私がボッチなのはどう考えても『神(アイツ)』が悪い!   作:ふぬぬ(匿名)

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Dと出会ったDの如き運命の第八話

『この町は三大勢力が合同で張り巡らせた強力な結界に覆われています。それを無効化し誰に察知されることもなく禍の団(カオス・ブリゲード)やはぐれ魔法使いたちを侵入させることのできる可能性。それは私たちの中に裏切り者がいるか――』

『――サマエルか』

『そう、彼女ならば可能でしょう。"楽園の蛇"は聖書における最大級のビッグネームです。"神"に次ぐ存在と言っても過言ではありません』

『神さまの次……ですか?』

『聖剣事件のときのコカビエルは、偽典にわずかに記されているにすぎない存在です。ですがサマエルは最初の書である"創世記"、それも序盤に大きく記された存在なのです』

『えっと、会長……それってスゴイんですよね?』

『イッセーくんにわかりやすく言うと、ドラグ・ソボール本編のラスボスがサマエルなら、コカビエルは劇場版の部下Cってところね!』

『うげっ、マジかよ』

『今のサマエル、我より強い』

『そうですね。イリナさんの言い方にあわせるのならば、ラスボスが裏ボスの力の半分を吸収している状態――それが今の彼女です』

 

 敵ははぐれ魔法使いに、謎の復活を遂げた邪龍たち。

 

 三大勢力への復讐を告げながらもグレンデルを一蹴して去った"神に敵対する者(サマエル)"の真意はなにか?

 行方の知れない北欧からの使者、彼女はどこに行ったのか?

 

『わからないことは多くとも、今やるべきことはひとつです。「さらわれた一年生達を助け出す」ただそれだけのこと』

 

 怒りを宿した瞳をレンズで隠し、ソーナ・シトリーは言葉を続ける。

 

『そのためならば、私はどんな手段でも使いましょう』

 

 ソーナは手には、校庭で回収した"勝利のカギ"があった。

 

 

 

 ▼女子高校生のD×D(終)

 

 

 シヴァ犬があらわれた!

 

 シヴァ犬のうなる。

 

 私はビビッて居る。

 

 いや、なんで犬がいるわけ? 飼い主、かいぬーし!

 ちゃんと繋いでおけよ。

 どうするんだよコイツ。

 保健所でも警察でもいいからどうにかしろよ!

 ヤバイぞこれは……うかつに動いたらヤラレル。

 背中を見せたら、すかさずマルカジリしてくるに違いない。

 

 強敵。

 圧倒的な強敵と遭遇してしまった。

 にらみ合いながらジリジリと回り込み合う私たち。

 コイツ……出来る。

 この状況、視殺戦とでも言うべきだろうか。互いの隙を突こうと張り詰めた空気があたりに充満する。

 精神力がジリジリと削られてゆく。向こうも同じだろうか? それとも余裕なのだろうか? わからない、わからないのだが、今の私に出来ることはただにらみ合うことしかないのだ。

 実際のところ、即座に襲い掛かられたのならば勝ち目等ない。

 

 人の身体は戦うように出来ていない。

 毛皮のかわりに鎧を着て。

 爪牙のかわりに槍を持ち。

 四足のかわりに馬に乗る。

 それでようやく獣と互角。

 

 それなのに今の私ときたら、剣どころか大事なモノさえはいていない始末。

 これでやられてしまったとしたら。

 

 ――女子高校生、犬に襲われる。原因ははいていなかったから。

 

 どうする? どうするよ、私。

 新聞に載ることは流石にないだろうが、病院送りとかで発覚した日には恥ずかしくて死ねるぞ。

 くそッ!

 えええぇい! くるなら来い! この犬畜生がァ!

 噛んでみろ、噛み付いてみろよ! ガブリとなぁ!

 折ってやる、折ってやるぞ。その瞬間、攻撃を決めたその無防備な瞬間に、貴様の首の骨をへし折ってやる!! それでも良いっていうのなら、来てみろよ犬っころがぁ!

 

「来るならさっさと来い! ぶち殺すぞ!」

 

 私の挑発。

 

 負け犬はにげだした!

