緋弾のアリア ~月を渡る前向きな武偵~   作:紫柳

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これからの話の流れ的にハーレムとは少し行かないかもしれないのでタグを少し改編と追加をしておきました。


第47弾 潜入作戦実行

 

それから数日が過ぎた。

現在は夜の10時、外には月明りが差し込んでくる。

 

広い食堂に長い机その上座に一人小夜鳴先生だけが席についている。

その後ろには従者のように俺たちが並んで立っている。

まあ、実際に従者としての仕事をしているのだが

 

「山形牛の炭火串焼き、今日は柚子胡椒和えです」

 

キンジが俺のつくった料理を出している。

最初はアリアが作るということだったのだが、どうもアリアが料理を作ると全てが爆発四散するみたいなのだ。

まあ、爆発四散して食べられないくらいいいのだが…あの時は腹の中に入って爆発したようなものだったからなぁ…

しみじみと感じる恐怖を溜息と共に吐きだす。

まあ、一応オムライスだけは食べられるだけにはなったようだがどうやらその必要はなかったみたいだ。

串焼き肉

そう、小夜鳴先生は手ごろな肉料理しか注文してこなかったのである。

調味料も特に制限はせず、にんにくは苦手だからそれだけは使わないでとだけ言われたくらいだ。

それでも料理なのでアリアが作ると爆発四散してしまうので俺が作っている。

もう一人料理ができるユキもこの場に出るわけにはいかないし、キンジはほとんど自炊したことない。

なので、料理に関しては俺がするしかないということだ。

そこら辺は栄養的な感覚で心配になるのだが…

まあ、俺たちはただのバイトなので突っかかりはしないが。

 

小夜鳴先生が選んだレコードの音が夜の空に流れていく。

その音を聞きながら食後のワインを飲んでいる

するとアリアが暇を持て余したのか窓の外を見た。

外には沢山の薔薇が咲き乱れている。

そこでアリアは嘆くように呟いた

 

「フィーブッコロス」

 

ん?

その言葉は前に聞いたことがある。

そう言えば、あの狼の襲撃のときに小夜鳴先生呟いていた言葉だ。

確かに気にはなったけど特に調べてないんだよな。

英語ではなさそうだが…

 

「驚きましたね…語学が得意なのですねアリアさんは」

 

小夜鳴先生が驚いたように声を上げる

 

「昔ヨーロッパで武偵をやっていましたから必要だったんです。先生こそルーマニア語を御存じなのですか?」

 

「この館の主人がルーマニア出身なのですよ。私たちはルーマニア語でやり取りをしているんです」

 

そう言った先生はアリアに興味を持ったように

 

「神埼さんは何ヶ国語を話せるのですか?」

 

「えっと、17ヶ国語です」

 

「フィーブッコロス!素晴らしい!もしや、波岸さんも喋られるのですか?」

 

どうやら俺も何かと知的に見えたようで話を振ってくる

 

「いいえ。私は日本語と英語だけです。すいません、プログラム言語なら大体分かるのですけどね」

 

英語に関してはプログラム関係でほとんど知り尽くしたからな。

文法は少し微妙だけど。

 

「いえいえいえ!それでも素晴らしいですよ!最近は情報科社会ですしプログラムができる人は珍しいですからね。えっと…遠山君は一体どれくらい喋られますか?」

 

 

「日本語だけです…」

 

劣等感を覚えたのか小さな声で答えるキンジ。

キンジ…せめて英語だけでも覚えたほうがいいぞ。

 

「しかし、神埼さんはぴったりですね」

 

「?」

 

「あの庭の薔薇は私が品種改良したもので17種類の薔薇の長所を集めた優良種なのです。まだ名前が無かったのですが…アリアっというのはどうでしょう?」

 

いきなり薔薇に自分の名前を付けられたことにびっくりした様子のアリア

 

「フィーブッコロス。アリア…いい名前です。神崎さんのおかげでいい名前が付けられました。」

 

ワインを飲んでほろ酔い状態なのかふわふわとした調子でしゃべる小夜鳴先生。

おい、キンジ地味に殺気を飛ばしているぞ。

まあ、キンジにとって面白くない状況なんだな。

それよりも俺は小夜鳴先生を観察してみていくつか思うことができた。

彼は何かを隠している。まるで先生の根幹を覆すような何かを。

そして、アリアを見るその目。

まるで欲しているおもちゃを見るような目だ。

俺は何かと警戒を解かない方がいいかもしれないと内心気を引き締めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして作戦決行日である潜入最終日となった。

なんとか例のあれも作ることができたし後俺がすることは小夜鳴先生の足止めだけだ。

現在時刻は夕方の五時前。後一時間もすれば俺たちはこの家から出ていくことになる。

その一時間で何とか終わらせるのだ。

 

「キンジ頼んだぞ」

 

「おう、任せとけ」

 

俺は普段通りとは言いたくもないがメイド服をキンジは執事服ではなくまるで強襲するかのような黒の一式装備へと着替えている。

潜入役はキンジ一人だけ俺とアリアは誘い出し役理子さんは俺たちのサポートでユキはキンジのサポートだ。

 

