一般人15歳で〝ちょっと〟変わった彼のIS生活(完結)   作:A.K

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俺は人間だ

だが化物でもある

それ故一人だった

だが......仲間が居たんだ


合流

 あの場から離れた俺は、現在自衛隊のF-15が3機、自衛隊仕様の打鉄とラファール2機に追われていた。

 

 自衛隊:日本を外国からの武力による侵攻から守る為に存在する組織で、ISが世界の軍隊で主軸とされている中でも辛うじてIS出現前と同じ様に行動が出来ている。IS出現による軍人の大規模なリストラが行われたが、そうして軍から追い出されてしまった軍人達を日本の自衛隊が保護した。その結果、現在の自衛隊は世界各国の元エリート部隊や特殊部隊の者達が集まる正に世界最強の部隊となっている。

 普通なら仲が悪い国同士の者達は、互いに同じ境遇の者であると理解している為か喧嘩が起る所か仲良く日々訓練に打ち込んでいる。無論、自衛隊にも各国同様自衛の為のIS部隊が有る。そこ所属する者達は全員女性主義に染まってない者達で構成されているので、問題は起こっていない。それ故に、各国では行うことが出来なかったISと航空部隊、艦隊・地上部隊の連携訓練を行っている。

 

 

『くっ......完璧だ。完璧すぎる連携だな!』

 

 

 その為、完璧とも言える連携で俺を追っている。この時代において以前同様の自衛隊に対して、俺は攻撃が出来ない。それ故に乱暴な真似もできない。それ故に追いかけ回されている......あちら側もなんか嫌そうな顔してる。まあいい......どうすれば逃げれるかの方法は理解した。自衛隊の方は、あくまで牽制程度の攻撃しかしてこない。一応俺は全世界手配で、見掛けたら撃ち落としてIS委員会に引き渡すよう指示が出ているはず。それなのにこうして牽制程度の攻撃をしているのは、最初から俺を逃すつもりらしい。個人間秘匿通信で伝えておこう。

 

 

『ありがとう。そして、さらばだ』

 

 

 俺はOBを起動させ、自衛隊仕様の打鉄に接近。相手は初めて見せた反攻に身を構える。そう......これが逃走経路だ!俺は瞬時加速で加速中だったこの機体に更に速度を付け足す。あまりの速度に反応出来ない自衛隊達をハイパーセンサーで認知しつつ、そのまま振り切った。

 

 

 

「スゲエな......一瞬で消えちまった」

 

「こちらデルタ1より各機へ連絡。管制室から帰投命令が出ている。これより我が隊は帰投する。」

 

「「「了解」」」

 

 

 自衛隊を撒いて、現在また太平洋沖を飛んでる。ノーネーム、そう言えば確かマドカの個人間秘匿通信波数が登録されてあったよな?

 

────はい。

 

 ここから繋げることは出来るか?個人間秘匿通信がどの距離まで繋げれるか分からないから言うが。

 

────やろうと思えば、月に居ても出来ますが。

 

 出来るのか......って事は、この太平洋の何処か分からない所からでも繋げられるってことか?出来るのなら繋いで欲しいが。

 

────了解。繋げます

 

 

 それから数秒後に「榊澪か!?」とマドカの声が頭の中に響いた。

 

 

『貴様今までどこに行ってた!?』

 

『月周辺』

 

『月だと!?......いや、貴様等なら出来そうだ。一体どういった要件で掛けたんだ?』

 

『亡国が俺を保護しようとしているのは知っている......が、どうにもお前達の亡国の基地には行けそうにはない。どうにもIS反応が大き過ぎてバレてしまう』

 

 

 ISその物である俺はISセンサーに表示されてしまう上に、所持するエネルギーが多過ぎる為に通常より大きく表示されてしまう。さらに、ステルスモードを起動出来ない為に地球上の都市部や人の居る所では長期滞在が出来ない。もしも亡国の基地に長期滞在し、IS委員会の連中にそれを知られれば面倒臭い事になるのは目に見えている。だからこそダメだ。善意による行動だってことは理解できるから、被害を出すことになることからダメだ。

 

 

『だけど、何かあれば俺の個人間秘匿通信に繋げてくれ。地球上なら何処からでも俺に届く』

 

『.....分かった。榊』

 

『ん?』

 

『私達はそばに居る。』

 

 

 途切れたか。そう言えばノーネーム、この機体は深度何mまで耐え切れる?

