アリアは踊る   作:mera

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第二十二話

「具合はどうだ」

『悪くはありませんよ。まさか本当に二手に分かれるとは思っていませんでしたが。』

「そうだね。確実に罠だろうけど。」

コロを走らせながら荷物の中でセリューを叩き会話する。

さてナイトレイドが襲撃をかけるのはどちらでしょうか。

多分、エスデスのいないこちらなのでしょうけど。

急停止。頭を打ちました。小さいとバランスが悪いです。

『どうしました。』

「障害物。それも飛び切り怪しい奴。」

『ボルスさんに焼いてもらってください。』

「もう指示して!」

セリューの声が途切れる。そのあとに聞こえる銃声。回避できたのでしょうか。

「セリューさん!!」

「前を見ろ!!ウェイブ!」

響く重低音そして遠ざかるウェイブの声。吹き飛ばされましたかね。

「目標でもない戦力を吹きとばせたのは大きいな。」

「ということは私達は目標ですか。」

「心当たりはあるだろう。」

セリューは無事のようですね。さて時間を稼いでもらっている間に手元の布を丸めて棒状にして突きの準備をする。

「まぁ、命令とはいえ幾つも街を焼いてきた。でもここで死ぬわけにはいかないんだ。」

「何人殺したかわからないくらい殺してる。だから、恨みの千や万は買ってると思うが私も死ねないな。」

距離は十数メートル。狙いを定めて突き抜く!

「危ない!」

要人警護用というのは伊達ではありませんか。

外に転がりでながら体の大きさを元に戻し、服を身にまとう。

「戦場にワンピースは似合わないな。アリア。」

「早く着られるのがこれだけなのです。状況は。」

「ナイトレイドは勢ぞろい。私たちは三人。コロ、鉋、鈍。」

苦戦は免れませんが。想定の範囲内です。

「さぁ、ナイトレイドの皆様。殺し合いを始めましょう。」

 

 

 

「ボルスさん!適当に焼き払ってください。この際私にあたっても構いません。とにかく分断してください。」

「分かった。当たらないでね!」

ルビガンテから発せられる業火がナイトレイドを分断する。

「お相手願います。帝具人間。」

「お前の帝具は一体何だ。あの技は初代大将軍の技のはず。それをいとも容易く。」

容易くはありません。結構な練習がいりました。棒状の物を全て刀とするのも突きでの狙撃も。本家には遥かに劣る模造品でしかありませんし。

「容赦はなしです。九頭龍閃拾弐連ゾディアック。」

帝具人間に生半可な技では意味がない。よって、私個人の最大火力を叩き込む。

十二方向から九箇所の斬撃を一瞬で叩き込む。計108擊。足りないという事はないでしょう

これで一人。

コア破壊はできませんでしたか。

「次は何方が挽肉になりますか。」

咄嗟に飛び退く。背後がえぐられる。

「質の悪い冗談ですね。対化物(エスデス)用の技を食らって一瞬で再生とは。」

帝具の持ち主を殺したほうが早いでしょうがさせてはくれないでしょうね。

「ごめん。アリア!強化を許した!!」

「よそ見していいのか!」

「ああ、もう!百人斬りなんて過小評価だ!そう思わないか。ブラート!」

「あの憲兵隊長から言われるなんて光栄だ!」

向こうは向こうでなんとか一対一に持ち込んだようですね。

狙撃は時折受けているようですが。

目の前に意識を戻す。

「天叢雲剣!」

「随分と雰囲気が変わりましたね。」

帝具の剣。斬れるかどうか微妙なところですね。躱しておきますか。

零閃、一個編隊。繋ぎ戦嵐刀勢

手数の多い技で削りにかかる。今さっきまでならこれで十分だったのですが。

「削る速度より回復速度の方が早いですか。厄介ですね。」

勘が危険信号を告げる。それに従って天翔龍閃を振るう。腕から嫌な音が聞こえますが無視です。

真空の防壁をいくつも重ねる。足りないこれでも多分足りない。

ああ、でも随分と私を思ってくれるようになりましたね。嬉しくて楽しくてたまらない。

「切り裂け。エクスタス。」

「逃がしはしないぞ。」

シェーレ(復讐鬼)さん。

待ち焦がれていました。貴女が狂気を纏ってやって来るのを。

拳打で固定されて動けないこの身ではなすすべなく両断されるしかありませんね。

でも固定などされていなくとも抱きしめたいです。だってこれだけ思ってくれるのですから。

私も全力でお相手します。

大罪の一つは虚栄。(パッチワーク限界駆動)瑕疵は全て虚栄で満ちる(再生速度、制限解除、永続再生。)

