一般人15歳で〝ちょっと〟変わった彼のIS生活(完結) 作:A.K
それは己自身
力とは使う事
しかし
それは制御出来なければ
己を殺す
デュノア襲撃事件から更に日が経ち、俺達生徒会や上層部の話し合いによってやっとタッグトーナメントの企画が決まった。結果は俺の出した案がそのまま決定となり、1年生と3年生だけが行う形となった。勿論だがやはり2年生の中にはこのことについて不満だと発言していた生徒が居た。
案を出した俺がその生徒達……上級生だから先輩方と話し合いもとい説明の場を提供した。話を聞いた所、やはり『2年生だからといって省くのは良くない』『私達も企業の方にアピールしたい』ということが出た。本心は2年生もやらしたいのだが、スケジュールと様々な意見が出た中での一番良い案がこれだったんだ。本心からだがこれについては本当に申し訳ないと思っている。企業等にアピールしたいという希望者にはタッグトーナメント前に、試合を行う事にした。この試合を撮って、それをタッグトーナメント当日に来る企業等に送るという事になった。この事を知らすと不満者達は納得してくれた様だ。
それと、あのデュノア襲撃事件の後から織斑の様子が変だったので刀奈に相談してみた。いくら敵対しているからと言っても、普段は別に嫌っている訳ではない。一応敵対してる形であっても、ちょくちょく話し掛けてきたりする。俺が奴を嫌うのはあのたまに出る変な思考が、この上なく一番嫌いなのだ……っと、話が逸れたな。刀奈曰く織斑は少し人間不信に落ちかけているとの事だ。織斑の奴3人目の男子という事もあって仲良くなろうとしてた……が、その相手があんな事をしたからな。
この学園にはカウンセラーの先生も居て、後日織斑にはカウンセラーを受けてもらう事になった。この件が決まった直後、鈴が織斑の様子が変だということを相談してきた。それについてはもう分かってるので、鈴に全てを話した。鈴はこの話を聞いた後に「私になにか出来ない?」と言って来たから、とりあえず一定の距離を置きつつ普段通りに接してやれと言った。そんな事があったが、今は毎日を平和にいつも通りに過ごしている。
「……ふう」
俺が今居るのは第一アリーナ。時刻は四時を回っていて、今日はODA『双腕』こと『双腕の破壊者』を纏っての訓練だ。俺はまだこの双腕をあまり使いこなせていない。なにせこの双腕は今あるODAシリーズの中で最大の大きさとパワーを誇るからだ。『双腕』のパワーは他シリーズと圧倒的までの差をつける程だ。ただでさえ出力が高い『名前無き破壊者』よりもう数段上……下手したら死人が出かねない。その為、学園上層部からは使いこなせる迄人に対しては使用不可となっていた。その為、こうして放課後を使って双腕に慣れるための訓練を行なっているのだ。
────どうですか主?
「俺としてはまだ駄目だ。これでは死人が出る。」
そう言うと俺は辺りを見渡す。そこには穴・穴・穴だらけで、あとは爆炎やら煙やらが上がっている。一応出力調整やらも行っているが、如何せん出力が高いのか未だにこの始末である。
────主。ハイパーセンサーにIS反応を確認
む?またあいつらか……
────いえ、これは……シュヴァルツェア・レーゲンです。
ノーネームがそう言うと、アリーナのピット出撃口からシュヴァルツェア・レーゲンを纏ったラウラ・ボーデヴィッヒが現れた。
「貴様は……?」
ボーデヴィッヒは俺を見ると両腕から光る剣を展開した。あっ、この姿だからか。
澪はそう思うと名前無き破壊者に姿を戻した。そうするとボーデヴィッヒは光る剣……プラズマ手刀を収納し、構えを解いてすぐ近くまでやって来た。
『済まない。驚いたか?』
「謝る程ではない……が、今のはなんだ?本国にあったデータには無かった姿だが」
『一応この学園内だけでの情報だが、コイツはODAと呼ばれる名前無き破壊者が作り上げた専用アーマーだ。ざっくり言うとパッケージ』
それを言うとボーデヴィッヒは驚いていた。普通の機体はODAの様なパッケージの自動作成や、その場で瞬間的換装なんか出来るはずが無い。それを一人で、不可能と呼ばれた瞬間的換装をものの見事に行ってるからな。
『ボーデヴィッヒ。一応今の情報は学園外では話さない様にしてくれ。これがバレるとまためんどくさい事になる』
「了解だ。しかし、またと言ったが前にもあったのか?」
あー……これは名前無き破壊者の情報漏えいの事だ。あの件は大変だったが、学園内に潜む害虫を駆除する元となったから俺としては複雑だな。
『今世界に知れ渡っている名前無き破壊者の、ボーデヴィッヒも見た情報の事についてだ。それは今は居ないがこの学園に居た女権団やIS委員会のスパイやらその手下が、勝手に外部に漏らした情報なんだ』
「っ……なんと」
『今はスパイや手下は俺が所属する生徒会や、学園の上層部の働きで駆除したから情報漏えい対策は出来ているからな。あれ以外は名前無き破壊者に関する情報は、学園内で留まっているんだ。情報漏えいした時は、あらゆる国や企業からの電話が殺到して対処が大変だった』
「お、お前も大変だな」
こら、肩に手を置くんじゃあない。哀れみの目で見るな。
『そう言えば』
「なんだ?」
『ボーデヴィッヒはタッグトーナメントの申し込みはしたのか?』
忘れていたが、タッグトーナメントは二人一組で組む。そしてその組はタッグトーナメント参加用紙に自分と相手の名前を記入し、担任か生徒会室前に置かれてある受付ボックスに入れるか渡せば申し込みは完了である。しかし、申し込みは期限がある為期限外だと当日にくじ引きの抽選でチームが組まれるのだ。
「まだだ」
『……生徒会役員としては、早めに出してくれ。そうしなければ後が大変だ。』
「まあまて、私がここに来たのはそれに関する事だ」
そうボーデヴィッヒが言うと、何処からともなくタッグトーナメント参加用紙を出した。多分拡張領域に入れて今出したのだろう。突っ込んでは駄目だ。ボーデヴィッヒはふんすっ!と言わんばかりの顔なのだ。守ろうこの笑顔
「私と組んでくれないか」
『俺か?』
自分で思うのも何だが、俺のヘイト値は凄く高い。俺とつるむとなると下手したら何かしらのトラブルに巻き込まれる可能性だって有り得るのだ。
『しかし、どうして俺なんかと?』
ボーデヴィッヒはそんな可能性もあり得るのに、なぜ俺と組もうとするんだ?