「確かに俺は時間を稼ぐよう頑張るけどあまり時間を稼げないかもしれないぞ。小夜鳴先生を何とか呼び出すことはできたけど先生も結構忙しそうにしているからすぐに戻るのかも知れない」

 

「それなら最大でどれくらいだ?」

 

「稼げて十分から十五分くらいだな」

 

俺の言葉にキンジが苦い顔をする。

すまんが話を伸ばそうにもあの先生は謎すぎる。

趣味も特に知らないし知っていることはせいぜい庭にある薔薇くらいだ。

まあ、呼び出した理由が薔薇の紹介だからそれで何とか話を伸ばせたらいいのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お待たせしました。神崎さん、波岸さん」

 

研究室から出てきた小夜鳴先生

ラストミッション最後の気の引き締めどころだ。

 

「いいえ、お忙しいところを大変申し訳ございません。最後の時間はご一緒に過ごせてとてもうれしいです」

 

…うん。これ男が男に言うセリフじゃないなこれ。

まあ、今は女だからここだけでも気があるように見せたほうがいいしな。

 

「構いませんよ。あまり、時間はとれませんがそれまでならば」

 

ちっ、この先生意外と鈍感なのか?まったく、これほどのアタックをしかけながら何の気もないとかキンジくらいだと思っていたが…。

 

そして俺たちは庭に向かって歩き出す。

その瞬間俺の耳につけていた通信機が音を出した

 

「しろ君、アリア。キー君たちが動き出した。」

 

理子さんの声が俺の耳に響いてくる。

キンジは俺たちがいた遊戯室のビリヤード台の下に宝物庫へと通じる穴をつくった。何とあの遊戯室の真下が宝物庫へとつながっていたのである。俺たちは初日の深夜からコツコツその穴を作り今日やっと地下まで通じる道を作った。そしてその宝物庫へと蝙蝠のように潜入しそこからお宝を奪い去るのが今回の作戦である。

今、キンジは理子さんとユキのサポートで作戦を決行しているだろう。

 

「……のように改良したのがこの薔薇。アリアなんです」

 

「素晴らしいです。こんな美しい薔薇をつくられるなんてやっぱり先生は素晴らしいですね」

 

取りあえず褒めまくる。

人間褒められて悪い気はしないからな。

小夜鳴先生が調子に乗れば着々と時間を延ばせるかもしれない。

 

それから数分が経った。

なんとか話を引き延ばしてもう少しで十分くらいか。

これなら後数分は…

 

そこで予想外のことが起きた。

 

「あ…」

 

俺の頬に雨粒が当たる。

何と雨が降ってきたのだ。

今朝からあまりいい天気ではなかったけどここで降ってくるとは。

 

「おや?雨のようですね」

 

小夜鳴先生が空を見上げてそう呟いた。

まずいぞ…

 

「雨も降ってきましたしもうそろそろ戻りましょうか。楽しかったですよ神崎さん、波岸さん」

 

屋敷に戻り始める小夜鳴先生を見て俺たちは焦った。

メイド服にしかけておいた小型の集音器に小声で話しかける。

もちろん通信相手は理子さんだ。

 

『アリア、しろ君。まだ、キー君たちは時間がかかる。もう少し時間を引き延ばして。』

 

理子さんの焦ったような声にアリアも焦った声で

 

「さ、小夜鳴先生」

 

「なんです?」

 

「あ…いえなんでもないですけど…えっと」

 

「…はい?」

 

「いい天気ですね」

 

「…雨降っていますけど」

 

「えっ!あ、え、えっと…アタシ雨好きなんですよ!あはは!」

 

駄目だ。

アリアには任せられない。動揺しすぎだ。

ここは俺のポーカーフェイスに任せろ!

 

『しろ君は駄目。アリアもしろ君も同じ馬鹿正直なんだから疑われるよ。なんとか嘘をつかないくらいで小夜鳴先生を足止めして。私は集中するためにキー君につきっきりになるから』

 

何と!俺がアリアと同レベルだと!

まあ、こんなことアリアの前で言ったら殺されるが。

ぶつっと言う音が鳴り通信機から音が消える。

しかし、そこは依頼人である理子さんからのお願いだ。

そこはうそをつかない方法で何とか足止めしなければ…

 

しかし、どうする?

このままでは確実に小夜鳴先生が戻りこの作戦が失敗になってしまう。

嘘もつかず足止めをする方法…あ、ある。

しかし、その作戦を実行するからには俺の命の危険が付きまとってしまう。

けどこのままでは…

…仕方ない。ここは勝負に出る!

 

俺は電子手帳から礼装である『守り刀』を取り出す。

狙いは

 

(すまん!アリア!)

