本編の後ろに、おまけのネタ予告を載せています。愉しんでいってください。
「これは一体……」
先ほどまで歓喜の渦に包まれていた護衛艦隊旗艦「くらま」のCICは、一転して御通夜のような暗い空気に支配されていた。多くの犠牲を払って手に入れたはずの勝利が泡と消え、代わりに現れたのは絶望を具現化した底知れぬ恐怖だった。
夜が明けて、次第に山際から白い光が漏れてくる中でも赤く発光するゴジラの姿は、モニター越しにはっきりと見えた。蒸気を吹き上げ、燃え盛る炎のような光を発する黒き巨獣の姿に、立花も息を呑む。
ゴジラが熱線を吐く。煉獄の赤き炎が地面を舐め、その軌跡に沿うようにキノコ雲が乱立する。CICのモニターに映る景色は、赤い炎と黒煙に包まれていた。
「戦車大隊、損耗70%を超えました!!」
「ゴジラ、深山町に侵攻します!!」
CICに次々と送られてくる知らせは、どれも凶報だった。ゴジラに再度攻撃をしかけた戦車大隊は、先ほどとは比べ物にならないほど強力な熱線の一撃で壊滅した。熱線の直撃を受けた戦車の末路は言うまでもないが、熱線によって生じた爆発や熱といった余波ですら、戦車を行動不能にするには十分すぎる威力があったのである。
「……司令部より緊急信!!『護衛艦隊は、可能な限りゴジラの注意を引き付けられたし』との命令です!!」
立花はゴジラの姿を映すモニターをじっと見つめる。
40年ほど前、初めて東京を襲ったゴジラの姿が脳裏に蘇る。親とはぐれ、泣きながら炎を背にただ人の流れにまかせてひたすら逃げたあの運命の日の夜のことだ。街と人を残さず焼き尽くさんと燃え盛る炎に照らされた、忌むべき巨獣がそこにいた。
そして今、立花の原点とも言うべき光景が再現されている。モニターの先にある炎の中に、立花はかつての自分を見た気がした。
「立花海将?」
モニターを真っ直ぐ見つめて佇む立花の姿に、「くらま」の崎田艦長は怪訝な表情を浮かべる。しかし、立花は崎田の視線を気にも留めることなく静かに双眼鏡を下ろし、代わりにマイクを手に取った。
「……各艦に告ぐ。対地戦闘用意。距離を詰めつつ、主砲でゴジラを引きつける」
立花が先ほどまでのどこか遠くを見るかのような表情から一変していた。一切躊躇を見せずに力強い声で発した命令に崎田は一瞬たじろぐも、すぐに復唱した。崎田も確実にゴジラの熱線の的になる近距離砲戦に対する恐ろしさがないわけではないが、立花の全てを覚悟した歴戦の将のような堂々たる態度を前に、気後れしてはいられなかった。
「単装速射砲、準備!!」
崎田の命令を、砲雷科の士官が復唱する。
「単装速射砲準備!!」
『デジグ、SCF1』
くらまの73式54口径5インチ単装速射砲に続くように、こんごうのオットー・メララ127mm54口径単装速射砲、そしてまつゆき等のオットー・メララ62口径76ミリ速射砲が旋回し、仰角をかける。
「撃ち方はじめ!!」
「用意……撃てぇ!!」
砲雷長の号令で、射撃員がトリガーを引いた。
「くらま」の艦首に二門設置されている73式54口径5インチ単装速射砲は、一分間に40発の連続射撃が可能なアメリカ海軍開発の速射砲だ。二門の主砲は射撃管制装置によって精確に目標を捕捉する。
祭囃子の小太鼓のような小気味良いテンポで発砲音が連続する。間髪いれずに護衛艦隊の各艦も主砲の単装速射砲を発射し、闇が払われつつある日本海には絶え間なく発砲音が響いている。
「各艦、射撃を開始しました」
2門の主砲の砲撃の衝撃が断続的に響くCICの中で、立花は静かに闘志を燃やしながら
直後、モニターの中に映るゴジラの姿が赤い閃光と黒煙に包まれる。
現代の軍艦の主砲は、破壊力だけで言えば第二次世界大戦時の駆逐艦や軽巡洋艦の主砲のそれとさほど変わらない貧弱なものだ。雨霰と畳み掛けてくるハープーンと
しかし、一分間に400発以上の砲弾を浴びせられたならば、ダメージはなくとも衝撃はとてつもないものとなる。ゴジラにとって速射砲の砲撃の1発1発は軽いジャブみたいなものだが、今の状況は一秒間に6発以上のジャブを60秒間も連続して喰らわされているようなものだ。
流石のゴジラも圧倒的な手数のジャブを全身に浴びてよろめき、立っていることができずに倒れこんだ。それを見た立花は即座に艦隊に砲撃をやめるように命令する。
