IS 一夏の彼女は副担任   作:陸のトリントン

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賛否両論覚悟のオリジナル展開になっております。

書く事書いて、いらない所削っても5000字を超えるとは・・・


第30話

織斑マドカ視点

 

 

 

私、織斑マドカは相川、谷本、悪魔の三人に遊ばれている。

 

「マドカの過去に何があったのか知らないけど、人を殺すのは良くないよ」

 

「それに生身でISに勝てるからって、無茶しないで」

 

「そんな事してたら、マドっちが想いを・・・」

 

「黙れ悪魔」

 

もう少しで・・・後、もう少しで紅椿を破壊できたのに。どうして姉さんが邪魔をする!?

 

『マドカ。お前は普通の女として生きてくれ』

 

姉さんが私を止めに来た際にそんな台詞を吐いたが、それは束を殺してからでは遅いと言うのか。

 

「マドカ。もし、篠ノ之束を倒したらどうするの?」

 

「普通の女として生きる」

 

「でも、束さんを倒さなくても・・・」

 

「私は束を倒さない限り一歩も進めない人間になってしまった。あいつは私にとって呪いそのものだ」

 

私がこうなったのも、姉さんがああなったのも、兄さんがああなったのも、すべて束が原因だ。あいつさえ消せば世界は平和になる。そうすれば私と姉さんが力を振るう必要もなくなる。

 

「マドっちの言いたいことは良く分かったけど・・・」

 

「何だ?」

 

 

 

「胸はおっきくならないよ~」

 

 

 

あの悪魔は早急に殺そう。

 

「貴様を・・・処刑する!」

 

「マドカ、落ち着いて!」

 

「本音もマドカを怒らせない!」

 

相川と谷本が私を抑えつけるが、あの悪魔を殺させろ!どこか気が抜けてるように見せかけて、人の心を土足で踏みにじる悪魔など殺した方がマシだ!

 

「だって、ず~っと八つ当たりされたら・・・」

 

「まずは貴様の口を切り裂いてくれる!」

 

「それに、マドっちは全然変わろうとしないもん」

 

「何!?」

 

「いや・・・」

 

「皆、知ってるから」

 

二人とも(相川と谷本)・・・認めてる!

 

「私は・・・自分が変わったと思っていたが・・・」

 

「変わったのは変わったけど、肝心な所が変わってないんだな~」

 

「これは・・・悪魔の囁きか?」

 

「「違うから!」」

 

「マドっちは頑なに力で行動する所があるから、余計に問題を起こす所があるんだよ~」

 

「そうなのか、二人とも?」

 

「うん。今は問題が起きてなくても、これから大丈夫かなって・・・」

 

「マドカは変わったには変わったけど・・・」

 

二人共・・・そんなに心配をしてたのか。

 

「マドっち、変わる事はそんなに怖くないんだよ~。だから・・・ね~」

 

・・・冷静になれば、三人に少しきつく当たっていたな。束がいなければ、束が殺せればそれで十分だと思っていた。仮に私が殺したとして、兄さんと姉さんが喜んでくれるだろうか。・・・少なくとも今まで通りの生活ができないのは確かだ。

 

「マドカの過去に何があったのか私は聞かないよ。過去に何かあったって、私達は友達じゃん」

 

「・・・強敵(とも)達?」

 

「うん。友達でしょ」

 

強敵(とも)達・・・」

 

「マドっち、漢字が違うよ」

 

「・・・友達」

 

友達という言葉に少しの温もりを感じた。

 

「だから束さんの事は忘れて、学園生活を楽しもう」

 

谷本は私に手を差し伸べてきた。私を怖がらないなんて相当なモノ好きだな。

 

「・・・分かった」

 

「よし。じゃあ、最初はマドカのデートの服を考えなきゃ!」

 

・・・何!?

