アリアは踊る   作:mera

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第十七話

「生きておられますか。ウェイブ、タツミ。」

「「…………。」」

「さすがに私と百。エスデスと五十はきつかったですか。」

練兵場での訓練(虐め)を終え、温まった身体でちらりとエスデスを見る。

「私も相手をしてやりたいが先約がいるだろう。私はタツミの寝顔を楽しむさ。」

先約。ああ、そうでした。帰ってきたのです。話してお茶を楽しんだというのに。

殺し合わないのは道理に合いませんね。

「踊りましょう。セリュー。貴女の正義(独善)が私に届くか。試して差し上げます。」

「……行くよ。コロ。正義は勝つから。」

何時かは勝てるでしょう。今ではないですが。

「合図は私が取ろう。礫が落ちたらだ。」

空中に氷が現れる。落ちて落ちて

「コロ、十二番!!」

縮地で距離をつめた先に壁が現れる。指向性散弾をこれでもかと貼り付けた壁に阻まれる。

今までの経験上次は

「腕、七番。キャニスター。」

ローラーを用いた高速機動で横に回り十字砲火、上からの拳打の豪雨。

何時も通り、面白いです。でも面白いだけです。

祇園壁(十二番)が作動する前に足軽を用いて蹴り飛ばす。空中で身動きの取れないコロをげいげ

下半身が挽肉に変わる。咄嗟に避けてこれですか。

「殺し損ねた!コロ、六番。ナパーム!」

どうやって距離を、なるほど。足の固体燃料を起爆させて擬似的な縮地を。強引ですね。

「パッチワーク!間に合いませんか。」

動けと叱咤したくとも足が無い状態。

棒手裏剣をミサイルに打ち込み。破壊を試みる。さすがにナパームを正面から浴びたくはないですよ。

棒手裏剣を打った反動でその場を離れる。挽肉にされると再形成が遅い。五秒なんて二十回は死ねる時間です。

火の海の中からコロが現れ、後ろからは絶え間なく超高速のダーツ状の弾丸と小型ミサイルが飛んでくる。

小型ミサイルの中身は榴弾。それもご丁寧にすべて近接信管ですか。

直したばかりの足を壊しながら爆縮地。近づいたら起動するというなら爆発する前に刻むだけです。

「主導権争いは敗れましたか。でも終わった訳ではありません。」

一歩一歩、コロを刻み、ミサイルを刻み、弾丸を躱し、距離を詰める。

「そんなの分かってる。これくらいで死ぬわけが無い事くらい。だからこれで死ね。」

「正面から突破して差し上げます!」

周囲には魚雷。あらかじめ地面に配置していましたか。動きを止められました。

私は貴女の手の平の上。どう楽しませてくれますか。

「さよなら。アリア。」

「また会いましょう。セリュー。」

私を囲む爆薬の壁。ここまで貴女の計算通りですかセリュー。

死んでしまいそうです。こんなにも私を思っていてくれるなんて幸せで。

 

だから、本気で相手をしましょう。

何時もより軽く。

「パッチワーク。内臓排除。持続修復。」

何時もより早く。

「素晴らしき一瞬を。存分に味わう為に。」

何時もより楽しく。

「遊びますよ。命を懸けて。本気で。」

囲む壁を破壊する。一太刀で壊れる腕。百太刀は耐える壁が十数。壊すまでは私の体感で二十秒。

私がセリューを思う想いに比べれば一撃は軽すぎる。

言葉の代わりに斬撃を放つのならこの程度では足りないでしょう。

爆発の衝撃を斬り伏せる。余波は身体中に爪を鱗状に生やして破片を凌ぐ。爆風を利用して距離を一瞬で詰める。

セリューの真横を抜け、移動に伴う衝撃波(ソニックブーム)で牽制。反転、セリューを刻む。

『化け物め。』

『よく言われます。お嫌いですか。』

お互いに肺が壊れたせいで声が出ない。読唇術は習得済みだから会話が成立するのですが。

『負けるのは嫌い。』

「それは私もです。パッチワーク。修復。」

「また、負けた!!今度こそ殺せたと思ったのに。」

「そして、また練兵場が壊れたわけだ。」

いつの間にかブドー大将軍が。……大丈夫ですね。練兵場を破壊したのはミサイルを撃ち、弾丸を撃ち、爆薬を爆発させたセリューなのですから。

後半の衝撃波など大した破壊ではありませんよね。きっと。

「「壊したのはアリア(セリュー)です。」」

「問答無用!!」

雷が落ちました。比喩ではなく本当に。

 

