一般人15歳で〝ちょっと〟変わった彼のIS生活(完結) 作:A.K
・襲撃者に対して怒る事が減った
・いや、寧ろ萎えてる
・敵意の視線が若干減った
・降伏するか確認
・ノーネームのポンコツ(?)化
デュノア襲撃事件からさらに日が経った。最近あの時俺が行った行動により、この学園が救われていた事に驚きの声が上がっているのだ。この間行われた緊急の全校集会で、刀奈がデュノアが行った行動と最後に使用した武器についての説明をした。
俺は……名前無き破壊者の能力やスペックは既に学園内の人間なら全員知っている事だ。俺はあの後デュノアが使用していた武器が、試合モードとはいえ最強を誇る武装の二割程の威力を持つ事を報告した。刀奈は俺がクラス代表決定戦にて放った最強武装の攻撃が一割程だと知らせていたので、酷く恐怖していた事を覚えている。
話が逸れるが、ISには基本的に防御系の武装……シールドが少ない。IS特有の優れた防御機能に任せているからだろうと俺は思う。しかし、鈴の衝撃砲みたいな搭乗者に直接衝撃を与えるような武装が今は生まれている。それこそAIS弾なんていう対IS用武器なんて物ある。それでも多くの者がシールドを持たないのが、IS絶対神話なんという事を信じているからだ。ISは通常兵器では太刀打ち出来ない……それを信じているのだ。だからその基本的戦法も『避ける』『接近戦』『射撃戦』『その身で防御』しかないのだ。だからこそ、シールドを展開している者は危機感が有ると思っている。どんな兵器であれ、どんな機体であれ、無敵なんてものは無い。俺も例外無く無敵じゃない。だからこそ、デュノア襲撃事件の際に捕獲部隊がシールドを展開していたのに対して俺は感動を覚えた。……俺の場合はシールドと言うより、バリアフィールドだな
話を戻すが、緊急の全校集会では別に隠すことも無いので刀奈は俺が報告した事も集会にて知らせた。特に俺のクラスの奴らはひどくそれに怯えていた。なんせ一割でアリーナの戦闘エリアを焦土……もとい戦場と言える程に変えたのだ。今回放ったのがそれよりも強い。それを知った何人かの生徒はもしかしたら己が死んでいたという事を自覚し、その場で震え上がっていたものも少なくなかった。なんせ試合モードとはいえ一割以上の攻撃が使用不可で、一割であの威力だったんだ……二割なんて言ったら恐ろしいもんだ。
それでだ。そんな危機から俺がこの学園を救ったことになって、以前より敵意の視線が最近減ったのだ。しかし……
『お前達、本当にしつこいな』
「五月蝿いわね。だったらさっさとやられなさいよ!」
女性主義共の襲撃が絶えん。いや、むしろ増した。
『だからって、訓練機をそんなに持ち出して……俺は知らんぞ』
コイツら……この後出る多くの書類の処理は生徒会の仕事になるんだぞ。分かってるのか……?
────ラファールが5機に、打鉄が3機です
コイツら本当に毎度毎度どうやって訓練機を持って来てるんだ!?書類処理大変なんだぞ……
────まだ、協力者が居る……そんな所でしょう
それについ先日行った機体のアップデートの確認を行いましょう。装甲が強化されていた筈なので、是非
装甲は前回からどのぐらい強度が上がったんた?
────前回対IS武器に攻撃を受け数発かすったり直撃して、装甲に大きなヒビが入るか貫通しそうになっていました。その為、今回は例え対IS用武器の直撃を喰らっても装甲に傷が付くか、少しのヒビが入るぐらいの強度まで上がりました。
そして、表面装甲の下に更に装甲を仕込む事で貫通力の高い武器に対する耐性を高めました。表面装甲は爆裂パージが可能となり、拘束された場合は爆裂パージで脱出可能となります。爆裂パージしたとしても見た目はそう変化はしません。
今回のアップデートは、防御を主にしていますが姿も前回同様少し変化したのでご了承下さい。
ああ……長い説明ありがとう。 そう俺がノーネームに向けて口には出さずに頭の中で言った時、突然目の前が真っ白に光って爆音と衝撃が襲った。
「アッハハハ!なによ、普通に直撃してるじゃない」
どうやらノーネームの説明を受けている間に攻撃されたらしい。今の攻撃は……ロケットランチャーか?そう思ってたらまた爆音と衝撃が起きた。
「一斉攻撃開始!」
その言葉の後に俺に対する罵倒が何回か聞こえた。最早定番なので最近は無視するようになってきた。一斉攻撃と言ったように何回も爆音と衝撃が襲いかかるが、問題無い。視認認証で機体装甲値を確認すると、圧倒的無傷(ダメージは通る)。前の状態でもこれぐらいならある程度装甲を削られていたはず……凄いな
────それも当然です。今の装甲は対IS用武器の攻撃を想定してますので、普通のIS仕様武器程度にもはや装甲を削られる事はありません。
それはそうなんだがノーネーム
────なんでしょうか?
