私がボッチなのはどう考えても『神(アイツ)』が悪い!   作:ふぬぬ(匿名)

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愛と怒りと憎しみの第四話

 ▼ぼっちとジャージ女

 

 

 

『喪女(もじょ)』

 

 喪女と呼ばれる定義は

 

1・男性と交際経験が皆無

2・告白された事がない人

3・純潔であること

 

 要するに男にモテないブスのことか……?

 

 

 

 

 一人暮らしの身。

 節約は大事だ。

 漫画は読みたし、金はなし。

 バイトするくらいなら食事を削る。労働とか嫌だし。

 

 ~♪本を売りたきゃブックオブ~~~

 

 ここはいい。

 無料で本が読めるし、ぼっちでも気にならない。

 うん、あったあった。

 この漫画の続きが読みたかったんだ。

 

「ぶっ……んぐくっ」

 

 やべ、ふいちまったじゃねぇか。面白すぎだろこれ……。

 周りのヤツラに気付かれたか?

 漫画から目を離して右を見る。後ろを見る――。

 

 視線がこっちに集中していた。

 

 恥ずかしっ! と思いかけたのだが、どうにも視線の向かう先が少しズレている?

 ズレた視線の先を辿れば私の左隣。

 

「クッフフフ……。こっだおもすろ」

 

 ジャージ装備の女が漫画に集中してやがる。

 周り見えてないだろアレ……。

 それだけならまぁ、たまに見かけなくも無いが、このフルアーマージャージは半端ないな。

 銀の長髪にスラッとした長身。

 外国人のモデルか!? って感じの美人なのに、えらく安っぽいジャージ姿で漫画にのめりこんでやがる。

 なんだこの残念なのは……。

 いや、いいさ。こいつのおかげで恥をかかずに済んだ。

 感謝しといてやるから、その手の漫画をさっさと寄越せ。

 今読み終わったやつの続きなんだ。それ一冊だけっぽいんだよ!

 

「プッッキュ……。もうすわけない、もうすわけないって……っ」

 

 そこまでなのか!

 古本屋で腹を抱えてしまうほどおもしろいのか!?

 早くよませろよ! ハリーハリーハリー!

 ついでに、あんたの吹き出し方もおもしろいよ。

 と思っていたら、キモデブニートがジャージ女に話しかけやがった。

 

「あの? すいません、それ買いたいんですけど……買わないんでしたら、こっちくれませんか?」

 

 あああ!?

 買う? 買うだと? 

 ブックオブは本を買うところじゃねえぇんだよ!

 読みたいなら、順番まってろよ早漏が!

 

「た、ただで読めるのに買うなんて……!」

 

 よく言ったぞ、ジャージ女。

 そうだそうだ、渡すなよ、絶対に渡すなよ!

 

「た、立ち読みより、買うほうが優先ですよね! そ、それじゃあ、もらっていきますよ!」

 

 なんてヤツだ!

 買うやつのほうが優先だなんて誰が決めたんだよ。バーカ、バーカ! 順番優先に決まってるだろ!

 ニートめ、やっぱ後ろめたいんだろうな、声がどもってやがる。

 まったく、ハキハキ主張できないような意見だったら言うなよな。なんか顔赤くしやがって……きもいんだよ!

 

「あ、すいません……どうぞ……」

 

 ジャージ女ぁぁ!

 この裏切り者が! 渡しやがった、コイツ渡しやがった。

 

「……ちっ」

 

 思わず舌打ちが洩れてしまったじゃないか。

 もういい。

 役立たずのジャージ女め。

 百均でも行くか……。なんか安くてお得で面白いもんないかなー。

 

 

――百円ショップにて

 

 おい?

 なぜここにもいるんだ、ジャージ女。

 

――夕方のスーパー

 

 値段の下がった商品を取ろうとしたところ、手と手が触れ合った。

 

「あっ……」

「えっと、どうぞ……」

 

 なにそのもの凄く惜しそうな目は……。

 もういいよ、なんでいろんなところで会うんだよお前は……。

 ストーカーか? 同じ銀髪ならヴァーリ君に付き纏われたいわ!

 なんで行く先々でジャージ女と会わなければいかんのだ。

 

「あっ……いえ、どぞ……ぅ」

「ありがとうございます!」

 

 え? そこは、いえいえやはりそちらが先でしたし~とか返してくるところじゃないの?

 持って行っちゃうのそれ?

 

「……ちっ」

 

 忌々しいな。

 やはり銀髪は敵だ……ただしヴァーリ君は除く。

 

 

 

 

 ジャージ女の正体は、学校の教師だった。

 教師かよ! 新刊買えよ! 百均を漁るなよ! 安くなるまで待ってるなよ!