 

 

「燻ぶっているのはそういう訳ね。まぁ、練兵場を壊すのはスタイリッシュとは言えないわね。」

「余裕の仮面を剥がされて戦う。それはもう楽しいものですよ。ドクター。それはさておき。私だけを呼んだ理由は。」

ふわふわになってしまった髪を直そうと櫛で梳かしながら話を促す。

ただでさえくせ毛なのに雷を浴びたせいでひどい事になっています。

「ナイトレイドを強襲するのよ。やっと見つけたの。」

「どうやって見つけました。」

「帝都周辺の危険種が生息していて、川沿いの場所を虱潰し。スタイリッシュとは言えないけど確実だもの」

地図には大量のバツマークと少量の三角と丸が一つだけ。丸が基地という訳ですか。

確かに人間が住む以上、水は必要不可欠です。

隠れ住む以上、危険種が居る場所である(一般人には立ち寄れない)必要があります。

帝都周辺でその条件を満たす場所は多い訳ではない。少ない訳でもないのですが。

ドクターが本気で探せば簡単とは言いませんが難しくもないでしょう。

「強襲の協力は出来ません。まだナイトレイドには利用法があるので。」

「帝具使いだけのスタイリッシュな部隊。帝都のゴミ掃除。確かに便利だものね。でも駄目。抑えられない。あんな素敵な素材を研究できないなんて。分かるでしょう。」

「殺戮と研究。方向は違えどですが。ありがとうございます。ドクター。行く前に私に話してくれて。」

「預けたいものがあったからね。勿論返してもらうから。」

パーフェクターを渡される。随分と覚悟しています。

「死ぬ可能性があるのに行くのですか。科学者が。」

部下(研究成果)だけ行かせて自分は安全圏だなんてスタイリッシュじゃないでしょう。私は研究に命を懸ける。何故ならそれがスタイリッシュだから。」

長い付き合いですがスタイリッシュへの理解はまだ足りないようです。

「でしたらもう止めません。ここまで覚悟を決めた方を止めるのはスタイリッシュとは言えない事くらい私でも分かりますから。」

笑って送り出す事にします。

「やっぱり貴女はゾッとするほどスタイリッシュよ。グリム。」

「死神と戦女神から望む物は見られましたか。」

「大体はね。でもスタイリッシュの追求に終わりなんてないの。実験もね。それじゃあ、行ってくるわ。」

「それではドクター。また会いましょう。」

 

 

 

鉋、鈍、ダガーに棒手裏剣。微塵、リボルバー、針弾に足場と指弾用の小さな礫。

「はい。グローブ。どこの舞踏会に飛び入り参加するつもりなの。お姉ちゃん。」

「梟の巣に。余計なお世話しに。」

「殺す気はないんじゃなかったの。アカメ以外。……余計なお世話か。」

「顔見せです。シェーレさんも気になりますから。はい、余計なお世話です。」

「そっか。いってらっしゃい。お姉ちゃん。」

「はい、いってきます。」

さて、行きますか。ドクターを死なせるわけにはいきませんから。

余計なお世話だと笑われると良いのですが。

月明かりで照らされた舞台。

狂気(ルナティック)を持って舞うには実にいい舞台です。

狂科学者に戦闘狂。革命に酔う者。狂人には事欠きません。

 

 




ドクターの表現が難しいです。
多少原作よりマイルドくらいを目指しているのですが。
セリューの十王のの裁きは追審 蓮華王、祇園王、法界王が足されています。


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