一般人15歳で〝ちょっと〟変わった彼のIS生活(完結)   作:A.K

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願う事は

確かな日常

あの地獄は俺一人で十分

なのに







世界はどれほど俺を苦しめる


最悪防衛

試合開始と共に織斑が動いた。奴の機体『白式』は、近接特化型で武装は近接ブレードの雪片弐型だけ。そうなればこうなるのは自然的な事だが、それは教科書通りの攻め方。なおかつフェイントの一つもしないとなれば、対処どころかどうぞ攻撃して下さい……と言っているようなものだ。

 俺は真っ直ぐ突っ込んで来る織斑に、反逆する血の牙達の大半を向かわせた。反逆する血の牙達は様々な動きで織斑に迫り、一瞬で織斑を囲む。その光景はまさに檻、しかも真紅の粒子刃を中に居る織斑に向けている。

 

 織斑はなんとか脱出しようとしているが、反逆する血の牙達は案山子ではないぞ?

 

 

「くそっ!?なんだよこれ!?」

 

『全機攻撃』

 

 

 澪の一言に、それまで一夏の攻撃に対して避けるだけであった反逆する血の牙達が白式に攻撃を開始。一夏はそれに反撃しようと雪片弐型を振るうが、反逆する血の牙達はそれを避けつつ瞬時に守りが薄い所に突き刺さる。 

 

 

『織斑……前にも言ったはずだ。お前の動きは酷く単純だとな』

 

「くそっ!?くそっ……!」

 

 

 一夏は抗うが、反逆する血の牙達の攻撃は激しさを増すばかりだ。その光景は獲物に群がるピラニアと捕食される獲物。今このアリーナでは鈴とボーデヴィッヒも試合をし、激しい攻防を澪から離れた所で繰り広げている。しかし、アリーナの人々は澪の行動に戦慄していた。

 有り得ない。それがアリーナに居る人々の総意である。反逆する血の牙達は分類上は、脳波遠隔操作兵器。つまり特定条件を満たしていなければ扱う事が出来ない、限られた者達しか使えない武装。それを1桁……2桁を越える数を簡単に操って見せているからだ。本当は名前無き破壊者の中に居るコア人格達が操っているのだが。

 

 

『……なに?』

 

「うおおおおお!」

 

 

 突如雄叫びを上げた一夏が、反逆する血の牙達を突破して忌々しい糞教師と同じ単一仕様能力『零落白夜』を発動させながら迫り来る。澪は驚いていた。ほぼ今ので決まるかと思っていたのだ。

 

 

「喰らえェェーーーッ!」

 

 

 一夏はそう叫びながら迫る。澪は予想外の結果に戸惑ったが、これも対応してある。澪はボーデヴィッヒに個人間秘匿通信で、指示を送る。ボーデヴィッヒは試合開始直後から行っていた近接戦闘を止め、鈴から距離を離し始めた。

 

 

「逃がさないわよ!」

 

「甘い!」

 

 

 ボーデヴィッヒは追撃に来た鈴に目掛け、ワイヤーブレードで応戦するが鈴が双天牙月の巧みな払い術によって弾かれ、甲龍の第三世代型特殊兵装『龍砲』の圧縮空気弾が炸裂し、ボーデヴィッヒはアリーナの地面スレスレまで落とされる。だが!

 

 

『丁度いい……照準合わせろ!』

 

『分かっている!』

 

 

 

 ボーデヴィッヒに鈴が上空から迫りつつあり、シュヴァルツェア・レーゲンの大口径リボルバーカノンが鈴に向いているが、ボーデヴィッヒの目には鈴は映っていない。澪こと名前無き破壊者にも一夏が迫り来るが、頭部バイザーには一夏は映って入るが澪は一夏を見ていない。互いに見ているのは……

 

 

「喰らえ!」

 

『真紅の世界……砲撃モード』

 

 

 澪はボーデヴィッヒに迫る鈴を

 

 ボーデヴィッヒは澪に迫る一夏を、それぞれ捉えていた。

 

 

「っ!?龍砲前へ!」

 

「ぐああっ!?」

 

 

 鈴は澪の攻撃を、龍砲を盾にすることで難を逃れた。しかし、一夏は虚を突いた攻撃を躱せず直撃。一夏の白式は、澪の攻撃と零落白夜の影響でSEが相当減っていたが、ボーデヴィッヒの大口径リボルバーカノンの直撃を受けてSE残量は二割まで低下した。

 

 

『予定通り……』

 

「ああ……では

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────────────────────交代だ」

 

 

 鈴は近くに居たボーデヴィッヒの言葉を聞いて、まさか?と考えた。

 

 

『了解だ』

 

 

 鈴はこの時自分を呪った。忘れていた……鈴はこの時ばかり自分のすぐ暑くなる性格を酷く呪った。なんせこの大会は

 

 