 

────機体そのものの耐久値としては50、守護領域を使えば200程の深さなら耐え切れます。しかし、何故?

 

 今から海中にこの身を隠す......と言っても、また暫くすれば動く。その間、この世界における反女尊男卑勢力に声を掛ける。俺が暴れても良いが、奴らの事だから本気を出せば国の一つ滅ぼす気がある。宇宙にいた頃に見たIS委員会の持つ兵器は、化学兵器・殲滅兵器・大型質量兵器・戦略兵器......さらにEN兵器に核兵器と言った大量殺戮兵器類がある。

 上手く女性主義者による軍部侵略で、軍人のリストラに従来の兵器のほぼ全てを自分達に横流し。それによって自分達に反逆するだろう勢力の減らし、代わりにISを入れる事で女性の優位性を高めていた。女権団やIS委員会の本部周辺から以前から工事されているのは、そう言った兵器の設置作業の事なんだろう。表側では道路整備とか言っているが......っと、話が逸れたな。

 

 つまり、俺単体だけで本部襲撃は不可能だから他勢力との連携が必要になるという事だ。女権団とIS委員会の支部は大国にだけ設置され、ほぼ全ての支部にISが一機配置されている。そこで役に立つのが......

 

────亡国と鬼兵軍ですね?

 

 ああ。亡国が持つISとISの無人機、鬼兵軍が持つ魔改造とも呼べる大量EOS。彼等の協力が有れば各支部の占領はすぐ出来る。女権団や委員会はISを持って纏おうが、支部連中なら確実に勝てるレベルだろう。ノーネームが見せてくれたパイロット情報を見れば、戦闘に慣れてない連中だし。

 

 だが、国家代表クラスのパイロットが複数居る本部はそうはいかない。恐らくISの競技仕様から戦闘仕様に切替えてあるはずだ。そこまで行くと俺が出るしかない。

 そう話していた時、突然IS反応が確認された。距離的には1kmも無い距離だ。IFFは......味方表示?どういう事だ?

 

 

 戸惑う澪を他所に、とりあえずその場に留まり接近する機体を見る。ソレは全身が銀の装甲に、天使を模しただろう非固定浮遊部位。特徴的な全身装甲の機体......余りにも見覚えのある機体が澪の前に飛翔した。

 

 

『銀の福音......だと!?』

 

 

 銀の福音────つい先刻まで戦っていた機体だ。

 

 

『貴方が破壊者?』

 

 

 澪は突然放たれた声に驚くが、本来の有人機型の福音である事を理解する。

 

 

『あ、ああ。俺が世間から破壊者と呼ばれる者だ』

 

 

 そう言いながらも、澪はすぐ様戦闘を行えるよう身構える。澪は内心冷や汗をかいていた......なんせ、目の前の福音────そのパイロットの声からは恐怖や余裕、さらには慢心と言った感情が感じられないのだ。そんな澪に気付いたのか『そんなに警戒しなくても良いわよ』と福音のパイロットが声を掛けた。

 

 

『私はナターシャ・ファイルス。亡国企業アメリカ支部所属、銀の福音のパイロットよ』

 

『成程......マドカから連絡を受けたな?』

 

『そういう事よ。丁度貴方が私達の移動基地から近かったから、保護しに来たわ』

 

 

 澪はその言葉を聞いて辺りを見渡すと、南東の方角3km先程離れた所の海上に筒状の何かが顔を覗かせていた。

 

 

『アレは亡国が開発したIS反応を、完全に隠す事が出来るISRD(Infinite Stratos Reaction Deception/IS反応欺瞞)ステルス潜水型戦闘艦『ゴースト』の一番艦の出入口よ。これで貴方のIS反応を隠せる。何はどうあれ、貴方が海中に身を隠す前に保護できて良かったわ』

 

『成程......って、何故それを知ってる』

 

 

 そう言うと、ナターシャは「この子がね」と言いながら自分に指を向ける。成程、福音が教えてくれたのか......

