IS 一夏の彼女は副担任   作:陸のトリントン

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ここ最近モチベーションが上がらず苦労しましたが、一応の区切りができたので投稿します。


第52話

俺と真耶が最初に向かったアトラクションは、ジェットコースターである。

 

実は真耶が一番行きたがっていた場所でもあるが・・・

 

「どうしたの一夏君?」

 

「真耶がジェットコースターで喜んでいるのに驚いてて・・・」

 

「ごめんね。一夏君がこういうのが苦手なのにはしゃいじゃって」

 

え・・・?

 

「真耶。俺が絶叫マシーンが苦手なのは、どこで・・・」

 

「以前、織斑先生と飲みに行った時、酔った織斑先生が勢いで言ってました」

 

そう。真耶の言う通り、俺は絶叫マシーンが苦手である。小さい時、箒の家族と一緒に行って・・・

 

『男なんだからしっかりしろ!』

 

と言われて、箒に半ば強引に乗せられたんだ。その結果、絶叫マシーンが嫌になった。

 

小さかったから怖く感じていただろうと思っていたが、中学の修学旅行で某アミューズメントパークの人気絶叫マシーンに乗った時・・・

 

『何、この世の終わりを迎える様な顔してるのよ?そんな顔をするなら、アタシが克服させるわ』

 

と、鈴に言われて他の絶叫マシーンに乗せられて地獄を味わった。

 

そして、真耶とのデートで絶叫マシーン。いや、遊園地に行くんだから、こういう所に行くのは鉄板だ。それに、行く事に関しては覚悟を決めていたんだ。恐れる事は無い。

 

「一夏君?」

 

「あ、ああ。大丈夫だよ。それじゃあ・・・」

 

一緒に行こうと言おうとした時、真耶は笑顔で俺の右手を握り始めた。

 

「私がいるから大丈夫だよ。だから、そんなに怯えないで」

 

「真耶・・・」

 

「えいっ!」

 

すると、真耶は俺の右手を強く握りしめた。とは言っても、千冬姉みたいに骨が痛みそうな力を出してる訳ではなく、強く握手されてる程の力ぐらいである。心地よい握りなのか、少しだけ心が安らいだ。

 

「どう、落ち着いた?」

 

「ああ、落ち着いたよ。それにしても、真耶は凄いな。ちょっとした事で俺の心を落ち着かせるなんて」

 

「一夏君。私に手を握られたり、膝枕で落ち着いていたりする事があって、もしかして好きなんじゃないかなと思ったの」

 

「真耶には敵わないな」

 

「ふふっ。膝枕とか握られたいって思ったら学園でも呼んでね」

 

学園内で呼ぶ時は千冬姉とマドカにばれないようにしないとな。結構無理な気がするけど・・・

 

「さあ、一夏君。一緒にジェットコースターに乗りましょう」

 

そう言い、真耶は俺の右手を引っ張りながらジェットコースターへ向かって行った。

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

ジェットコースターを乗り終えた俺と真耶は近くのベンチに座って一休みしている。

 

「大丈夫、一夏君?」

 

「ああ・・・大丈夫・・・」

 

ジェットコースターに乗った結果は言うまでもない。隣のシートに座っていた真耶は叫び、俺は泣き叫びながら堪能した。我ながら、ギャグ漫画を連想させるかのような泣き顔をしていたと思うよ。

 

「ごめんね。一夏君がそこまで苦手だと思わなかったから」

 

「真耶のせいじゃないよ。俺がちゃんとすれば良かっただけの事なんだから」

 

「でも・・・」

 

心配そうに見つめてくる真耶の鼻を指で軽く突いた。

 

「きゃっ!?」

 

「心配性だな真耶は。確かに怖かったけど、真耶が隣にいただけでも少し落ち着いていられたから」

 

「本当?」

 

「本当だよ。俺の手を握ってみて」

 

半信半疑ながら俺の手を握ろうとした真耶を、抱きしめた。

 

「ひゃあっ!?」

 

「どう?落ち着いてるでしょ?」

 

「驚かさないでよ。変な声が出ちゃったじゃない」

 

「落ち着いていただろ?」

 

「でも、私がドキドキしちゃってるよ」

 

顔を赤くしつつ照れながらも答える姿に、俺のちょっとした悪戯心が働く。

 

「じゃあ、落ち着けるアトラクションに行こうか」

 

「そんなアトラクションがあるの?」

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

「ここ・・・なの?」

 

「そうだけど、どうしたの?」

 

「は、入るの?」

 

「ああ」

 

「うう・・・」

 

少し涙目になってる真耶があまり行きたがらないのも仕方がない。

 

何故なら、お化け屋敷の前にいるのだから。

 

実は怖いものに対してはかなり耐性が付いている・・・と言うより、付いてしまった。

 

主に千冬姉とマドカと、千冬姉とマドカに、千冬姉とマドカ・・・身内が原因だな。

 

「大丈夫だよ。俺が側にいるから安心していいから」

 

「本当に?」

 

「ああ。俺が守ってやるから」

 

悪戯心とは言ったが、少しやりすぎたかな。まだお化け屋敷に入っていないのに、真耶が凄く怖がってるし。ここは俺がシッカリしないと。

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

「一夏君・・・ぐずっ・・・怖かったよ」

 

「大丈夫だよ。俺が側にいるから」

 

お化け屋敷の中で真耶は泣き叫んでいて、俺はそんな真耶を慰めるという感じだった。お化け屋敷から出ても真耶が泣き止む気配が無い。

 

「真耶、大丈夫?」

 

「ふぇ・・・ぐずっ・・・うぅ・・・」

 

これはやりすぎた。

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

「ごめん真耶。俺がイタズラ半分にお化け屋敷を選んで」

 

「もう、イタズラ半分でお化け屋敷を選ばないでね」

 

「お待たせしました。こちら、ストロベリーパフェとなります」

 

あれからすぐに真耶と一緒にフードコーナーに行き、ストロベリーパフェを向かい合って食べることにした。パフェが出るまでずっと暗かったのに、出た途端に物凄く目を輝かせた真耶の姿は年頃の女の子そのものだった。

 

「うーん。ここのパフェ、一度食べてみたかったの。一夏君も食べてみる?」

 

「いいの?」

 

「このパフェを二人で一緒に食べると、ずっと幸せになれるって言うんだよ」

 

「え?別に食べなくてもずっと幸せになれると思ってたけど?」

 

現に俺は真耶と一緒にいられるだけで幸せなのに。

 

「もう、そういうのは言わない。こういうのは雰囲気が大事なの」

 

「そういうの・・・いまいち分からないな」

 

「じゃあ、学園に戻ったら実習を交えて教えるよ」

 

「ありがとう!真耶のマンツーマン指導なら、何でも覚えられるよ」

 

真耶や相川さん達のお陰で女心は少し理解してきたけど、分からない事が沢山あって困る。

 

「大袈裟ね。ハイ、あーん」

 

「あーん」

 

真耶の愛情が乗ったスプーンが俺の口に運ばれる時だった。

 

 

 

「一夏・・・何してるのよ」

 

「え・・・鈴?」

 

 

 

俺と真耶の食事に割り込んで来たのは、何故か不機嫌の鈴だった。




次回も遊園地デートは続きます。

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