一般人15歳で〝ちょっと〟変わった彼のIS生活(完結)   作:A.K

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破から始まった事象

次に訪れるのは滅

狂気堕ちる者

全て破壊する

破壊者それを滅せん




『っ、エネルギーパックを収納していたのか』

 

 

 デュノアは名前無き破壊者に向けて突貫。そして、その両手には公にされていないが、デュノア社で現在開発中の試作型高濃度荷電粒子圧縮砲が握られていた。

 

 

「お前も、この学園も、ボクの邪魔をする者は纏めて消えてしまえ……!」

 

 

 澪は絶句した。デュノアが構える試作型高濃度荷電粒子圧縮砲からは、胸部展開圧縮荷電粒子砲《名前無き破壊者》の十分の二の威力を出せる程のエネルギーが検出されていた。無論、澪の方が高い威力を持つ攻撃が出来る。しかし、最早発射準備が完了して臨界点を超えたデュノアの武器に今攻撃して破壊したら、溜めたエネルギーが暴走してこの学園ごと消し飛ばされかねない。

 

 

 ノーネーム。真紅の光壁を展開し、機体のほぼ全てのエネルギーを真紅の光壁に集中し「榊君!」……来たか!

 

 

「お待たせ!」

 

『かt……会長!』

 

 

 澪は刀奈と刀奈が選んだ精鋭部隊兼捕縛部隊の到着に、驚きの声を上げた。

 

 

「他の人達はシールドを展開して、榊君の背後で待機して!」

 

 

 刀奈の命令で、捕縛部隊の人達と刀奈が俺の背後に着地してシールドやバリアフィールドを展開して構える。その中にはギリシャ代表候補生であり専用機『コールド・ブラット』のパイロットであるフォルテ・サファイヤ、アメリカ代表候補生であり専用機『ヘル・ハウンドVer.2.8』のパイロットであるダリル・ケイシーの『イージス』コンビやイギリス代表候補生であるサラ・ウェルキンの姿もある。

 

 

『おう一年坊主、頼むぜ!』

 

『頼むっスよ!』

 

『なんとか耐えて!』

 

 

 

 先輩方のエールを受け、俺は己の気が高まっていくのを感じる。先輩方にここまで言われたんだ……やるしかねえだろ!

 

 澪がそう考えていると、デュノアから攻撃が放たれた。光の激流は真っ直ぐ澪に向けて迫り来る。

 瞬間、真紅の光壁に直撃。真紅の稲妻と青白い稲妻が光の激流と真紅の光壁の間で起きた。相対する二つの超高エネルギーが互いに打ち消しあっているのだ。

 名前無き破壊者は戦闘モードではなくてもその能力値は他の機体を抜いている。しかし、いくら名前無き破壊者と同等の威力を持つ兵器を持ったとしても、それでも弱めの威力程しかない。

 

 機体のほぼ全てのエネルギーを真紅の光壁に回して、通常時よりもその鉄壁の守備力は上がっているのだ。

 

 

『押し通る!』

 

 

 バシュウという音と共に、デュノアが放つ光の激流が真紅の光壁に当たり瞬時に消え去る。澪はその足を1歩ずつ前に進める。

 

 しかし、この真紅の光壁は絶対では無い。もともと通常光学兵器(レーザー・ビーム)や実弾兵器に対して有効なこの真紅の光壁は、欠点が一つだけあるのだ。それは光学兵器の長時間照射に対して弱いのだ。真紅の光壁は展開部の中心部から外側に向かって、名前無き破壊者の無限機関からSEが生産されるのと同時に生産される高濃度圧縮粒子が放たれるのだ。この高濃度圧縮粒子はエネルギー体……ビームやレーザー等を消滅させる能力を持っていた。単発のビームやレーザー、更には実弾はこの高濃度圧縮粒子が接触した瞬間に消滅させる能力により、名前無き破壊者には届く事はないのだ。しかし、この高濃度圧縮粒子の消滅する際に、その粒子が大量消費されるという欠点がある。

 真紅の光壁は多くの粒子が何層にも重なって出来ている。真紅の光壁は攻撃を受けると、粒子の層が一時的に薄くなる所が生まれる。薄くなった所に後からまた粒子が付け加えられ層が元に戻る。その性質故に光学兵器の長時間照射には耐えられないという欠点があったのだ。

 

 それ故に、徐々に真紅の光壁を突き破って攻撃が名前無き破壊者に当たる。遂に装甲が溶け、部品が弾け、壊れてはスパークが走る。視界には危険を表す表示が出ているが、澪は進む。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