 

 キャインキャインと鳴き声上げ走り去る犬。

 ふふっ、勝った、勝ったぞ。

 まぁ、当然の結果だがな。いやー参ったな、ほんと私の気合は凄まじいな、シヴァ犬でさえ逃げ出すとはな。

 

「申し訳ありません。つい、隠れて近寄るような真似をしてしまいました」

 

 お?

 私が自分自身のあまりの力に恐れおののいていると、後ろから声をかけられた。

 

「あっ……か、かいちょ」

 

 悪魔会長があらわれた!

 どういうことなの? 犬の次は悪魔とか……連戦? 連戦だったの? ボス連戦とか聞いてないですよ?

 

「あなたにお願いがあって探していました」

 

 お願い?

 お金は貸すほどモッテナイデスヨ?

 

「どうか私たちを助けてください。アジ・ダハーカ、ラードゥン、そして彼らの言葉を信じるならばクロウ・クルワッハ――いずれも伝説に残る強大な邪龍たちです。とても私たちだけでは勝ち目がありません。かといって冥界からの増援を待っている時間もないのです。ですから、どうか……どうか私たちを助けてください」

 

――お願いします。

 

 そう続けると生徒会長は深く頭を下げた。

 頼られた……だと。

 

 助けて下さい。お願いします。どうか、どうか、どうか……。

 

 生徒会長の声が頭の中を駆け巡る。

 自慢じゃないがひとに頼られない人生を送ってきました。

 なんだ、どういうことだぁ? 

 

「あ、ああの……あたまを……」

 

 生徒会長の頭は下げられたまま。

 率直に言おう。スゲー気分いいわコレ。

 上級生で、生徒会長で、人気もあって、頭よさそうなメガネのひとに頼られるとか……。

 

「お願い、しますッ」

 

 いかん、なんという精神攻撃。

 ついついフラフラと助けてあげたくなってしまうが、今は、今はダメなんだ!

 

「ぎょっ、ご、ごめんなさい。さっ、さがさないと……なん、で」

 

 あああ、バカバカバカ、ロセのバカ。

 生徒会長に頼られちゃう私ってスゲーーー! って感じでデビューするチャンスだったのに!

 おまえのせいで手に入れ損ねるじゃないか。まったくどうしてくれるんだよ。

 

「そう、ですか……」

 

 うぐぐ、なんかこう罪悪感というかそんなものが湧き上がってくる声だな。

 

「い、いま、今はむり、だけ、ど。ま、また、よぉ……よんでくれたら……うへへ」

 

 バッっと上げられた頭。

 なんか、スゲーうれしそうな顔になったな生徒会長。

 

「はい! そのときにはどうか、よろしくお願いします」

 

 もう一度、地面につくんじゃないかってくらい頭をさげる生徒会長。

 

「慌しくて申し訳ありませんが、学校でのことで急いでいるものですから――では、失礼します」

 

 生徒会長そう言ってからしばらく走り、私から距離を取ると翼を広げて飛び立っていった。

 どうにも急いでいるらしいのに、上を取らないよう気を使うとか……えらく礼儀正しいな。

 

「最近の悪魔の教育はどうなってるんだ……」

 

 

 生徒会長と別れ、シスコンが飛び去った方向へとひたすら歩く。

 走ると吐いちゃうかもしれないしな。

 しかし、これはどうにもこうにも……。ごめんロセ、これは見つけられないかもしれない。

 手がかりとかないしなぁ。どうしたらいいんだろう。

 そんな風にトボトボと歩き、あてもなくさまようこと数時間。

 私の頭に声が聞こえてきた。

 

「幻聴かよ」

 

 これはダメかもしれない。私、お疲れです。

 

――『我が呼び声に応えたまえ、敵対者(サタン)と呼ばれし者よ。憤怒を司る者よ。ここにあなたの(ゆかり)の品を捧げる。どうか我が願い、我が呼び声に応えたまえ。お()でください! 「楽園の蛇」! サマエル様!』

 

 生徒会長の声かな?

 そんな言葉が聞こえたかと思ったら、私の足元に黒い魔方陣が出現した。

 毒々しい黒い光を放つその魔方陣は――。

 

「私の龍門(ドラゴン・ゲート)!?」

 

 召喚のための捧げ物として私に提示されたイメージは……アレかよッ!

