一般人15歳で〝ちょっと〟変わった彼のIS生活(完結)   作:A.K

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悪意が動く

それは全ての始まり

密かに動き出す

世界の終焉

破壊者の意味

運命の針は動き出す


タッグトーナメント当日

 あれからと言うと、俺とボーデヴィッヒはお互いの能力を理解すべく一緒に訓練を行った。俺はボーデヴィッヒのシュヴァルツェア・レーゲンをノーネーム達によってスキャンし、武装の情報を得ていたからある程度の戦法は予測していた。 

 軽めの模擬戦を行って互いの武器や機体の特徴を把握、そこから互いの性能を活かせる戦法をいくつか作った。流石現軍人であるだけはある。模擬戦で反逆する血の牙達を使った時は、初見であるのにも関わらず幾つか堕とされた。それと、やはりシュヴァルツェア・レーゲンには第三世代武装が搭載されており、停止結界……アクティブ・イナーシャル・キャンセラー。通称『AIC』と呼ばれる武装が付いていた。慣性停止能力と呼ばれ、簡単に言えば物体の動きを止める。無論弱点はあるようで、物体の動きを止める為には集中しなければならず、多数戦だと使用するのには向いていないという事だ

 まあそんな訳で……今日はタッグトーナメント当日。連携の方は何とかなった。ラウラがあそこまでのレベルを持ってなければ、こうはならなかっただろう。

 

 

「どうした?」

 

「いや、ただの考え事だ」

 

 

 いかんな。試合前だと言うのに相方を心配させるとはな

 

 

「ボーデヴィッヒ。俺達の対戦相手は誰か分かったか?」

 

「うむ。相手は────」

 

 

 

 ここ第2アリーナに解説者2年生新聞部部長『黛薫子 』の声が、アリーナの各所に設置されたスピーカーから発せられる。

 

 

「さて、タッグトーナメント第一試合の選手紹介をしまぁす!」

 

 

 それにしても薫子さんテンション高いな……と思いながら、ピットのカタパルトに脚を付ける。

 

 

『まずはこの人!IS学園や世界中から『破壊者』と呼ばれる男……榊澪選手!』

 

 

 紹介が終わると同時に立体ディスプレイから管制室の山田先生の顔が映り、発進準備完了の事を伝えられた。

 

 

『名前無き破壊者……榊澪出るぞ』

 

 

 それと共にカタパルトから飛ばされ、一瞬の衝撃の後俺はPICと非固定浮遊部位の大型スラスターを起動させて規定位置まで移動した。何時もならブーイングの嵐だが、今日は各国の政府や企業の重鎮達が来ている訳で学園側から警告されているのだ。

 

 

『次はドイツ代表候補生及び世界最強とも呼ばれるIS部隊隊長であり、『ドイツの冷水』と呼ばれる……ラウラ・ボーデヴィッヒ選手!』

 

 

「む……気恥ずかしいな。ラウラ・ボーデヴィッヒ、シュヴァルツェア・レーゲン出るぞ!」

 

 俺が出てきたビットからボーデヴィッヒも出て来た。俺の時とは違って歓声がアリーナを埋め尽くす。

 

 

『以上、榊澪&ラウラ・ボーデヴィッヒペアです!

 続きまして、中国代表候補生にして榊澪と激闘を繰り広げ、国内外で人気を誇る……凰鈴音!』

 

 

 鈴が出てくると同時に沸き起こるりんにゃ〜んコール。ふむ……怖いな。ボーデヴィッヒもこの事態にビクッと身体を震わせていたぞ。

 

────りんにゃ〜ん!

 

 

 ノーネーム。お前もか

 

 

「澪とラウラ……まさかあんたらが初戦とはね」

 

『俺もそうだ。だが、俺としてアレから鈴がどれほど強くなったか知れる機会だ。楽しみだ』

 

「貴様が中国の代表候補生筆頭か……私にどれほど通じるかな?」

 

「アンタが世界最強IS部隊の隊長さんね?本国から話は聞いてるわ」

 

「ほう?それは光栄だな」

 

 

 その様なやり取りをしていた時だ。

 

 

『そしてそして!世界最強の唯一の家族であり、世界最初のIS男性操縦者……織斑一夏選手!』

 

 

