一般人15歳で〝ちょっと〟変わった彼のIS生活(完結)   作:A.K

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歪んだ世界が心地が良い

そう言うは女性主義者

心地が良い世界は滅ぶ

それは因果応報が故に

やがて起きる戦争

それは終焉を呼ぶ評決の日

ISが歪んだ根源的人物は────


歪みと破壊と

 澪は旅館に着くまでの僅かな時間の中、福音のコア人格から件の経緯を聞いた。

 

 やはり、IS委員会が今回の主犯であった......と言うよりはあの場にIS委員会の連中がいた事で確信していた。

 福音(コア人格名)によると、元々この機体はイスラエルとアメリカによる秘密裏の共同開発という事になっていた。それもその筈、福音は端から軍用ISとして開発されていたからだ。アラスカ条約によりISの軍事目的使用は禁止されているので、そんな事がバレたら世界中から非難を浴びせられてしまうだろう......話が逸れた。

 この機密認定されている福音は、更に裏がある。計画を知る者には無人機として製造が続けられていたが、その計画を知るほんの僅かな者達の中の更にごく限られた者達によって『有人機型』の福音が作られていた。この有人機型の銀の福音を、亡国企業・福音のパイロットであるナターシャに送り戦力増大を図るのが今回の計画なのだ。

 今回この『無人機』の福音の計画がどこからか漏れ、試運転しようとした所を何処かのテログループに変装したIS委員会アメリカ支部の者達が襲撃。その時に後付けの装置を付けられたのが騒動の発端だった。福音はこの二つの機体のISコア内を行き来が出来て、尚且つコア人格自ら機体を操れるという特殊性を持っていた。コア人格がなんとか機体を止めようとしたが、止められなくて、暴走を続けた福音はそのままIS学園組と戦闘になったとの事だ。(コア人格は語る)

 異常移行の事は、攻撃に晒され撃破されそうになった時に無茶苦茶にコア人格である福音が機体を操っていたらなっていたという。いわいる火事場の馬鹿力というものだ。

 福音から後付け装備をつけられた時の映像と、装置の詳細についてのデータを送って貰った。旅館がある砂浜が見えてきた......福音、お前の抜け殻をあそこに投げていいか?見ればわかる────ああ......分かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴォォォォンンッ!

 

 

 遠くの旅館から離れた砂浜に金属が叩きつけられる音が鳴り響いた。それと共に旅館の周りの木々からISが三機────打鉄が出現。成程、ステルス状態で待機していたのか。しかも、前にアリーナでコア人格を抜いた機体か。

 

 

『鈴には悪いが、こうなるのが分かってるからには行くわけにはいかん......消えろよ』

 

 

 俺は過去最高出力で悪魔の指を起動し、まずリーダー機であろう打鉄を狙撃。狙いは完璧、相手の反応は鈍く、速度も充分。既に必中の如く避ける術はない。

 

 

「グガァァァァ!?」

 

 

 悪魔の指は通常レーザー程度の威力だが、殲滅の最高出力ならば貫通性の『超』高い高出力レーザーとなる。最高出力の威力ならISの防御なぞ簡単に貫通する《悪魔の指》は、最高出力で相手を狙撃して葬り去るのが本来の使い方。今までは出力を抑えていたから死人が出なかったのだ。何はともあれ、まずは一機撃墜。

 悪魔の指の狙撃によってリーダー機である打鉄が、パイロットごと貫通し爆発四散。その取り巻きが俺に対して何か言ってるようだが......

 

 

『おいおい、俺は言ったはずだぞ?

 いつか、貴様らを殲滅してやるから......と。お前達は生かしておけんよ、一人残らずな』

 

 

 残った二機の打鉄が澪に接近。澪はそこから動くこと無く、二機を見ている。打鉄二機が近接戦闘範囲に入った瞬間、澪の背後から反逆する血の牙達が姿を現す。その数.....100以上

 

 

『逝けよ。逝っちまえ』

 

 

 真紅の暴流が打鉄二機を包み込む。包み込まれた二機は数秒の内に爆発を起こすことが出来ない程、細切れになりパイロットも絶命した。

 

 

『新たなIS反応......貴様が来たか、糞教師』

 

「貴様......!」

 

 

 新たなIS反応が出現と同時に、俺の目の前でソイツ────織斑千冬が近接特化カスタム機であろう打鉄に乗って現れた。異常に多いSE量は、おそらくエネルギーパックを複数......10以上搭載しているからだろう。さらに、見ただけで分かるほどの量の追加装甲。防御力増大の処置なんだろう。

 

 

『くく......忌々しい、実に忌々しいよ。織斑千冬』

 

 

 成すすべもなく惨殺され、残った機体の残骸を一瞥した織斑千冬が叫ぶ。

 

 

「貴様は己がやった事を理解しているのか!」

 

 

 ああ......五月蝿い、実に五月蝿いよ。俺がやった事?

 

 

『人殺し────復讐だよ。それ以外に何がある? 