 行くしかないじゃないかよコレ。

 学校で無くして、何処いったのかとビクビクしてたんだよ。

 生徒会長が持っていたとは……くそ、恥ずかしい。そりゃ、名前書いてあるもんな、わかるよなぁ。

 ああ、なんてことだ。落し物として届けられたのか? どっかで晒されていたのを回収されたのか? ああー! もうダメだぁ。

 転校するしかない!

 

――『んっ、こほん。大丈夫です。他のひとたちは知りませんから。私も秘密を守ることを約束します』

 

 脅迫かよ!

 最近の悪魔の教育はバッチリだな! 未来も安泰だよ、リリー!

 もうこれは、応じるしかないじゃないか。

 

 ああ、しかし、龍門(ドラゴン・ゲート)を潜るなんていつ以来だろうか……。

 

 

 ★ 

 

 

『やはり、頼るしかないようですね』

 

 状況は劣勢というのもおこがましいほどに悪く、同時に笑ってしまうほどに良い。

 魔法使い達は片付けた、さらわれた一年生達も戻ってきた。

 だが正直なところ魔法使い達などいてもいなくても変わらなかっただろう。全ての魔法使い達を足したものよりも凶悪な力を誇る敵が四体も目の前にいるのだから。

 敵は強大無比。

 

 千の魔法を操り、ゾロアスターの善神の軍勢と激しく争ったと伝わる"魔源の禁龍(ディアボリズム・サウザンド・ドラゴン)"アジ・ダハーカ。

 ()()()赤龍帝の一撃でさえ受け止めて見せる障壁と結界の使い手"宝樹の護封龍(インソムニアック・ドラゴン)"ラードゥン。

 現ルシファーの女王の弟であり、偽りの赤龍帝でもある悪魔ユーグリット・ルキフグス。

 そして、神話の時代から修行をし続け、今や全盛期の己に届いたかもしれないとドライグに言わせる存在"三日月の暗黒龍(クレッセント・サークル・ドラゴン)"クロウ・クルワッハ。

 

 勝ち目がないことなど最初からわかっていたのだ。敵は魔王の眷属が集まっても危険だと感じられる戦力なのだから。

 そう、ソーナ達だけでは――。

 結果的にだが、強敵と呼べる相手が全て"龍に連なる存在"だったことは幸運だったのだろう。

 

――『い、いま、今はむり、だけ、ど。ま、また、よぉ……よんでくれたら……うへへ』

 

 三大勢力への恨みは尽きていないはず、なのに召喚の許可をくれた。

 彼女も駒王学園の生徒なのだ、きっとあの惨状を許せなかったのだろう。

 協力を取り付けるためなら多少汚い(文字通りに)手も覚悟していたが、彼女はこころよく承諾してくれた。サマエルにも愛校心があったのかと思うと、こんな時でもあるにも関わらずソーナの口には笑みが浮かんでしまう。

 

『我が呼び声に応えたまえ、敵対者(サタン)と呼ばれし者よ。憤怒を司る者よ。ここにあなたの(ゆかり)の品を捧げる。どうか我が願い、我が呼び声に応えたまえ。お()でください!「楽園の蛇」! サマエル様!』

 

 戦乙女ロスヴァイセ。

 他者を寄せ付けない孤高の堕天使が唯一気を許した存在。

 拘束された北欧の使者を見つけたとき、ソーナ・シトリーは勝利を確信した。

 憤怒を司る神の敵(サタン)を怒らせて、ただで済む者などいない。ましてそれが龍であるならば……。

 

『ユーグリット・ルキフグス。あなたは――選択を間違えた』

 

 (ドラゴン)だけは確実に殺せる者。

 無限を喰らった"龍喰者(ドラゴン・イーター)"。

 

 ソーナの手には厳重に包まれた"勝利のカギ"。

 今、そのカギが悪意の門(ドラゴン・ゲート)を開いた。

 

 

 〇教育者(志望)の慧眼?

 

 

 

 

 ▼女子高校生のD×D(余)

 

 

 龍門(トンネル)を潜ったら、そこは白い空間でした。

 広い、ひたすら広い真っ白い空間にいたのは、悪魔にドラゴンに天使? に黒と金色が混ざった髪のおっさん。

 それから――ロスヴァイセ。

 ジャージ女が十字架に括り付けられ、その顔は仮面で隠されている。

 あ゛!?

