一般人15歳で〝ちょっと〟変わった彼のIS生活(完結)   作:A.K

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すみませんでした(土下座)
更新が遅れた理由は活動報告にて
予告ですが、この話が終わって次の後位から福音編まで話が加速します。
それが何故かはあと数話したらわかるので、その時に
ではどうぞ!
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ああ......目覚めてしまった

目覚めさせてはいけないのに

狂う事により生まれ落ちる

絶対無二の戦士

怒れよその心

憎しみを溢れさせよその体

ソレは復讐で出来ていた


狂戦士

 巫山戯るな。それが俺が思った事だ。鈴と攻防を繰り広げていた中、突如ボーデヴィッヒのシュヴァルツェア・レーゲンから紫電が放たれた。

 瞬時にミーティアがレーゲンをスキャンし、外部から強制的に『VTS』が発動されたこと知らせてくれた。くそ......やはり発動させてきたか!

 

 

『ボーデヴィッヒ!』

 

「に、逃げろ......は、早く!」

 

 

 紫電を放つレーゲンの機体がドロドロに溶け、泥のようになっていく。その状態で尚、ボーデヴィッヒは開放回線で叫ぶ。

 

 

「狙いは、榊......貴様だ」

 

 

 その言葉の後、レーゲンだった泥がボーデヴィッヒを覆い尽くした。その後直ぐにアリーナの特殊合金製のシェルターが展開され、アリーナに避難勧告のアナウンスが流れ始めた。予想通り俺が狙いか......なら!

 

 

『鈴は織斑を確保してピットに戻れ』

 

「分かった......けど、榊あんたは?」

 

『俺を狙ってるなら俺はここに居る。それで逃げたら余計な被害を生むだけだ......行け』

 

 

 その言葉に従った鈴はアリーナの壁付近に避難していた織斑を回収。アリーナのピットに消えて行く際、鈴から個人間秘匿通信が入って来た。

 

 

『......気休め程度だけど、無事を祈るわ』

 

『ああ』

 

 

 そんな短いやり取りの後、個人間秘匿通信が切れた。

 

 

『こちら管制室です。榊君聞こえますか!?』

 

 

 管制室の山田先生だ。

 

 

『山田先生、現在の状況を』

 

『はい。現在こちらで判明しているのは、ボーデヴィッヒさんのシュヴァルツェア・レーゲンから高エネルギー反応が観測されてるという事だけです』

 

 

 管制室の方ではアレがVTSだという事はまだ分かっていないみたいだな。そう俺が思っていた時、管制室の通信から『榊よく聞け』と糞教師の声が聞こえた。

 

 

『アレはVTSだ。お前なら分かるだろう?』

 

 

 大変言い難いが、既に知ってた。だが言わんがな。それと山田先生が今の言葉を聞いて、少し狼狽えていた。それはそうだろう......なんせモンド・グロッソ出場者の動きを完全トレースし、尚且つ搭乗者を使い捨て......殺すシステムだ。

 

 

『管制室。教師部隊の到着はどの位だ?』

 

『......残念ながら、今現在教師部隊用のISは隣の第二アリーナにある。しかも、この状況だ....『来れないんだな?』......ああ。

 だが、救護班だけはピットに行かせてある』

 

 

 教師部隊は何故毎度毎度重要な時に役に立たない。

 

 そんなことを考えていた時、泥が見覚えのあるシルエットに変貌した。それは余りにも有名で最強に等しい機体。

 

 

『暮桜......!』

 

 

 日本最強にして世界最強の伝説的機体の一つ......現在の打鉄のベースと白式のベースとなった機体。それが接近戦専用IS『暮桜』。IS世界最強の称号である『戦女神』を持つ織斑千冬......屑教師の専用機。

 そう言えばVTSのトレースはモンド・グロッソ出場者全員に協力して貰ったと聞いた事があるが、これはその影響か......となるとボーデヴィッヒは!?

 

 

『ボーデヴィッヒはこのままでは......死ぬ?』

 

 

 俺の頭の中で反響する。VTSは搭乗者の命を考えないというそんな言葉が。それと同時に心の底からマグマのような熱い怒りが沸き上がる。

 またか......?またアイツらの勝手で関係ない奴らが巻き込まれるのか?巫山戯るな。何故またアイツらは同じことを繰り返す!

 

 

『榊君避けて下さい!』

 

 

 VTSが澪に向けて雪片を振るった。その斬撃は世界最強に相応しい最早神速の一撃。澪は虚を突かれた一撃に躱す事さえ出来なかった。一撃は名前無き破壊者を斜めに斬り裂いた。特殊装甲であろうとその一撃には関係無かった。余りの威力のためか、そのまま名前無き破壊者は壁まで吹き飛ばされた。幸い両断されることは無かったが中層付近までその攻撃は通っており、澪の視界には機体各部の被害報告が写し出されている。そして

 

 

──────────ああ......ああ!?

 

 

 レーゲンのコア人格から届くボーデヴィッヒの悲鳴に近い声。本来ならこんな事は無いが、俺だから行える事だ。

 

 

──────────嫌だ!私は......私は!

