雁夜がサーヴァントの召喚を成功させる一時間程前、冬木市新都のとある一軒家では、家の主人の血で描かれた召喚陣の前で若い男がはしゃぎ回っていた。
「すげぇ……すげぇよ!!超COOLだよ!!」
床に血で描かれた魔法陣から放たれる光に照らされながら、雨生龍之介は感極まっていた。
実家でたまたま手に入れた黒魔術の書に従い、殺したばかりの少女の血で魔方陣を描き、祭壇に供物を置いた。供物は雰囲気がそれらしいというだけの理由でこの家にあった白く濁った水晶を使用した。
書物に従って呪文を詠唱すると同時に、魔方陣が光を放ち、風が室内を駆け巡る。魔方陣から発せられる光と風が強くなるごとに龍之介の身体には異常なほどの倦怠感が圧し掛かっていたが、目の前の光景に興奮していた彼にとってその倦怠感などは取るに足らないものであった。
光はさらに強まり、彼の視界は光に包まれて何も見えなくなる。だが、それでも彼は目を決して閉じることはなかった。この先に見える光景を見逃したら、一生後悔するという確信が彼にあったからである。
龍之介は光を発し続ける召喚陣をただ見つめ続けた。
そして、次の瞬間、轟音とすさまじい衝撃が彼を襲った。
龍之介はその衝撃によって吹き飛ばされ、背中を何かで強く打ち付けて動けなくなる。意識が朦朧とする中、彼は空気を揺るがす巨大な咆哮に身体を震わせる。いつのまにか家の屋根がなくなっていることに気がついた彼は、空を見上げ、『それ』を見た。
限界まで頭を上げても、その全貌は見えないほどの巨体、そして、その巨体の肩部に生えて輝く水晶。そして、大気そのものを振るわせる神のごとき威圧。目の前の光景に見惚れていた龍之介は、いつのまにか自分の身体が水晶に覆われ動けなくなっていたことにも気がつかずにいた。
この日、冬木市は突如地面から生えた結晶に覆われ、結晶塔の主である
彼が知らず知らずの内に触媒としていた濁った水晶の正体は、かつてこの星に死骸となって流れ着いた水晶生物の成れの果てであり、この家の主が数年前に海岸で偶然に採取していたものであることを知るものはいなかった。
冬木市、新都は突如地面から突き出してきた無数の結晶に完全に覆われた。平日の深夜に突如街を襲った結晶群は、逃げ送れた多くの市民を飲み込みながら拡大し、未遠川までに達していた
「一体どこのサーヴァントだ!!まさか、またアインツベルンか!?」
時臣は邸宅の窓から見える結晶の都とその中を主のように闊歩する大怪獣の姿に憤りを隠せずにいた。
「時臣君。これでは……」
「ええ。分かっています。事態は一刻を争います」
冬木市に対する被害に顔を青ざめさせている老神父、言峰璃正の言葉を魔導通信機ごしに聞き、時臣は力強く頷いた。
「こうなっては仕方がありません。予定より早いですが、私もサーヴァントを召喚します」
「綺礼も未遠川に待機させているアサシンを至急向かわせてくれ。あのサーヴァントの強さは桁外れだ。時臣君のサーヴァントが遅れを取るとは思わないが、事態の収拾は一刻を争うから戦力は多いほうがいい」
「しかし、父上。私のサーヴァントは未だあの怪獣との戦いに介入できる状態ではありません。まだ、エネルギーが足りないのです」
綺礼は、出陣を要請する父に対して頭を振った。
彼のサーヴァントは単体では非常に弱く、下手をすればマスターである綺礼ですら屠れてしまうだろう。だが、時臣がわざわざ前回のアインツベルンが行った反則行為を真似て強引にハサン・サッバーハしか存在できないはずのアサシンのサーヴァントとして召喚させた怪獣だけあって、その真価たる宝具は中々に強力な存在だ。
ただ、時臣にとっても一つ誤算だったことがあった。最大にして最強の宝具の発動条件がこの上なく厳しく、少なくない犠牲がなければ発動できないものだったのである。1週間前に召喚し、これまでずっと宝具発動の準備に費やしてきたというのに、まだ足りないということは由々しき事態だった。
