「痛つつつ」
頭に出来たコブを撫でると痛みが走った
「で?」
そんな様子を見ながら由比ヶ浜がぷくーっと頬を膨らませ俺を睨みつつ隣を歩く
「で?ってなんだよ?」
今はもう放課後、川崎もけーちゃんを迎えに行く為に帰り、俺は由比ヶ浜と共に部室へ向かう途中だった
川崎は帰る前に俺に挨拶をしにきて、俺は丁度良いのでその時思っていた事を聞いてみた
「えっとこれってドッキリ・・・」
川崎に睨まれた・・・この反応は違うな、かと言って罰ゲームとかするほど川崎も友達いないしなぁ
「じゃないよな・・・」
グーで頭を殴られた
「痛っ」
「当たり前だろ、ドッキリで・・・あんなこと言うわけないじゃない・・・」
ふんっ、と少しぶっきら棒に言った後川崎の頬が赤くなる
いやね川崎さん頬を染めるのは可愛いんですが人を叩く時はグーじゃなくてせめてパーにしてもらえませんかね・・・
しかも加減無しだろこれ・・・マジで痛い・・・
「それじゃぁ昼言ったように今日はけーちゃん迎えに行かないといけないから・・・また明日」
と言ってぎこちなく小さく手を振って赤くなりながら足早に帰って行った
「なんだよって・・・川崎さんと昼休みに何があったのかって聞いてるの!さっきだって川崎さんと何か話してたみたいだし!」
由比ヶ浜が怒り気味に言い放つ
いや、何でそんな親の敵みたいに睨まれながら言われないといけないんだよ・・・俺何かしたか?
「はぁ?お前 で? しか言わなかったじゃねーか」
「それくらい分かるじゃん!バカヒッキー」
いやそれは無理だろ、何俺はエスパーか何かなの?頭にネジつけてたりするの?
俯いた由比ヶ浜が怒りながら続ける
「川崎さんお昼から帰った後ずっとヒッキーの事見ちゃっててさぁ、でヒッキーが川崎さんの方向くと外を見るんだよ?何かあったかと思うじゃん!」
何お前何処まで川崎さんを凝視しちゃってるの?川崎さんの事好きなの?
部室の前まで来ていたので由比ヶ浜から逃げるようにドアを開け部室に入る
「あ、ヒッキー!」
追いかけるように慌てて由比ヶ浜も部室に入る
部室に入ると既に来ていた雪ノ下が本を閉じてこちらに向かい挨拶をした
「こんにちは、比企谷君、由比ヶ浜さん」
俺はいつもの様に返事を返す
「うっす」
由比ヶ浜も挨拶された事で気持ちを切り替えたのか雪ノ下に明るく挨拶を返す
「やっはろ~ゆきのん」
「何か部屋の前で口論していたみたいだけれど、どうかしたのかしら?」
どうやら由比ヶ浜との口論が部室の中にも聞こえていたようだった
その言葉を聞くと由比ヶ浜が雪ノ下の隣の椅子に座りまた怒り気味の口調に戻っていた
「聞いてよゆきのん!今日ヒッキー川崎さんにお昼に体育館裏に呼び出されたんだよ!」
雪ノ下はピクッと一瞬身体が震えた後微笑んだ
「由比ヶ浜さん何をそんなことで興奮しているのかしら?」
「えー、だって・・・」
「比企谷君が気に入らないから呼び出されて文句を言われるなんていつものことじゃない」
由比ヶ浜が暫し考えて相槌を打つ
「・・・あーそっか」
「いや、まてお前ら俺は誰かに呼び出されて文句言われる愚など犯さない!むしろ存在を認識させないのが俺だ!」
俺が胸を張って言う
雪ノ下はこめかみに指を置き溜息を吐き、由比ヶ浜は呆れた顔で言った
「ヒッキーそれ威張って言うことじゃないし・・・それとヒッキークラスで一人で浮いてて逆に目立ってるからね」