 ええ?』

 

「貴様!」

 

『怒鳴るなよ......っと言うより、貴様らは充分俺に殺られる理由が出来てんだよ。あのタッグトーナメントの一件で、俺をその気にさせたんだよ。』

 

 

 そう言いながらも、織斑千冬は俺に対して攻撃を仕掛けていた。打鉄の近接ブレード《葵》を両手に乱舞の如くの猛攻、しかしてそれを天啓の剣で澪は裁く。時には蹴り、殴ると言う様々な攻撃を混ぜながらも攻めた。そう、攻めたのだ。それでも、澪に大したダメージを与えることが出来なかった。与えられたのは、無限に湧き上がるSEの一片と装甲中層部まで届くだろう斬撃だった。耐AIS弾仕様に加え、光線兵装や貫通系の武装でさえ傷付けることが難しいこの装甲に傷を付けたのは流石としか言えない。だが────

 

 

『貴様が』

 

 天啓の剣で葵を弾き飛ばす。

 

「ぐう!?」

 

 再度葵を展開して攻撃するが、それを弾く。

 

『お前達が』

 

 一撃一撃、弾く度に葵を曲げて折られていく。

 

「ぐうう!?」

 

 圧倒的出力から生まれる豪腕。出力制限の無いこの機体はISコアによって機体は進化、出力も上がり続ける。己の欲望で世界を滅びの道に導く、糞共は......

 

 

『俺達から未来を奪った。

 何が女のため、何が男は屑だ?

 愚かにも程があろう......!』

 

 

 そう言って織斑千冬が持つ両手の葵を、薙ぎ払いで砕く。すぐに新たな葵を展開した様だが、砕けさせてもらう......《反逆する血の牙達》解放ッ!

 

 

『《復讐者の剣牙》』

 

 

 真紅から漆黒に変わり、その牙は赤黒く染る。復讐者の剣牙を両手に取り、双剣の様に構える。織斑千冬は何かを決意したかのような表情をしたかと思うと、一つの長刀を展開した。

 それは白く、あまりにも有名な剣であろう......雪片だった。IS殺しとも言える兵器の原点を持ち出し、織斑千冬から放たれる殺気。それは全てを物語っていた。

 

 

『当時の倉持技研が現代における聖剣を作り上げようとした『現聖剣計画』。その絶対に折れない、壊れない、刃こぼれしない。それらを含み更にその斬れ味で全てを斬る聖剣《アロンダイト》を真似たというその剣は、全てを斬るという事によりIS殺しの能力を持つ《雪片》と日本初である単一仕様能力《零落白夜》を生んだ。

 つまり、それを出したって事は────俺を殺すんだろ?』

 

「貴様を野放しには出来ないからな......これ以上死人が出ない内に始末する。」

 

『ほう?教師としては無能だが、世界を歪ませるのはお得意のようで』

 

 

 その瞬間、重い金属音と衝撃波が二人を中心に響き渡る。左右の復讐者の剣牙で連続攻撃を繰り出し、打鉄の装甲を削り取る。無論本体にもA.I.S.Sを譲渡しているこの武器なら攻撃出来るが、出来ないでいた。焦れったい......そう思っていた澪の思考を鈍らせたのか、カウンターを喰らった。ついでと言わんばかりに雪片による攻撃で吹き飛ばされる。その攻撃は胴体部を表面部分だけだが、真一文字状に切り裂いていた。世界最強は本気で澪を殺そうとしていた。

 

 

『殺すか?殺すんだな!

 貴様らが歪ませたこの世界を、破壊できるこの俺をッ!?』

 

「貴様は一片たりとて残しはしない

貴様の方が世界を歪ませてるのだからな」

 

 

 そう言った瞬間、織斑千冬が澪の目の前まで移動していた。それに驚く澪に対して織斑千冬は先ほどのお返しと言わんばかり、瞬間的に最大まで力を上げて斬る。それに奇跡的に反応した澪は本能的に後ろに下がり、雪片は殲滅の脚部先を切断。さらに、その時に生じた衝撃と暴風が澪を吹き飛ばす。

 

 一方、澪はその言葉を聞いて笑っていた。腹の底から、盛大に笑っていた。織斑千冬は怪訝そうにしていたが、澪は笑いながら言う。

 

 

『俺が世界を歪ませる?ハハハ......ハハハッ!なんと滑稽な事を、貴様は実に笑いのセンスがあるな。

 貴様の言う俺が世界を歪ませるというのは、世界を元に戻すことだ戯けめ。結局貴様も、あの馬鹿共と同じだった訳か......女性主義者共とな。今の言葉でわかってしまったよ。織斑千冬』

 

 

 殲滅のデュアルアイセンサーが赤黒く光る。光は更に強みを増し、その光は動く度に空中に線を描く。

 

 

『それはいい事だ......元の世界に戻るということは、頭のネジが飛んだ馬鹿な女共の被害が減るのだからな。だがな────その前に俺が、俺達がその馬鹿共を一人残らず殲滅してやる。

 男尊女卑の時代より、この女尊男卑の時代の方が被害者は多い。それを知りながら、それでも尚貴様は......己の正当性を言うかっ!』

 

「なにを今更......!」

 

『そうか、なら────────逝けよ』

 

 

