警備隊隊長代行。と言っても前任者が仕事をしていなかったので緊急時以外することがないのです。
だから、名前だけと思っていましたがそううまくいかないようです。
「首切りザンクですか。やはり警備隊の戦力で対応できない相手なのでしょうか。」
「決定打に欠けています。三隊による包囲射撃すら決定打にならないとなるとお手上げです。」
「都市探知機を使っての追跡は可能なのですね。」
「夜間外出禁止令を敷き効率的な捜査を行っています。」
探索は十分。純粋な火力不足ですか。
警備隊の装備は汎用機関銃と短機関銃。これの弾幕が通じないとなると銃器は援護が限界でしょう。
並の帝具使いなら殺せるのですが。
未来視。銃弾の予測線が見られるなら銃弾を避けるなんて簡単です。
洞視。連携して敵を誘導していく警備隊。相手に考えが筒抜けなんてどうしようもありません。
透視。指向性爆薬等を仕込んでいる特別対策地区も見破られるでしょう。
本当にどうしようもない。警備隊は死者を出さず上手くやっていると褒めるべきでしょう。
生きてさえいればいくらでも継ぎ接ぎ出来ます。機械化する事も出来ます。
「狙撃も自爆も通じそうではありませんね。お嬢様。お役に立てると思いましたが残念です。」
「自爆は本当にどうしようもなくなった時だけだと言っているでしょう。まだ、手はありますから!」
警備隊の隊員がひいているじゃないですか。
「何か言われると思ったのですが。何も言わないのですねタツミ。」
「本人が納得済みなら何も言わない。言えない。それに無駄に殺しはしないだろ。」
「勿論です。しかしどうしましょうか。私は有名なので囮は出来ませんし。」
「俺がすればいいじゃないか。夜間外出禁止の事を知らない田舎上がり。って装えば出てくるんじゃないか。」
「装うも何もそのままじゃないですか。でもいい案です。本当にタツミですか。熱でもあるのでは。」
「どういう意味だ!!そんなに普段ぬけてるか!!」
「戯言ですよ。……殺せますか。人を。」
「殺せるとは言い切れない。けど負けない。手足を砕いて捕まえる事は出来る。」
「頼らせてもらいます。死なないでください。生きてさえいればどうにでもなります。一対一。絶対にそれを維持させます。背後は気にしないでください。ただ目の前の敵だけに集中してください。」
帝都の夜。殺人鬼たちの時間。今はナイトレイドとザンク以外居ませんが。昔は大勢いたのですよ。
警備隊本部の据え置き型の都市探知機に映る光点を元に指示を出していく。
警備隊は青。タツミは黄。それ以外は赤。
二人一組の赤は恐らくナイトレイド。ザンクは民の敵ですから。動いたのでしょう。
ナイトレイド一つにつき三組の警備隊を向かわせる。目的は足止め。不確定要素は排除しなければ。
「単独の光点が接触。確認をお願いします。隊長。」
「代理ですよ。私は。双眼鏡を。」
事前に準備しておいた瓦礫を投げ、それを足場に空を駆ける。
見えた。首切りザンクに間違いありません。状況は優勢。念の一手は本当に無駄になりそうですね。
着地して指示を出す。
「狙撃班は地下水路を通り、指定する地点へ。当てる必要はありません。援護射撃を第一に。絶対に味方に当てないで下さい。たかが400です。それくらい簡単でしょう。」
画面に目を戻すと赤い光点が警備隊を単独で突破してタツミのところへ向かっている。
「私はナイトレイドの足止めを行います。指揮権は副隊長。貴方に。不測の事態への対処は手引書を基本に。」
「了解しました!!万事お任せを。」
「お願いしますよ。携帯型の都市探知機を。」
都市探知機を腕につけ、単独行動をしている赤の光点に向かう。
絶対に邪魔はさせません。
「そこで止まって頂きます。ナイトレイド。」
癖毛の私には羨ましい黒の長髪の少女。アカメかと思いましたがそうではないようですね。
「邪魔をするな!そこを退け!!」