 

そして『hack(16)』のコードキャストをほとんど魔力を落とした状態でアリアに放った。

威力を落としたので攻撃力はほとんどなくその代わり麻痺の効果はそのままにしておいた。

人間程度であれば数分は痺れているはずだ。

小夜鳴先生に放たなかったのは怪しまれないようにするためである。

案の定アリアに攻撃は当たりその場に不自然な感じで倒れる。

 

「ど、どうしたのですか!アリアさん!」

 

小夜鳴先生が急いで近寄ってくる。

まあ、変な感じに倒れたからな。

アリアは白眼を向いて倒れている。ああ、これは殺されるかもな…

しかし、ここは強制的に武偵憲章10条を発動させてなんとか行動を起こす。

 

「ああ!アリア!い、いつもの持病の痺れが!」

 

いつもではないが痺れてはいる。

一応嘘はついていない。

 

「そ、そうなんですか!」

 

「すいません!先生はアリアを動かさないようにしてください!私は急いで屋敷に戻って薬を持ってきます!」

 

そして俺は急いでその場を立ち去る。

しかし、先生の視界から外れたとたん俺は庭の様子をうかがう。

先生はアリアに声をかけ続けている。

まあ、あの麻痺は数分で解けるから薬を取りに行かなくてもいい。

タイミングを見計らって変に勘くぐられないよう時間をかけて戻るのだ。

そのくらいの時間を稼げばなんとか…

 

それから数分。

先生が心配したように周りを見回している。

そろそろ戻ったほうがよさそうだな。

飛び出ようとしたところで耳につけていた通信機からまた声が聞こえた。

 

『無事に作戦は終了したよ。さすがしろ君!もう戻ってもいいよ!』

 

ほっ…よかった。

けど結構速かったな。キンジがヒステリアモードにでもなったのか?

しかし、今は急いで戻らないと。

俺は止めた足をまた進める。

 

「大丈夫ですか!」

 

俺は小夜鳴先生からアリアを受け取りまるで薬を与えるように口に手を運ぶ。

 

「うっ、ううん…」

 

「よかった…。間に合ったようですね…」

 

小夜鳴先生は本当に心配したように息を吐き出す。

 

「アリア。少しの間目を開けないでおとなしくしてくれ」

 

俺はアリアに聞こえるくらいの小声で話しかける。

アリアも少し驚いたようだが事態を見たうえで乗っかってくれたようだ。

 

「先生。すいませんがこれからアリアの体を温めるためにお風呂に連れて行きますので…」

 

「…ええ、わかりました。」

 

小夜鳴先生も納得したようで俺の申し出を受け取った。

俺は早足で屋敷へと向かう。

俺の部屋へと着いた時にアリアを地面に立たせる。

少しふらふらとしたが無事のようだ。

 

「アリア。濡れたからお風呂に入って温まってきて。私は外に出ているから」

 

そう言って声をかける。

俺は振り返り外へ出ようと歩き出そうと…

 

「ちょっと待ちなさい」

 

絶対零度の声が俺の耳に届く

 

「…えっと、どうかしましたか…?」

 

「アンタでしょ?私を気絶させたの」

 

俺は否定しようとしたが有無を言わせないアリアの表情が俺を威圧した。

俺は逡巡する暇もなく答える。

 

「はい俺がやりました」

 

「風穴ぁー!」

 

「ちょっと待って!俺の話を聞いてー!」

 

ガバメントの連射が俺の背中に飛んでくる。

言い訳をする暇もなくこの屋敷を出るまでアリアに追いまわされるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの時の Side キンジ

 

 

「くそ!間に合わない!」

 

伸ばした針金が揺れている

さっき理子からの通信でもうすぐ小夜鳴が戻ってくると言っていた。

このままでは間に合わない。

俺は内心あきらめたが

 

「キンジ君急いで!」

 

後ろからユキが滑り下りてきた。

俺は少しビビって手元を揺らす。

後少しで赤外線にあたりそうになるがユキが俺の両手を抑えることで揺れを止める。

 

そこで不測の事態が起きた

確かにユキは俺の両手を止めた。

しかし、その止め方は俺の両側から回すように手を出し両手で俺の両手を押さえている。

それはつまり

 

(ちょっ!こ、この体制は…!)

 

これはつまり俺は後ろから抱きつかれたような体制になっている。

さらに体を密着させているので平均サイズのユキの胸が俺の背中に…

 

 

意識が冴える。

ああ、すまんな白野。お前の従者のおかげでなってしまったみたいだ。

しかし、なったおかげであの依頼物…ロザリオまでの道筋は全て見えた。

 

「ありがとうユキ。けどもう大丈夫だ。上に戻ってサポートをよろしく頼む」

 

俺の異様に冷静な声がユキを動かしたようで上へと戻って行く

 

『キー君急いで!しろ君がなんとか時間を稼いで…』

 

「大丈夫だ理子。数秒で終わらす」

 

『キー君まさかなって…』

 

「任せろ」

 

針金を数秒のうちに伸ばしていきロザリオを回収する。

後は、すぐに撤収を…

 

 

そこで俺は衝撃が走った。

衝撃と言っても精神的な衝撃だ。

一体何が…俺は周りを見回す。

そこで俺はある一点に目がとまる。

それはわずか数センチのビー玉のようなもの。

しかし、それは虹色に輝いている。

俺は何故か逡巡しなかった。

そのビー玉も針金を伸ばし数秒ののちそれを取ると針金を片づけ上へと戻るのだった。

そのあと白野の女声がこだましていたが何かあったのだろうか?

 

 




47弾終わりました
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