私がボッチなのはどう考えても『神(アイツ)』が悪い!   作:ふぬぬ(匿名)

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友の息子が二―トだった第六話

 〇マザコンが主で、従者がシスコンで

 

『あー、なんかおもしれーことねーかなー。暇すぎる』

『リゼヴィムさま。幽世の聖杯(セフィロト・グラール)の所在がわかりました』

『あー? 聖杯?』

『はい、既に吸血鬼の国で邪龍を蘇生する実験に成功しています』

『んー、パス。聖杯なんか昔からあったしなぁ、なんか新しいことないかねー』

『そうですか』

『……なぁ、ユーグリット。うちのママンの言葉、覚えてるか? 悪魔なら~ってやつ』

『"汝の為したいように為すがよい"でしたね』

『いや、あー、意味は同じか。まぁそーいうことだ。なんかやりたいならよ、好きにやればいいんじゃね? お前の姉上様も好き勝手やってるしよ』

『そう、ですね……ありがとうございます』

 

 

 

 ▼ぼっちじゃないし、兵藤は趣味じゃない

 

 

 Q

 

 相談なんですが、

 亡くなった親友の息子さん

 親の遺産でニート生活なんです。

 どんな風に接したら良いでしょうか?

 また、

 どうすればやる気を取り戻してくれるでしょうか?

 みなさんの意見を教えて下さい。

 

 

 ベストアンサーに選ばれた回答

 

 一緒に冒険の旅にでも出かけてみてはどうでしょうか?

 未知の世界、未知の生物。

 きっと、その息子さんも失った情熱を取り戻してくれるはずです。

 

 

 

 アホか!

 なんでこんなのがベストアンサーなんだよ!

 冒険? 未知の世界? 未知の生物?

 どこへ? どこ? なに?

 バカなの? アホなの? 死ぬの?

 

 ってまー、人間だしな、こいつら。

 冥界でも天界でも、妖精の国でも好きなところを目指して旅立てばいいんじゃね?

 たいがい途中で死ぬだろうけどな。

 あ、死ねば行けるか。

 けっこう簡単にいけるな。

 あれ? さっきの回答って……。

 はは、まさか心中とかそういう……。

 

 ふぅ、深読みしすぎてしまったぜ。

 まったく、授業をさぼって見るネットは3倍くらい面白い気がするな。

 慣れ親しんだ保健室ベッドも心地よいし。

 最近体調が良い日があるせいで、悪い日が倍辛い気がする。

 なんなんだろうな、これ。

 酒じゃなかったし。

 このまま、"輝ける私"状態がいつもになったらいいのになぁ。

 

「そうしたら……ふへヘ」

 

 ヴァーリ君との輝ける未来が待っているな。

 

「あっ、やっぱここにいたのか」

 

 うお!? この声は……。兵藤一誠!

 

「なぁ、聞きたいんだけどさ。おまえって――」

 

 ひぃぃぃぃい!

 保健室! 他に人が居ない!

 迫ってくるエロ兵藤!

 

 犯される!!?

 

 そりゃ近頃の私ときたら、自分でもちょっと美人? 私、かわいい? ってくらい輝いてる日があったけどさ。

 まさかコイツに目をつけられるなんて!

 ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ!

 めめめ、目を見たらダメだ。

 催眠術にかけられてしまう。

 あああ、どうしよう。催眠術を防いでも、腕力で来られたらかなわない。

 最近のコイツはなんか鍛えてるっぽいし、そうでなくても私が勝てるのは小学生くらいだ。

 にげ、にげげ、逃げないと!

 

「そいつに触れるな!」

 

 おおお? 

 

「そいつに手を出すなと言ったはずだぞ、一誠」

「ヴァーリ……でもよ」

 

 兵藤をにらみ付けるのは、ヴァーリ君。

 

「お前とは話し合う必要があるようだな。一緒に来てもらおうか」

「ああ、わかったよ」

 

 おおおお!?

