一般人15歳で〝ちょっと〟変わった彼のIS生活(完結)   作:A.K

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小さき龍

恐れる破壊者

二者が出会う時

新たな能力の息吹


破壊者と龍

『……』

 

 

 昼休みの鈴との模擬戦(?)約束から数時間、現在は放課後。俺は第一アリーナAピット射出口に居るのだが……

 

 

『……邪魔だ』

 

「ふん。私達はここで休んでるだけよ」

 

 

 毎度お馴染みの女性主義者の生徒達が、ISを纏ったまま射出口の中央部分で座っている。どうせ、俺と鈴が模擬戦するという事を聞いたのだろう。それで、その模擬戦をやらせないためにここで妨害行為をしている……そんな感じだな

 アリーナの使用時間は有限だ。さらに、ハイパーセンサーが鈴も既にアリーナ内上空で待機しているのを感知している……はあ

 

 

 

『……もう一度言う。邪魔だ』

 

「えー?私達疲れてるから動けないから」

 

『……訓練機からアリーナ内の使用許諾マークが無いってことは、無断で稼働させてる

 これは、IS学園IS使用規約に反する行為……分かっているのか?』

 

 

 『IS使用規約』とは、IS学園内でIS稼働についての規約だ。目の前にいる奴らは、その中でも基本的な使用許諾についての規則、さらにピット内の行動規則にも違反している。

 

 

────主、今いるISのコア人格達に強制退去させるよう命令します

 

(……出来るのか?)

 

────はい。主には言ってませんでしたが、一人を除き、我々は全ISコア人格に対して命令できます。

 

 

(……ふむ。それは姉妹みたいなものか?)

 

 

────ほぼそれですね。……では、命令します

 

 

 

 ノーネームがそう言うと、突如女性主義者の生徒達が纏うISが操縦者達の意思を無視して勝手に動き出した。ピットから出て行こうとするISに、ぎゃあぎゃあと騒ぐ生徒達を無視して脚部装甲をカタパルトに乗せる。

 

 

────では、行きましょう……鈴にゃ〜んの元に

 

 

 ノーネームの最後の言葉に若干苦笑いしながら、澪は射出合図を待つ。そして、合図が出た

 

 

『名前無き破壊者……出る』

 

 

 蒼き軌跡を引きながら、黒き禁忌がアリーナに羽ばたく。

 

────────────────────────────────────────

 

 

『済まない……待たせてしまったようだな』

 

 

 PICと大型スラスターを稼働させ、鈴の元に舞い上がる。澪は予定時刻過ぎての到着に、鈴に対して謝る。アリーナに集まっていた生徒達がその光景を見てざわめくが、特に五月蝿い所に向けて顔を向けると『ひっ!?』と言って黙った。

 この学園では澪は多くの生徒・教師の間から最低人間とも言われているが、澪は単純に女性主義者達が嫌いなだけであり、普通な思考を持つ人なら丁寧な対応をする。ぶっちゃけ、逆にまともな思考を持つ者達が少ないということの表れでもあるのだ。閑話終了

 

 

「別にそれはいいんだけど、澪の方が大丈夫なの?」

 

『……何故?』

 

 

 鈴の言葉にホッとしたのもつかの間。鈴の大丈夫なの?という言葉に何処が?と澪は考えるのだが、良く分からなかった

 

 

「さっき、女性主義者の生徒達が澪が来るピットの方に向かっていったから」

 

『ああ。それか……それなら何時ものことだから気にすることでもない』

 

「まあボコしてくれた方が良いわ。私、女性主義者とか大ッ嫌いだから」

 

『ほう……同感だ。鈴とならいい仲になれそうだ』

 

「うん!私もそう思うわ」

 

 

 この瞬間、互いにコイツは最高の友だと気付くのであった。

 

 

「……さて、話はこれぐらいにしといて」

 

『始めよう』

 

 

 突如、二人の空気が変貌する。それまであった日常的な空気が、殺伐とした空気に変わる。片や破壊の名を持つ者、片や中国若手エースにして、若手最強にして重度のプレッシャーを日夜受けている者。

