「貴方方が居るという事は、ドクターは無事に逃げ切れたようですね。」
パッチワーク。生理活性完全制御開始。
「ああ、逃げ切られたよ。だから、お前は逃がさないぜ。アリア。」
「誘われて逃げはしませんよ。」
さて星明かりで周りがよく見えます。疲労感と精神力はどうにかなりましたが危機的状況であるのは間違いないのですよね。
「ただ、死出の道行に同行が欲しいので一人は確実に。」
宣言と同時に鉋を地面につき刺し、準備をする。
全力で足掻く為に
「誰が私と一緒に逝きますか。」
「十分に全力な気がするけどな。アリア。そっちの青髪の兄さんは打開策あるかい。」
「スサノオだ。俺が行こう。帝具人間の俺ならばあるいは死なないかもしれん。」
「待った。アカメちゃん達が起きるのを待つか。せめてマインちゃんの狙撃に合わせた方が良い。」
「来ないならこっちから行くかもしれないことをお忘れなく。」
パッチワーク。内臓排除。持続修復。縮地で斬り込むのも悪くはないです。
「あー。作戦タイムくれって言ったら了承してくれるか。」
「……いくら何でもそれは無理じゃないか。」
「言うだけならタダだぜ。兄貴。それに、」
「構いませんよ、ただ気絶している方は三日ほど目を覚まさないですが。楽しませてくれるのですよね。」
「相手は狂楽家だからな。……楽しめるかはどうかはともかく全力で殺しに行ってやるよ」
全力で思ってくれるなんてそれだけで嬉しくて堪りませんよ。ラバック。
「楽しみに待ちますよ。ああ、でも早くしないと私は回復するかも。後、鎧の方も外した方が。先程より息が荒くなっていますよ。」
「散瞳に心拍数上昇。無理してるのはそっちだろ。」
糸は便利ですね。色々な事が分かりますから。
「さぁ。話し合ってください。聞き耳を立てるような無粋な真似は致しませんから。楽しませてくださいな。」
ここで終わり。そう思うからこそ後も先も考えず遊ぶことにしよう。
どうせいつか私は死ぬ。
正義に討たれ、氷に撃たれ、もしかすると妹を一人で逝かせない為に。
それが来ただけ。
さぁ、これがアリア・フォン・トスカーナの最期の遊び。
思う存分楽しもう。それこそ楽しすぎて死んでしまうほどに。
覚悟は初めから。準備はすでに。死ぬことすら楽しもう。
「改めて名乗ります。私はアリア・フォン・トスカーナ。継ぎ接ぎだらけの
名乗りを合図に彼らは動く。正確には彼らが動く気がしたから名乗ったのですが。
「この程度ですか。」
「油断はする物じゃない。」
青髪、いえスサノオさんの一撃を空っぽの胴体で受ける。
「「捕まえた。」」
胴体内でミキサーが起動するのを感じながら、地面を鞘の代わりに使い、最速の斬撃を叩き込む。
飛天三剣流 変則抜刀術 風龍閃 暴嵐。
龍巻閃 嵐を強引に抜刀術にしただけの技ですが楽しんでください。
空中で縦に体を回転させながらスサノオさんを斬り伏せる。
私は防御を捨てていたのですが向こうは違ったようで核の破壊に失敗する。
縦半分にしましたから暫くは再生しないと思いますが。
私は横半分に、上半身と下半身に分けられ、空中に打ち上げられる。
先には網。私を賽の目状にするつもりですか。見え見えの罠です。
誘導でしょうが避けるしかありません。
指弾を撃った反動で跳び空を経由してラバックに迫る。
「待ってたよ!」
短機関銃で私を撃つラバック。その程度の弾幕なら左腕を犠牲に抜ける。その先にはもちろん
「ここで通したら」「漢が廃るでしょうね。ですが防げますか。」
ぐちゃぐちゃになった左腕で拳打を受けて右腕を鎧に添える。
「
ブラートの頭上に
「私の持つ
「右と左は持って行った。任せたぜ。」
「任された!兄貴。」
一瞬で右腕をもぎ取られましたがまだ戦えます。
肉塊に潰されるブラートを確認し、前へと落ちる。
ラバックの元にたどり着く。頭を噛み砕く為に口を開く。
そして、罠にかかったことに気付く。