 

「そうだね!」

 

「私もまぜて~」

 

「ま、待て!何故私のデートの服装なんだ!?」

 

「マドカ、制服以外の服を持ってるの?」

 

「ああ、持ってる。南斗水・・・」

 

「ちゃんと考えないとね~」

 

「話を最後まで聞け!」

 

こうして私は三人にデートのコーディネートの事で振り回されたけど・・・

 

 

 

「友達か・・・」

 

 

 

友達と楽しむのも・・・悪くないな。

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

織斑千冬視点

 

 

 

紅椿の戦歴データを閲覧したが・・・酷い戦いだ。

 

銀の福音の動きが完全に箒が攻撃できる様に動いている。しかも一夏に箒の必要性を示すためなのか、一夏に攻撃をしているが完全に箒が攻撃できる様に立ち回ってる。

 

 

 

『一夏!なぜ、あの密漁船を守る!?』

 

『確かにあれは密漁船だ。だからって見殺しにしていいわけ・・・』

 

『あいつらは犯罪者だ!死んで当然だ!』

 

『死んでいい命なんて・・・』

 

 

 

密漁船の事で言い合ってる内に、一夏は背後から銀の福音の攻撃を喰らい墜落。その後は見逃してくれるかのようにその場から動かず、箒は去って行った。

 

山田先生が一夏の救助に向かったが、意識不明の重体。

 

一夏が身を挺して守った密漁船は銀の福音によって落とされた。

 

・・・最悪の結果だ。

 

「私は何もできずにただ座ってるだけなのか・・・」

 

私はどうすればいい。打鉄は束が破壊され、乗れるISは無くなった。山田先生は一夏の様子を見に行ったきり戻ってこない。束はどこかへ逃げ隠れた。

 

「どうすればいいんだ・・・」

 

「教官」

 

「ボーデヴィッヒ」

 

背後にボーデヴィッヒがいたとは・・・

 

「私に提案があります」

 

「何だ、言ってみろ」

 

「私の計画は・・・」

 

ボーデヴィッヒが私に提案した計画は単純明快だ。

 

専用機五機を囮にして、紅椿で撃破するという内容だ。ボーデヴィッヒも束の作戦内容に不審に思い、勝手に紅椿の戦歴データを閲覧した所、この計画が思い浮かんだと言う。

 

「私達は束の手のひらで遊ばれているなら、思い切って遊んだ方が得策だと思います。束は神でもなければ、人を超越した存在でもありませんから」

 

今の私に計画を承認する権利など・・・

 

「教官には束の処理を頼みたいのですが」

 

「どういう意味だ?」

 

「目の前の現実を見れない女が世界を動かしてはいけないからです」

 

「・・・私もその一人だとしたらどうする?」

 

「少なくとも、生徒達を導びこうと努力する時点で束と大きな差があります」

 

ボーデヴィッヒ、お前はいつの間に成長したんだ?だが、今は理解者がいることが分かって気持ちが軽くなった。なら、私は今出来る事を精一杯やり遂げるか。

 

「では、この作戦の指揮はお前にすべて委ねる。隊員一人も欠けることなく作戦を遂行し、帰還せよ」

 

「了解しました。ラウラ・ボーデヴィッヒ少佐。任務を遂行します」

 

束・・・今こそ決着をつけるぞ。

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

織斑一夏視点

 

 

 

目を覚ましたら、そこには青空と見渡す限りの水面だった。どこからともなく波の打つ音と少女の歌声が聞こえる。

 

確か・・・俺は箒と言い合ってる内に背中から衝撃が来て、気を失ったんだ。

 

「そうだ!福音は!?」

 

俺は周りを見回したが、福音どころかIS一機も見当たらない。あるのは枯れた木と岩しかない。というより・・・

 

「ここはどこだ?」

 

何で水面の上に立ってるんだ。何で俺は制服姿なんだ?さっきまで流れてた少女の歌は?その少女はどこにいるんだ?俺は白式を展開していたんじゃ・・・

 

 

 

「力を・・・欲しますか?」

 

「え?」

 

 

 

背後から声がし、振り向くと・・・

 

白く輝く鎧を身に纏った騎士さながらの格好をし、巨大な剣を前に出し右手で剣を支えてる姿は・・・

 

「白騎士!?」

 

千冬姉がかつて乗っていた最初のIS『白騎士』がいた。

 

「何で白騎士がここにいるんだ・・・」

 

俺は混乱しながらも、聞いてみたい事を全部聞いてみた。

 

「ここはどこなんだ?」

 

「・・・」

 