 互いにレベルは中級以上。並の代表候補生以上の力を持つ者が……今、本気でぶつかろうとしている。その空気に当てられ、生徒達の声が止まる。

 

 

「よーい……」

 

『ドン!』

 

 

 互いにそう言った瞬間、空気が破裂する音と共に二人の姿が消える……否、その場から少し離れた上空にて互いの獲物で斬り合いをしていた。瞬速で同時に上空に舞い上がり、その瞬間に武器を展開。そして、斬り合ったのだ。互いに持つのは復讐者の剣と双天牙月とも呼ばれる二つの青竜刀だ

 

 

『……やるな!』

 

「澪こそ!」

 

 

 そう言ってから澪は力を上げて、鈴を振り払う。鈴はPICで体勢を立て直し、視界から外れた澪をすぐに捉える。

 

 

「パワー型の甲龍が振り払われた……なんて力なの!?」

 

『鈴も凄いぞ。あの一撃を受け止められる奴はそうそういないからな』

 

 

 そう言って、澪は反逆する血の牙達を呼ぶ。それに対し、鈴は少し難しそうな顔をしてから澪に突っ込む。同時に澪は反逆する血の牙達を鈴に対して突貫させる。反逆する血の牙達はビーム刃を出しながら鈴に迫る……が、突如として反逆する血の牙達がぐらつく

 

 

 

『何が……起きた?』

 

「……これぐらい、何とかなる!」

 

 

 澪が考えようとしたその時、突撃してきている鈴がそう言って先程から手に持っていた青竜刀を一つに連結させ、それを高速で回し始めた。高速回転する鉄刃の目の前には、ぐらついた不安定な反逆する血の牙達。次の瞬間には全てが鉄刃の前に吹き飛ばされた。反逆する血の牙達の幾つかが、爆発四散して鈴を覆い隠す。

 

 

「えええい!」

 

 

 爆炎に隠れた鈴に射撃を加えようとしたが、鈴がさらに速度を上げた状態で先程と同じ体勢で突撃してきた。

 

 

 

 

ガギギギギィィィン!

 

 

 

 その様な心地の良い金属音と共に、澪は全身に切り傷を付けながら押されていく。威力もなかなかなのか、SEが急激に減少していく。

 

 

 

『うおおおあっ!』

 

 

 澪は復讐者の剣を解除して、高速回転する双天牙月を殴りつける。鈴はその衝撃で胴体ががら空きになり、澪は胴体に掌底突きと正拳突きを連続で放つ。最後にその場で脚部スラスターを稼働させ、クルッと一回転して踵落としを直撃させる。

 その衝撃で、鈴は彗星の速さで地面に向かって行く。しかし、鈴は龍咆とPICを巧みに使って姿勢を正す。そのおかげで、鈴は地面に直撃せずに済んだのであった。

 

 

「うう……今ので半分切ったか……」

 

 

 

 

 

 

『(ノーネーム!)』

────主の予想通り、今のは非固定浮遊部位の龍咆の物だと思われます。

 

 

 

 龍咆。中国が開発した第三世代型IS『甲龍』のイメージ・インターフェイス専用武装である。龍咆は空気を非固定浮遊部位に吸収圧縮し、弾として発射。直撃した相手は圧縮空気弾の衝撃波に襲われる。弾は空気の為、事実上弾数は無限。さらに空気なので透明不可視である。燃費の良さを主張する中国ISの技術の結晶だ

 

 

『痛みが無いとはいえ、何発も喰えば内部フレームに響くか……それなら避けるだけだ』

 

 

 澪は背中の大型スラスターを最大稼働させる。ジェット音に似た音から金属音に近いような音に変わり、自然に機体の稼働率が高まっていく。

 

 

「なにこの圧力……息が、苦しい……っ!」

 

 

 名前無き破壊者の稼働率が上がっていくと共に放たれる強力な圧力が、アリーナを包んでいく。この時、澪自身は気付いていないが……普段のストレスもとい殺意が、澪の気分が高揚すると同時に火山の噴火の如く漏れているのだ。

