アリアは踊る   作:mera

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クロメの過去が捏造されています。
クロメが好きな方々、申し訳ありません。



第十四話

帝都の治安は実はそれほど悪くありません。ただし、表通りに限定です。

裏路地の場合は入った瞬間にアバレストで撃たれるのではないでしょうか。ブレードボルトで。

死体も売れますから。肥料の材料として、食材として。

まぁ、私やクロメ。エスデスにタツミ。ちょっかいを出した手が消し飛びますね。

「このメンバーで食事は避けたいですね。」

「なんで。美味しくないのか。このへんの食事処。」

「「「毒殺の警戒」」」

幼少期に白い天使を食べて、内蔵が腐り落ちた嫌な思い出がありますから。

親に疎まれるというのは嫌なものです。

昔と違って、相手は革命軍ですね。

「無用心だった。ごめん。」

「普通に生きてれば気にする必要ない事。てかお姉ちゃん達大概の毒は耐性持ってる。」

帝具級の毒でもなければ効きません。効いてもパッチワークで取り替えれば済む話です。

「タツミが持っていない。アリアがいるとしても苦しまないのが一番だ。意識が明瞭なまま呼吸が止まるなんて体験。私ならしたくないな。」

そうです。タツミが持っていないのです。そうでなければ食べに行くのですが。

「そういうことです。ですので、エスデス着せ替え人形などいかがでしょうか。きっと楽しい。」

「本気か!!本気で言っているのか!!」

本気ですよ。軍服とパーティードレスとスーツしか持っていないじゃないですか。

「エスデス将軍で遊ぼうとするのは私のお姉ちゃんくらいだと思う。」

「帝国最強ってアリアなのか。」

「この場の雰囲気ならね。」

お金は持っているのですから拷問ばかりしないで服飾に気を使ってくださいな。

私ほど多趣味になれとは言いませんから。

「分かった。分かった。」

「ええ、それでいいのです。」

 

 

エスデス着せ替え人形で十二分に遊んだ後に面白そうなものを見つける。

ダッフルコートを着込んだ三人組。近くには趣味の悪い奴隷商。

遊んでみましょうか。夜側のルール。奪い奪われ殺し合う。覚悟しているでしょう奴隷商。

「少し席を外しても。」

「「試すのか()。」」

「はい。ほっといても死ぬだけなので試してみようかと。」

「人助けか。」

「面白ければ。誰でも彼でも救う英雄ではありませんから。」

「アリアに気に入られる事を祈ってる。」

タツミのことですから助けに行くとでも言うのかと思いましたが。

「・・・・・・俺は助けない。助けられない。助けた後まで責任持てないから。情けない話だよな。」

助けた後の事まで考えられるのは十分に上等だと思いますよ。

「強者の特権の一つだ。口惜しければ強くなれ。少しでも早くな。」

弱者に権利はない。そう考えるエスデス。

望む事こそ為すべき事と考える私。

ただ、助けるも殺すも嬲るも愛でるも強者の特権。強くなければ自由はないという事。それが私達の共通点。

「ではクロメ、上手く二人の仲を持ってください。」

「最後に無茶ぶりしたらダメ!!」

貴女なら出来ます。クロメ。私の自慢の妹なのですから。

私は遊んできます。

 

 

 