「簡単な事だ、それは『勝つ為』だ」
『勝つ為……だと?』
「そもそもだが、私が軍属であることは知っているな?」
それは……そうだな。自己紹介後のやり取りで分かったからな。
「私は、自分が所属する部隊の隊長を務めている。しかも、ISを使ってのな。軍事目的で使用不可のISによる部隊の隊長となると、相当グレーな立場にいる訳だが……話がそれたな。
私は部隊の部下達からIS学園に居る時ぐらい楽しんで来いと言われてな、私はそのつもりでいる。しかし、だからと言って怠けるつもりなんてない。寧ろ、このタッグトーナメントで頂点を目指してその結果を私の部下達に持ち帰るつもりだ。その為に……是非頼む!」
『長い!ざっくり言え!』
「部隊の皆の為に勝ちたいのだ」
つまりなんとしても勝ちたいので、俺と組んでくれという訳か。
『別にいいぞ。俺と組んでくれる奴なんていなかったから丁度良かった』
────主
分かっている
『ボーデヴィッヒ』
「ああ……散開!」
その一声と共にその場を離れる俺達。その直後俺達がいた所で爆発が起きた。
「愚か者が!」
ピット出撃口前から開放回線を使い、こちらに向けて叫ぶ声が聞こえた。そこには打鉄を纏った二人組がこちらに向けIS対応ロケットランチャーを構えていた。俺はいつも通りの手段で解決しようとした。だが、俺が行動を起こす前にボーデヴィッヒが瞬時加速で打鉄2機が居るピット出撃口前に瞬時加速で移動し、ワイヤーブレードで2機を拘束した。……取り敢えず反逆する血の牙達をボーデヴィッヒの護衛をさせるか。
「貴様ら……警告無視の攻撃とはいい度胸だな?」
使用許諾は……出ているのか。模擬戦として俺に襲撃しようとしたのか、これなら別に違反している訳では無いとあいつらは言えるだろう。
『ボーデヴィッヒ。それ以上言っても多分無駄だ、コイツらは俺に襲撃するのであるなら、誰かを巻き込んでも全然構わん奴等だ』
「ほう?なら私はコイツらに攻撃対象と見られた訳か?なら……!」
ボーデヴィッヒはそう言って、ワイヤーブレードを打鉄2機を拘束したまま掴む。そのまま澪に「お前も持て!」と叫び、澪もボーデヴィッヒのワイヤーブレードを掴む。
「このまま……ジャイアントスイングをやろうではないか!」
『ボーデヴィッヒ。その発想はなかった』
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「……よし。これでOKだ」
「うむ。これからよろしく頼むぞ榊」
ジャイアントスイングで打鉄2機のSEを削り切った俺達は、生徒会に来ている。俺の手には俺とボーデヴィッヒのタッグトーナメント参加用紙がある。
「うん。これで榊君も決まったわね……おねーさんの心配事が消えたわ」
「おねーさん?お前と生徒会長は血縁関係なのか?」
「違う」
これでボーデヴィッヒと組んだ訳だが、今思うとこの組み合わせは多分一年の部では最高戦力だと思う。ボーデヴィッヒの動きを見ていたが、動きに無駄が無く隙もない。そしてその戦闘技術は間違い無く一年の中ではトップ。俺も既に並の代表候補生にはもう遅れをとることはない。そして刀奈はボーデヴィッヒに余計な事を言わんでくれ
「では、俺達はこれで失礼します」
「では」
「うん。二人の活躍を期待するわ……頑張るのよ」
生徒会室を出る前に言われたその言葉に、俺は再度意識する。俺は名前無き破壊者がある為、まだ学園外から出だしはされない。しかし、それでも未だに俺には後ろ盾が無い一般人で、本来ならとっくに追い出されている筈だ。俺には守ってくれる者と言うのは無い。真の意味でISを持っているだけの、何も無い只の一般人なのだ。
何れは俺の正体もバレるかもしれない。ISと人間の完全融合体────新たな生物という事が。そうなった場合俺はここを出ていくつもりだ。しかし、そうなるのはまだ先だ。今は少しでも良い結果を出して学園から追い出されない様にしなければならない。その為に……
「ボーデヴィッヒ」
「なんだ?」
「やるからには勝つぞ」
ボーデヴィッヒは俺の言葉を聞いて「無論だ」と言う。
俺は……やるしかないんだ。
次回予告
研いだその連携
高まるその闘志
解き放て
次回=タッグトーナメント当日=