「なん・・・だと・・・」
最近のステルスヒッキーの発動しなさ具合はどうなってんだ・・・
愕然としている俺を他所に由比ヶ浜が言葉を続ける
「あ、でもでもそれだけじゃなくて!お昼から帰って来た後川崎さんヒッキーばっかり見てるんだよ!」
雪ノ下がすぐさま答えを返す
「それは呪いか何かの一種ではなくて?もしくは邪念を送っているとか」
「・・・なんでお前は全て俺が嫌われてる事前提で考察してるんだよ・・・しかも邪念を送られるとか俺は旅団の団長かよ」
雪ノ下が冷酷な目で俺を見つめる
体感温度が5℃くらい下がった気がする・・・
「な・・・なんだよ」
「そう、大体分かったわ」
え?何か俺悟られる事言ったか?雪ノ下ってパクノダなの?身体の一部を触られてないけど・・・近いものはあるか・・・
「まぁ冗談はこれくらいにして」
「ぐっ・・・」
俺を傷つけるだけを目的とした冗談とかやめてくれるかな・・・しかも微笑みながら・・・その時の顔はちょっと可愛いけどさぁ
「由比ヶ浜さん他人のプライベートに無闇に足を踏み入れるのは関心しないわね」
「・・・それは・・・そうだけど・・・」
由比ヶ浜が俯き力の無い声で答える
由比ヶ浜の様子を見かねて雪ノ下が助け舟を出す
「同じ部の部員なのだから多少気になるでしょうけど・・・比企谷君は話す気は無いのかしら?」
あの雪ノ下さん自分で由比ヶ浜に釘を打っておいて自分から助け舟を出すとかそれってなんてマッチポンプ?甘すぎじゃないですかね?
「はぁ・・・いや、そんなこともねーんだが・・・悪い、俺も事態があまりのみこめてねーんだよ、明日話すから一日くれ」
「えーあったことを話すだけじゃん!」
由比ヶ浜が反発する
「そう・・・珍しいわねあなたが事の成り行きを把握していないなんて・・・」
・・・把握はしているんだが、心の整理?とかするのにちょっと話すのに時間が欲しいんだよ・・・
「まぁ話すと言っているのだから明日まで待ちましょう由比ヶ浜さん」
「うー・・・ヒッキーちゃんと明日話してよね!」
由比ヶ浜はまだ納得していないようだったが、雪ノ下に言われて引き下がった
「ああ、ちゃんと明日話すよ・・・」
とりあえず一件落着か・・・
すると雪ノ下がドアの方を向き鋭い声をかけた
「そこで盗み聞きしているあなたもそろそろ出て来たらどうかしら?」
俺と由比ヶ浜が驚いてドアを見るとそろそろとドアが開き最近良く出入りしてる一色が入ってくる
「い、いろはちゃん!?・・・やっはろ~?」
「はぁ・・・何やってんのお前、生徒会長が盗み聞きとかありえないだろ・・・」
「こ、こんにちは~・・・やだなぁ盗み聞きなんて、ちょっと入るタイミングが無かっただけですよ~あ、あははは」
口元にグーの手を持っていって相変わらずあざといポーズをしているが青い顔であざといアピールされても説得力ないな・・・
ふぅ~と雪ノ下がこめかみに手を持っていき溜息を吐く
「そ、それより先輩ちゃんと明日説明してくださいよね!」
話題を逸らしたかったのか一色がさっきまでの話を蒸し返す・・・どっから聞いてたんだこいつ・・・
「・・・いや、お前部員じゃないだろ、お前に説明する義理は無いから」
「えー!」と言って一色が頬をぷくーっと膨らました
はいはいあざといあざとい
そんな一色とのやりとりの後、明日話すことを頭の中で整理していたのだが頭が痛くなり、それだけで放課後が過ぎていったのだった