「問題ありませんよ、璃正殿。私のサーヴァントであのサーヴァントの動きは封じ込めてみせます。万が一の時は加勢して敵の注意を逸らしてもらえばそれでいいです。なんせ、あれだけの数がいるのですから」
「ならばかまいません……言うまでもないことですが、できるだけ早くに決着を」
「分かっています。それでは、私はすぐに召喚を始めます」
そこで時臣からの通信は途切れた。しかし、自信満々といった様子の時臣の声を聞いた璃正もそれ以上の追求はしなかった。というより、ここで細々とした追求をしている時間が彼にとっては惜しかったのである。この異常事態は一般人に隠し通せるようなものではなく、いくつかの政府機関や報道機関がこの事態を察知していたからだ。
既に冬木市からの災害派遣要請によって築城基地からF-15二機が
「もはや、聖堂教会だけでは手に負えぬ……時臣君が『アレ』を召喚すると聞いたときから隠蔽工作のスタッフは十二分なほどに増員して関係省庁、マスコミにも手を回しておいたが、まさか聖杯戦争の初戦でこのようなことになるとは予想外だった」
「魔術協会にも、協力を要請すると?」
綺礼の問いかけに璃正は重苦しい表情で頷いた。
「そうだ。おそらく、今回の聖杯戦争には規格外のサーヴァントが予想以上に多数参加している可能性が大だ。我々だけでは手に余る。綺礼、魔術協会との折衝は私がするからその間に聖堂教会に掛け合って増援のスタッフを至急確保してくれ」
「わかりました」
その後、隠蔽工作に奔走する璃正の耳にさらなる悪い知らせが飛び込んでくる。
「若狭湾に怪獣出現。原子力発電所を破壊しながら西方に侵攻中。怪獣の形態はゴジラに類似しているとのこと」
《サーヴァントのステータスが更新されました》
クラス:キャスター
マスター:雨生龍之介
真名:スペースゴジラ
性別:不明
身長:60m/体重:40000t
属性:混沌・悪
パラメーター
筋力:A
耐久:A
敏捷:D
魔力:A
幸運:D
宝具:A+
クラス別能力
陣地作成:D
魔術師として自身有利な陣地を作り上げる技能
スキル「結晶塔の帝王」の影響で弱体化している
道具作成:―
道具作成スキルの適正がない
保有スキル
怪力:A
魔物、魔獣のみが持つ攻撃特性で、使用する事で筋力を一定時間ワンランク向上させる
戦闘続行:A
瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる
千里眼:C
視力の良さ。遠方の標的の捕捉、動体視力の向上
結晶塔の帝王:Ex
『
この領土内の戦闘において、スペースゴジラはAランクの「狂化」に匹敵する高い戦闘力のボーナスを獲得できる
ただし、
宝具
ランク:A+
種別:対界宝具
レンジ:1~99
最大捕捉:1000人
自身の周囲で最も高い建造物を媒介にして発動する
最も高い建造物を宇宙からのエネルギー受信アンテナとすることで、スペースゴジラは無尽蔵のエネルギーを得ることができるようになる
媒介になった建造物はランクA+相当の宝具になる
ランク:A
種別:対軍宝具
レンジ1~200
最大捕捉1000人
大地より無数の結晶体を突き立てることができる
攻撃範囲は半径2kmで、最大展開本数は一万本に及ぶ
地面より生えた結晶塔をミサイルのように敵に飛ばすことも可能
ランク:A+
種別:対城宝具
レンジ:1~99
最大捕捉:1000人
スペースゴジラが口から発する赤色のビーム
ゴジラの熱線と違い、曲げることができるため、様々な角度からの攻撃が可能となっている
《捕捉》
ゴジラVSスペースゴジラに登場するスペースゴジラ。
他の怪獣のサイズにあわせるために1/2スケールになってもらった。
魔術といっても、陣地作りしかできないけど他にキャスターっぽい適正のありそうな怪獣がいなかったからしょうがなくコイツにした。(同じように陣地つくるのにレギオンがいるが、あいつよりは多彩な能力を使えるし)
一度現界して、
ついでに、バーサーカーも若狭湾でおなかいっぱいになって冬木に移動を開始しているようです