「おい、小娘。このみ」

通り過ぎると同時に脳を抜き取り殺す。柔らかく弾力のある脳漿の感触を楽しみながら握りつぶす。

「お邪魔します。」

足の骨を折られた。違いますね。両膝の関節を壊された少女が一人。今にも目を潰されそうな少女が一人。上半身を裸にされた少女が一人。彼女たちを試してみましょう。

そのために邪魔なモノを片付けましょう。

肺を、腎臓を、心臓を、抉り握りつぶしながら片付ける。

一つは時計用に残しましょう。

「ぼ、僕がこうなったのは」

うるさいから声帯は抜いておく。

時計が喉から血を流す。失血死されると困るので止血しておきます。

「た、助けてくれてありがとうございます。」

「まだ、助かった訳ではありませんよ。」

「「「え。」」」

三人ともがきょとんとした声をあげる。何かおかしなことを言ったでしょうか。

「見ず知らずの人を理由も無しに助けますか。ただ、順番が前後しているだけですよ。」

まだ理解していませんね。

「つまり、今から助けた理由を作るのですよ。そんな難しい事は言いませんから安心してください。」

安堵の声が聞こえる。難しくないだけで命の危険が無いとは言っていませんのに。

懐から六連装リボルバーを取り出し、目の前で一発の弾を引き出し、捨てる。そして銃を手渡す。

「頭に銃口を向けて引いて下さい。簡単でしょ。」

「な、なんで!」

「私が助けたからです。嫌なら私が代わりに引きますよ。」

簡単なルールを説明する。

銃口は頭に向ける。

弾倉は何回回しても自由。

弾は追加しない。

引き金を引く順番は自由。

制限時間は時計が死ぬまで。

「私に向けた場合、何をするか分かりませんよ。」

血染めの店内を見せつけながら殺気を乗せて脅す。時計の両肺に穴を開けてカウントダウンを始める。

「さぁ、誰から引きますか。」

「ふざけ」

殺気を強める。怒りで向けられては試す意味がない。

「向けてもいいですよ。」

「だめです!!ファル!!」

「でも」

「引くしかない。引くしかないです。」

全員が生き残る確率は一パーセント未満なのですが本当に良いのでしょうか。

「なら、私が引く。足も駄目だし。」

「ファル、何を言って。」

引き金を引く。当然のように弾が発射される。

一人の頭が消えてなくなる。

「「ファル!!」」

神様は助けてくれなかったようです。ああ、でもいい顔です。

「あぁ、ごめんなさい。ごめんなさい。」

「ファル。銃を借りる。分かった。この人が望むことが。」

「私が望む事とは何でしょう。」

「私達が苦しむ事。仲間割れ。それが貴女の望む事。絶対思い通りになんかなるものか!!」

引き金が引かれる。私目掛けて計四発。二発掴んで、二発撃ち落す。弾速の遅い拳銃弾でしか出来ない曲芸ですけど。

「ごめん。ルナ。我慢できなかった。」

「ううん。最初からこうすべきだった。ファルが正しかった。止めるべきじゃなかった。」

「ああ、あれだけ警告したのに。……貴女を助ける理由が出来ました。」

無謀と知って行う勇気。それを持つなら助ける価値があります。

だって窮して咬む事も出来ない鼠を助けても詰まらないでしょう。

「意味が分からない。殺すんじゃないの。」

「狂人の考えなど理解できるものではありません。ただ、貴女は助かっただけです。それに言いました。何をするか分からないと。」

ゆっくりとルナと呼ばれる少女に近づく。

「え。何を。」

「内臓だけ抜いてみようかと。ゆっくりと痩せていく様を見れば私を憎むでしょう。」

私の手から必死に逃れようと後ずさる。可愛いです。そして封筒を押し付ける。

「戯言です。この紹介状を指定した店の店主に渡しなさい。」

ラバックに後のことを押し付ける。困った民の為の軍を謳うならかまいませんよね。

「名前を教えて。」

エアさんが私に問う。私だけ彼女たちの名を知っているのは不公平ですか。

「アリア。素敵な夜の女王様です。……戯言ですよ。」

「貴女の望みは何だったのですか。」

「面白いものを見たいですよ。ただ、最後の一人に聞いてみたいことが有りましたが。」

生き残る確率が上がりましたが友人が死んで嬉しいですか、悲しいですかと。聞いてみるつもりでした。

人が壊れる様は良いものです。

「非道。」

よく言われます。

少女の死体に手をかざす。

「保存しろ。パッチワーク。死体は預かっておきます。後日暇なときにラバック。ええっと紹介する店の店長に渡しておきます。」

周りの死体をパッチワークに材料としてしまい込み片付ける。

「それでは。叶うなら素敵な夜に会いましょう。」

「二度と会いたくないです。」

「ルナの言う通りだ。もう会いたくない。」

「運命って意地悪ですよ。今日、学んだでしょう。」

友人一人と引き換えに。

 