 

 金持ってんだろ!

 

 くそくそくそ!

 なにがロスヴァイセちゃんだ! 忌々しいな。

 こっち見て嬉しそうに手を振るなよ! 

 おかげで注目されたじゃないか。

 しかも出会った場所とかエピソードを語るなよ!

 恥ずかしいだろうが……。

 ああああ、クラスメイトに知られてしまった、認識されてしまった。

 ケチでボッチでチビとか最悪。そんな風に言われるんだ……もう、いやだ。

 

 だれか、あのジャージをなんとかして下さい。

 

 それが私の今日の望みです。

 

 

 〇一日一緒に遊んでたんだ……仲いいな。クラスメイトはそんな風に思ったそうです。

 

 

 

 ▼ぼっちは見た! 女教師 放課後の誘惑

 

 

 それは、ジャージ女が来て数日後のことだった。

 私は忘れ物を取りに夕暮れの教室へと向かっていたんだ。

 

 そしてそこで見てはいけないものを見てしまった。

 いや、見ておいて良かったのかも知れない。

 知らなければ戦えなかった。

 知ったらからこそ戦う事が出来る。

 ヤツは敵だ。

 恐るべき敵だ。

 残念なジャージ女とは仮の姿……。

 その本当の姿は、男子生徒をたぶらかす淫乱メスブタ教師だったのだ!

 

『あなたを……気に入ったんです。だから私と一緒に……キてくれませんか?』

『急な話だな』

『あまり……ないで……』

 

 教室の扉の前。

 中から聞こえてきた声に驚く。

 ジャージ女とヴァーリ君!?

 声が途切れがちだが、これはあれか……。

 放課後の教室。誰かが来るかもこないかもという状況で……。

 

 ゆ・る・さ・ん!

 

「あ、あー! 忘れ物しちゃったなぁー!!」

 

 扉を開けて中へと入ってゆくと、ビックリしたようにこっちを見てくるジャージ女。

 どんなときでも動じた様子を見せないヴァーリ君はかっこいいなぁ……。

 

「と、とにかくヴァーリ君。返事、待ってますから。それでは……」

「一応、考えてはおく」

「ありがとうございます!」

 

 ちょっ! ヴァーリ君?

 考えておくとか……。それってほぼオッケーってことですか!?

 ジャ、ジャージ女ぁぁぁぁ!!!

 この泥棒猫が!

 くそくそくそくそくそ、うがぁぁぁぁぁぁ!

 

 やっぱり銀髪は敵だ!

 

 

 〇悪魔になんかなってません。戦乙女の本業です。

 

 

 

 

 

 ▼ぼっちの修学旅行

 

 

 私はアーシア・アルジェントを許さない――。

 

 

 "いじめ"って最低だよな。

 かっこ悪いよな。

 

「うっ……ぐじゅ……」

 

 やばい、涙が止まらない。

 くそっ、あんな魔女を信じた私がバカだった。

 

――『よかったら、私たちと一緒の班になりませんか?』

 

 ああ。あのときはアイツが天使に……女神に……ダメだな、どっちもロクでもない。

 あのときはアイツがリリーに見えたんだ。

 それが罠だとも気付かずにホイホイと飛びついた私って、なんてバカなんだろう。

 

「うぎゅ……うぅぅう……」

 

 あの最低のクズ男。エロエロ催眠で女をとっかえひっかえしている兵藤なんかの彼女なんだ。

 あの魔女が性悪だなんてわかりきっていたのに……!

 

「グズュ……」

 

 鼻水出てきたな……。

 なんか、もうどうでもいいや――。

 見知らぬ町で、ひとりぼっち。

 置き去りにされた私はこのままここで朽ちていくんだ……。

 

「ズギュ……うぎゅ……うぅぅ」

 

 お金も、ケータイも鞄の中だった。

 トイレに行きたくなったときに預けたのがダメだった。

 あんなヤツラを信じてしまったんだ。

 なんという浅はかさ!

 なんという愚かさ!

 昔、散々な目にあったって言うのにわ゛だじば……。

 トイレから出てきたとき私を待っていたやつは居なかった。

 誰もいない。

 探し回って探し回って……声を上げて呼んださ!

 アルジェントー! ゼノヴィアー! 紫藤ー!

 でも、誰もいなかったんだ……。

 

「どうしろって言うんだよ……ひどすぎるよ」

 

 そりゃあ、バスでも新幹線でも吐いたさ。

 トイレもよく行くさ。ついでに一回一回が長かったかもしれないさ。

 でも、しょうがないだろう?