 

『n......a、泣...くな、ボーデヴィッヒ』

 

 

 そう言った時、いつの間にか近くまで来ていたVTSの攻撃が放たれる。今度は何とか回避したがダメージが影響しているのか機体の動きが悪い。まだ非固定浮遊部位の大型スラスターが無事なのが幸いして、瞬時加速でギリギリ避けれた。

 

 

『これなら、これならば!』

 

 

 VTSからボーデヴィッヒ以外の聞きなれない声が聞こえた。

 

 

『貴様......!』

 

 

 澪の言葉に反応したVTSが『さて......誰でしょうか?』と言う。澪には既にドイツ軍IS部隊管轄の最高責任者の......確かアーデルハイトであることはバレている......だからこそ言う。

 

 

『ドイツ軍IS部隊管轄の最高責任者アーデルハイトだろ......既にバレてんだよ』

 

 

『正解』

 

 

 そう言った時だ。目の前にまたVTSが現われた。VTSのモデルは糞教師......モンド・グロッソ初代戦女神『織斑千冬』で、今の衰えている状態じゃない全盛期の頃だ。

 

 

『ぐっ!』

 

 

 紙一重で斬撃を避ける──────────が、左腕に衝撃が走る。それと重たい金属音が鳴った方向に意識を向けると、名前無き破壊者の左腕が落ちていたのを認識した。まさか一瞬で二回の攻撃を放ったのか?

 

 

『ぐあっ!』

 

『榊君!?』

 

 

 管制室から山田先生の悲鳴が響き渡る。そうだったな、山田先生は知らないんだったな。それよりもだ、今の攻撃で左腕が失った。これにより態勢制御機能がまともに働かなく、回避しようにも回避出来ない。流石世界最強をトレースしたものだけではあるが......だが!

 

 

『ボーデヴィッヒィィィーーーッ!』

 

 

 俺のせいでこんな事に巻き込まれ、命を亡くしてしまいそうになっているボーデヴィッヒを助けなければならない。

 

 澪は瞬時加速で接近するが、VTSはその瞬時加速を予測していたのか鮮やかに避けた。

 

 

『アーーハッハッハ!

 いい気味ね破壊者?所詮貴方なんか私達女の敵じゃない、唯の奴隷......よっ!』

 

 

 背後を取られ盛大に地面に叩きつけられた。痛みは無い......だが、怒りが止まらない。

 

 

『貴様の様に頑張りもしない、何もしない愚か....がぁ!?』

 

『おだまり。その声を聞くだけで虫唾が走るわ......ああそれと、この娘はただの生贄よ......貴方のような物を壊すねぇ!』

 

『巫山戯るな......テメェらはまた、そうやって!』

 

 

────主!ボーデヴィッヒの奴の生体反応が低下してやがる!

 

 

『ぐうぅ......パージ!』

 

『小癪な』

 

 澪は表面装甲を爆裂パージしてなんとか拘束を脱出する。名前無き破壊者は瞬時加速で百数メートル程離れたところに移動し、ミーティアに話し掛ける。

 

 

ミーティア......聞こえるか?

 

────あいよ。言いたいのは換装できるかだろ?

 

 ああ。出来るか?

 

────出来るには出来るが、換装しても非固定浮遊部位や左腕・胴体部の損傷が激しい所は出来ない。

   それに、左腕の切断面からエネルギーが漏れる関係で出来たとしても3分......いや、2分程しか持たない。ボーデヴィッヒを助けられるその時まで取っておくべきだよ

 

 2分......か、充分だ。

 

────やる気か?

 

 ああ。ボーデヴィッヒも、コア人格も助けてやる......必ず。

 

────救出確率は?

 

 確率なんてない......これは確定だ。

 

────よし来......っ!?上だ!

 

 

 

 状況は過去最悪。ダメージレベルはB-で、敵は最強と呼ばれるISのコピー。普通なら詰んでいる。だけど......負けられない。誰かの為に、これ身を削ってでも、正体がバレようとも......決して!

 

 澪は感じた。機体の各部の発光箇所が深紅に、橙色に眩しいと言わんばかりに輝き、出力が爆発的に上昇したのを。

 

 

『流星の破壊者......オーバード・ブースト!

 そして、A.I.S.S起動!』

 

 

 澪は非固定浮遊部位だけをOB状態にし、VTSの奇襲を回避。VTSは攻撃を避けた澪を探し、発見するが捉えられない。見えるのは左腕から漏れ出す深紅のエネルギーとスラスター光だけだ。

 VTSとそれを操る者が驚く。なんだこれは?センサーには映っているのに何故見えない......と。

 

 

『腕ぇっ!』

 

 

 一瞬の衝撃と共にVTSの両腕が宙に舞う。しかし、VTSは斬られた所を他の泥で補って再生する。

 

 

『ボーデヴィッヒ』

 

────その声は......榊?