「主砲、撃ち方やめ!!」
「主砲、撃ち方やめ!!」
いくら連続射撃が可能とはいえ、連続射撃をすれば砲身の過熱は避けられない。ゴジラの注意を引きつけるためには、ある程度の休止を挟むことで必要なときに全力で主砲弾を叩き込めるようにしておかなければならないと立花は考えていた。
倒れこんだゴジラに、セブンとモスラが光線を畳み込んでいる様子が見える。怪獣との共闘など、つい先ほどまでは全く考えていなかった。ゴジラという脅威があったとはいえ、かつて東京を襲撃した前科のあるモスラとこうして肩を並べて戦うことは色々と考えさせられるものがあると立花は思っていた。
しかし、立花の思考は、ゴジラから溢れ出した鮮やかな赤い閃光と、その数秒後にくらまを襲った大気の振るえによって遮られた。
ゴジラが横倒しになりながらも放った熱線は
そして、ゴジラはモスラとセブンの放つビームを受けながら平然と立ち上がる。
崩れ落ち上半身に続いて消滅する
まさに、天下無双、最強無敵。怪獣王は超越種としてそこに君臨していた。
「嘘だろ?あんな切り札があったなんて……これじゃ勝ち目なんてないじゃないか」
ライダーのマスター、ウェイバー・ベルベットは唖然としていた。
自身のサーヴァントの最強宝具、
そして、今モスラと共に戦っている彼の仲間、ウルトラセブン。彼も、この国ではゴジラと並ぶほどの知名度補正が受けられる大英雄だ。怪獣や異星人に対する豊富な戦闘経験と洗練された戦闘スタイルを誇る、対怪獣戦闘のスペシャリストと言っても過言ではない。
自衛隊の助けがあったとはいえ、一時は二体の共闘によってゴジラを袈裟斬りにし、うなじに大穴を穿つほどの重傷を負わせることに成功した。ウェイバーもその時は勝利を確信していた。
しかし、ウェイバーの予想は容易く覆される。重傷を負って地に伏せたはずのゴジラが、その身をマグマのような灼熱の赤に発光させながら蘇ったのである。復活したゴジラの力は圧倒的だった。
評価規格外の耐久を有したゴジラには、Aランクを超える対城宝具でなければ傷を負わせることすら不可能だ。しかも、超活性した再生能力はA++ランクの対城宝具によってできたかすり傷を瞬きする間に完治させてしまう。
全てを知る魔術師達は、最後の希望が潰えたことによって底知れぬ絶望を味わっていた。
因みに、顔には出していないが、この中で一番状況に絶望しているのはウェイバーや璃正ではなく、セイバーのマスターだった衛宮切嗣であった。彼はゴジラが血しぶきをあげて倒れ伏したとき、ゴジラの敗北を一度は確信した。そして同時に、聖杯戦争の勝利者になれることも確信していた。
ウェイバーを人質にして、ライダーを強引にマスター変えさせれば切嗣の願いである「恒久的世界平和」を叶えることができるからだ。懸念は言峰綺礼とルーラーだったが、言峰綺礼には自分が答えを持っているとかそれらしいことを言って時間を稼げばいいし、ルーラーに対しても聖杯戦争の勝者となってしまえば、願いを叶える権利は自動的に勝者に与えられるため、妨害は入らないと考えていた。
ゴジラの死んだ場所で小聖杯を探し出して願いを捧げればそれだけで衛宮切嗣は、いや、人類は石器時代からのしがらみから完全に解放され、真の勝利者となるはずだった。
しかし、ゴジラは復活し、切嗣が密かに抱いた野望も一瞬で潰えた。おまけに、ゴジラはもはやルーラーとライダーの二人がかりでも勝機が全く見えないほどに強化されている。ゴジラが聖杯戦争の唯一の勝者となるのは時間の問題だった。
ゴジラが聖杯にかけている願いなど切嗣には想像もつかないものであったが、ゴジラが願いをかなえればきっとろくでもないことになるということは切嗣も理解している。自分に何も出来ず、自分が天秤にかけて棄ててきた命が何の意味のないものになるという事実は、天秤の量り手であろうとした彼の信念を折るには十分に残酷な事実だった。
「諦めてんじゃないよ、バカガキ」
絶望し膝を折ったウェイバーの頭にベルベラが乗り、足蹴にしながら彼を叱咤する。
「けど、どうするんだよ!?モスラの攻撃だって効かないし、ルーラーだって手も足もでないじゃないか!!ルーラーが召喚したサーヴァントだって一瞬でみんなやられた!!」