『負けない』

 

 

 俺は頭の中でIS学園に来てからのことを思い出す。毎日襲撃に会う中での、友と呼べる者ができたことを。大切な相棒を。

 

 想像する。己が避けたら起こる悲劇を

 

 

『中途半端な奴に……』

 

 

 澪の怒りが膨れ上がり、それと共に真紅の光壁の出力が急激に上昇。破れかけていた真紅の光壁の穴が、塞がっていく。

 

 

『二度と……大切な者を奪わせない!』

 

「そ、そんな馬鹿な事が……!?」

 

 

 その雄叫びの直後、更に出力が上がった真紅の光壁がその領域を広げる。赤い光の壁がデュノアの試作型高濃度圧縮荷電粒子砲に直撃し、ほぼ全エネルギーを使い切った荷電粒子砲が砕ける。しかしまだ残っていたエネルギーが粒子砲が壊れた事により暴走して小規模な爆発と共に砕けた。爆発に巻き込まれたデュノアはダメージを喰らうが、それでもまだ澪に対して攻撃を仕掛ける。その手には灰色の鱗殼が展開されていた。

 

 

「それでも……まだボクは……」

 

 

 デュノアが接近して来た。機体がボロボロなだけあって、一撃で減るSEの量が多い。先程の爆発でカスタムIIのSEはもはや底をつこうとしている。……背中の非固定浮遊部位のスラスターに高エネルギー反応か、瞬時加速と灰色の鱗殼による特攻か。

 

 

「イヤァァァァァーーーッ!」

 

 

 破れかぶれの攻撃が一番避けやすい事を知らないのか?澪はそう考えながら目の前に現れた灰色の鱗殼の矛先を回避し、頭の上を通り過ぎようとしたカスタムIIの脚部を掴む。ダメージで機体が悲鳴を上げるが、澪はそれ押し通す。

 

 

『クラッシュ!』

 

 

 名前無き破壊者は引き摺られたが、澪はその叫びと共にデュノアを地面に叩き付けた。それにより非固定浮遊部位が損壊、機体ダメージレベルがCを超えた。

 

 

「が……あぁぁ」

 

 

 機体の様々な場所からスパークが発しているが、それでもまだ諦めていないデュノア。機体ダメージレベルはDって所で、SE残量は絶対防御が発動すれば強制的に機体格納されるだろう。澪はそう思ったその時、デュノアのカスタムIIが格納された。

 

 

 デュノアが倒れた瞬間、ダリル先輩の叫び声と共に捕縛部隊がデュノアを捕獲した。その身柄はメディカルチェックを受けさせられ、ある程度の治療がされた後学園内の監禁部屋に移動された。尚、その際にデュノアの専用機『ラファール・リヴァイヴ・カスタムII』の待機状態であるネックレスは刀奈が預かった。もしかしたら待機状態であるネックレスに何か細工がないか、通信ログを閲覧して情報を得るなどの事をするためらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 IS学園より下記の組織に伝達

 

・フランスとその政府及び、女権団とIS委員会フランス支部の者・関係者に対してIS学園敷地内に入る事を一切禁ずる。

(既に在籍しているフランス国籍の者に対しては除外)

 

・フランスとその政府及び、女権団とIS委員会フランス支部とデュノア社にアリーナの損壊による修理費を要求する。

 

・上の事に一つでも従わない場合、捕縛された者達のフランスに対しての帰還は認められない。

 

────IS学園より

 

 

 あれから数日、IS学園から放たれたメッセージはあっという間に世界に知れ渡った。フランスとデュノア社、IS委員会とそのフランス支部の行動に世界が怒り、世界から非難された。それによってIS委員会とフランスの関係は絶縁し、その際にフランスからISコアが全て没収。横暴だとフランス側が言うが、IS委員会は何も言わないと言う。デュノア社も今回の騒動で倒産が確定し、その社長と夫人には汚職や賄賂……等の違法行為が発覚し逮捕となった。IS学園でも、緊急の全校集会が行われて生徒会長更識楯無から今回の件に関する事全て説明された。それと同時に、専用機持ちに新たな規約書類が渡されるなどIS学園でも慌ただしい状況が暫く続くようだ。

 

 

 

「……まあ、俺には関係ないようなものだが」

 

「誰に言ってるのかは分かんないけど、ちょっとそこの書類とって」

 