 

 

 

約束通りにエスデスの邸宅で合流する。クロメが疲れてソファーで眠っています。可愛いです。

「今、戻りました。」

「楽しめたか。」

「中々面白かったですよ。」

あの極限状態で小さな希望にすがる事なく絶望に挑むなんて普通出来ませんから。

タツミが悔しそうな顔を浮かべている。

「人の手には限りがありますよ。私やエスデスでも。気に病む事はないと思いますよ。」

「見ず知らずの他人でも助けられないとこんなに口惜しい。アリアには分かるか。」

「貴方ほど優しくないので分からないです。」

「私はそもそも助けようとする感情が分からんがな。死ぬなら死ぬ。それだけだろう。」

自助救済が基本の貴女が分からないのは仕方ありません。

「そう割り切れば楽なんだろう。でも、割り切れない。甘いかな。」

「甘く、優しくて、それが貴方です。」

暴虐(エスデス)でも非道()でもない。タツミだけが持っているモノです。

「強ければ何でもいい。その中には他人を守る自由だってあるだろう。さすがに強者の生き方に手を出すほど無粋じゃない。私もアリアもな。」

「強くなる。そうだな、俺が出来る事なんてそれしかないか。これからもよろしく頼む。」

勿論、かまいませんよ。タツミの相手は楽しいですから。

「それだが、この時間に宮殿に来てくれ。特別な部隊を作る。」

「特別ですか。」

「帝具使いだけを集めた対ナイトレイド部隊。セリューの奴も来る。地方の草刈りを部下に任せてな。」

「私も数に入れてくれていますか。」

「副隊長を任せる気だが。セリューも納得する人選だろう。人数は私を除いて八人。ドクターとクロメも入れてだ。」

随分と本気です。

「ただ条件がアカメだけは私が殺します。想像出来うる限り全ての辱めを与えて私が殺します。」

「な、何でだ。アリア。」

いけません。殺気が漏れてしまいましたか。

「恥ずかしながら逆恨みです。どうして殺さなかった。どうして生かしたまま逃げた。そんな逆恨みです。」

もし実行されていれば妹には会えなかったというのに我儘なものです。

それでも、記憶が無くなるまで壊されて、帝具を使う人形にまでされた原因を笑って許すなんて私には出来ないのですよ。

何本も鐚のレプリカが刺され、私でも苦しむような猛毒な薬液を数えきれないほどのチューブで流し込まれ、壊されながら無理矢理直されながら生かされた妹の姿を覚えていて許せる姉などいないのです。

報いを受ける覚悟はいいでしょうかアカメ。玩具ではなく、仇として本気で壊しに行きます。

後ろから抱き着かれる感触。柔らかく温かい大好きな大切な妹の重さ。

「お姉ちゃん。落ち着いて。私は覚えてないから。私のお姉ちゃんはアリア・フォン・トスカーナ。一人だけ。」

「起こしてしまいましたか。ありがとう。クロメ。落ち着きました。取り乱してすみません。エスデス、タツミ。」

「アリアの家族に手を出したなら仕方ないな。」

「家族に手を出されたら誰でも怒る。アリアがここまで怒るとは思わなかったけど。」

「常に理性的であれ。そう心かけていますので。」

心は熱く、頭は絶対零度より冷たく。そうあるべきだと言うのに恥ずかしいです。

とにかく、貴女は私が殺します。元帝国暗殺部隊のアカメ。貴女だけは。

 

 

 

 

 




身内が帝国を裏切ってまともな待遇を受ける様がどうしても想像出来なかったので少し過去を捏造させていただきました。

不愉快な思いをさせてしまったら申し訳ありません。

感想を心よりお待ちしております。

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