『今度は俺だぞ鈴』

 

 

 2対2のタッグ戦だ。

 

 今度は澪対鈴、ボーデヴィッヒ対一夏の戦いが始まった。これにアリーナから歓声が上がった。

 

 

『な、な、なんとぉぉ!?なんと綺麗なバトンタッチ!試合開始からまだ10分も経ってませんが、なんという激闘だぁぁ!』

 

 

────────────────────────────────────────

 

「さて、次は私が相手だ」

 

「ボーデヴィッヒ……!」

 

 

 ボーデヴィッヒは地面に屈している一夏に向けてそう言う。それに対して一夏は、先ほどのダメージが響いているのか苦しそうに言う。

 

 

「地面に座っている時ではないぞ?」

 

 

 一夏はその言葉を聞くと同時に、体が吹き飛ばされたことを痛みによって知る。一夏は吹き飛びながらもPICで体勢を整え、己を吹き飛ばした相手……プラズマ手刀を展開しているボーデヴィッヒを睨む。

 

 

「何しやがる!?」

 

「何とは?今は戦闘中だ。相手が戦闘不能では無ければ攻撃するのは当たり前だ」

 

 

 そう言うのと同時に攻撃を再度仕掛ける。

 

 『プラズマ手刀』シュヴァルツェア・レーゲンの近接武装であるプラズマ手刀は、腕部から展開される内部内蔵型の武装である。特徴は腕から伸びている形の為、腕を振るう事が攻撃となる。今現在ボーデヴィッヒが相手する一夏こと白式の武装『雪片弐型』は長刀。手数の差では勿論、搭乗者の技量を合わすことで圧倒的有利なのである。

 

 

「どうした!?私に勝てなければ破壊者に勝てんぞ!」

 

 

 そう言いながらも止まることのない一方的な圧倒的連撃の応酬。一夏は雪片弐型でそれを受け止めるが、鋭い攻撃が白式を傷付けていく。

 一夏はこの状況を打破すべく、雪片弐型もとい白式の単一仕様能力を解放する。

 

 

「『零落白夜』か……だが!」

 

「おおおおおお!」

 

 

 ボーデヴィッヒは零落白夜発動状態の雪片弐型の斬撃を難なく交わし、その度に鋭い一撃を何度も打ち込む。一夏はそれに怯むことなく攻撃を続ける。しかし、何度やっても同じ事だった。

 

 

「しまっ!?」

 

 

 白式のSE残量の影響か零落白夜が強制停止し、通常の近接ブレードに戻った雪片弐型。それを好機にボーデヴィッヒはプラズマ手刀で雪片弐型を弾き飛ばす。唯一の武器を弾き飛ばされてしまった一夏は悲鳴じみた声を上げた。一夏は直ぐにその場から退避しようとしたが、脚部にワイヤーブレードが絡まっていた。

 

 

「ふん……終われ!」

 

 

 それは一瞬だった。ワイヤーブレードを引っ張ってボーデヴィッヒは一夏を近づけ、プラズマ手刀による乱舞の様に攻撃を叩き込んだ。白式のSEが切れ一夏は地面に膝を付け悔しがっていた。

 

 

「アイツの後だからとは言え、貴様……弱過ぎるぞ」

 

「……テメェ!」

 

「貴様はアイツを倒すと……豪語しているみたいだが、私相手にこのザマでは何時まで経っても倒せん。貴様は」

 

「俺……は……」

 

 

 一夏にそう言い、未だ戦闘続行中の澪に支援を行う為機体を動かそうとしたその時だ。視界に一つのワイプが表示された。

 

 

──────────irregular delete

──────────DESTROY System standby

 

 

「はっ?」

 

 

 ボーデヴィッヒは訳が分からなかった。突如出現したワイプには紅い文字で物騒な事が書いてあることを理解する。そして、それと共に『ボーデヴィッヒ隊長』と……声がした。ボーデヴィッヒは混乱する頭の中でその声の主……ドイツ軍IS管轄の最高責任者の声だと思い出す。

 その時だ。ボーデヴィッヒが纏うシュヴァルツェア・レーゲンから紫電が放たれる。

 

 

──────────強制起動プログラム発動

       ターゲット一人の沈黙を確認……ターゲット確定

       ターゲット『名前無き破壊者』確認

       『VTS』起動

 

 

「き、貴様……何を!?」

 

『貴女には生贄になってもらうわ』

 

「生贄だと!?」

 

『そう!愚かな男共を消し去る為の戦女神の誕生の贄としてねぇ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今思えば、これが全ての始まりだった。

 

 私のせいで……アイツの運命の歯車が動いたんだ。

 

 いや──────────世界そのものが動き始めたんだ




次回予告

遂に起きた

運命の歯車が動き出す


──────────主だめです!

『GUAAAAAAAAAaaaaaーーーーッ!』


次回=狂戦士=

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