 鈴の相方────それは織斑だった。今回の対戦相手は近〜中距離・近接特化機体で構成された相手だった。対してこちらはどちらも全距離対応機体で構成されている。普通ならこのような相手には中〜遠距離での射撃戦を仕掛けるのが一番良い手だが、今回は違う。

 

 

『そうか……鈴のコンビはお前か、織斑』

 

「ああ。鈴とは長い付き合いで、鈴となら良いコンビネーションが出来るからな」

 

『ほう……?だが、貴様は鈴とのいざこざは解決したのか?』

 

 

 ここで一つ質問する。クラス代表戦の時に鈴と織斑が喧嘩をしていたが、あれからどうなったのかはまだ知らなかった。

 

 

「仲直りしたさ。あと……」

 

『あと?』

 

「────もう2度と泣かせねぇよ」

 

 

 ふん……前よりはいい面構えになったじゃないか

 

 澪はそう考えながらも、居合の構えをする。それに対して一夏も澪と同じように居合の構えをとる。両者の考えは酷く単純……試合開始直後の瞬間的攻撃だ。

 

 

『そうか。あとは……』

 

「ああ」

 

「『テメェをぶっ潰す!!』」

 

 

 俺と織斑の声が重なる。互いの声に怒りが交じるのが良く分かる。日常生活の中で感じていた怒りが、戦いという形で今まさに解き放たれようとしている。

 ハイパーセンサーで後方にいるボーデヴィッヒに意識を向けると、既に戦闘態勢に入っておりそれは織斑の後に居る鈴も戦闘態勢に入っていた。そんな時だった、強制的に周りの景色がゆっくりとなっていく。これは……?

 

 

────主、緊急事態です。

 

 

 それはノーネームの声だ。世界が停止した……否、実際は動いている。これは澪の思考速度がノーネームによって強制的に極限まで早め、周囲の光景が止まっているように見えているだけだ。

 

 

 内容は何だ?

 

────シュヴァルツェア・レーゲンについてです。どうやら相当危険な物が積まれているみたいです。

 

 ノーネームから見ても危険とは……なんなんだ、それは?

 

 

 俺がそう言った後直ぐにノーネームからとあるデータが、直接頭に叩き込まれる。データ名は……『VTS』だと!?

 

 何故こんなものが……何で葬られた筈のシステムが、ボーデヴィッヒのシュヴァルツェア・レーゲンに載せられてるんだ!?あのシステムはあまりの危険性に、消されたんじゃないのか?

 

 

 VTS……正式名称『ヴァルキリー・トレース・システム』と呼ばれるシステムである。嘗てIS委員会の元作られていた。これはモンドグロッソ出場者の動きを完全にトレースし、それを元に誰もがモンドグロッソ出場者達と同じ様な動きができるようにする……という物だった。

 嘗てそれがIS系列の情報誌や新聞、更にテレビ等でも報じられ将来を期待されたシステムだった。しかし、後になって分かった事がある。それはシステムが搭乗者の安全を無視してしまうという事だ。通常ISには絶対防御やシールドエネルギーがあり、大体はそれによって外界からのダメージを防いでいる。それでもダメージを受け続ければ操縦者生命危険域・機体維持警告域となる。しかし、VTSは絶対防御やシールドエネルギーの機能が停止、さらに搭乗者の命など無視する動きをする……そんな事が分かったのだ。

 これを知った当時のIS委員会は、直ぐにVTSに関する全てを消去したのだという。

 

 

────恐らく、現在のドイツ軍IS管轄の者に原因があると思われます。現在のドイツ軍のIS管轄の最高責任者がVTS開発に携わった女性職員です。どういう経緯でそこまで来れたかが不明で、これまた女性主義者ですね。

 

 ノーネームそいつは来てるのか?今日、今……ここに

 

────はい。IS学園VIP来場者の名簿リストに載っています。

 

 ボーデヴィッヒの様子から見て、まだシステムが稼動してるわけではない。ノーネーム

 

────はい。なんでしょうか主

 

 試合開始と共に、ノーネームは刀奈の所に行ってこの事を教えろ。奴の狙いは俺と織斑の抹殺だと思われる。そして、システムはこの試合で必ず起動させられる。緊急時の手筈を刀奈と取れ。あと、奴の確保だ。

 

────主……了解です。

 

 

 世界が戻る。それと同時に試合開始の合図が鳴った。




次回予告


重なる思惑

重なる剣戟

穿つその一手

最悪を防げ

次回=最悪防衛=

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