アリアは踊る   作:mera

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第二十一話

「今回も手遅れでしたか。」

「情報を精査してくれるアリアには悪いけどね。自分が不甲斐ないよ。」

「本当にすまねえ。確実に間に合ったと思ったんだが。」

資料の山からナイトレイドの標的になりそうな人物を割り出し、隊員を送ってはみていますが後手に回り続けています。

ですから向こうから仕掛けてくれるのはありがたいことです。

そう思いながら手元の情報を眺める。

「死体はまだ温かったから本当に後一歩だった。」

「外傷は。」

「針で急所を一突き。」

その状況から考えるにガイアファンデーションですか。捕まえるのは至難の業ですね。

「相手が悪かったと諦めましょう。悪いことばかりではありません。朗報もあります。」

「帰ってきたのか。」

「タツミは無事か!」

「五日ぶりに行方不明者が帰還しました。我々の最大戦力の帰還です。」

帰ってきた理由が着替えなどを持っていなかったからという女性らしい理由であったことは友人として喜ぶべきでしょう。

それとタツミに無理やり手を出していないのも高評価です。

「さらにナイトレイドの目撃情報です。」

「詳しく。」

本当であれば全員揃った時に話すのが一番なのですがまぁいいでしょう。

「ナイトレイドの顔が割れている者達の目撃情報です。」

「一網打尽にするチャンスか。」

「罠の可能性は。アリア。」

「これで戦力を分散させれば確実に罠かと。ですが一網打尽にするチャンスであることに間違いありません。」

相手はナジェンダ将軍。兵力分散の愚は行わない。であるならば誘い込む罠以外ありえません。

「「罠ごと食い千切ればいい。そうだろう(そうでしょ)。アリア」」

「頼もしい発言です。セリュー、エスデス。それとお帰りなさい。」

「ただいまだ。アリア。部隊は上手く回せてるようだな。」

「一月程休みをもらいましたからね。その分は働きますよ。休暇は楽しめましたか。」

「中々楽しめた。次は部下とではなく彼氏と行きたいものだ。」

「応援はしますよ。」

タツミのですが。・・・・・・貴女の恋路を応援したいのは確かなのですが性急すぎるあなたを焚きつけることは避けたいのです。

「こちらの戦力から考えて2つに分けるのが限界か。」

無理をすれば3つに分けることも可能でしょうが、それはあまりに博打です。

「何か策はあるか。」

「策を考えてもいいのですが必要ですか。」

セリューや私。エスデスがいる時点で大概の罠は食い敗れますから。

まぁ。やるとしてちょっとした小細工くらいですか。

「ただいま。」

「ただ今戻りました。」

「ランさん、ボルスさん。お帰りなさい。」

「賊は逮捕して警備隊に引き渡しましたがよろしいでしょうか。」

「そうか。アリア、」

「材料が減るのは困るのですが。」

「悪は速やかに滅ぶべきだ。見た分、聞いた分くらいは。」

「十分で帰ってきてください。」

当たりの研究所を引けば人の形を保ったまま死ねるのですが。なんの慰めにもなりませんか。

「何か問題でも。」

「あなた方なら教えてもいいでしょう。現在、逮捕された方は例外なく人体実験の材料に回されています。」

「・・・・・・どうしてご存知なのですか。」

「私の都市の敷地内に研究所があるからでしょうか。」

「・・・・・・そうですか。教えていただきありがとうございます。」

「大したことではありませんから。話を元に戻しましょう。ナイトレイドについてです。」

 

「エスデスがいる場合は全てをエスデスに任せ私たちはそのサポートに徹します。」

「私なら丸投げしてきても構わないぞ。むしろいいのか。アカメも殺すかもしれんぞ。」

「全員捕らえて拷問室行きにするつもりでしょうに。その時アカメだけを譲ってもらいます。」

公私混同此処に極まれり。ですね。

「次は隊長がいない場合だね。」

「インクルシオの相手はセリューに。いない場合はボルスさんに。」

「妥当なところだね。私の七番なら撃ち抜けるし硬い相手なら経験がある。」

「インクルシオに通じるかな。」

「鎧です。焼けば死ぬでしょう。数千度の業火に対応できる可能性は低いでしょう。ちなみにグランシャリオの場合はどうです。」

「死ぬ。グランシャリオの形は残るかもしれないが俺が焼け死ぬ。」

「そうだね。頑張るよ。」

「村雨の相手はウェイブ。理由はお分かりですね。」

「ああ、もちろん。」

できれば私が相手をしたいのですが部下を死なさないのが仕事です。

我儘は仕事の後です。

「エクスタスの相手はラン。届かなければ意味ありませんから。」

「了解です。」

「タツミはエスデスのお守り。」

「了解ってちょっと待て!」

いや、仕方ないのですよ。お目付け役がいないと暴走しかねないのですから。

「命令です。ボーナスも出ますから。出しますから副隊長権限で。お願いしますエスデスが暴走した時有効なのはこの手だけなのです。」

「ひどい言われようだな。それでお前はどうするつもりだ。」

「今までの行動を顧みれば妥当な評価ですよ。遊撃とでもいいましょうか。一応それ用の修行をしていますから。」

「あれ、修行だったんだ。ただのものぐさかと思っていた。」

硬質の触手を作り出して紅茶を入れたり、髪を梳かしたり(精密な動作の練習)。見方によっては確かに面倒くさがりに見えますかね。

「宙に浮かぶ紅茶セットとかアリアのせいなのか。」

迷彩と組み合わせた時の話でしょうか。

「話がそれていますね。仮に二手に分かれる場合はエスデス、クロメ、タツミ、ラン。私、セリュー、ボルス、ウェイブ。そのように分かれるようにいたしましょう。」

「戦闘じゃ足をひっぱる私とお守りと空を飛べる遊撃手に帝国最強。無難だね。」

「・・・・・・お守りは決定事項か。」

「一緒に居られるんだ。タツミはいやか。」

「嫌じゃないけど。」

甘酸っぱい彼らは放置しましょう。邪魔すると碌でもないことになります。

「ボルスさん。ウェイブ。よろしくお願いしますね。」

あとは小細工の説明をいたしましょう。

「パッチワーク、創作、肉人形、アリア。縮小と。このようなものでしょうか。」

少しだけ高くなった声で周りに問う。

「え!副隊長小さくなれたんですか。」

「反応ありがとうございます。ウェイブ。・・・・・・脳の大きさは弄れないので子供の大きさが限界ですけどね。ですがこれでセリューの荷物に紛れ込むことができますね。」

「本当に小細工だな。アリア。帝都に残ったふりをしてついてくるなんて。」

「一度限りのドッキリですけどね。」

セリュー、ボルス、ウェイブ。その三人だけなら噛み付いてくる可能性も高くなるでしょう。

びっくり箱はお好きでしょうか。

「えっと、クロメ。そのキラキラした目でなぜ私を見るのでしょうか。」

そして目にも止まらぬ速度で私を抱き抱えるのでしょうか。

「お姉ちゃん。作戦が始まるまで私と一緒。ずっと一緒。その姿で。作戦開始は将軍!」

「明日の朝には出発する。それまで存分に英気を養え。いいな!」

「「「「「了解!」」」」」

私はクロメに愛でられて英気を養うことになるのですね。分かりました。

まぁ、いつもと逆転していますが姉妹の触れ合いは喜ぶべきことです。

しばらく離れ離れになるなら尚の事。

今夜は楽しくなりそうです。

 




ナイトレイド対イェーガーズの第一戦の準備です。
ここから始まる戦いを少しでも楽しんでいただけたら幸いです。


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