アリアは踊る   作:mera

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第十一話

私は今、龍船の上で揺られています。実に退屈な思いをしながら。

「どうしてこんな事に。」

「不満か。」

「退屈です。貴方と共闘なんて簡単すぎて退屈です。」

「蹂躙しに来たのだからな。簡単でも仕方ないだろう」

「分かっています。エスデス。でもわざわざ変装してまですることでしょうか。」

黒のドレスを着たツインテールの女性。これがエスデス将軍と気付く者が何人いるでしょうか。

普段軍服しか着ないから簡単に誤魔化しが出来るのです。

しかし、なぜこんなことに。

適当なドリンクを飲みながら先日のことを思い出す。

 

 

 

 

 

三獣士を殺して二日後。エスデスの邸宅に呼ばれたのですよね。

「邪魔をしますよ。エスデス、何の用ですか。」

「私の部下は強かっただろう。」

確信している声で問う。

「貴方の片手と侮り、顔を無くしました。正しくあなたの片腕でしたよ。彼らは。地獄に落ちるのが楽しみです。」

「そうだろう。私の自慢だ。」

「怒っています。やっぱり。」

もし私がクロメやタツミを害されたら烈火のごとく怒る確信があります。

「いや。弱肉強食。それだけだ。それとも、お前が相手にした敵は仇を誰かにとってもらわないといけない程情けない奴だったか。」

そんな方とまた踊りたいとは思いません。

「随分と分かり切った問を。先程もそうでしたが。……どんな戦いをしたか知りたいですか。」

「勿論だ!それを聞きたくて呼んだのだから。」

「そんな事だと思いました。紅茶を入れてください。私も冷静に語れるとは思っていませんから。」

 

 

「ああ。良い。良いな。あいつらめそんなに楽しそうな事をしたのか。ずるいじゃないか!!」

「そんなに子供のように燥いで。気持ちは分かりますが。ああ、私も殺し合いをしたくなってきました。練兵場で踊って頂けますか。」

満面の笑顔で必要ない事を聞く。

「答えるまでもないだろう。」

とてもいい笑顔で答えてくれました。

 

 

「準備に時間をかけすぎましたか。」

「サーベル一つの私と違ってアリアは武器が多いからな。仕方ないだろう。今度はどうやって楽しませてくれる。」

「ハロウィン・アリアカスタム。銃声と剣戟を。光と氷の織り成す劇を楽しみましょう。」

「広範囲ブラスターのカスタムというよりパンプキンのレプリカか。」

ドクターは素材と設計図があれば作れないものは有りませんから。こんな無茶ぶりにもこたえてくれます。

さすがに普通のハロウィンは広範囲ブラスターの改造品ですけどね。

「武器に関しては本当に良い目をしていますね。その通りです。まぁ、細かいところは違うのですが。さぁ踊りましょう。」

 

先手は私。大体常人百人分の精神を込めて引き金を引く。

何百十もの氷の城壁が受け止める。

「一発とは言わん。持ってけ!雹棺葬。」

私の回り全てに小さな氷弾が形成され降り注ぐ。

頭だけは必ず守るように立ち回り全身穴だらけにされながら第2射を放射状に放つ。

穴を直しながらエスデスを探す。流石に雹の処理で見失いました。

ああ、探すのなんて煩わしい。どこに居るのかわからなければ全て薙ぎ払いましょう

「全弾装填。キエロ。」

込められるだけの精神を装填。引き金を引く前にいきなり目の前に現れたエスデスに四肢と首を飛ばされる。

即座にパッチワークで繋ぎましたがハロウィンはもう撃てませんね。オーバーヒートして肉の焦げる良い匂いがします。

「遠距離で踊るのは飽きた。相変わらず死なないか。最高に面白い相手だ!!」

「いつもあなたの攻撃は素晴らしい。死なないように無様に転げまわるのが限界です。本当に楽しい相手です!」

微塵とナイフを抜き、近距離戦を仕掛ける。

勿論、お互い剣戟以外の相の手を忘れない。

彼女は氷の弾丸を。私は歯の弾丸を。

「妹の真似事か!相変わらず多芸な奴だ。」

「時間を止める一芸特化の貴方に言われるとは光栄です。」

斬られる。斬られる。斬られる。斬られる。斬られる。斬られる。斬られる。斬られる。斬られる。斬られる。斬られる。斬られる。斬られる。斬られる。斬られる。斬られる。斬られる。斬られる。斬られる。斬られる。斬られる。斬られる。斬られる。斬られる。斬られる。斬られる。斬られる。斬られる。斬られる。斬られる。斬られる。斬られる。斬られる。斬られる。斬られる。斬られる。斬られる。斬られる。斬られる。斬られる。斬られる。斬られる。斬られる。斬られる。斬られる。斬られる。斬られる。斬られる。斬られる。斬られる。斬られる。斬られる。