 

 

『兎に角、あとの話は艦内でしましょう』

 

『了解......ナターシャさん』

 

『さん付けじゃなくていいわ』

 

『了解』

 

 

 二人はそうやり取りをして、ゴーストに向かって行った。澪とナターシャは機体を解いて潜水艦の入口から中に入る。澪は余り潜水艦の事などせいぜい中が狭いぐらいしか思っていなかった。否、普通はそうだ......だが、このゴーストは違った。中は以外に広く、入口から梯子を使っておりた先は巨大な格納庫だった。

 そこには十数機のEOS(魔改造された物)がハンガーに掛けられていた。どれも通常のEOSより二回り程大きく、中にはガチガチのタンク型も存在していた。ナターシャに聞いた所、これは支援型とかでは無いとのこと......恐ろしい。さらに武器腕と脚部自体がスラスターというなんとも言えない機体もあり、それは艦長専用機らしい。

 そして、このゴーストはEOSと銀の福音を戦場近くまで運用する専用艦との事だ。戦闘の際はどうやって出撃するのかと聞いたら、垂直型のカタパルトと通常のカタパルトで出撃を分けているそうだ。ナターシャに着いて行くこと十分足らず。作戦司令部と書かれた部屋に着いた。ナターシャが「入って」と言ったのでノックをし、中から「どうぞ」と何故か聞いた事がある声が返ってきたので入った。

 

 

「貴様が榊澪か。

私の名は......そんなの言わなくたって分かっているか」

 

「マドカ?」

 

 

 作戦司令部と書かれた部屋には、何故か先程まで話していたマドカがいた。あとナターシャ同様金髪ロングの女が、口を大きく開けて固まっている。それと明らかに艦長だと思われる初老の男性が一人。

 

 

「ようこそ『ゴースト』へ......私が艦長のアルベルトだ。艦長だがEOSで前線に出ている事もある。君の活躍は耳に入って来ているよ」

 

 

 っ!この人も轡木さんと同じような覇気を持っている。年齢に不相違な体付きで、服の上からでも分かるぐらい筋肉が付いている。IS能力無しで生身で戦って勝てないと、脳がハッキリと自らの敗北を分かっている。

 

 

「きょ、恐縮の言葉です」

 

「ふむ......君は常に身体に力が入っているようだね。それが無くなれば、今以上に動けるようになる。」

 

「は、はい。」

 

 

 凄まじい位の覇気を持っている。それ故に今も身体がピリピリと痺れる様な感覚を襲うが、目の前のアルベルトさんはニコニコとしている。これが表と裏の人の差か......だとすると轡木さんは────まさかな。いや、刀奈や虚さんといった裏の人達が居るから可笑しくはないか。そうこうしていたら「オッホン」とアルベルトさんがそうやったので、何かしら話すのだろうと思って姿勢を正す。隣に居たナターシャも姿勢を正していたし。

 

 

「榊くん。我々亡国企業アメリカ支部『ゴースト』隊は現在この世界各地の海に存在するというIS委員会の人体実験施設を探し、その施設の破壊と被検体となっている者達の救出作戦を展開中である。」

 

 

 IS委員会の人体実験施設。以前からネット界で、世界各地の海にあるという施設でIS委員会が非道的人体実験を行っているらしい......という噂だ。だが、それが今この場で本当にあるのだと分かった。

 

 

「一つよろしいでしょうか?」

 

「何かね」

 

「具体的にはどんな事をしているのか......そういうことは分かってるのでしょうか?」

 

「それについては......」

 

 

 アルベルトさんは何処からリモコンを取り出し、何かしらのボタンを押した。すると、ホログラムの......何かしらの研究文やら画像と思われる物が映し出された。タイトルは......『IS兵装融合型人間兵計画』