 ヴァーリ君が助けてくれた!

 しかもこれは……。

 これはまさか……。

 あの伝説の……。

 

 私をめぐって争わないで!

 

 ひゃっほーーー!

 いま長年の夢がひとつ叶った!

 片方が兵藤なのがちょっと残念だが、もうひとりはヴァーリ君だし!

 これは見に行かないと、追いかけないと。

 どっちを選ぶんだよ!? って聞かれてもヴァーリ君で即答ですけど!

 って。

 あれ? 立てない。立てない。

 喜びのあまり腰が抜けた!

 やだ、見たい。

 やめてー、って間に割って入りたい。

 なぜだ自分、なぜ動かんのだ。

 こんなときに、こんなときにー!

 

 

 

 昨夜、兵藤家にて――

 

『なぁ、オーフィス。最強の龍神さまが寝込むなんて、いったいどうしたんだ?』

『町でサマエルに会った。強力なブレスだった』

『なっ!?』

 

 

 〇サマエルブレス(吐しゃ物)は臭いだけでも竜殺し。

 

 

 

 ▼ぼっちじゃないし、病気じゃない

 

 

 そうだ、病院へ行こう。

 いままでは具合が悪くても、呪いのせいだろうと病院へ行ったこともなった。

 しかし、どうにも調子が良い日がやってくるとなるとなにか病気かもしれない。

 保健室の教師からも勧められてしまったしな。

 体調が良いから病院へ行く。

 変な話だが、おかしいのだから仕方ない。

 

 

『うん、特別問題ないね。精神的なものかもしれないね』

 

 この医者なんでもかんでも精神的なもので片付けてるんじゃないだろうな。

 それともあれか、精神的な何かで呪いがどうにかなっったとかそういうことか?

 

 精神的……精神……心!

 ああ、なるほどな!

 心の問題か。

 ぼっちじゃなくなったからか。

 むしろリア充だし!伝説のイベントも巻き起こしたし。

 そうか、そうか。そういうことか!

 いやー、これはいいな。

 王子様が現れて呪いがとける。

 なんという王道。

 素晴らしいな。

 そうなると、完全に呪いをとくためにするべきことは一つしかないな。

 

「は、恥ずかしいな……」

 

 うわ、熱い。これは熱い。

 あああ、そういうことなんですね。

 というか聖書の神(アイツ)がこういう条件を設定してたとか?

 ヤバイ、ちょっと見直した。

 ロマン溢れるな。

 

「やっぱ、あれだよな。き、キスだよな……?」

 

 うひゃー!

 

 

 

 

 〇グリゴリの技術力は

 

『おい、サハリエル。アイツを病院に誘導しといたけどよ。ちゃんとデータ取れたのか?』

『無論抜かりなし。見るといいこの数値を! 実に興味深い結果であるな』

『こりゃまた激しいな』

『無限と極大のマイナス、このような生命力の数値を見るのは初めてであるな』

『はぁー。こりゃやっぱ確定かよ……。ほんとにやっかいだなアイツは』

 

 

 

 

 ▼ビッチは遠慮せい!

 

 

 ロスヴァイセ。

 私の部屋に入り浸りの寂しい独身教師である。

 

 

 学校どころか家でもなんでもなんだが……。

 最近コイツとしか話していない気がするんだが、どうなんだろう。

 先生しか話す相手がいないとか……あれ? ……私って……。

 この先を考えるのはやめよう。

 

 うん。

 

 ヴァーリ君にはなかなか話しかけられないしな。

 あー、とか。うー、とか。

 そんな声しか出てこないし……。

 このままではキ、キスなぞ夢のまた夢!

 

「どうしたらいいと思うよ?」

「なにがですか?」

 

 コイツは私がせっかく計画を立ててやったというのに、未だに彼氏が出来ないとか言いやがる。

 お前がそんなだから相談できないんだよ!

