「隔離都市ティーアガルデンにようこそ。」
「本当にハーフしかいないんだな。それに壁も土だったし。」
「そうでもありませんよ。特別区画には悪魔憑きもいます。……あれは巨大な土嚢を連ねているのです。鉄条網と見張り塔で下手な城壁より効率はいいのです。……決して予算不足なわけでないのです。」
ワクチンや薬は完成しているので問題ないのです。国は実験が足りないとして流通を認めないのです。まぁ、Lebensunwertes Lebenには関係ないのですか。
「すごいな。悪魔憑きは焼き払う以外対処法ないって聞いてるんだが。」
「一月前の注射の効果で罹患しないのです。素晴らしいでしょう。」
「それがあれば地方の村も」
「遠くまで運んで採算を取ろうとすればすごい金額になりました。具体的にはタツミの村一つで金貨150枚でした。」
「甘い話はないか。」
冷蔵しながら運ぶには大型の冷蔵庫とかなり大きな氷が要りますから。
馬車一台で百人が限界量なのです。
「街道に夜盗や危険種が出なければまだ安く出来るのですが。そもそも流通が認められてないので売れませんけどね。」
「どうやって村に。」
「寄付って素敵な言葉ですね。という訳でここでは銃器と薬品を製造しています。肉骨粉と窒素肥料も作っていますけれど。」
「ああ、うん。突っ込まないからな。火薬と肥料の材料は同じって言ってたからな。あの変態。」
変態ではなくスタイリッシュなのですがドクターは。死体を肉骨粉の材料にするなんて素晴らしい考えを思いつく方なのに。
「でもやっと私の屋敷へ貴方を招く事が出来ます。義手、義足の子達が居ますが気になさらずに。」
「分かった。でも、義手や義足か。」
「死んでも構わないから無茶が出来るだけですよ。」
「とか、言って治すんだろ。頭以外は治せる。その帝具で。」
「出来るからするだけです。善意も悪意もありませんよ。」
「どうだか。」
人の体を自由自在に弄る帝具が善意で出来ているわけが。いえ、道具はどこまでも道具です。使うものしだいです。では私はどうなのでしょう。やはり悪でしょうか。善の自分など想像できません。
「お姉ちゃん!!」
妹が歩いて抱き着いてくる一月半ぶりですか。
「えっと、その娘は。妹か。双子にしては似てないけど。目、くらいか。同じなのは。」
「私はクロメ。クロメ・トスカーナ。お姉ちゃんは渡さないから。」
私は物ではないのですが。……からかってみましょう。
「とすると私は一生誰かと結ばれることはないのですね。」
「私と結婚すれば解決!!」
「残念ながら妹とは結ばれないのですよ。……突っ込みはまだですか。タツミ。」
クロメものってきたので収集がつかなくなってきました。突っ込みを下さい。ああ、でも妹と共にある事は嬉しいです。でも、妹が誰かに恋するのを祝福しながら紅茶を飲むのはきっと素晴らしい。タツミとクロメがそうなれば、本当にうれしい。
壊したくなるくらいうれしい。
「お姉ちゃん」「アリア。」
「はい。なんでしょう。」
「突っ込ませといてスルーは鬼だと思うなぁ。タツミが可哀想だよ。」
「いや、なんか幸せそうな顔していたから良いけど。何考えてたんだ。」
「勿論。あなた方が歩く道の上にたくさんの幸せがありますように。と祈っていたのですよ。」
嘘はついていませんよ。
それに世界がプラスマイナスゼロだと言うのならクロメはもっと、もっと幸せになるべきです。
姉に捨てられ、弄繰り回され、私なんかの
「お姉ちゃん。」
呼び鈴を鳴らし、ブラシを持って来させ、ゆっくりとクロメの髪を梳く。
「本当に仲が良いんだな。」
「私の大事な妹です。私の愛する妹です。手を出すものは許しません。」
あの時。あの場で。殺ししか出来ない私が
だから、愛しくて可愛くて仕方がない。
「大事にされてるな。クロメさん。」
「もちろん。され過ぎて困ってる……うそうそ!!そんな悲しそうな顔をしないでお姉ちゃん。」
大丈夫です。どんなに可愛くても別れる覚悟はできています。出来ていますとも。出来るなら私が
私は貴方達を。
一流のバッドエンドは見飽きました。だから、三流のハッピーエンドを見せてくださいな。
「ふふ。在り来りという素晴らしい物ですよ。」
昼を楽しむために夜は有る。夜を楽しむために昼は有る。
「今度は無くさない。力はそのために。」
「私はお姉ちゃんの笑顔の為に。」
「私は貴方方が笑っていて、週一回、殺し合いが出来れば満足ですよ。」
「「戦闘狂。」」
見ていますか。
今の私はこんなにも出来損ないです。
悲しくて恐ろしくて苦しくてでも楽しくて喜ばしくて嬉しい。
それが私です。悪くは有りませんよ。