 見ただけで猛烈な怒りを覚えたが続けてみて見ると、被検体────被害者は全て10代の子供。男女関係無く人種も様々で、20歳より上の人間は居ない。画像には小さな......10歳ぐらいの子供だろう。右腕がIS独特のフレームとアームに変貌している。

 

 

「あの糞共が......!」

 

「これが、IS委員会の人体実験施設で行われている事だ。人間にISの部品を無理やり取り付け、IS融合兵士という形で兵力増産を図っている。まあ......ここにいる大半がその被験者という名のIS融合兵士なのだがね」

 

 

 そう言うと、アルベルトさんは服を突然脱ぐ。それに驚いたが更に驚いたのは......胸の中央部に埋め込まれていたISコアだった。

 

「私はその中でも直接ISコアを埋め込まれ、君のような存在を作り出す『完成体』の実験被験者でね。ISコアこそ同調したが、完成体にはならなかった被験者だ。ほぼ君と同じ存在だと思ってくれればいい。」

 

「俺と同じ......」

 

「君はハンガーに腕が武器腕で、脚がスラスター型のEOSを見たかね?」

 

「あ、はい。」

 

「アレは私のもう一つの体......君で言うIS体みたいなものだよ。私はISコアに同調しただけで、融合とはならなかったから不完全という訳だ。その為、機体と私の身体は分離しているがね。そして、私はISの能力のみが使える身となりあとは君のように成長が止まった体になったのだよ。」

 

 

 澪はその言葉を聞いて安堵の気持ちを抱いていた。己だけでは無いのだ、この人間とは言えないモノが自分以外にも居ることに安堵を抱いたのだ。しかし、こうして言い方は悪いが......一応の成功体が居るのなら、既にIS委員会にも成功体のIS融合兵士が居るのでは?澪はそう考えていた。

 

 

「君も察しているようだが、既に委員会にも『一人』だけ......我々よりも、君よりも上位のIS融合兵士がいる」

 

 

 最悪の結果だ。敵側にも成功体が居るということは、IS融合兵士であるアルベルトさんや俺に対して有効打を与えることの出来る武装や機体に乗っているかもしれない。さらに俺達よりも上の存在......か、想像がつかないな

 

 

「委員会側のIS融合兵士は君が良く知る人物だよ。」

 

「俺が?」

 

 

 生憎澪には委員会側に知る人物なぞあまり居ない。情報として知っているとしたら......委員会の最高責任者兼最高権力者である────まさか!?

 

 

「そう。IS委員会最高責任者『霧崎千切』がIS融合兵士であり、隠されているが君の街を襲撃したテロリストの首謀者だ。」

 

 

 ピシッ

 

 

 俺の中で何かにヒビが入る様な音が鳴る。五年前のテロ......アイツが、アイツが!

 

 

「熱っ!?」

 

 

 アルベルトは急変した澪を見て驚きを隠せない。一目見れば怒っているのは分かるが、その怒りが周辺に影響を与えているとなれば別だ。澪のそばに居たナターシャは無論、部屋に居たマドカさえもアルベルトの側に移動していた。

 澪の怒りは熱となり、その熱は周辺の空間さえも歪ませる程のものとなった。アルベルトはここまで怒ることに理解は出来るが、だからと言ってこのままという訳にはいかない。

 

 

「落ち着かんかっ!!」

 

「ッ!?」

 

 

 澪はアルベルトの怒鳴り声に正気を取り戻した。たちまち澪から放たれる熱は霧散し、歪みも消え去る。

 

 

「今はもう伝えることは無いので、とりあえずこの艦内の案内をナターシャから教わるといい。ついでに君の部屋の案内もしてもらいなさい。」

 

 

 俺とナターシャはアルベルトさんの言葉を受け、部屋を退室した。退散して暫くした時に個人間秘匿通信で『夕食後にハンガーに来るように』と連絡が来た。




次回予告

君は何を思う?

この腐敗した世界を壊す

君は世界と契約するのか?

この身で出来るなら永遠に渡り

君は────最後に何を望む?


次回=果ての世界で何を望む?=

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