 まだヴァーリ君狙ってるのか?

 ほんと見た目"だけ"はいいからなコイツは……。

 はやくなんとかしないと。

 

「なんでもないぞ。 おまえに相談することとかねーし!」

「え、はい。えーと、こっちは報告があります」

 

 お? きたのか? やったのか? ヴァーリ君以外なら祝福してやってもいいぞ。

 この神の悪意(サマエル)様がな! 

 悪意の祝福とか……自分で考えてなんだが、早々に破局しそうだな……。

 

「なんと! 二年生の木場祐斗君が、三年生のリアス・グレモリーさんと海外旅行に出かけてるんですよ! さらに同日にアザゼル先生とヴァーリ君まで旅行に出かけてるって! しかも、しかも行き先が同じ……らしいです」

 

 な、なんだそれ……。

 リアス・グレモリーってあれだろ? あの紅毛女だろ? 兵藤と付き合ってるんじゃなかったのか?

 どういうことなの? なんで? え? なんで!?

 女がひとりに男が三人。

 逆ハーレムだと!?

 それで旅行だと……。

 しょせん兵藤はお遊びで、おじさま(アザゼル)に金髪、銀髪引き連れて海外でキャッキャッウフフとしてるわけ?

 おかしいだろ!

 この前、男のハーレムはいいって言ったけどな。女はダメだ!

 そんなことしたらダメだって、なんでわからないかな!

 くそビッチめ! くそくそくそ!

 

 逆ハーレムが許されるのは私ぐらいのものですよ!

 

 アザゼルはいい。

 あいつがどこでどんなメスブタと盛っていようと知ったことか! 

 ヴァーリ君の保護者やっていなければ、今頃お前はもう死んでいたんだがな。

 

 木場君はダメだろ……。

 ヴァーリ君と出会う前、廊下やらですれ違うたびに妄想に浸った相手だぞ。

 なんどオカズに……。ん、んんっん。

 前から兵藤と怪しいウワサがあるといえばあったけどさ。紅毛女と一緒に旅行に行くような仲だったなんて!

 部活が同じなのは知ってたけど、知っていたけれど!

 

 ヴァーリ君……。

 信じたい、信じられない、複雑な乙女心よー。

 似合わないな。

 いや、遊び歩くくらいはいいけどさ。逆ハーレムのメンバー入りはやめてもらいたい。

 それぐらいならハーレムを築くって方がまだマシだよ……。

 

 紅毛女と私の戦力を比較してみると――。

 

 向こうは、美形、長身、巨乳、金持ち、友達多そう、『二大お姉さま』とか呼ばれてる。

 こっちは、かわいい日もある! チビ! 貧乳! 節約生活! この際だからロセは友達! 中学のとき『便所虫』って言われた……。

 

 ヤベェ、ヤベェよ……なんという戦力差。

 

「ロセェェ! なんで止めなかったんだよ! このままじゃ……このままじゃ……」

「とめられないれすよ! 教師同伴の上に駒王学園の経営者一族なんですよ、彼女は」

 

 くそ、ほんとにクソ。

 もう、もう。もう!

 

「あーーーー!」

「嗚呼…グスッ……」

 

 紅髪も敵だ!

 

 

 

 

 ★おまけ★(時系列が合わないので本編には関係ありません)

 

 ――おばちゃ、アタッ! おねーちゃん、おねーちゃん。

 

『リゼヴィムさま、何を見ているのですか?』

『んー、昔の映像記録を見つけてなぁ……』

 

――おねーちゃん、だーいすきー。

――私もリリン君、だーいすきー。

 

――おっきくなったらねー、ぼくねー、サマエルおねーちゃんとけっこんするのー。

――ほ、ホントに!?

――ほんとにー。

 

――リ、リリン君。ちゅー、ちゅうーーう。

――うん、おねーちゃん、ちゅー。

 

『は……?』

『俺も若かったなぁー』


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