ユウシャの心得   作:4月の桜もち
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前回のあらすじ


あのお茶飲んだことあるよ!マジだって!



その十、説明書はしっかり保存しよう。[中]

「アベルくんはどんな事ができるの?」

首を傾げた優子が上目遣いに聞いてくる。

「ボク?前にも言ったけどボクは魔術士だよ」
「アベルくんも太陽の国の魔術士の子孫だったりするの?」
「うーん、違うと思うよ。ボクは親がいないからはっきりとは言えないけど」
「あ・・・ごめんね、嫌だった?」
「んー、別にいいよ?気にしてないし」

本当に気にしていない風でお茶を飲んでいるが、こちらとしては少しだけやりにくかったりする。しかし、斎は元から聞き及んでいたのか全く怯まずに話を進める。

「じゃあ、魔術について説明しましょうか」
「そうだね。一度見せたけど、もう一度ちゃんと説明させてもらうよ」

優子の方を向いてニヤリと笑ってみせる。

「斎ちゃんのは魔術と違うの?」
「ん、いい質問だね。はっきりと違うよ。どちらかと言うと魔術と言うのは科学に近いものだからね」

ウォッホンと、大げさに咳払いをしてから優子の世界には無かった超常の力について語り始める。

「斎の召喚術は精霊と契約し喚び出すもの、その為には膨大な魔力が必要なんだ。中には血筋なんかが関係してくるものもいる。
一方、魔術はいくつかの論理式を組み合わせ、超常的な現象を生み出すものだ。さっき説明したものと比べ、元々の素質がなくても努力すればある程度までは誰でも使える」
「じゃあ、じゃあさ、私も使えるようになる?」

誰でも、という言葉にない胸を膨らませ、期待の目でアベルを見つめる。しかしその相手は少し顔を逸らしながら難しいだろうね、と言う。

「魔術というものは、現象が起こる原因、過程、結果のうち、原因と過程を論理式の中に組み込む事で成立するんだ。しかし、ボク達の使っている魔術とキミ達の使う言語は相性が悪くて、互いに喰い合ってしまって話にならない。今からボク達の言語を学ぶのは大変だろうし、残念だけど望みは薄いね」

アベルが話し始めた割と最初の段階で理解することを諦め、最後の部分だけ聞いて自分にはできないと悟り、しゅんとしてカップの中に視線を落とした。
それを見たアベルと斎は、慌てて必死のフォローを身振り手振りを交えながら始める。

「ほ、ほら!キミには勇者の力があるじゃないか!ボク達も持ってない特別な力だよ!」
「そうよ、貴方には役目があって、その為に力が与えられたのだから。自信を持ちなさい」

