やはり彼女たちの青春ラブコメはまちがっている。   作:眠り羊

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そして彼の嫌われ方はまちがっている。

俺は1時限目の授業が終わると重い足取りで部室へ向かった

 

 

「聞いてよゆきのん!ヒッキーったら川崎さん見てデレーッとしちゃってるんだよ!?」

「はぁ・・・あなたは本当に川崎さんに嫌われる気があるのかしら・・・」

 

「いやちょっと待てデレーッとは・・・」

・・・してたかもしんない・・・

 

言葉に詰まった俺を由比ヶ浜が非難の目で見る

「ほらー!」

 

雪ノ下がこめかみに指を当て溜息をつく

「川崎さんがどう変わったかは由比ヶ浜さんがメールで教えてくれたのだけれど、どういう事なのか教えて貰えるかしら比企谷君」

 

「どういう事と言われてもなぁ・・・昨日雪ノ下に提案された事を言ったらこうなったとしか・・・」

 

「大体なんでロングのストレートなんだし!お団子髪じゃダメだったの!?」

・・・え?そこも焦点なの?

 

「いやお団子は慣れてないと時間かかるだろ、それで遅刻されても嫌だからロングのストレートが好きだって言ったんだが」

「そ、そっかー・・・それならまぁしょうがないかな・・・」

由比ヶ浜がくしくしとお団子髪を弄る

 

すると雪ノ下が冷たい表情で問い詰める

「へぇ比企谷君それは時間さえ掛からなければお団子髪の方が好きだと言うことかしら?」

怖い・・・怖いから・・・

「いやそーゆーわけでは・・・」

「え!?違うんだ!?じゃーヒッキーはどっちの髪型の方が好きなの!」

ムッとした顔で由比ヶ浜が睨む

 

「・・・お前ら本当に自分の髪型好き過ぎるだろ・・・時間が無いんだから次やる事の打ち合わせをしようぜ・・・」

 

「仕方が無いわね」と雪ノ下が納得し「むー」と由比ヶ浜が膨れる

 

昨日雪ノ下に言われた提案を思い返す

「確か後は不快に思うような行動をとるだったよな・・・」

「えぇ・・・でも今回の川崎さんの様子を鑑みるに少し弱い気がするわ、上手く行かなかった時の事を考えて他にも何か欲しいのだけれど・・・」

何かあるかしら?というように俺の方を見る

 

・・・川崎のウィークポイントか・・・ふと今朝の電話が思い出された

「ブラコン・・・」

「へ?」

由比ヶ浜が素っ頓狂な声を上げた

 

「いや、川崎は極度のブラコンなんだがそれを使えねーかな?」

「極度のシスコンである比企谷君に言われるなんて相当なものね・・・」

と言うと雪ノ下は指を顎に置き少し俯き考える

くっ・・・今俺のシスコンの話いらなかったよね・・・

 

「そうね・・・ありきたりではあるけれど弟さんと比企谷君を天秤に掛けさせるとかはどうかしら?」

 

なるほど、良くある仕事と私どっちが好きなのってやつだな・・・

まぁそれの答えも決まってる気がするんだがその問いかけをした時点で印象は悪くなるだろう

 

「分かった取りあえず不快な行動で良い反応・・・悪い反応が無かったらそれで行こう」

俺は話は決まったと席を立ちクラスに戻ろうとした

 

するとふいに由比ヶ浜が複雑な顔をして俺に問いかけた

「・・・あのさ今更だけどヒッキーは本当にそれで良いの?」

 

「今回は俺が悪いんだからしょうがない・・・それは由比ヶ浜も雪ノ下も言ってた事だろ」

「それはそーなんだけど・・・うん、なんでもないごめん」

由比ヶ浜の言いたい事も分かるし俺も好き好んで嫌われようとしているわけではない・・・が俺自身もこの状況に納得出来ていない

何を思おうとこの状況を一度壊さない限り前に進めないのだ

 

「悪いな二人ともこんな事に巻き込んで」

「ううん、私はやりたくてやってることだから」

「私は・・・奉仕部への依頼なのだから仕方がないわね」

いやそれお前が勝手に作った依頼だからね・・・

 

「おぅサンキュー」

 

そう言うと俺は颯爽と

「待ちなさい比企谷君、これを持っていって頂戴」

呼び止められた、そして鍵を渡される

 

