私がボッチなのはどう考えても『神(アイツ)』が悪い! 作:ふぬぬ(匿名)
最終話
赤く焼けた空。
紅く溶けた大地。
そこは戦場だった場所。
屍が山を築き、血が河となって流れる荒野。
大地には無数の勇者が横たわっている。
その屍を犯すように降り注ぐ影は、蛇の尾を持っていた。
空を灼く猛毒の名は、
六対十二枚の黒い翼と長く伸びた黒髪は血塗れて輝き、下半身の蛇体には打ち砕いた肉片が張り付いている。
無限を喰らった悪意の化身。
この世界に彼女を殺せるものなどいるのだろうか?
その答えは、この風景が示している。
百の、千の、万の勇者たちが彼女に挑んだ。
その暴威に、猛毒に、悪意に、呪いによって打ち倒された。
紅い龍は引き裂かれ、その主と仲間達は潰され、焼かれ、切り刻まれた。
蛇が人の子の学び舎にいたとき、会長と呼んでいた者とその眷属達も皆、皆、皆、死に絶えている。
『楽しかったね、ヴァーリ君。君と
その言葉に答えはない。
彼女の腕に抱かれた白い戦士。――彼はもう死んでいるのだから。
死せる戦士の頬を優しく、優しく、大切に、大切に、愛おしそうに撫でた後、蛇は戦士に口付けを落とす。
『フフッ、次はちゃんと起きている間にしてあげたいな』
この世界にたったひとり、たったひとりの蛇は死せる戦士と踊り狂う。
くるくるくるくるくるくるくる、燃える空の上でとても楽しげに、飛び回る。
誰もいない、誰もいなくなったセカイ。
ひとりぼっちだけど、だれもかれもが彼女のために戦ってくれたセカイ。
『楽しいなぁ……。たのしいなぁ。ここに来て、本当に良かった。ロセには感謝しないといけないな』
蛇を変えたのはひとりの戦乙女。
蛇を解き放ったのは隻眼の神。
北欧の者達の思惑が、この世界を生み出した。
悪意以外に動くものの無い世界を生み出した。
『人気者ですね、サマエルさん。気に入ってもらえたみたいで、私も紹介した甲斐があります』
『うん、ありがとう、ロセ。おかげで毎日が楽しくて仕方ない』
どこからか飛んできた戦乙女と蛇が微笑み会う。
そして戦乙女――ロスヴァイセはその手に持った
『みなさーーーん! 夕飯の時間です。おきてくださーーーーい!!』
▼就職したし、逆ハーレム
教科書わすれても借りる相手がいるって素晴らしいな。
会長は3年生だったのですぐ卒業してしまったんだが、迂闊にもその卒業式では泣いてしまった。
そうして私も最高学年となったわけなんだが、生徒会とか勘弁して下さい。生徒会長は三魔女のひとりだったし、恐ろしくて恐ろしくて必死で断ったよ!
三年生の間は特別に事件も起こらなかったし、平和なものだったんだが……。
ああ、ちょっとした騒動はいくつかあったな。
例えば――。
――『アザゼル、ち●んちん見せろ』
――『はぁぁぁぁ!? 』
――『ヴァーリ君との本番で焦らないように勉強が必要なんだ』
――『エロ画像でも見てろ!』
――『なんだよその態度は! アザゼルのくせに! 私にあんなことしたくせに! よってたかって、縛って、目隠しして、ぶっといので何箇所も何箇所も刺しやがったくせに!!』
――『ちょっ! おまっ! バカか!』
――『事実だろうが!』
その後にロセが絡んできて結構揉めたっけなぁ……。
――『アザゼル先生! 今の話は本当のことですか?』
――『いや、本当っていやー本当なんだが……』
――『本当のことなんですね! このケダモノ! 変態! △□××〇……!!!』
うん、アザゼルのヤツが困る姿はいつ見てもいいものだ。
それで、結局は大学へは進まずにロセの紹介で北欧のオーディンのところに就職したんだが。
この職場が素晴らしいんだ!
もうね、もうね、すんごいんだよ!
朝から、夕方までギラギラとした目の
毎日が酒池肉林ってやつだね。
すごいここ。ほんとすごい。
高三の時にヴァーリ君が龍だって知ったときはさ、手を繋ぐことも出来ないのかと悩んだものだったけど。ここでなら死んでも夕飯時には生き返るしね!
真昼間から衆人環視状態の中で
現世だったら迂闊にそんなこと出来ないけど、このヴァルハラなら安心だしね!
紅毛女とか兵藤とかもたまに修行とか言ってやってくる。
会長……今は校長は学校の生徒を連れて合宿にくる。
なんでもここは世間で流行っているゲームの練習にもってこいらしい。“サマエル道場”とか呼ばれてるらしいが、なんなんだ一体。
北欧以外の者が来るときは結構な金額を請求してるんで大儲けだって、オーディンは喜んでいたなぁ……。
チーム・エインヘリアルもトップランカーになってるって言ってたし。
あとオーディンが私の本体をコキュートスから引き取ってくるときに、ハーデスのジジイが寂しそうだったらしいって聞いた。なので今は、ガイコツジジイと文通をしたりしている。
あのガイコツも兄弟神からハブられて、「お前は地下に住んでる冥府の神だから、オリンポス十二神にいれてやらね」とかいじめられたことがあるそうだし。
冥王星もハブられたし……。
動けなかったころはジジイの愚痴でも暇つぶしにはなったしなぁ、ちょっとくらい優しくしてやろうと思うんだ。
まぁ、うん。こんなところかな。
天国にはいないだろうリリー。
私は楽しくやっています。
もしどこかで生まれ変わる機会でもあったなら、リリーも楽しくやってください。
〇三大勢力及び各地の神話体系間による協議の結果、サマエルの収容先が変更されました。
サマエル:毎日毎日、勇者(イケメン)たちと戯れるご機嫌な日々を過ごしている。
ヴァーリ:毎日毎日、サマエルに挑戦してはやられる日々を過ごしている。
ロスヴァイセ:念願の勇者(イケメン)たちのお世話係りに転属出来た。それもこれもサマエルをスカウトしてきた功績のおかげ。最近は北欧出身の英雄の子孫でもある白髪の凄腕剣士と付き合っているとかいないとか。
オーディン:棚から牡丹餅的に戦力と資金源を手に入れた。
ハーデス:サマエル相手に愚痴ってるうちにちょっと情が湧いた冥府の神様。こっそり釘を一本抜いてあげたらしい。おかげさまで意識体が転生出来た。
校長:学校でたまに募集されるヴァルハラ合宿は恐怖と羨望の的。心折れる者と、劇的に強くなる者を生み出すとかどうとか。
その他:サマエルの興味の対象外。
これにて終了。
坂道にするための適当なサブタイトルでした。
ではまた、どこかで。