アリアは踊る   作:mera

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第四話

タツミと出会って三週目。訓練もそろそろまとめに入る時期でしょうか。

朝食にライ麦パンにハムとチーズをのせて炙ったものを頬張りながら今後の計画を考える。

と言っても順調すぎるので考える余地なんてないのですよね。

タツミをからかう事ばかり考えても問題ないくらい。

「お嬢様。何をお考えで。」

「タツミをどうからかうかの悪だくみを。」

「キスをしてみたらどうでしょうか。きっと面白いものが見られると思います。」

「今更ですか。何度も心肺蘇生しているので本当に今更ですよ。」

「え!!」

タツミが大声をあげていますがどうしたのでしょうか。そうですね。耳にでもしてみましょうか。

今日はどのような日になるでしょうか。

「いやいや、無視するな!!」

きっと愉快な一日でしょう。

 

 

 

「嬢ちゃん。伝えたいことがあるんだが。」

「オーガ。朝からとは私の親でも・・・・・・そう、亡くなったのですね。」

オーガの顔色から察する。死にましたか。何時かはと思っていました。その何時か今日でしたか。

「あ、アリア、えっと。」

タツミ以外の使用人たちにも動揺が走っている。そんな大したことでないのです。

「心配せずとも大丈夫です。十年以上疎遠にしていましたから。ただ、血の繋がりしかない方でしたから。趣味も悪かったですし、当然の報いでしょう。」

周りの雰囲気は落ち着いたものになる。

「ご苦労様です。オーガ。朝食はいかがです。すぐに用意させますよ。本当に心配はいりません。タツミ。」

ただ、少し自己嫌悪に陥っています。親が死んでも悲しめないことに。親の死に泣けないなんてあまりに人間らしくない。

「オーガ。近場に賊の集まっている場所は有りますか。」

「憲兵隊が居なくなってから集まってる連中ならいるぞ。警備隊の装備じゃ太刀打ちできないくらいがちがちに固めた連中が。だがなんでだ。」

「手向けです。タツミ。今日の訓練は私抜きでお願いします。」

人殺しが好きな人達でした。なら、酒よりも、花よりも血が手向けになるでしょう。

屍山血河を送りましょう。貴方達の死を悲しめない親不孝者のせめてもの手向けです。

 

 

帝都郊外。単眼鏡で確認したところ機関銃座に対危険種用機関砲座。ただの賊にしては装備が整い過ぎています。革命軍の私掠部隊でしょうか。

補給を絶つのは基本ですから。

いいです。殺しがいがありそうです。手向けになる上に楽しめそうとはいい日です。

……親の命日をよき日と思うとはやはり私はひどい子です。

 

「賊の皆さん。私には貴方達に三度の食事と仕事と寝床を保証する準備があります。勿論、収奪品の徴発。それ以外は何もいたしません。投降しなさい。」

何時も通りの勧告を行う。

返答は鉛の雨。縮地で城壁に接近する。

龍巣閃・咬で城壁を削り取り、斬り開く。

「では、これより投降は無意味です。抵抗してください。」

私を楽しませるために。私と踊ってくださいな。

土砂降りの雨を刀で弾く。

「十字砲火は流石にきついですね。なら蹴撃刀勢。」

手近な建物を斬り崩して道を塞ぐ。五尺も刀身があって、頑丈だと無茶が聞いていいですね。

文字通り途切れる事のない銃声の中に布を裂くような特徴的な音が聞こえる。汎用機関銃まであるなんて素敵です。

「ああ、楽しいです。」

正面から突撃する。迂回。そんなのは詰まらない。殺すのは楽しいですし、殺されるのもきっと素敵。斬って、撃たれて。笑みが浮かぶ。さあ、踊りましょう。

頭部に来た弾幕を腕で防ぐ。特級危険種で出来たグローブのおかげで貫通はしない物の腕の骨が砕け、皮膚を突き破る。筋肉は断裂し、健は切れる。

「パッチワーク。補修。鐚も起動。」

鞭のようになった腕をしならせて手近な賊の側頭を殴り、皮膚の外に出た骨を押し戻す。賊は首をしっかり踏み折る。

一振りで十数人を斬り殺す。まるで刀が三振りあるかのように舞う。この世で最も大量虐殺に向いた剣術、飛天三剣流。あの古書を見つけられたのは望外の幸運でした。

斬り殺し、殴り殺し、踏み殺し、刺し殺す。一人、十人、百人。もっと殺させてください。もっと殺しに来てください。

殺し合いを楽しみましょう。笑いましょう。

きっと待ち伏せているであろう通りに出て、引き返す。居たのは機関砲と量産型の賊刀に重機関銃を持った賊が三人。

手持ちの焼夷手榴弾は零。作戦は決まりました。上から行きましょう。正面ばかりからは飽きました。

「上から行きますよ。足掻いて下さい。殺してみてください。」

声をかけて、手にした瓦礫を投げあげる。歩法、足軽で瓦礫を足場に上昇。

「龍槌閃・惨。繋ぎ掌破刀勢・堕。パッチワーク、縫い付け、脚、腕。」

空から切っ先を向けて、瓦礫を蹴りながら落ちる。途中左腕と右足が銃撃を受け千切れる。砲撃に当たらなければ問題ありません。即死しなければ継げばいい。予備の手足は幾らでもある。中に入れている分も周りにも。