頭を逸らして身体が二つに分かれる。そして切り離される前に再生して回復する。

体内に残ったエクスタスを即座に手放し私に殴りかかる。腕が砕かれ一瞬で治る。その時に生まれた隙でスサノオの剣が首に刺さる。

脊椎が切断され、身体の力が抜ける。パッチワークの力で自身の身体を操ってそのまま戦闘不能になる(頭を潰される)のを回避する。

「ここで死になさい。アリア・フォン・トスカーナ。」

「エクスタスとライオネルの二重使用。正気ですか。」

「正気で貴女を殺せますか。」

「それもそうですね。ああ、殺すのが惜しくなってしまいます。いつまでも踊りたいです。貴女と。」

「戯言を!」

「本気ですよ。ですが何事も終わりがあるからこそ楽しいのです。」

致命傷以外の攻撃を受けながら逆転の札を切る。

破砕手榴弾を至近距離で自爆させる。頭だけを守りながら一瞬の隙を作る。

再生速度で一番早いのは私ですから。

「さぁ、仕切り直しです。」

なにか有効な手は。触手はまだ実戦段階には使えない。手榴弾の自爆も無意味。意外と詰んでいますね。

とりあえず皮膚の硬質化。皮膚表面に歯を生やして鱗替わりにして防御を固める。

多少動きづらいですが拳打を軽減できるのは大きい。

帝具には無力ですが。

シェーレにはダメージが通るはずですがスサノオが邪魔をします。

「要人護衛型は伊達ではないですね。本当に!!」

「防御にしか回れないが」「攻撃は私が!」

腕が絶たれ、即座に修復する。流石に虚栄は負担が大きいです。精神力が足りるか怪しいですね。

反撃に龍巣閃でシェーレの全身を刻もうとしますがスサノオに邪魔される。

貴方を刻んでも意味がないのですよ!

 

お互いに決定打に欠ける剣戟を演じていると好機が訪れる。

「息切れですか。二重帝具使用に慣れているわけではないようですね。次回までに慣れていてください。」

「下がれ。シェーレ。もう無理だ。俺も一緒に下がる」

「・・・・・・・・・・・・分かりました。撤退します。」

「シェーレはともかく貴方ぐらいは殺しておかないと友人に叱られてしまいます。九頭龍閃!」

「行け!」

「頑丈ですね。帝具人間。本当に。」

こうも殺せないと本気で殺しそうになります。

そうしましょうか。意識を集中させて刀を構える。ここで死になさい。スサノオ。

「葬る!!」

完全に意識の外からの一撃。咄嗟にしゃがみ、一瞬身体の動きが止まる。

「その隙に逃げられましたか。アカメが来たならボルスさんは。」

ボルスさんが戦っていた方向を見る。

「やはり。そうですよね。」

そこには亡骸が一つ。蘇生も間に合わないでしょう。

戦闘態勢を解き、パッチワークを停止させる。

「セリュー!生きていますか。」

「生きてるよ。なんとかね。」

「本物ですか。」

コロを呼び出して、拳銃で私の腹を撃ち抜く。パッチワークで即座に治す。

本人確認も済んだところで成果を聞く。

「成果はありましたか。」

首を振られる。やはりそうですか。

「完敗ですね。」「負けたね。」

生きているだけでいいとするには失ったものが大きすぎます。

「どうする。追撃する。」

「行けますか。」

ボルスさんの亡骸にエンバーミングを施し、残されたルビガンテに死守と血文字で書く。

ウェイブへの指示はこれでいいでしょう。

探知機で敵の位置はまだ捉えている。まだ追える。

「大丈夫。こんな時の薬でしょ。」

「また寿命が縮みますよ。」

「アリアが死ぬまでは長生きするつもりだから。健康には気を使ってるよ。」

パッチワーク。生理活性制御開始。

「久しぶりの二人きりだ。」

「さぞ、楽しいことになるでしょう。」

「さぁ、今度は私たちがリードする番です。」「断罪の始まりと思ってもらおう。」

逃がしませんよ。ナイトレイド。楽しい楽しい舞踏会は始まったばかりです。

そちらから誘ったのです。まだまだ踊っていただきますよ。

 




ナイトレイド対イェーガーズの第一戦の前半です。
ここから始まる戦いを少しでも楽しんでいただけたら幸いです。



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