「喚いて、勝手に絶望して……そんな生産性のないことやってる暇があるなら、その容積の割に愚鈍な脳みそをもう少し使って足掻きな!!」
ベルベラは生意気なことを言ったウェイバーの髪の毛を引っ張り、彼に悲鳴をあげさせる。
「べ、ベルベラ!!その辺で……」
「そうよ、彼にあたってもしょうがないことじゃない」
「モル!!ロラ!!甘いこと言ってんじゃないよ!!」
ベルベラの剣幕に、止めに入ろうとしたモルとロラも気圧される。
「いいかい。あんな憎悪と怨嗟のバケモノが聖杯を取ってみろ。絶対にろくでもない願いを叶えるに決まってるだろう。キングギドラは生態系の破壊だけだったけど、コイツの場合は生態系の破壊どころじゃなくて、最悪この星そのものを滅ぼす可能性があるんだ。そんなふざけた最悪の事態が目の前に迫ってるんだよ。絶望している暇なんて、アタシ達には与えられていないことが分からないのかい?」
星が滅ぶというのは、ベルベラの直感だ。だが、あのゴジラの恐ろしさを見せ付けられればベルベラの考えが杞憂だとはモルとロラにも、そしてほかの元マスターたちにも全く思えなかった。
「最後まで諦めるんじゃないよ。最後まで足掻いてみせな。アタシ達にはまだ『
その言葉に、ウェイバーは思い出した。召喚した日に教えてもらった『エリアス三姉妹』の本当の宝具のことを。
「そうか!!アレを使えば、確かにゴジラに勝てるかもしれない!!」
しかし、ウェイバーは同時に、その宝具の有する最悪のデメリットを思い出す。ウェイバーの顔が曇ったのを見たベルベラは、ウェイバーが考えていることを精確に理解した。
「なんだ、まさかリスクにしり込みしてんのかい。情けない、アンタも覚悟をいい加減に決めな。だからお前はガキなんだよ」
「でも、アレを使ったら……」
「アタシ達は九分九厘死ぬね。だけど、それがどうした」
あっけらかんとした態度で自分たちの消滅を肯定したベルベラの言葉に、聞き耳をたてていたほかのマスターや監督役も驚きを隠せない。サーヴァントは、願いがあるから聖杯からの召喚に応えて現界するものであり、願いを叶えられず消滅することを当然のように受け入れていることは通常考えにくいことだった。
「お前は乳飲み子かい?アタシたちが消えても後は自分の力で何とかするとか、そういう台詞がいえないところが情けないよ」
俯いたウェイバーを一瞥してウェイバーの頭から飛び降りたベルベラは、次いでモルとロラに視線を向ける。
「モル、ロラ。あんた達には聞くまでもないね?」
頷く妹達。ベルベラはそれを確認すると、ウェイバーに向き直った。
「これが最後だ。一度くらいは男を見せな、
ウェイバーが顔を上げる。初めて、ベルベラがウェイバーを『マスター』を呼んだ。その意味が分からないほどウェイバーは愚かではない。
「アンタにしかできないことがあるんだ。頼りにしてるよ」
ベルベラが小さな手でウェイバーの令呪が刻まれた右手の指を握った。
<この先は、ネタ予告『やめて!!ルーマニア財務相のライフはもうゼロよ!!』です>
<本編とこの先のネタ予告は、一切合切!金輪際!まったくもって関係ない!ということを前提に愉しんでください>
かつて、極東の霊地、冬木の街では60年ごとに7人の魔術師と英霊が万能の願望器をめぐり戦う聖杯戦争と呼ばれる儀式が執り行われていた。
しかし、大東亜戦争中に大日本帝国陸軍に不死身の心臓を提供したとある魔術師が、その対価として帝国陸軍の協力を受けて聖杯戦争の根幹を成す魔術礼装、大聖杯を強奪し、冬木の聖杯戦争には終止符が打たれてしまう。
そして、それから60年の月日が流れたある日、大聖杯を略取した魔術師が率いるユグドミレニア一族は突如魔術協会からの離反と独立を高らかに告げ、魔術協会との事実上の戦争状態に突入した。
魔術協会は封印指定執行者を筆頭とした討伐部隊をユグドミレニアの本拠地であるトゥリファスに送り込むが、『怪獣たちの軍勢』によって討伐舞台は全滅の憂き目にあう。
ユグドミレニアが怪獣をサーヴァントとして召喚したことは疑いようもなかった。運よく聖杯の予備システムを起動させることに成功した魔術協会は、ユグドミレニアに対抗するべくこちらも超級の怪獣をサーヴァントとして召喚して聖杯戦争に参戦しようと目論む。