「普段なら気付くだろうが今は
落ちてくる杭、いえ丸太ですかね。ともかくそれが私を地面に縫い留める。即座に舌で歯を折り、吹矢の要領でラバックを撃つ。
「悪足掻きは綺麗じゃないぜ。」
「生き足掻く方が全力で生き抜いた気がするので。ですからまだです!」
パッチワーク、身体制御、成長促進、骨。損傷部位、解け。
両肩口から骨を生やし、縫い留められた部分を捨てて骨で地面を刺しながら前へと進む。
「……冗談だろ!」
ナイフと骨で打ち合う。咄嗟の反応にしては悪くありません。ただ、接近戦苦手でしょう。ラバック。
何回かの斬り合いで勝負がつく。
「私の勝ちです。ナイトレイド。」
ラバックに深々と骨を刺し込み。感覚が殆ど無くなった身体で勝利宣言をする。
「いや、アリアの負けだ。マインちゃんがまだ居る。スサノオももう少しで復活する。だから、お前の負けだ。」
「その場にいる全員を戦闘不能にしたのです。冥土の土産に勝利宣言くらい、いいじゃないですか。」
ああ、楽しかった。満足のいく闘争だった。眼を閉じればそこで終幕。
「身勝手な姉を許してくれますか。」
それが少し気がかりです。でもタツミが居るから大丈夫ですか。
胸に衝撃が走る。いい気分で
……胸にアンカーが生えています。なすがままに回収される。
「随分と乱暴な回収ですね。誰の入り知恵ですか。」
「勝手に何処かに逝こうとするお転婆には丁度いいんじゃないか。」
「言うようになったじゃないですか。タツミ。……助かりました。」
「お礼は怪我を治してからでも遅くないと思うな。お姉ちゃん。」
パッチワーク。生命維持。
クロメも居ましたか。
「戦いの邪魔はしないでほしいと言ったはずですが。」
「お姉ちゃんに嫌われるのは嫌だけど、死なれるのはもっと嫌。しばらく我がまま控えるから許して。」
「……勝手なのはお互い様ですから許します。紹介します。私の最愛の妹ととても素晴らしい好青年のタツミです。」
ラバックに一応紹介しておく。傷口を糸で縛ったのですか相変わらず器用ですね。
「ここで増援かよ。冗談きついぜ。」
「お姉ちゃんの相手に手を出すのは怖いから交渉しに来ただけなんだけどな。私はか弱い女の子だから。」
「俺は荷物運び兼護衛だな。……か弱い。」
荷物。一体何を持って来たのでしょうか。
「交渉だと。」
「うん。これをあげるから見逃してってね。……タツミ、後で将軍と訓練だね。」
タツミが持ち出したのはライオネルとベルヴァーグ。それとブラックマリンにスクリーム。
帝具を4つも持ち出して来たのですか。大事にされていますね。私は。
「…………受ける。……どうせ受けないとロクでも無い事になるんだろう。」
「ここら辺一帯の地図を書き換えなきゃなるだけ。」
五道転輪炉を懐からいくつも取り出して笑うクロメ。
確かに地図を書き換える必要が出てくるでしょう。
「今回は引き分けですね。ラバック。またいつか
「勘弁してくれ。いやマジで。臆病者にはキツイって。」
怪我も数週間で治るものです。何でそんなに弱気なのでしょうか。
「それでは。また夜に。」
「タツミ、警戒よろしく。お姉ちゃんは私が持つ。かなり軽くなってるから大丈夫。」
確かに手足もなく、下半身も内臓もなければ軽いでしょう。クロメ。ですが女性に体重のことをとやかく言うのはどうかと思いますよ。
「任せろ。アリアは屋敷まで持つのか。」
「持ちますよ。持たせます。ドクターに私を渡してください。……一休みとします。」
パッチワーク。生命維持。自動継続。
最低限、生き延びるために必要な事をしてから目を閉じる。
あぁ、楽しかった。
対ナイトレイド後編。
アリアの奮戦が少しでも伝われば幸いです。
戦闘描写がさらに煩雑で分かりにくくなってしまいました。
申し訳ありません。
少しでも楽しんでいただければ幸いです。
感想を心からお待ちしております。