「どうして、君がいるんだ?」

 

「・・・」

 

「俺は一体どうなったんだ?」

 

「・・・」

 

白騎士はすべての問いかけに答えてくれない。この様子だと、これ以上に大事な用があると思う。

 

「あなたは・・・力を欲しますか?」

 

今度は白騎士は俺に問いかけてきた。

 

「え?」

 

「あなたは・・・力を欲しますか?」

 

昔の俺だったら迷わず頷いてたけど・・・

 

「力は・・・いらないな」

 

「・・・何故?」

 

俺は白騎士の問いに笑顔で答えた。

 

「俺に必要なのは力じゃないってことかな。昔の俺だったら皆を守るために力を欲していたよ。でも、それを全部否定する人が現れたんだ。その人は押しに弱くて、天然で、ドジな所があって俺を困らせてたよ。でも、その人は力なんて欲さなかった。自分の持てる力でいつも頑張って生きていた。その人は俺なんかと比べても強いと今も思っている。それに、俺はその人のお陰で力より必要なものを得たんだ」

 

「力より必要なもの・・・それは何ですか?」

 

「人を信じる事かな」

 

「人を・・・信じる」

 

「ああ。誰も信じずに手に入れた力がどれほど虚しいのか、俺は嫌というほど知ったよ。その人が俺を信じて今も生きているから、俺はその人の信頼に応えるよう頑張って生きてきた。これからもそうするつもりさ。だから・・・」

 

俺は白騎士に手を差し伸べた。

 

「もう、仮面を外してもいいんだよ」

 

平静を装ってるつもりだけど、あの白騎士は泣いている。昔の千冬姉と同じで心に仮面を付けている。だから、今の俺が出来る事は彼女を自由にさせる事だ。もう仮面を付けて戦う必要はないんだ。

 

「・・・」

 

白騎士は巨大な剣を放し、俺の手を触れた。

 

「温かい・・・」

 

「人の温もりを感じ取れるのは素晴らしいことだって、その人は教えてくれた」

 

「あなたは・・・その人を愛してるのですか?」

 

「ああ、愛してる。その人も俺を愛してる」

 

「その人を守るために・・・あなたはどうするのですか?」

 

「自分の力で守るさ。俺は一人じゃない。家族と友達、恋人、お前が支えてるから大丈夫だよ」

 

「分かりました。私は・・・あなたとあなたを信じる人達を守る力になります。あなたは、自身の信じる道を歩んでください」

 

「分かった」

 

役目を終えたのか、白騎士は自らの手で仮面を外した。

 

「これで私も・・・自由に・・・」

 

仮面を外した白騎士の顔は良く見えなかったが、笑顔で俺を見送ってくれたのは鮮明に覚えている。

 

そして、白騎士は俺にある場所を示した。

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

篠ノ之箒視点

 

 

 

私はラウラの発案した計画通りに銀の福音を退治しに行ったが・・・

 

「私のこの手が光って唸る!」

 

「未来を掴めと輝き叫ぶ!」

 

「喰らえっ!愛とッ!」

 

「正義とッ!」

 

「「幸せのォォッ!」」

 

二人(ラウラと簪)第二移行(セカンドシフト)した銀の福音に止めをさしている。もう、あの二人で十分じゃないか?

 

「・・・ん?ハイパーセンサーに反応が?」

 

周りを見る限り、どうやら紅椿だけが反応している。どれどれ・・・

 

「!?」

 

ISの反応がある!しかも、一夏が寝ている小屋からそんなに離れてない所ではないか!

 

「こうしてはいられない!」

 

私は最大出力でその反応のある所に向かった。

 

「一夏・・・無事でいてくれ!」

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

山田真耶視点

 

 

 

「お前はいっくんを弱くさせた原因。つまりウイルスなんだよ」

 

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

 

「そのウイルスは早く殺さないとね」

 

確か一夏君を救助した後、私は束さんに人気の無い所に連れられて・・・

 

 

 

『いっくんが大怪我した理由はお前だ。お前と言う存在がいっくんを弱くさせる。だから、お前はこの世界から消す』

 

 

 

と、自分勝手な理由で私に襲い掛かって来た。すぐにラファールを展開して、助けを求めようとしたら・・・

 

