アリアは踊る   作:mera

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リヴァ将軍の善戦に敬礼。


第九話

三獣士。帝国最強の地方軍。エスデス軍に所属する帝具使い。

エスデスの片腕は言い過ぎですね。片手くらいの実力を持ったエスデスの忠実なる露払い。

とは言え、暗殺の紛い事までするとは思いませんでした。

そんな事をよしとする性格ではないとおもっていたのですが。

服に仕込んでいる特別製の棒手裏剣をいつでも投げられる状態にした上で抜刀する。

「タツミ、大男は任せます。残りは私が殺します。」

「油断するなよ。エスデス様のお気に入りだぞ!!」

ドクターが私につけたあだ名は随分と浸透していないようですね。もっともグリムなどという名。広がらない方が嬉しいのですが。

とりあえず、支援役である当たるニャウを殺しにかかる。爆縮地。目の前に現れる銀色の壁。水銀の壁ですか。

想定通りです。今の速度を全部乗せて棒手裏剣を打ち出す。

水銀の壁を容易く貫通し、着弾。距離を取りながら弾着を確認する。

一発目。笛で防がれる。体勢を崩すことに成功。

二発目。笛を弾き飛ばす。手首の骨を破壊。

三発目。胸に着弾。胸を貫通し肺に損傷。

四発目。首に着弾。首が宙を舞う。

五発目。腰に着弾。腰を貫通。

まず一人。躱されたらまずかったですが防御に回ってくれてよかったです。

|空から落ちてきた金属と柔らかい朽ちない銀の合金《帝具の素材の一つ》。

帝具と違って重量軽減が出来ていないので一つ辺りがとても重いのですが重い事は欠点だけではないのです。

背後をちらりと確認すると護衛が半分ほど減っています。優秀な護衛です。一撃で殲滅されないとは。

タツミが居るからでもありますか。幾ら王具と帝具は大きな性能差があるとはいえ投げられる斧と持つ事すら難しい剣。ぶつかればどうなるか。

地面に叩き落とされたベルヴァーグが教えてくれます。数か月で三獣士の突撃隊長と渡り合えるとは本当に才能の塊です

背後の心配はいらない。支援役は殺した。勝ちましたか。

嫌な予感がしたので即座にその場から逃げる。

私のいた場所を紅蓮の業火が焼き尽くす。残りの護衛が火達磨になり、タツミもぎりぎりで回避する。

液体を操る帝具。水銀と揮発油を操られるだけで厄介すぎますね。

回避した先に水弾。刀で斬り散らす。熱っ。

「水銀で防御。揮発油で体力を削り、硫酸で止め。三獣士と言いましたが貴方だけで十分なのではリヴァ。」

「過大な評価だ。ここまでしても貴女にすら届かない。」

頬に赤い線が走ったリヴァはそんな事を言う。不可視の飛飯綱を避けられる貴方には正当な評価でしょうに。

さて本当にどうしましょうか。

「パッチワーク。取り寄せ。血。生理活性制御開始。鐚、起動。」

硫酸の海に飛び込んでも怯みはしない。殺し合いなら笑って飛び込むのですから。限界以上の力を出す準備も出来ている。

後はタイミング。タツミが勝つか負けるかした瞬間。水銀も紅蓮の壁も硫酸も無視して切り刻む。

 

 

行く。今までひたすら回避してきた硫酸弾を正面から突っ込む。皮膚が焦げて、目が潰れる。

どうせ揮発油の中に飛び込むから問題なんてない。

ただ、熱い。火が肌を焼く熱さなのか、皮膚が酸に侵される熱さのどちらか。どちらも楽しみながら失われていく触覚が揮発油を突破したのを告げる。

パッチワーク。取り寄せ、血、目。縫い付け、喉。

血を浴びて火を消火させ喉元に縫い付けた目で目標を捉える。

ここまでの突撃に気を取られず水銀での迎撃を行おうとしている。

そうです。そう来なくては。怯えるな。竦むな。全てを尽くして私を殺し(楽しませ)にきて!!

水銀の壁を蹴撃刀勢で斬り崩す。小さな綻びを零閃で広げる。さらに大きくなった綻びに龍巣閃や戦嵐刀勢でこじ開ける。

水銀の城壁に人一人分の隙間が開いた。

「血刀殺!!」「九頭龍閃!!」

血で出来た九本の刃が九頭龍閃を防ぐ。

鉋を手放し。零閃を放つ。12機の突撃。防いでみてください。

リヴァの上半身と下半身を断ち斬る。でも

「まだだ!!」分かっていました。

こんな事ぐらいで終わるわけが無い事くらい。だから鈍も手放し、手首から二本のダガーを抜いて心臓と喉に刺し込み、斬り刻む。

「とても楽しい時間でした。また地獄にて。踊りましょう。」

タツミも勝ったようですね。本当に強くなりました。

身内であることが残念で嬉しいです。

熱っ。痛みで現実に戻される。

服に硫酸が染み込んで焼き焦げてボロボロです。お気に入りだったのですが

服を全て脱ぎ。パッチワークで血を取り寄せ身体を洗う。

「こんな貧相な体を見て楽しいですか。タツミ。」

「いや、血を浴びてるのが……何と言ったらいいか。それと」

「胸ですか。戦いの邪魔になるので自分で抉りました。昔の事ですよ。別段直そうと思えばいつでも直せますが。見たいですか。」

見惚れたのかのまれたのかどっちなのでしょうか。多分のまれたのでしょうか。

とにかく雪の中全裸は寒いです。

「戯言です。……馬車から着替えと拭く物を寒いです。」

「あぁ、分かった。」

パッチワークで死体を収集しながら着替えを待つ。

楽しかった。愉しかった。

彼らの物語の幕引きが出来て嬉しかった。

ブラックマリンを嵌めて、スクリームを奏でる。

帝具の三重使用で壊れていく体を直しながら、思い出す。

「余裕があればあなたとも遊びたかったですよ。ニャウ。」

「貴方は私の命を危機に晒しました。リヴァ。」

「タツミは強かったでしょう。ダイダラ。」

エスデスに伝えておきます。貴方達は良い踊り相手だったと。出来うるならばもう一度踊りたいと。

おやすみなさい。

 




GWでのストックがきれました。
これから不定期になります。
本当に申し訳ありません。

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