「何だこの鍵?」

「部室の鍵よ、二人きりの方が邪魔されないで色々出来るでしょうからもし巧くいかなかった場合昼休みにでも使うといいわ」

「勿論私と由比ヶ浜さんはあなたを影ながらサポートする為に近くに待機するけれど」

 

サポートの為とか理由をつけてるけどそれ暗に盗み聞きするって言ってるだけだよな・・・

 

「はぁ・・・分かった使わせてもらう」

俺と由比ヶ浜は雪ノ下と別れ教室に戻った

 

 

 

2時限目が終り休み時間になる

 

由比ヶ浜と目が合うとコクンと頷いた・・・行けってことか

 

不快に思うような行動ね・・・まぁ俺が今まで女子に拒否された行動を取れば良いんだよな・・・

・・・・・・考えるまでも無く拒否されたことがスラスラと思い浮かぶんだが・・・

むしろ俺の全ての行動が拒絶されるまである・・・

 

くっ・・・よし気を取り直して・・・

「さ、沙希って可愛いよな」

 

「あ、ありがと」

沙希が少し恥ずかしそうにお礼を言った

 

あれ?いつもなら引かれて怯えられるんだが・・・

 

つ、次だ・・・今度は思い切って

「ちょっと手を出してくれるか?」

「え?うん」

沙希が手を机の上に出すとおもむろにそれを握った

 

・・・フォークダンスの時とかよく避けられてたなぁ・・・

 

沙希の手は細くて柔らかくてずっと握っていたいような感触だった

 

「えっと・・・八幡?」

見ると沙希は真っ赤になっていた

 

「さ、サンキュー」

ちょっとこの教室暖房効かせ過ぎだろ顔が熱い

「ううん、ちょっと恥ずかしかったけど別に良いよ・・・ところでなんだったの?」

 

「あ、いやちょっとな・・・ははは」

と飛び切りの笑顔を作ってみせた

 

「いや、その笑顔はやめた方が良いよ八幡、ふふふ」

ぐっ・・・図らずも最後の笑顔は嫌がられたみたいだが効果は抜群だ!とはいかなかったようだ

 

由比ヶ浜をチラリと見ると廊下の方を指さしていた

廊下に出ろってことか?

 

「ごめん沙希ちょっとトイレ」

 

「うん、いってらっしゃい」

そう言うと沙希は微笑んで俺を見送った

 

教室を出て廊下を曲がると由比ヶ浜が待ち伏せていた

 

「・・・ちょっとヒッキー何やってんの?」

由比ヶ浜がじーっと睨みつけてくる・・・ご立腹のご様子ですね・・・

 

「いや何って不快に思うような行動ってことで今まで嫌がられた事を試してみたんだが・・・」

 

由比ヶ浜が呆れた顔になる

 

「はぁ、ヒッキー今の全部逆効果だから・・・・・・私だってやられたら・・・嬉しいし・・・」

由比ヶ浜が不意に頬を染める

 

「はぁ?そんなことねーだろ、現に今まで拒否されてきたことなんだから」

 

「だからそれは・・・・・・まぁいいや次いこ」

 

「次っていうと弟と俺を比べさせるってやつか?」

「そうそう、川崎さんって弟さんとか妹さん大好きなんでしょ?だったら比べさせるなんてサイテーって思うかも!」

 

「そうだな俺も小町と仕事どっちが大事かと問われたら、比べるまでも無く仕事なんてするわけないだろと怒るからな」

「いやそれ意味わかんないし・・・それに比べるなら小町ちゃんと川崎さんでしょ?・・・・・・で、ヒッキーはどっちが好きなの?・・・」

「そんなのは決まっている」

悪ふざけで聞いたであろう質問のはずなのだが由比ヶ浜が思いの他真剣な目で答えを待っていた

 

「・・・俺を養ってくれる方だ、そして俺は専業主夫になる!」

 

真剣だった由比ヶ浜の眼差しがジト目に変わる

「サイテーだ・・・」

 

「・・・・・・」

 

次の授業の予鈴が鳴った

「次の休み時間はこの次が体育だから使えないな、となると昼休みか・・・じゃぁ昼休みに部室でだな」

 

俺が由比ヶ浜に話しかけると由比ヶ浜はまだジト目で俺を睨んでいた


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