 夕暮れの時間帯である空は橙色に染まり、少し暗く見える。澪が居る地点は鈴の視界の上に当たる。澪が駆る名前無き破壊者が黒く染まり、身体中の真紅と橙色に光る部分が強調される。非固定浮遊部位の大型スラスターから出る蒼炎が翼のようにも見えた。

 

 

 

「……凶鳥」

 

 

 

 誰かが言った。これまで破壊者として恐がられてきたが、この光景を見ると死を誘う凶鳥のように見えるのだ。

 

 

 

「……破壊者?凶鳥?」

 

 

 鈴がそう呟く

 

 

「だからどうしたってんのよ……行くわよ澪!」

 

 

 鈴はそう叫んで、非固定浮遊部位の龍咆を後ろに向けて発射した。強めにやったのかそのまま澪に向けて飛んで行く。

 

 

 

『……行くぞ!』

 

 

 そう言うと、澪が消えた。鈴はしまったと頭の中で悟る。次の瞬間には背後から強烈な打撃を受けた。

 

 

『ぅぅ……なめるんじゃないわよ!』

 

 

 鈴はそう言って非固定浮遊部位の龍咆を澪に連発、澪はそれに反応できなく直撃する。

 

 

『……くっ!?』

 

 

 今の直撃で、名前無き破壊者のSEが半分手前にまで減る。これまでパワー型のISと戦闘しなかった為、SEの消費量に内心冷や汗をかく。

 

 鈴のSEは最早風前の灯。機体性能ではこちらが上だが、パイロットしては鈴の方が上。なら……ここで攻める!

 

 

────決めて下さい……主!

 

 

『……ぜいやぁぁぁぁぁぁ!』

 

「あー……もう無理ね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────────────────────

 

「……で、動けないと?」

 

「あははは……ごめん。正直、ここまで疲れるとは思わなかったからさ……」

 

「……それより、もう少ししっかり捕まってくれ。なんだか落ちそうで怖くてしょうがない」

 

 

 

 

 模擬戦から数十分。澪は名前無き破壊者の点検を済ませ、アリーナの入口に向かった。すると、アリーナの入口で座り込んでいる鈴を見つけた。アリーナのシャワールームに行って汗を流したのか、よく見てみると若干髪が濡れていた。

 とりあえず近づいてどうした?と、声を掛けたところ……

 

 

「つ、疲れて足が動かない……」

 

「……」

 

 

 どうやら、このアリーナの入口に着いた所で先程の模擬戦の疲れが出てしまって動けなくなってしまったのだという。流石に鈴をこのまま残すのは行けないと思い、澪は────

 

 

「鈴……乗れ」

 

 

 

 

「んしょ……っと」

 

「よし……安定した」

 

 

 そう言って澪達は歩き始める。部活終りの生徒達がきゃーきゃー騒いでいるが、今の澪に気にしている暇はなかった。何故なら……

 

 

(……煩悩退散!煩悩退散!)

 

 

 必至になって煩悩と戦っているのだ。

 

 ああ言っていてなんだが、鈴の鼓動が……吐息が……!駄目だ、鈴はとても良い奴なんだ……くそっ!何故止まらん……俺の煩悩は!?

 

 

「……鈴、済まないが俺の頭を叩いてくれ」

 

「えっ……でも「眠いんだ」……えい!」

 

 

 鈴は澪の発言に戸惑ったが、眠いという言葉を聞いて澪の頭を叩く。

 

 

「ふう……ありがとうな鈴。スッキリした」

 

「……えっ?今ので良かったの?」

 

「ん?そうだが……何かおかしいか?」

 

「ほ、本当に大丈夫なの!?本当に!?」

 

「……ど、どうした……?」

 

 

 この後、このようなやり取りをしながら澪は鈴が住む部屋まで鈴を運んで行った。もちろん大勢の生徒達にこの光景を見られたわけで、衝撃の波紋が広がったという

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────ODA作成稼働率︰19.82%




次回予告

「ねえ……少しいいかしら?」

毎日のように行っていた訓練

それが終わった後、鈴が来た


「ちょっと……相談してもいい?」


鈴の目に……涙があった


次回=相談=

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