言っていたよ。」

 

 

「例えそうであったとしても、俺は俺がやるべきことがあらならそれを成します。呪いであろうとも、それがやるべき事なら」

 

 

 アルベルトは自分が話した事、それを聞いて言った澪の感想を頭の中で考える。アルベルトは澪に対して己がやるべき役割を『その考えを振り返えさせる』ものと捉えていた。世界が澪を中心に動いてる、これは今まで起きたことからすればもう抗えのない事実。そんな存在にアルベルトは『なぜ私みたいな老人がと』考え、老人だからこそ......この場に居る中で一番長い時を生きる者としてその機会を与えるのが世界の『意思』なのだろうと結果づけた。

 澪に対してアルベルトは言う。

 

 

「君がそれを願うならそれでいい。

 だけど君みたいな若者が、わざわざ血塗られたらこの道に入って来ない事を私達は望んでいる。

 君が決めたことなら言わない......だけど、辛くなったら逃げたっていい......これは私達、今の時代を作った者達が背負わねばならない罪だ。本当は君一人に背負わすことが許されない事なのだ。

 君達に擦り付けてしまった我々大人の罪......君が、何時か辛くなった時は全てを捨てて逃げていい。それもまた私達が作ってしまった君ら若者達が生きる未来に残してしまったのだから。」

 

 

 アルベルトは「私はこれで失礼するよ」と言ってハンガーから去っていった。

 

 

 

 

 

 

────主

 

「......」

 

 

 後悔が無いように。アルベルトの先を生きてきた者としての、重い言葉が心に突き刺さる。誰もが後悔して生きてきた。 戦いの道に自ら飛び込もうとしている澪に対し、既にその道に入っている者としての助言。それ故に澪は今もう1度考えている。

 例え本当にそうだとし、例え命を落としたとしても。それが強いられたとしても。

 

 

────我々は主がどんな道を選ぼうと、例え滅びの道を選んだとしても最後まで居ます。逃げたって、我々は最後までついて行きます。

    そして、その決断は少なくても直ぐに来る様な事ではありません。故に、今はまだ焦らずゆっくり考え下さい。

 

 

「......確かにそうだな。ありがとうノーネーム」

 

 

 いずれその時が来て最悪な結果を選ぶことになったとしても、己の考え持ってその時は決断する事を澪は決意したのであった。




次回予告

最悪を打ち砕く

我々が撃ち砕くべき敵

かの最悪を我が身の力で

助けねばならない

主の仲間を


二つの流星が空を翔る


次回=天を翔ける流星=

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