 一瞬だ。織斑千冬の視界には澪の姿がぶれた一秒にも満たない時間で、目の前に数十m離れていた所に居たはずの澪が滞空していた。次の瞬間、今度は織斑千冬が澪の蹴りで吹き飛んで海面に叩きつけられた。体制を整えようとするが、澪はそれを逃さず接近して天啓の剣による連続攻撃を放つ。一撃一撃が重く、その攻撃により二人の周りの海が大きく荒れる。

 織斑千冬が後方瞬時加速で距離を取りつつ、雪片を収納して代わりに葵を弾丸の如く放つ。飛翔する葵は風を切りながら、澪に迫るがそれを天啓の剣で叩き落とす。澪は瞬時加速で織斑千冬の目の前まで瞬間的に移動、それと同時にハンドクローブレードで突く......が、織斑千冬はそれを葵で弾いて軌道を逸らす。そして、足先に葵を展開して澪に蹴り飛ばす。超至近距離の葵による射撃は肩部装甲を抉るだけに終わる。

 そこで織斑千冬が、周辺に漂う膨大な粒子に気付く。双腕の破壊者の装備である全方位圧縮粒子衝撃波『エンドショック』が、織斑千冬を容赦無く襲う。それによって丁度近くにあった無人島の砂浜に吹き飛ばされた。そこを澪が強襲するが、雪片が澪を襲う。澪は天啓の剣を再度展開、二人の剣がぶつかり合う。

 

 

『貴様が......貴様が、全ての原点。この時代を作り上げた原点なんだよ』

 

「何を......!」

 

『とある学会にて唐突に発表されたIS。それを馬鹿にされて憤慨し、どうすればISの良さを伝えられるか考えていた開発者であり発表した当人である篠ノ之束にお前が言ったんだろ......『武力で見せつけてやれ』────と』

 

 

 澪のその一言に織斑千冬が強張る、それはほんの一瞬だったが澪にとっては隙だった。スラスターを全開にし、その勢いで砂浜の奥にある森に吹き飛ばす。しかし、瞬時にまた織斑千冬がやって来て鍔迫り合いが起きる。織斑千冬の表情は『なぜ貴様が知っている?』という顔だった。

 

 

『始まりのISコア二つが見ていたんだよ。『白騎士』と......そう、この『名前無き破壊者』のコア人格がな!』

 

「私は知らんぞ......あの時、当時ISコアは私が使った白騎士だけだったはず!束のあの部屋にも無かった筈だ」

 

『貴様が知らないのは当然。その時この殲滅のISコアはその特殊性故に、別の部屋に隔離されていた。しかし、白騎士のコア人格を通してその光景を殲滅のISコア人格が見ていたのだからな。

 

 

 

────────それと、白騎士だと認めたな』

 

 

 奴の腕に込められていた力が増した。奴の表情に、怒りが見えている......怒りたいのはこっちなんだがな。

 

 

『それは全ての始まりを迎える機体。白き騎士の名を持つ、世界に歪みを与えて世界を変えた機体。

 それは全ての終わりを迎える機体。それは危険性故に、隔離されていた。しかし、たった一人の男の無限に湧き上がる憎悪と怒りをしった篠ノ之束が、その男に向けた......たった一つの修正プログラムとも呼べる機体。

それが、俺達なんだよ......織斑千冬』

 

 

 澪は更に『お前達は篠ノ之束から、最悪として捉えられてるんだよ』と付け足すように言った。織斑千冬は衝撃を受ける。何故なら彼女は篠ノ之束が幼い頃からの親友と、信じていたからだ。彼女は考えた、確かに互いの事を親友だと......

 

 

『まあいい。もう話は終わりだ』

 

 

 澪はそう言って、天啓の剣に過剰とも呼べる程のエネルギーを送る。それによりその刀身が赤黒く光り輝き、雪片を両断した。IS神話を象徴する剣『雪片』は、今この場で斬られた。

 

 天啓の剣は織斑千冬が纏うカスタム仕様の打鉄の腕部・脚部とスラスター部分を破壊する。それと共に視界に表示されていた打鉄のSE量が底をついた。

 

 

『精神的強さは......俺達の方が上のようだな』

 

 

 澪がそのまま織斑千冬に止めを刺そうとした時だ。甲高い空気を裂くような音が辺りに響き、澪はセンサーでその正体を調べた。

 

 

『Fー15......自衛隊か!クソッ』

 

 

 自衛隊とは戦う意味が無い事を理解している澪は、目の前に居る織斑千冬を殺るのを諦めた。

 

 

『織斑千冬、覚えとけ......俺達はお前達に復讐をするとな』

 

 

 吐き捨てるかの様にそう言って、澪はその場から飛び去った。織斑千冬の打鉄はダメージレベルC-、とてもじゃないが澪を追うことは出来ない。織斑千冬は甲高いFー15のジェット音と殲滅から放たれる赤黒の光を見てるしか無かった。




次回予告

この世界が狂う

それは少しずつ

反逆の狼煙が上がるその日まで

剣を研ぐ

澪は新たな仲間と出会う

それは世界の希望


次回=合流=

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