鎧を着た賊その一の脳天に刀を差す。掌底の代わりに柄頭を頭突いて突き通す。量産品なら貫けるのですか。体勢を崩すつもりだったのですが。

「なら、轟堕刀勢。っ危ないですね。」

刺さった死体ごと刀を思いっきり振り下ろす。機関砲を叩き潰した後銃撃をされる。片方は死体を盾に。片方は目視して避ける。

死体がぴくぴくと痙攣して弾が掠める。快感でゾクリと震える。やっぱり刀は良いです。手に感触が残るのが素晴らしい。

鎧には弱点がある。空中に浮かせられたら衝撃を逃がせない。対甲手榴弾、焼夷手榴弾に弱いなど。

龍巣閃繋ぎ戦嵐刀勢繋ぎ龍巣閃繋ぎ戦嵐刀勢繋ぎ龍巣閃繋ぎ戦嵐刀勢繋ぎ龍巣閃繋ぎ戦嵐刀勢繋ぎ龍巣閃繋ぎ戦嵐刀勢繋ぎ龍巣閃繋ぎ戦嵐刀勢繋ぎ龍巣閃繋ぎ戦嵐刀勢繋ぎ龍巣閃繋ぎ戦嵐刀勢繋ぎ龍巣閃繋ぎ戦嵐刀勢繋ぎ龍巣閃繋ぎ戦嵐刀勢繋ぎ龍巣閃繋ぎ戦嵐刀勢繋ぎ龍巣閃繋ぎ戦嵐刀勢繋ぎ龍巣閃繋ぎ戦嵐刀勢繋ぎ龍巣閃繋ぎ戦嵐刀勢。

そのうち一つは何度も叩かれると変形していくこと。それを利用すれば圧し潰していくことも可能です。目の前の棒切れのように。

もう一つは。

腰を抜かしている詰まらないモノを蹴り倒し、視界確保用の覗き穴に針弾を撃ち込む。

覗き穴。どう頑張っても無くせない隙間を通す事。千枚通しなら簡単です。そもそも最大の弱点であるこけたら動けないというのを利用すれば足止めは簡単なのですけど。相当な怪力でもないと起き上がれませんので。

オリジナルを持っているオーガみたいのような。

さて、次は。

あ、見つけた。横列で銃を構えている。あの銃はうちで作っている物ではないので性能はよく分かりませんが歩いていきましょうか。(死体)もありますので。

勘に従ってしゃがむ。狙撃ですね。

「パッチワーク。取り寄せ、大腿骨。」

踏み込んで(縮地して)骨を投げる。百五十くらいなら簡単に当たりますね。

士気が崩壊したようで舞台(戦場)から逃げようとする者が出始める。

逃がしません。皆殺しに来たのです。逃げるなんて詰まらない事をしないでください。

殺し合わないなら私を楽しませるために死ね。

 

 

 

ゆっくり、ゆっくり脚に体重を掛ける。鼻の骨が折れる音を楽しむ。頭蓋骨が軋む音、弱弱しくなっていく絶叫。

臨界を超えてぐしゃりという音と共に脳漿が飛び散る。なんて甘美な響きなのでしょうか。

鉋の峰で腕や足を丹念に砕くのも楽しいのですがやっぱりゆっくり頭を踏みつぶすのが一番ですね。今のところは。

昔は肺に穴を開けて陸で溺れていくのを眺めるのが好きだったのですが。

人間の生き作りもよかった。麻酔をかけずにどこの臓器を取り出したか解説ながら少しずつ殺していくのは。

そんな風に逃げようとした者を楽しく殺した後自分の様子を確認する。殺し合いには届きませんがやはり殺すのは楽しいものです。

ブーツ以外、返り血は浴びていませんが自分の血や埃で汚れていますから整備しましょうか。

それにしても血で泥濘となった大地。鉄の匂いにむせそうになる風。これに少しずつ小さくなる断末魔の合唱があればよかったのに。苦しまないよう確実に殺して回った私が言うのではただの我儘でしょうが。

でも、踊って頂いた方々に失礼などできるわけない。

血の匂いに誘われて危険種が集まってくる。

牙を剝いて迫ってくる。なら、私のすることは一つ。

「私と踊って頂けませんか。この素敵な舞台で。」

夜通し踊り狂いましょう。楽しい、楽しいこの時を笑って過ごしましょう。

この狂乱と狂騒を持って手向けとします。楽しめたというなら何よりです。

父様、母様。どうかよき死出の旅を。

 


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