傍から見れば一方的な斬り合い。直るそばから斬られる。そんな光景。

でも実際は持久戦。エスデスの体力が尽きるか。私の精神力が尽きるかの。

「ああ。愉しいですね。エスデス。」

真っ赤な大輪を咲かせながら語りかける。

「その笑顔を屈辱に歪ませるのが楽しみだ!」

全くつれない方です。

渾身の一撃を受け流そうとして吹き飛ばされる。マズイ。距離を取られるとマズイ。

仕方ないです。いつもこの手を使わされます。

自分のナイフを鏡替わり自分の目を見る。

「出ておいで!クローゼットの中から!!」

心の一方を使い自分にかけているリミッターを完全に外す。

「随分と出てくるのが遅かったな!本気を出さないなんて無粋だな!アリア。」

「これ無しで貴女と渡り合いたい私の我儘です!」

先程とは比べ物にならない程の殺気を出してエスデスの読みを潰す。

正確には全ての方向から攻撃されると読ませるですが。

「いつも同じ展開だな!」

全方位に氷の津波が襲い掛かる。邪魔くさい。ナイフと微塵を用いて粉々に砕き、微塵を投擲する。

氷の盾で防がせている間に爆縮地で接近する。一歩ごとに足の健が千切れるが構わない。骨が折れるが気にならない。筋肉が断裂するがどうでもいい。直せばいい。

「ゾディアック。」

十二方向から同時に九頭龍閃を叩き込み、エスデスを散り散りに削り取る。その筈でした。

「また時止めですか!!」

「空中戦と行くぞ。アリア。」

いいでしょう。足場に歯を取り寄せながら空で踊る。

 

「いや、そこまでだ!!」

ブドー大将軍からのストップが入りましたか残念です。

「おい。邪魔をするな。と言いたいところだが仕方ないか。」

ズタズタになった練兵場を一瞥してそんな事を言うエスデス。

練兵場が血で汚れ、とても訓練など出来そうにありません。

「後片付けは任せたぞ。大将軍。逃げるぞ。アリア!」

「クローゼットに仕舞いましょう。と、分かっています!お説教はたくさんです!」

リミッターを掛け直し、武器を拾い血まみれの姿でその場から逃げ出す。

あぁ、楽しかったです。

 

帝都にあるエスデスと私の隠れ家に逃げ込み怪我の治療と着替えを終え。紅茶を入れる。

「これでまたしばらく練兵場は使えない訳だ。練兵場以外で戦いたいものだな。アリア。」

「何時かリミッターを外さず、人の限界のまま勝ちたいものです。」

人のままの方が楽しめる。リミッターを外すと楽しむ余裕が失われてしまいますから。遊んでいるのです。余裕を失っては意味がありません。

「それはそれで楽しみだ。あぁ、ナイトレイドについてどれくらい知っている。」

「大体は。北から呼び戻されたのはそれが原因なのですね。」

「三獣士の事も釣るためだったという訳だ。絶対服従のいい部下だったよ。今回は裏目に出たが。」

絶対服従だったからこそ私と戦う事になりました。勝てないと分っていても。ああ、素敵でした。素敵な戦いでした。

「話を戻そう。ナイトレイドが食い付いた。だから付き合え。」

「私は貴女の偽物を作るのですね。任せてください。パッチワーク。創作。肉人形。エスデス。」

見た目は完璧に瓜二つの人形の出来上がりです。

簡単な動作はさせられますから窓辺で本を読ませる振りをさせれば誤魔化せるでしょう。

「筋肉のつき方がおかしいな。この辺だ。そう、それでいい。」

多少の手直しを受け、人形を作り上げる。

「これで私の仕事は終わりましたね。」

「何を言っている。私はアリアに蹂躙の味を教えてやろうと思ったのだ。ついてこい。」

私とエスデスが共闘しても詰まらない。あぁ、蹂躙の味を実地で教えてくれるのですね。

結構余計なお世話なのですが。断るのも悪いです。

「分かりました。付き合いましょう。梟狩りに。」

「公開拷問など一度してみたかったからな。いい機会だ。」

実はただお手伝いが欲しいだけじゃないのでしょうか。それでも退屈しないならいいですか。

私の楽しみで部下を失わせたのです。エスデスの楽しみに付き合うくらい良いですか。

それだけの余裕はあるはずですから。

友人が新しい楽しみを教えてくれるのだと前向きにとらえましょう。

 




おかしい。龍船でナイトレイドが絶望するはずの話が勝手に戦闘狂が戦いだして話が進まなかった。何で顔を合わせて殺し合うが選択肢に出るのかな。こいつら。おかしい。

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