 

 

『通信ができない!?』

 

『お前に助けは来ない。この世界から消えろ』

 

 

 

束さんはリモコンのボタンを押した。すると、私の周辺を囲むように六体のISが降って来た。

 

 

 

『ゴーレムⅢのデータ収集の犠牲になれ』

 

 

 

私は体に襲い掛かる悪寒を振り切り、『ゴーレムⅢ』六体と戦った・・・

 

 

 

「ぐはっ!」

 

「お前はいっくんを弱くさせた原因。つまりウイルスなんだよ」

 

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

 

「そのウイルスは早く殺さないとね」

 

 

 

絶対防御を無効にする能力に加え、大型ブレードやシールドビットによる連携攻撃に、私はゴーレムⅢ一体を破壊するのがやっとだった。

 

「ゴーレムを一体倒すなんて生意気だな。いっくんに纏わりつく理由が分からないな」

 

「好きだから・・・」

 

「あぁ?」

 

「私は一夏君を・・・」

 

「お前の話は聞きたくない。私の視界から消えろ」

 

私はゴーレムⅢの蹴り飛ばされ、ラファール待機状態になってしまった。

 

「いっくんには箒ちゃんがいれば良い。お前みたいなゴミは早々消えた方が良い」

 

ゴーレムⅢは私の首を強く握りしめた。

 

「くっ・・・」

 

私には抗う力が残っていない。ただ、足をじたばた振る事しかできない。

 

「ばいば~い」

 

束のお別れの声を最後に私の意識は・・・

 

 

 

「真耶ぁぁぁ!」

 

「いっくん!?」

 

 

 

今の声って・・・

 

「真耶から・・・離れろぉ!」

 

私の首を掴んでいたゴーレムは目の前から消えた。そして目の前にいるのは・・・

 

「一夏・・・君?」

 

「ああ。ごめん、遅れて来て」

 

「ううん・・・私は・・・一夏君が・・・生きてて・・・」

 

私は溢れ出る涙を拭い切れず、一夏君に抱き寄せた。

 

「良かった・・・一夏君が生きてて・・・」

 

「何があっても俺は真耶を守る。クリスマスの時、俺はそう言ったよ」

 

「分かってる。でも、私は怖かった。一夏君がいなくなるんじゃないかって」

 

「大丈夫。俺はここにいるから」

 

私は一夏君の意識が戻ったことに・・・

 

 

 

「ちょっと、いっくん!束さんを無視しないで!というより、なんでその姿になってるの?」

 

「え?」

 

「一夏君・・・その姿は・・・」

 

 

 

一夏君が展開しているのは白式ではなかった。

 

「ほう・・・この束さんも予想だにしないことが起こるとは」

 

「あいつが俺の為に・・・」

 

白式より白く輝く装甲にスラスター、一回り大きい左腕、所々フォルムは違うけどその姿は・・・

 

「白騎士?」

 

「ああ。きっと、俺の想いを受け止めてくれたんだと思う」

 

一夏君は笑顔で答えてくれた。

 

「真耶、ここは危険だから安全な所に避難してくれ」

 

「分かった」

 

私は岩場の影に隠れて、一夏君を見守ることにした。

 

「これ以上、みんなを悲しませてたまるかぁーッ!」

 

一夏君は雪片弐型を強く握り、ゴーレム達に突撃しに行った。




今回の話で、一番苦労したのは一夏視点の話です。

どうやって原作との差異をだすか、一夏を懐かしい気分にさせた少女はどう絡ませるか、と言うよりその少女はこの作品には必要なのかと、悩みに悩みました。悩んだ結果・・・

「少女の絡みより、白騎士との対話を重視すべき」

と思い、この様な話になりました。

第二形態・雪羅ではなく白騎士にさせたのも、

『一夏が白騎士の気持ちを理解し、白騎士が一夏の気持ちを理解している』

と言う表れであります。

互いの気持ちを理解してこそ、誰かを守る事ができると作者は考えています。

原作は・・・相互理解できることを祈っています。



次回は白式こと白騎士と、SHINOBIこと千冬の活躍を執筆する予定です。

ご意見、ご感想、お待ちしております。

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