「お嬢様それぐらいは御自分で行って下さい。榊君は気にせず御自分の書類を片付けてくれればいいです」

 

「虚さん。本音が寝てますけど」

 

「本音?貴方ナニシテルノ?」

 

「アイェェ!?オネェチャン!?オネェチャンナンデ!?」

 

「ORS症状か……重症だな」

 

「榊君、それなんなの?」

 

「オネーチャン・リアルティ・ショック」

 

「成程」

 

「お嬢様!」

 

「ご、ごめんなさい!」

 

 

 デュノア襲撃事件と呼ばれるあの日の事件。専用機持ちには生徒会・学園上層部(学園長夫妻)との契約書類を書かされる事となった。俺は生身でもISの機能が常時発動している。これは刀奈や一部の信頼できる先生や学園長夫妻には言っている。その為パワーアシストコントロールを心掛ける様にとの契約書を書かされたが、既に出来ているので問題は無い。

 俺は現在生徒会室にて、生徒会が担当する書類を片付けていた。最近は少なかった生徒会宛の書類だが、デュノア襲撃事件以来山の様に生徒会宛の書類が送られてくる。そのため、生徒会の役員である刀奈を除いた俺達は公欠扱いで授業時間でも生徒会室にて作業を続けている。

 

 

 

「虚さん。担当書類全て終わりました」

 

 

 とりあえず担当書類が終わった。隣で刀奈がブーブー言ってるが無視だ。これぐらいは自分でやらさないとな。

 

 澪はそう考えながらも、生徒会室に新たに設置された監視用モニターを見る。モニターには独房部屋で全身を拘束具で拘束されているデュノアの姿が見られた。

 

 

「デュノアちゃん見ていたの?」

 

「ああ……それと、勘違いするなよ刀奈。俺はデュノアには罪悪感やら悲壮感とかやらの感情は一切ない」

 

 

 何よりも、俺は奴に一度殺されたんだ。別に殺されても大丈夫だったのは分かっていた。それと、俺を利用しようとして更にはこの学園ごと消し飛ばそうとしたんだ。そんな奴に可哀想などと言う事を思い浮かべはしない。

 

 

「学園長との会議で、デュノアと捕獲した奴等の受け渡しの件は決まったのか?」

 

「虚ちゃん」

 

 

 刀奈がそう言うと、虚さんが一枚のブリントを俺に渡してきた。そのプリントには『シャルロット・デュノア及び捕縛者取引場所ご案内』と書かれてあった。

 

 

「そこに書かれてるけど、デュノアちゃんと捕縛者の取引場所が決まったわ」

 

「ほう?……だが、もうどうでもいい事だ。今は『タッグトーナメント』の事についての書類を作成しなければな」

 

「だよねぇ……」

 

 

 タッグトーナメント。2対2で戦うトーナメント……まあ、普通に分かるだろう。このタッグトーナメントだが、現在問題が起きている。

 

 

「この間の事件のせいで、今はやるべきでは無いっていう声があがってるのよね」

 

「専用機は勿論、一般生徒にとっては重要なイベントではあるからな」

 

 

 タッグトーナメントの日はアリーナに一般人から世界各国の重鎮といった人々が来るのだ。さらに企業も来るために、一般人や専用機持ちは企業に対してのアピールにもなるのだ。

 

 

「俺としては、1年生と3年生は行った方がいいと思う。

 1年生は優勝した奴と己がどれ程の実力の差があるか、それを知る為。

 3年生は企業や世界各国の重鎮達に、己がどれ程の力を持っているかをアピールし、就職やスカウト云々の事が果たせる為だ。

 2年生……刀奈には悪いが、3年生と2年生が現時点でどれ程の差が出ているかを見てもらう為だ」

 

 

「……ふぅん。そうね。確かにその通りね」

 

 

 刀奈はそう言うと、今言った内容を何時の間にかメモしていた紙を眺める。

 

 

「この件は私と……虚ちゃんに任せて。虚ちゃん、いい?」

 

「はい。お嬢様」

 

「という訳で、榊君はもうこれ以上はここに居なくていいから。あとは私と虚ちゃんだけで充分終わる量だからね」

 

「それでは榊君お疲れ様でした。授業の方に専念して下さいね?」

 

 

 そうして俺とのほほんさんは生徒会室を後にし、教室に向かって歩いて行った。あー……アイツの授業じゃないか今




次回予告

あれから数日

俺の中では平和な日を過ごしていた


次回=破壊者の平和な日?=

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