アリアは踊る   作:mera

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第十八話

全速力で闇夜を駆ける。邪魔な木や危険種は切り刻みながら直進する。

大きな影が地に落ちている。上を向けばそれは危険種。

フライマンタ。飼い慣らせば人を乗せる事も可能な危険種。

ドクター。無事だと良いのですが。

危険種化させた先兵と巨大人造危険種3体。全身を義体化された上級の駒。薬品で限界まで強化された歩兵。

一個師団に匹敵する戦力が撃破などされないと思うのですが。

相手は帝具使い。一騎当千です。

 

あれがナイトレイドのアジト。ドクターは。居ました崖の上ですね。

気配が殆ど無いというところを考えるとチームドクターは壊滅状態ですか。

巨大人造危険種も上半身が消し飛ばされたり、縦に二つにされたりと惨憺たる有様です。

仕方がありません。痛いのは好きではありませんが。

「パッチワーク。持続修復。重点修復、足。」

壊れながら加速しましょう。

 

「ドクター。良い夜ですね。気分は。」

「最悪の気分よ。手駒は失うし、此処まで追いつめられるなんてスタイリッシュの欠片もないわ。」

「新手!」

ドクターの近くにはアカメと青髪の男性……気配が人と違う。コロに近い気配。厄介な事です。

「余計なお世話をしに来ました。余計ではなくなってしまったようですが。」

「スタイリッシュな登場よ。仲間()の危機に颯爽と現れるなんて。とても王道なスタイリッシュ!!」

テンションが上がっていますが油断できる状況ではないのですよね。

「ドクター。私が時間を稼いだら独力で逃げ切れますか。」

「出来ないなんて無様な事は言わないわ。耳、目、鼻。逃げるわよ。きちんと誘導で来たらご褒美をあげるわ。……また会いましょう。アリア。」

「はい、また会いましょう。」

「行かせん!」

青髪に銃を撃つ。全弾命中。……避ける気がないですね。やはりコロと同じですか。

「私を無視しないでください。アカメ一人では役不足。そうは思いませんか。」

アカメへ警戒しながら切り札を一枚切る事にする。

「横入りした無粋への謝罪に。奥の手を見せて差し上げます。」

大罪の一つは憤怒。(パッチワーク、臨界駆動。)その怒りは身を焦がす。(取り寄せ、人油、霧状。範囲、視界全域。)

鍵語を唱えて暗示で指定済みの行動を起こす。

仕上げに手元のマッチで火をつけ焼き払う。

ルビガンテには遠く及びませんが火の壁です。簡単には突破できないでしょう。

ただ、生物型帝具には意味を成しませんか。

火の壁をあっさり突破され、攻撃をしてくる。

とりあえず槌を受け流す。受け流したのに手首が折れましたか。タツミと同じパワータイプですか。

まともに受けたらお星様です。

「その長刀。鉋か。随分と扱いにくいものを使う。」

「慧眼というよりは博識というべきですか。千年前の事をよく覚えているものです。」

「単騎での特攻とその自信。大将軍の家系か。」

「トスカーナ。いえ、ハプスブルクと言った方が分かり易いでしょうか。」

「帝具を作った家の子孫か。」

横合いからの狙撃を躱す。炎の壁で視界は遮断されているのですが。

めくら撃ちでど真ん中というのは天才を通り越して異才です。

「そうなりますね。……アカメも早い到着で。」

周囲には糸の結界。

「アリア・フォン・トスカーナ。帝都における大臣派閥の二番手。間違いないな。」

「彼の存在が帝国の利となる限りはですが。人殺しに問答は無用では。さあ、来なさい。弄んであげますよ。」

彼らの視界外に一手手を打っておく。

パッチワーク、傀儡造り(マリオネット)。レオーネ。操るための指は足の指でいいですか。

「……葬る。」

斬撃を躱さずにかすり傷と引き換えに柄元を掴みとる。耳の一つでも剥ごうと手を伸ばす前に村雨を手放し距離を取られる。

同時に放たれた射撃も躱さない。

この状況(敵に囲まれている)ならパンプキンは頭を狙われないかぎり怖くない。

「パッチワーク、紐解け。取り寄せ、手首。継げ。村雨は返します。利子(手首)つきです。」

青髪と慣れない二刀流で渡り合うのは難しいですから。

隙が出来ない程度での全力でアカメに村雨を投げる。かすりもしませんがしばらくは離脱です。

青髪の攻撃を受け流しながら手足を削る。即座に再生されます。

非常にやりにくいです。エスデスやセリューは私相手にこんな感想を抱いているのでしょうか。

「千日手ですね。」

「なら、有利なのは私達です。」

「おや、短髪も似合いますね。シェーレさん。」

右肩から先を斬り落とされる。避けなければ左右に真二つでしたね。

閉じた鋏が開かないように二本腕を右側に縫い付けて抑え込み、三本目の右腕で首を掴む。

「か、は。」

首をへし折らないよう優しく絞め落とす。

左側からの青髪を三本目の足で邪魔をする。まずは一人。あれ。足に力が。足はある。どうして動かない。

血。腰から血が噴き出す。

「葬る!!」

アカメがもう戻って来ていましたか。

「零閃!」

袈裟斬りをされた身体が空を舞う。自分で自分を斬るのはあまり楽しくないです。

そして久しぶりに死を間近に感じました。

あの距離で動く私の脊椎の神経だけを撃ち抜くのは人間業じゃないでしょう。

袈裟斬り()より唐竹割り(アカメ)が早ければ死んでいましたね。

でも生きているなら私の勝ちです。

残心を欠かさず私にだけ集中しているアカメをレオーネ(マリオネット)で蹴り飛ばす。

死人が横から現れる。そんな有り得ない光景で生まれた一瞬の空白を生かす。

パッチワークで呼び出した下半身を縫い付け、人皮の服を纏う。

「仕切り直しです。そちらは二人減っていますがね。」

取りあえず笑う。

奥の手を使い、傀儡を作り、強引に下半身を呼び出して繋いだ。

能力の使い過ぎで襲ってくる猛烈な疲労感等を押し隠して笑う。

「いや、減ってないぜ。」

見たことのある緑髪の青年と(インクルシオ)

死にましたかね。

「ラバック。月夜で出会えばどうなるかは言っていましたよね。」

「昼間は殺しませんとしか聞いてないぜ。」

「ボロボロのところ悪いが全力で行かせてもらう。」

「ふふ、楽しいですね。つい本気を出してしまいそうです。出しませんが。遊びの範囲で最期まで足掻かせてもらいます。」

だって出してしまったら詰まらないですから。

「どこまでも律儀だな。アリア。」

「良い性格でしょう。それとも本気を出してもいいですか。」

「まさか、侮ったまま死んでくれ。俺は臆病だからな。兄貴もそれでいいだろ。」

「さすがに俺の我儘で仲間を危険にはさらせねぇからな。」

さぁ、舞踏会は終わりませんよ。私が死ぬか。貴方方が倒れるまで。

「さぁ、踊りましょう。」

 

 

 

 

 

 

 

 




対ナイトレイド前編。
全く本人は描写されていませんが今回のMVPはマインです。
炎の壁越しに狙撃を成功させていますから。さすがは狙撃の天才です。
戦闘描写が煩雑で分かりにくいと思いますが筆者の限界です。
少しでも楽しんでいただければ幸いです。

感想を心からお待ちしております。

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