やんや、やんやと持て囃されて、優子は立ち直り、しゃっきりと背筋を伸ばす。そう、優子は単純なのだ。
皆様、お忘れなきよう。

「そっか、そうだよね。私勇者だもん!魔術が使えなくたって大丈夫だもん!」
「その意気だよ優子!それでこそ勇者だ!」

ドアの隣に佇み空気と化している剣也は面白くなさそうな顔でふんっと鼻を鳴らす。

「そう言えばさ、勇者の剣ってどうして出てきたんだろう?」
「えと、あの真っ白で綺麗な剣の事?」
「そうそう、優子はアレをどうやって出したの?」

細やかで美しい、しかし厭らしさを感じさせない意匠が施された真っ白な刃を持つ剣。優子の手に握られ、サイクロプスの目玉を串刺しにしたあの剣だ。

「あれ、あれはねー・・・なんか、頭の中?に男の人?の声みたいなのが聞こえてきてね、わぁー!ってなったら出てきた」

なんとも確信のない、ふわりとした文章である。それでもあの時はどうにかなっていたのだから勇者とは凄いものである。

「うーん・・・全然わからないや。男の声も気になるし」
「当てにならないわね。・・・剣と言えば貴方も同じ様なものを扱ってたわね」

斎がドアの方に視線を向ける。少しの間ぼー、と意識を遠くへ飛ばしていた剣也は話が飲み込めず、2、3秒程無言で斎を見つめてから問いかけた。

「何の話だ」
「話ぐらい参加しなさい。その調子だといつか大事な事を聞き逃すわよ」

もうこの2人は離した方がいいかもしれない、アベルをは一瞬本気でそう思った。が、そんな訳にもいかないので仲介役を買って出る。

「待って、待って2人とも!本題はソコじゃないでしょ。ホラ、斎!ちゃんと言いたかった事言って!」

むむむ、と唇を尖らせるがそこはオトナな斎。グッと飲み込んで、剣也に謝罪の言葉をかける。

「・・・ごめんなさい。優子の出した勇者の剣と貴方の剣が同じようなものだと思ったの。その剣、今出せるかしら?」

女の子に素直に謝られて悪い気がしない剣也は、壁から背中を離し、腕を前に伸ばすと目を瞑り集中した。すると、剣也の手からスルスルとゴツい大剣が形作られていった。

「わぁ、かっこいいなぁ~。・・・あれ?その力って、私だけのものじゃないの!?」
「コレは勇者の力で分け与えられたものだよ。先代の勇者はその右手で触れたものに自分の力を与える事ができたらしい」
「あ、剣を出す事が勇者の力じゃないんだ」

剣を出す程度の力しか持たないと言うのは寂しすぎるので、優子にはもう少し頑張ってもらわねばならない。

「少し、見てもいいかしら?」

アベルと斎が空になったカップを置き、剣也に近づく。剣也は2人に見やすいように剣を上げる。
顔を近づけてまじまじと観察してみると滑らかな刃が斎の顔を寸分違わず映し出す。

「綺麗ね・・・切れ味も良いようだし、剣としては最高の出来のものだわ」
「そうだね、でもこれってホントに剣なのかな?」

アベルが剣の腹に手を添えて口の中で何かを呟くとパーッと魔法陣が剣を中心にして広がっていく。
ベッドに腰掛けていた優子もその光につられて二人の後ろ姿に近づく。

「どういう事なの?これって剣じゃないの?」
「もうちょっと待って・・・ハイ終わり」

剣から手を離すと展開していた魔法陣も収束されていき、最後には見えなくなってしまった。

「フムフム、わかったよ。こういう事だったんだね」

顎に手を添えて一人で納得しているアベル。
そんな事やっても読者の皆さんは納得できないので早速説明タイムと参りまSHOW。

「これは思念体だよ。ホンモノの剣じゃない」

優子はまたハテナった。アベルの話は小難しくて優子の頭では理解しきれないようだ。

「最初ボクはコレを実際に存在しているものとして見ていた。でも、違ったんだ。コレは黒曜石で出来た大剣なんかじゃなくて、剣也の思念、思いや願望が具現化したものだったんだよ」

近くで見て、触れて、石の冷たさや鋭い切れ味まで感じる事ができるのに実物ではない、ありえない話だがこのコルヴェトーリアと言う世界ではできる事らしい。

「成程、それなら勇者の剣も説明できそうね。優子、ちょっと出してみてくれないかしら?」
「え、え?えーと、どうやって?んー、どうやってやるんだっけ?」

どうやら出し方を忘れてしまったらしい。あの時は必死だったからね。

「剣也く〜ん」

泣きっ面の勇者様。お供の剣士に剣の出し方を教わる。

「うるせぇな。・・・イメージすんだよ、目ぇ閉じて、しっかりとグリップを握っている感触をな。次に目ぇ開けた時には・・・もうそこにあるはずだ。お前の剣が」

長く喋った剣也は疲れてしまったのか剣を戻し、再び壁に背を付け、不動の体制になってしまった。

「むー・・・分かんないよぅ。どうしよう」

確かに今の説明では、逆上がりのできない子供に回ることを意識すればできるよ、と、言っているようなものだ。意識しろと言っても、回る感覚を知らない者にはさっぱり分からない。

「とりあえず挑戦してみれば?」
「むふーん・・・分かった」

目を閉じて、集中する。そうするとだんだん感覚が研ぎ澄まされて、自分の心臓の鼓動が耳に響く。
優子は想像する。あの時握った、手によく馴染むグリップの感触を。初めて触ったはずなのにずっと身近にあったような暖かい感覚を。

「・・・出来てるじゃない」

目を開けると優子の手には、柔らかな光を纏った真っ直ぐな剣が握られていた。

「やぁったぁ!できたよ、見て見て!ねぇ見て!」

逆上がりができるようになるには理詰めで考えるより、とにかくやってみる事が大切なのだ。一度でできなくても、ふとした瞬間に体が浮き上がり、気づいた時には1回転している。
初めて回る感覚を味わった子供は、嬉しそうに周りの人間に報告をする。

「流石だね!よし、じゃあちょっと触らせてもらうよ」



おひさ。
すみません、こんなに時間開いちゃって。やると決めたからには、最後まで書き切ります!
「小説家になろう」さんの方の更新を優先しています!少しでも早く続きが読みたい方はそちらの方にお越しください!






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