 聖書に記された(アイツ)の龍殺しの呪いのせいなんだから。

 私だって龍なんだから体調くらい悪くなるさ。

 体育もよく休む、行事もよく欠席する、病気がちな儚いキャラで通してきたはずなんだよ!

 知ってて誘ったんだろ?

 なんで置いていくんだよ!

 

「やっぱ……ぐすッ……いじめ……」

 

 班決めで誘ってきたときから罠だったんだ。

 私が苦しんでいる様を近くで眺めて、ワラっていやがったんだ!

 心配するフリをして……心の中ではニヤニヤとバカにしていやがったんだ。

 1斑4人までだからって、わざわざ仲の良い桐生を別の班にしてまでしてやることか?

 

――アイツっていっつもトイレ長いよね。

――なにかあるとすぐ休むしね。

――体育とかさー。キツイ内容のときいっつもいないよね。

――そうそう、きもいよねアイツ。バレてないと思ってるのかな?

――身体弱いのはホントじゃない? ときどき吐いてるっぽいし、臭いよね。

――あー、アレね。ホント、まじ勘弁してほしいわー。

 

 教会トリオとかなんとか言って、私は清く正しい乙女で御座いますみたいなフリしてるけど、きっと裏ではこんななんだ……。

 鬼、悪魔、天使!

 いじめとか最低なんだぞ!

 まぁ、アイツに祈るようなメスどもだからな。

 ほんと……ちょっと優しくされただけで舞い上がって……。

 

「ほんと……わたしって、こりないよな……」

 

 

 

 ――いじめっこ達の事情

 

『――絶霧(ディメンション・ロスト)

『間違いありません。私がディオドラさんに捕まったときと同じです』

『くそっ! てことは英雄派かよ!』

 

『はじめまして、俺の名は曹操。英雄派を仕切らせてもらっている者さ。一般人を巻き込むつもりはないからね、君達だけを招待させてもらったよ』

 

 

 

 

 ▼ぼっちのゲロ女

 

 

 あ。

 生徒がまわるコースは、学校側で知ってるんだろうからどこかに教師がいるかもしれないな。

 さすがだな、私は!

 賢い、すごい、偉い。

 事実をありのままに告げてやるぞ、魔女どもめ!

 告げ口とか、チクリだっけ? そんな風に言われるかもしれんが許してなるものか……!

 いや、待てよ……。

 なにか重大なことを見落としていないか?

 そう、あいつらが好き勝手やってるのはこういうことかと、一回考えた事があったはず……。

 たしか、夏休みのころで……そうだった、そうだった……。

 あのとき窓から見えた全裸の紅毛女。アイツも魔女どもの仲間だったんだ。

 たしか、この学校の経営者だか理事だかの身内だとかどうとか聞いたような……。

 

 ダメだ!

 

 教師も敵だ!

 やばかった……教師に告げ口していたら、権力で返り討ちにされるところだった。

 くそっ! なんてやつらだ!

 これからの高校生活。あんなメスブタどもの慰み者になってしまうのか?

 ああ、悲惨な未来を想像したら吐き気がしてきた。

 また、トイレに逆戻りかよ!

 

 おいおい、いつのまにか先客がいらしゃるぞ。

 京都ではしゃいで酔いつぶれたのか?

 くそ、こんな音たてられたら我慢は無理だな。

 うぐぐぐ、魔女のせいで胃が痛い。

 というか隣のやつ大丈夫なのかよ?

 なんか長いぞ。

 

『ばあちゃ……わだず頑張る。がんばっからな……』

 

 聞いたような声に隣を除いてみれば――。

 

 おい、教師!

 なにやってんだジャージ女が!

 見回りしてるんじゃないのかよ! 

 酔いつぶれてるとかいいご身分ですね!

 

「なんなんれすかっ! 気に入ったから勇者としれつれれこいっれ……。どうせわたすはいませんりょ……わ、わたすだって男の子と……エッチなことしてぇ! んんにゃ……」

 

 おい! 教師!

 マジかコイツ。トイレでグデグデでこんなこと叫ぶとか……。

 アレだ、浮浪者とかにアレでアレされてアレなことになる展開だぞ。

 クソッ、ゲロくせえ臭いがプンプンしやがる。

 あーあーあー。こんなところで寝やがった。

 髪長いのに気をつけないから、スゴイことになってるぞ……。

 その点、私はプロだからな。そのあたりに抜かりは無い!

 てかコイツ、ケータイ持ってないか?