そして、赤と黒の陣営、7騎と7騎のサーヴァントがぶつかり合う前代未聞の戦争の審判として、さらに1騎のサーヴァント、
計14体の怪獣と異星人。そして、光の巨人が集う。
ここに、外典の聖杯戦争――否、聖杯大戦が勃発した。
《多分、こんなのが召喚される予定です》
<>は出典
()はマスター
「」は作者のコメント
“赤”陣営
サーヴァント
セイバー ……ザムシャー<ウルトラマンメビウス>
(獅子劫界離)
「円谷世界のセイバーといったら、コイツを出さないわけにはいかないでしょう。ツンデレなところもいいね。多分、ヒーローショーで見せた醜態から察するに、フィオレさんに惚れてキャラ崩壊します」
ランサー ……ジーダス<小さき勇者たち~ガメラ~>
(言峰士郎)
「バランとバルゴンとジラースを一まとめにしただけのトカゲ。はっきり聞こう、この聖杯大戦を生き残れる実力がコイツにあると思うかい?」
アーチャー ……ゼットン<ウルトラマン>
(言峰士郎)
「強い(確信)。初代ですからね。あれだけシンプルでデザインでありながら、あれほどの威圧感を持つ怪獣もそういません。初期の円谷怪獣のデザインは本当に秀逸ですよね」
ライダー ……バッカクーン<ウルトラマンネオス>
(言峰士郎)
「寄生ってのもライダーですよね。サイクロメトラと迷いましたが、キノコの方が恐ろしさがますのでコイツになりました。現在のところ、偶々日本の静岡県で発見されたシーリザー<ウルトラマンティガ>に寄生しています」
アサシン ……ツルク星人<ウルトラマンレオ>
(言峰士郎)
「怖い(確信)コイツは円谷怪獣の中でもレアなマジでアサシンやってるヤツです。赤のセイバーとは絶望的なまでに相性は悪いですが」
キャスター ……エタルガー<ウルトラマンギンガS 決戦!ウルトラ10勇士!!>
(言峰士郎)
「士郎とは目的が相反しないから上手くやれそうで、城持ってて一見するとラスボスっぽい感じがないわけではないという理由で選びました。思い入れは特になし」
バーサーカー……アーストロン<帰ってきたウルトラマン>
(言峰士郎)
「帰ってきたかませ犬」
“黒”陣営
セイバー ……ファイヤーモンス<ウルトラマンA>
(ゴルド・ムジーク・ユグドミレニア)
「地味にエースを一度倒している強敵なんですがね……あんまりその強さが知られていない悲しいヤツです。炎の剣持ってますからセイバーになりました」
ランサー ……ウルトラマンベリアル<大怪獣バトルウルトラ銀河伝説THE MOVIE他>
(ダーニック・プレストーン・ユグドミレニア)
「めちゃ強い(確信)。だけど、何故か閣下に不幸の星が見えます。ランサーの呪いはヤバイ」
アーチャー ……トト<小さき勇者たち~ガメラ~>
(フィオレ・フォルヴェッジ・ユグドミレニア)
「フィオレといっしょだと和みますね。可愛い系怪獣にしようということで、コイツになりました」
ライダー ……ミジー星人<ウルトラマンダイナ>
(ロシェ・フレイン・ユグドミレニア)
「地味に凄い科学力でロボットを三人で造り上げた愛すべきバカ三人組(オカマとオッサン)とゴーレム大好き半ズボンショタ……混ぜてはいけない香りがしたので混ぜてみました」
アサシン ……宇宙細菌ダリー<ウルトラセブン>
(相良豹馬)
「直接戦闘はできないけれども敵に回すと厄介で、さらに性格悪そうなやつらを組ませてみようと考えた結果です。多分、相良はもう操り人形ですね」
キャスター ……魔頭鬼十朗<ウルトラマンガイア>
(セレニケ・アイスコル・ユグドミレニア)
「魔術師としての系統や性格が合いそうな気がしました。ガンQカワイイ」
バーサーカー……サンダ<フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ>
(カウレス・フォルヴェッジ・ユグドミレニア)
「フランケンシュタイン繋がりです」
ルーラー ……ウルトラマンティガ<ウルトラマンティガ>
「筆者の一番大好きなウルトラマンです。本編では色々な都合からルーラーの座をセブンに譲り渡したので、こちらで再起を図ります。グリッターティガになれれば、ベリアル閣下もエタルガーも倒せるでしょう。なれればの話ですけど」
ネタの方に対する感想も、本編に対する感想と合わせてお待ちしています!!