 気に入らない、気に入らないな、それは。

 シスコン悪魔の性癖なんか知りたくもないが、あれは気に食わない。

 

「これをお返ししますね、それから状況を説明します」

 

 私を呼び出した生徒会長が声をかけてきた。

 差し出されたのは"私に縁の深い物体"。中身がわからないように厳重に包装したそうだ。

 あー、うん、気が利く、ね。

 ブツを受け取って頷くと、会長は話を続けた。

 

「簡単に言うと、向こうの四名は龍です。そして私たちの敵であり、ロスヴァイセ先生をさらってあのような状態にした犯人です。倒していただけませんか?」

 

 樹みたいな(ヤツ)と、首が三つの(ヤツ)はわかる。

 兵藤と似たようなコスプレをしたシスコンは龍なのか? 悪魔の翼が生えてるけど……。

 

「サマエル? あの堕天使は冥府に封印されているはずです」

 

 その通りだシスコン、本体は冥府でハリツケ続行中。ただし、意識はここにいるけどな。

 

「ああ、たしかにヤツはサマエルだ。この俺が……暗黒龍と称されたこの俺が、恐怖と共に逃走を選ばされた相手だ。かすかに洩れ出るこの毒気、この悪意。間違いない」

 

 暗黒龍というと、クロなんとかだったよな。

 わかりにくいんだよ! 龍なら龍っぽいかっこうしてくれよ!

 

 とりあえず、いいや。

 どいつも龍だって言うのなら。なんてことはない。

 

 見せてやるよ! 最強最古の堕天使の力。お前らなんかが私を敵に回したら……後悔する暇も無いんだけどな!

 

 相手が強いのなら、気に食わなくたって従わなきゃいけないこともある。

 でも、こんな呪いでくたばるような(ザコ)共相手なら、いくらだって強気に出られるからな。

 まったく、"呪われてるのは私"だっていうのにさ。そこからこぼれて出て行く"オマケ"程度でバタバタ死にやがって。

 そのクセにひとの友達にそんな真似しやがって。

 拘束プレイはお互いの同意の下で行ないましょう。常識だぞ、常識!

 おかしいだろうが!

 呪われてるのは私なんだぞ、私。このサマエル様なんだよ!

 聖書の神(アイツ)に――しねしねしねしねしねしねしねしいいいねぇぇええって全力で悪意満載、毒満点の言葉を頂いてよぉ。

 わざわざ、龍で蛇なところのある私専用に調整した、即行即死確定の龍殺しの呪いをプレゼントされた訳だ。

 それが聖書の神(あのばか)と来たら実はよわっちかったのか知らないけど、おなかが痛くなる程度で済んでしまった、私です。

 私程度のヤツが腹痛で済む呪いだぞ? 

 そのまた副次効果くらいでバタバタバタバタ逝きやがって!

 

 

「どう考えても龍ども(オマエラ)は弱すぎる!!」

 

 ……。

 …………。

 

 なんだ、やっぱり弱いなオマエラ。

 もう、死んでるじゃないか。

 ロセ。おーいロセ、帰るぞ。

 くっ、この! 拘束が取れない!

 

「手伝いましょう」

 

 お、気が利くな会長は、流石だな。

 

「あの、贅沢なことを言うようですが――少し抑えていただけるとありがたかったのですが……」

 

 そう言いながら他のヤツラがいる方を見る会長。

 その視線の先では兵藤ともうひとりの男子が寝てやがった。

 お前らマジメにやれよ! ほんとに男子ってヤツはダメだな!

 

 会長の手を借りて、というかほとんど会長がやったんだが、ようやく解放されたロセ。

 

「きっと、助けてくれると信じていました。やっぱり、あなたが私の勇者だったんですね……」

 

 ロセ……。

 

 そのセリフひそかに考えていたのかもしれないがな――顔にお面の跡がすごい着いてるから、な。

 

 台無しだぞ。

 

「姉さんの仮面を着けようとか言ってたんですよ。あの変態! 身体だけが目当てとかもどうかと思いますけど。髪だけが欲しいとか……」

 

 あー、うん。

 イヤな事件だったね……。

 

 

 

 

 〇結論:どう考えてもサマエルは超越者。




ソーナのサマエル召喚が発動! 効果:龍は死ぬ。

ダークなドレアムさんとデスタなムーアさん的な

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