 

 

 俺はコア人格を通して、ボーデヴィッヒの意識があろうISコア深層域に直接声を掛ける。先程コア人格が通してボーデヴィッヒの声を聞いた時にふと思ったのだ。今ボーデヴィッヒの意識がISコアの中にいるのでは......そう考えていたが、どうやら正解だったようだ。

 

 

────その身体は......私のせいなのか?

 

『違う。それに、もう俺は......ヒトでは無い』

 

────何を言って......

 

 

『何をごちゃごちゃと言ってるのよ!』

 

『ぬん!』

 

『な、何故だ......先程までとは全く違うじゃない!?そ、それに動きも悪く......?』

 

 

 VTSが一瞬の反撃......だが、すぐに躱され左足を抉り取られたという結果が残った。

 

 

『ボーデヴィッヒ。俺はお前を必ず助ける......だから、意識を保て。レーゲンのコア人格と共に、助ける!

 目を開けて

 歯を食いしばり

 手を指し伸ばせ!』

 

 その瞬間、不思議な事が起こった。VTSが痙攣し、胴体部中央からISスーツ姿のボーデヴィッヒが吐き出されたのだ。澪は最早自身の正体がバレることを恐れず、名前無き破壊者であるIS体を解いて人間体に戻る。案の定管制室から通信が来ているが無視。そして、澪はPICを最大限に活用してボーデヴィッヒに接近する。

 

 

「行くぞ」

 

 

 VTSがボーデヴィッヒを奪せんとする澪に向けて、泥の雪片を投げた。澪はこれをパワーアシスト全開にした腕で方向をずらす事で難を逃れる。あと少し......その時だった。

 

 

『この小娘ぇ!』

 

 

 痙攣していたVTSから一本の触手らしきものが飛び出て来た。その先端は槍のように鋭く尖っており、その矛先は......空中に身を投げ出されていたボーデヴィッヒの胴体に向けていた。

 澪には分かった......分かってしまった。それが何を意味すべきか。だからこそ叫ぶ。止めろ!それだけは止めろと......しかし、VTSの触手らしきものが真っ直ぐボーデヴィッヒを貫いた。ブシュと音が鳴り、ボーデヴィッヒから鮮血が地面に向けて吹き出される。

 

 

『ボ、ボーデヴィッヒさん!』

 

 

 管制室から悲鳴が聴こえる。今日何度目か分からない......それより今は

 

 

「こ、この......糞野郎がァァーーーーッ!」

 

 

 澪は激昂しながらVTSに近付き、復讐者の剣で触手を斬ってからVTSをパワーアシスト全開で殴り飛ばした。澪は抱えるのに邪魔な部分の触手を切り落とし、ボーデヴィッヒを抱える。

 

 

「管制室!救護班をピットに呼べ、早く!」

 

『既に居ます!榊君は急いでボーデヴィッヒさんをピットに運んで下さい......早く!』

 

「了解!」

 

 

 その直後、生態ユニットを失ったVTSが先程と同じく触手を俺に向ける。しかし、今の俺にはそんなのに構う余裕なんてない。触手を避け、すぐ様ピットに戻った。しかし、そのピットにも触手が押し寄せて来る......だが鈴の甲龍と一夏の白式が触手を叩き斬る。二人は澪が生身でやって来た事について言ったが、澪から放たれる殺意もとい怒気に口を閉ざした。

 

 

「......ボーデヴィッヒを頼みます」

 

 

 救護班にボーデヴィッヒを預けた澪はそう言うと、生身のまま鈴と一夏に迫る触手を吹き飛ばす。それを見た鈴と一夏が背後にいる澪に声を掛けようとして一瞥し、その光景に息を呑んだ。両目が深紅に光輝いているのだ。

 

 

 貴様らはまた

 

 俺から奪おうとするか

 

 友と呼べる存在を

 

 大事な者を

 

 

 鈴と一夏は澪から感じ取れるIS反応が急激に増大していることに気づく。その変化は澪の周辺の空間が僅かに揺らいでいる事から見て分かった。同時に殺意もとい怒気がかつて無い程高まっている。そして、憎悪の感情も高まっていた。それが、いけなかった。

 

 

────主!それ以上は駄目です!

 

 

 突如聞こえた女性の声に鈴と一夏、それと管制室の教師達が驚く。その言葉の次の瞬間、澪から真紅の稲妻が漏れ始める。さらに、澪の全身が黒く染まる。澪が呟く。

 

 

 これは始まり

 

 そして終わり

 

 

 声が響く。これは開放回線では無い。なのに、ピット内......さらにはアリーナ中に響いていた。言葉を発するごとに澪は黒く染まる。そして、黒く染まった部分が蠢き新たな姿を形成する。その姿は名前無き破壊者に似ていて似ていなかった。背中には黒い翼に似たものが生えている。

 

 

 もう止まらない

 

 止められない

 

 お前達を滅するまで

 

 

 

 黒く染まった澪が一瞬膨張し、弾けた。

 

 

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

────システム再構築......オールクリア

   異常形態移行完了

   『殲滅』起動します。

 

 

 終わりが始まる。




次回予告

それは天啓

それは教え

我が願い

我が怒りは

新たな身体を作った


次回=殲滅=

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