さっきから思ってたんだが、シールドバリアー展開してないだろ。シールドバリアーが展開されてたらこんなもう少し衝撃が小さいのだが
────……
俺の言葉にノーネームが黙り、その数秒後に視界にワイプが出現してシールドバリアー展開と表示されていた。
────ずびまぜん
泣く!?ちょい待てノーネーム!今のどこに泣く要素があった!?待て待て待ってくれ!ノーネームに泣かれたら、凄い落ち込むぞ
その様な事をしているとは知らずに、反撃をしないでただただ攻撃を受け続けている澪に対して女性主義の生徒達は騒いでいた。今までこのような事が無かったのだ……攻撃を受け続けるということが。
弾薬が尽きたのか女性主義の生徒達は攻撃を止め、己の武器を収納した。澪が居た場所に漂う爆炎と煙を見続けながら、女性主義の生徒達は言う。
「IS反応確認……まだ生きてるの?」
「反撃がないって事は、気絶してるか怪我して反撃できないんでしょ」
「それでも、私達はやったのよ!」
「ええ。ついに憎きあの男に……」
各々に澪を倒したと思っているのか、その様な事を言う。喜びを噛みしめている女性主義の生徒達……次の瞬間だ。一人のラファールに向けて爆炎と煙が交じるその中から何かが飛び出した。赤黒めいた尖った物が一人のラファールの非固定浮遊部位のスラスターを貫通、そして爆発四散。近くの仲間がそのラファールを纏った生徒を支える。何事か……打鉄を纏うリーダーの生徒がそう考えた次の瞬間
『はあ……怒る気にもない』
その言葉が聞こえた後、爆炎と煙を押し広げて名前無き破壊者が飛び出した。その姿は無傷
「な、なんでよ!?なんであの攻撃で無傷なのよ!?」
『あー……開口一番いきなり五月蝿い』
飛び出した名前無き破壊者はラファールに、反逆する血の牙達を差し向けた。一般生徒程度ならわざわざ自ら動かなくても、反逆する血の牙達だけで充分。実際ラファールを纏った女性主義の生徒達は高速で動き回る無数の敵に翻弄され、無茶苦茶に銃撃を行って同士討ちが起こっていた。
『この手に限る』
「無視するなぁぁーーっ!」
残った打鉄3機が接近してくる。澪にとっては多数対1が多く、それ故に集団戦は慣れていた。しかも、澪はロシアIS国家代表である刀奈から訓練を受け、さらに自分で復習をし、技術を磨き上げているのだ。それ故にこの程度驚異にもならなかった。
『悪魔の指』
澪は悪魔の指で牽制、怯んだ打鉄の1機に瞬時加速で近づいて復讐者の剣を展開して真一文字斬りを放つ。シールドバリアーに守られてるとはいえ衝撃をカットする事は出来ずアリーナのシールドバリアーに吹き飛ぶ。余程の威力だったのかそれで気絶……残りは2機
「なんなのよ……なんのよぉぉぉ!」
『見飽きたぞ。その反応は』
リーダーの生徒に向かってそう話す。それにイラついたのか真っ直ぐ打鉄の近接ブレード『葵』を構えて、リーダーの生徒が澪に向けてやって来る。
『無茶苦茶に振るっても当たらん』
「だ、だま……っ、れ!」
リーダーの生徒が葵を振るうが、大振りの為全く当たらない。もう1機の打鉄は焔を放ってくるがシールドバリアーと強力な装甲の前に阻まれ、大してダメージを与えられない。そして、リーダーの生徒が葵を振るった瞬間に葵を殴り飛ばし、がら空きになった胴体……鳩尾を撃ち抜くように殴り、その衝撃波はシールドバリアーを通し絶対防御を更に抜いた。余程の衝撃で、リーダーの生徒は白目を向いて気絶、そして地面に落下。その様子を見ていた残りの打鉄を纏う生徒に顔を向ける。
「こ、降伏します」
『懸命な判断だ』
『……という訳で、書類が増えたぞ』
「な、なんでよぉぉぉーーーーっ!?」
この日、生徒会長の悲鳴が学園に木霊した。