アリアは踊る   作:mera

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第十六話

足元のコロをコロコロと転がす。

「また、不思議そうな顔をして。帝具だからって理由でいい加減納得したら。」

「いや、例えそうでもあれだけの物を体内に収めているのですよ。気になります。」

「僭越ながら。お嬢様のパッチワークもセリュー様のヘカトンケイルも変わらないと思います。」

観測手の部下にもツッコミを入れられながら高台で退屈を潰す。

ボルスさん達がまだ到着しておりません。

故に勝手に狙撃を開始するわけにも行かずコロコロを転がして遊んでいます。

「それもそうですね。しかし作戦時刻はもう少し早めでも良かったかもしれません。」

「無理言ってごめん。でもこの眼で夜なら絶対に逃がさないから。」

機械化された片目を指さしながらそんな事を言う。

スターライトスコープ、大型消音狙撃銃、遮蔽物の殆ど無い荒野、高所を占拠。七面鳥撃ちもいいところです。

「それはお互い様です。六番クラスターで殲滅したいのでしょう。」

「悪は一秒でも早く殺す。そこは昔と変わらない。」

昔と違うのは悪も表返る可能性があることを学んだことですか。

そう言おうとして紅茶用のお湯が沸いたので火石を離す。

「貴重な危険種の素材で紅茶を沸かすのはアリアくらいだよ。」

「自分で狩ったのです。好きに使います。」

私とセリュー。部下の分の紅茶を入れる。

「ありがと。・・・・・・美味しい。帰ってきてから四回は貰ってるけど飽きないなぁ。」

紅茶は百や千で飽きるものではありません。同じ茶葉で入れない限りは。

「それは良かったです。・・・・・・お仕事の時間ですか。」

カップを傍らに置きハロウィンを伏射で構える。

ウェイブさんが門を蹴り破るのと同時に銃座の機関銃を撃ち抜く。

そのまま近くにいた人間の足を撃ち餌の用意も忘れない。

「私はすることがないな。」

紅茶を飲んでいる親友は暇そうです。まぁ、始まったばかりで逃げる者はいないでしょうから。

「紅茶を楽しめば良いのです。満天の星空で飲む紅茶は美味しいですよ。」

相槌を打ちながら餌に釣られた者を撃ち殺す。釣れなくなってきましたね。腹部に二発撃って別の場所を探す。

・・・・・・さすが帝具使いですね。草竜の頭から尾まで蹴り穿つなんて。私には真似できません。

「ただ、周囲に気を配れていませんね。ハロウィン、収束弾(レーザー)。」

ウェイブさんを狙っていた重砲を切る。

「甘いね。あの程度なら死にはしない。痛くないと教訓にならないよ。」

「部下を無傷で返すのが私の仕事だと思いますから。」

と言ってもボルスさんは熟練ですから手を出す必要がありません。

ランさんはキャニスター弾をあっさり避けています。

ウェイブさん以外見守る必要がないのですよね。

セリューが弾き飛ばされる。いえ、咄嗟にセリューが回避したのですか。

「アリア、狙撃!!」

片腕を吹き飛ばされても構わず指を指す。

「何が見えます!」

「ピンク、ツインテールの女。鎧。」

「インクルシオ、パンプキン。・・・・・・挨拶に行きますか。セリュー。」

「今はいいかな。賊の殲滅を優先する。でもお礼をしないと。コロ!2番、2番、2番、2番。7番、7番。殲滅装備!」

「それもそうですね。とびっきり派手に行きましょう。」

ハロウィン、広範囲殲滅モード。照射三秒。

「「発射!!」」

膨大な数の小型ミサイルと榴弾。それに広範囲を焼き尽くす光をもって先程の返礼とします。

受け取ってくださいな。

・・・・・・命中軌道にあるのは殆ど迎撃されていますね。いい腕です。ハロウィンを連射に切り替え撃ちまくる。

オーバーヒートの手前で撃つのをやめる。

セリューも撃ちきったようですね。

おそらくこの土煙が止む頃には尻尾を巻いて 頬を逸らす。肉の焼ける匂い。躱したと思いましたが。

「本当にいい腕です。パッチワーク。修復。」

心が燻る。あんな素敵な相手を見つけて殺しに行けないなんて。

「落ち着け。残念がるのは分かるけど仕事をしろ。逃げ出した奴が出た。」

「はぁ、楽しみは後にとっておきます。」

高ぶった心は弾にして撃つ。少し威力過剰で胴体が消えてなくなっていますが気にしません。

楽に死ねたと喜びなさい。というよりやっぱり銃は駄目ですね。殺した感触が手に残りません。

不完全燃焼もいいところです。このもどかしさはタツミとウェイブに訓練でぶつけましょう。

 

 

 

「落ち着きました。迷惑をかけてすみませんね。セリュー。」

はしゃぎ過ぎました。仕事だというのに。本当に子供のように。少し恥ずかしいです。

「昔に比べれば大したことじゃないよ。子供の相手は。・・・・・・逃亡者はゼロ。うん、いい仕事だ。悪は殲滅です。」

「昔ですか。昔と比べて人殺しは楽しいですか。」

「楽しむには殺しすぎたかな。日常の風景だよ。アリアは。」

「楽しい趣味です。殺し合いは。心が躍ります。昔とは大違いです。」

昔は飢えでした。殺しても殺しても(食べても食べても)満たされることのない飢えでした。

セリューに会って殺す事以外の楽しみを見る余裕が出来なければ私の生は随分と詰まらないモノだったでしょう。

そして飢える(殺さない)事も楽しめばいいと単純な事に気付いたら世界はとても楽しいです。

「貴女のおかげです。今の私があるのは。ありが「一々お礼を言わない。」・・・・・・貴女に会えて私はとても幸運でした。」

「私はとびっきり不運だよ。それが不幸にならないところが面白い話だけど。合流するまで時間があるね。紅茶が飲みたいな。」

まぁ、私みたいな殺人鬼に気に入られるのは不運でしょう。どうしようもなく。それを不幸でないと言い切ってくれるのは貴女ぐらいです。

本当に私は幸運です。

「美味しいのを入れて差し上げます。楽しみにしていてください。」

最高の友人と満天の星空で紅茶を飲む贅沢を心ゆくまで味わいましょう。

 




どうもセリューさんとアリアが二人きりだと口調が砕けてしまいます。
なんだか原作と違う気が。今更ですね。
ナイトレイドは帝具の情報を手に入れました。少しでもナイトレイドを有利にしないと狩られるだけですから。


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