アリアは踊る   作:mera

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最強街に出かける。その一。
この二人が出掛けて何が起こるでしょうか。


十三話

久しぶりの休日。と言っても久しぶり過ぎてどう過ごしましょうか。

街へ遊びに行くのもいいでしょう。

タツミをエスデスに紹介するのもいいでしょう。

妹と遊びに行くのもいいでしょう。

さて、どうしたものでしょうか。

クロメの髪を櫛で梳きながらそんな事を考える。

「お姉ちゃん。そんなに悩むなら全部にすればいいと思うよ。」

そうですね。その手がありました。

「出掛けましょう。クロメ、タツミ。街に遊びに行きましょう。それにタツミに紹介したい相手もいますから。」

「え、やっぱりアレだったりするか。」

私の紹介する人全てが狂人ではないのですが。一緒に訓練している警備隊員はまともでしょうに。

「エスデス将軍。セリュー憲兵長。どっちかなぁ。……タツミ、私のどこがアレなのかな」

「エスデスです。どうして分かりました。」

「お姉ちゃんの仲のいい人がそれくらいだから。でも、エスデス将軍か。頑張れ、タツミ。」

「エスデスさんってまずいのか。クロメのアレなところはお姉ちゃん狂いなところだ。」

「褒め言葉、ありがと。エスデス将軍は敵に対するお姉ちゃんの態度が何時もの人かな。」

クロメが嬉しい事を言ってくれています。まぁ、確かにこの年にもなって一緒に寝るのは少々おかしいですね。

「立ち向かう敵。逃げる敵。どっちの。それが大事だ。いや、本当に。」

「逃げる方。うん、今会わなくともいつか会う運命だから逃げようとしない。私も少しなら助けてあげるから。」

「故郷の皆。俺はここまでみたいだ。」

どんな評価ですか。私!

「大丈夫です。タツミなら大丈夫です。これを見てください。」

エスデス好み表を二人に見せる。

「あ、タツミだ。」

「いや、クロメも条件には当てはまってるだろ!一人で地獄に落ちるかぁ!」

言われてみればクロメも条件に当てはまりますね。連れていくべきでしょうか。

クロメの笑顔はとても可愛いです。

「いくら何でもそれは……お姉ちゃんが真面目に考えだした。」

「戯言ですよ。あ、でも面白いかもしれません。」

「よし、道連れを手に入れた。」「絶対、おかしい。私は困るタツミを笑う立場なのに。」

使用人に準備をさせ終えたので行きましょうか。

 

 

「エスデス。遊びに来ましたよ。拷問室ですか。」

「読書だ。そんなに拷問ばかりしているように思えるか。」

「「うん(はい)」」

「いい返事だなキサマら。そっちがタツミか。」

「はい。よろしくお願いします。」

タツミが珍しく敬語を用いています。事前にエスデスの立場を説明したからでしょう。

「そんなに堅苦しくしなくていいと思う。ドS将軍はそんなことを気にしないから。」

基本的に強いか弱いかです。気にするのは。

「初対面の相手に礼儀を払うのは基本だろ。クロメ。」

「ま、そうだね。」

「どうですか。エスデス。あなたの眼鏡にかなうでしょうか。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

「エスデス。どうなさいました。」

エスデスの反応が止まる。こんなこと初めてなのでどうすればいいのでしょう。

「クロメ、どうしましょう。私はこういう時は無力です。身体的に問題はないのでしょうが。」

「ごめん、お姉ちゃん。私もわからない。タツミ、任せた。」

「フフフフフフ。」

エスデスがいきなり今まで聞いた事もない笑い方を。

「どうしました。どうしたのですか。どうすればよいのですか。エスデス!」

どの手を打てば良いのでしょう。どの行動が最善なのでしょう。私は何を成せば!!

「お姉ちゃんが慌ててる。珍しいなぁ。」

「他人事みたいに何か出来ることは・・・・・・ないか。」

「うん。万能なお姉ちゃんが慌てることで私たちに何ができるんだろうね。」

カチャリ。と音がしてタツミの首輪がはまる。

「一目ぼれとは本当にあるのだな。タツミ、お前は今日から私の」「貴女の口は何の為にあるのでしょうか。」

首輪を手刀で斬り落としてエスデスを落ち着かせる努力をする。

「・・・・・・何のためにあるんだ。」

「・・・・・・んー。口説くためじゃないかな。この場合は。」

後ろでぼそぼそと話していますがそんなことよりこの好みの雄を見つけた蟷螂の雌をどう処理しましょうか。

「邪魔するな。アリア!」

「いえ、させてもらいます。恋がしたいのでしょう。人間らしい恋が。そこに首輪は必要ありません。」

困った顔で私を見つめるエスデス。首輪以外の愛情表現を知らないのでしょうか。

「私はこの方法しか知らないのだが。ほかにどうしろと。」

「そうですね。エスデス。空の散歩などいかがでしょう。気持ちの良いものですよ。」

「私やアリアはともかくタツミは翔べないと思うが。足軽式空中歩行術でも教えたか。」

「誰が自力でと言いましたか。危険種でも使えばいいのですよ。」

二人きりで邪魔するもののない空の旅。悪いものではないはずです。

「いきなり二人きりは無理。よく知らない人と二人きりになりたい。この帝都で。」

妹が正論を言っています。とすると最初の予定通り四人で遊びに行くしかありませんか。

「・・・・・・それもそうだな。だがこれだけは言っておく。タツミ、私はお前が好きだ。今すぐとは言わないがすぐに私のものにしてやる。」

タツミが深呼吸をして、言い放つ。

「・・・・・・誰かものにもなるつもりはない。俺は自分の惚れた相手の隣にいたい。対等な立ち位置にいたいんだ!それが例え帝国最強でも変わらない!!」

随分とカッコイイ事を。隣にいたいですか。きっとこう続くのですね。そうしなければ守れないから。と。

「アリア、私の実力を知らせているか。」

「私と変わらないくらいと。貴女の実力を知った上で言い切ったのです。かっこいいですね。」

「いい。いいな。そうでなければ、私は惚れないか。強くなれタツミ。どこまでも。いくらでも手伝ってやる。」

「その過程で攫われた残念すぎるけど。あぁ、私はタツミのこと、良い友人だと思ってるから。」

この流れは私も何か言うべきですか。さてなんと言いましょうか。

「私は、そうですね。嫌いではない。くらいの回答にさせてもらいましょう。」

「「逃げた」」

「私の口を滑らせたいならシルバーチップとノーブルロットを用意してください。とにかく今は出かけましょう。四人で。」

次は誰か欠けているかもしれませんから。

 


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