「一応言っておきます。私には貴女に三度の食事と仕事と寝床を保証する準備があります。投降しなさい。私の名をかけますよ。」
「ふざけるな!!そんな暇はない。それに貴族は信用できない。私の親友を苛め殺したキサマ等は!!」
縮地を使って隣を通り過ぎる。結果、道が開く。
「貴族が信頼できないのは同意です。ですが、名をかけた時くらい信用してもらいたいものです。ではどうぞ通ってください。」
屋根を伝って走るのを見送る。
「もう終わっていますので。相変わらず切れ味が良すぎます。」
零閃編隊・飛行隊。鞘を血でいっぱいに満たして初めて出来る。私の限界。
後ろからぐしゃりと音がして少し大きめの賽の目状に胴体が崩れる。
さて。身元が分かるように首から上は残しました。間違いなくナイトレイドなのでしょう。部隊章も確認できました。ただ疑問というより引っかかる点が一つ。
弱い。帝具持ちではないからかもしれませんが弱すぎる。新人だったのでしょうか。
先程の言動から推測するに田舎上がり。可哀想に連座制が適用されて村が一つ消えますね。
とにかく首から上を回収して、合流しますか。
ザンクは穴だらけになって死んでいました。狙撃班を用意した事は無駄ではなかったようです。
「無事の様ですね。よかった。」
「警備隊のおかげだ。幻視。最も大切な人を見せる能力を食らって殺されるとこだった。」
「最後の視はそれでしたか。っと。帝具を投げるのは止めませんか。」
「悪い。なぁ。アリアは死者の声が聞こえるか。ザンクは怨嗟の声が聞こえたらしい。悪い奴だけどどうしようもない奴ではなかった。」
「声ですか。私は誰かを殺しても気に病む事はないですから。タツミこそ声に囚われないでください。」
貴方は死んだ敵に同情するほど甘いのですから。
「……怖いな。帝具使いもこの国も。まだまだだな。俺。」
「生きてさえいればどうとでもなります。あ。借金返済おめでとうございます。」
「懸賞首だったな。そういえば。一旦村に帰るのも悪くないな。」
首。ナイトレイドの一員は腐るまで帰れず。帰る場所もなくなるのでしょう。
随分と差があるものです。
「首で思い出しました。ナイトレイドの少女を一人。殺したのでした。」
「持っている奴か。……アリア!!ちょっとよく見せてくれ!!」
「まさか生首に性的愛好を持っているのですか。…………ごめんなさい。戯言を言っていい雰囲気ではないですね。その娘がサヨですか。」
タツミが頷く。
先程の柔らかな雰囲気ががらりと変わる。誰も寄せつかない。喋れない重い雰囲気が満ちる。
何とか声を絞り出して、タツミを安心させる。村には被害がいかない事をしっかりと言い切らなければ。
「なら、報告の改竄をしなければなりませんか。連座で村を潰させるわけにはいないですから。」
「なんで、どうして!!村を救えたのに。救ったのに。死んでるんだよ。サヨ!!」
「斬りかかって来てもいいのですよ。仇はここです。」
貴方と殺し合うのも楽しいでしょう。笑い合うように殺し合いましょう。タツミ。
タツミは深呼吸して息を整える。来ますか。
斬刀を構える。
「サヨが決めた事で俺は何も言わない。その結果死んだとしても何も言えない。アリアに斬りかかってもそれは敵討ちじゃなくてただの八つ当たりだ。そんなかっこ悪い真似は出来ねえ。」
出来るのは怒る事では無く悼むことですか。優しくて強いですね。本当に。貴方は優しい人です。
「なら、私に出来る事はせいぜい定型文で死後の安息を祈るだけです。」
息を整え、謡う。
彼女のことをよく知らない私が出来るのは祈る事だけ。死者の安息を。誰も彼女を起さない事を。
どうか良き眠りを。
途中の英文はすごく適当なので見逃してください。
それっぽさを感じていただきたいと背伸びした結果があれです。
本当に申し訳ありません。
戒厳令と夜間外出禁止令を間違えていました。申し訳ございません