 それで他の教師を呼び出せば……。

 

「ちっ……」

 

 ロックかけてんじゃねーよ。相変わらず使えないなジャージ女は!

 お? これ財布か……こいつを頂いていけば宿まで帰れるな。

 はっ! 泥棒猫はそこで楽しく遊んでもらえばいいんじゃね?

 お似合いお似合い。

 

 

 

 

「くそっ……めんどくさいな。重いし、臭いし」

 

 なんでコイツを洗って綺麗にしてやって運ばないといかんのだ。

 まぁあれだな、教師に恩売っとけばいじめっ子どもから庇ってくれるかもしれないしな、うん。

 

 いじめかっこ悪い。

 よってたかってハリツケにしたり、釘打ったり、鎖で縛ったりとか絶対ダメだからな。

 そのうえ寒いところに放置とか極悪非道だからな。

 

 

 アルジェントたちが、後から謝ってきたが正直怪しい。

 理由とか言わないし。

 腹の中であざ笑ってやがるんだろう、くそくそくそ。

 いじめこわい、いじめこわい。

 

 

 〇紳士なゲオルクさんは、こんな状態の女性を戦場に転移したりしない。

 

 

 

 

 

 ▼ぼっちの学園祭

 

 

 うん、ひとりだ。

 見事にひとりだ。

 学園祭、部活で運営だものな……。

 帰宅部一直線な私には準備とか片付けとかないし。

 一緒に見て回る当てはないし。

 ヴァーリ君は探しても見当たらないし。

 オカルト研究部のおみくじは、大凶だし。呪われてるんだから当たり前だけどな。

 そうだ、屋上へ行こう。

 

 あそこは私とヴァーリ君の場所だ。

 勝手にそう決めた。

 毎日毎日二人っきりで昼ご飯食べてるんだぜ!

 これはもう、付き合ってると言っても過言じゃないね。

 会話はないけど。

 ていうか、距離が相当離れてるけど……。

 もうすぐ寒くなるから、あの時間もそろそろ終了かな。

 残念すぎる。

 

 弁当作ってきてさ。

 渡してさ。

 食べてもらって美味いと言って貰えるとか……。

 

 そういうイベントを起こすべきだっただろうか?

 料理は苦手ではない。普通に出来るからな。

 あんまり関係ないが、ぶどう酒造りを人間に教えたのは私だしな!

 その結果、アダムのアホがアル中になったせいで聖書の神(アイツ)が怒り狂ったわけだが……。

 アレは私が悪いのか? 

 酒に飲まれたヤツがダメだっただけじゃないだろうか……いつぞやのジャージ女みたいに。

 嫌なことを思い出してしまった。

 

 うん、屋上でぼーっとして時間を潰そう。

 

「くはーっ! 開放感! よし、寝るか」

 

 なんでかいつも人の居ない屋上。

 伸びをひとつして、寝転がる。

 

「あー、つまらん。なにかドカンと起きないかな。あれだな、この学校テロリストに占拠されないかなー。そうしたら、こう……」

「テロリスト、か……」

 

 あれ? デジャヴだっけ? こういうの。

 なんか前にもこういうことがあったような。

 

「お前は何者だ?」

 

 ふぉ! ヴァーリ君が飛んでいるだと!?

 

「この場所にはいつも結界を張っていた。だが、お前だけはいつもそれを無かったかのようにして現れる」

 

 は? 結界? え? なにそれ?

 

「あのヴァルキリーと話していたときもそうだった。アイツは妙にお前のことを買っていたがな」

 

 ヴァルキリーって北欧の死神だったっけ?

 

「話す気はない……か。まぁいい、今まで見ていた分では大したことも出来そうにないからな」

 

 そういうとヴァーリ君の背中から、悪魔の翼が現れた。

 結構枚数多めだね。上の中級くらいだろうか。

 

「俺の本当の名前はヴァーリ・ルシファー。もし今後、妙なマネをするようであれば――」

 

 悪魔かぁ……。まぁさほど問題ではないな。うんうん。というかルシファーってことは……。

 さらに金属と光で出来た翼を展開するヴァーリ君。

 

「お前を殺す」

 

 ハメ殺すだと…………!!

 

 今脳内でデデン!! テレレレテレレレ、デデッデン! って音楽が聞こえたぞ。

 これはアレか。

 ガンダルヴW(ウィング)の伝説のシーンの再現なのか?

 白くて翼のある装甲機械に乗っかる主人公が、ヒロインに想いを告げるあのシーンの!

 たしかに今のヴァーリ君の格好はちょっとゼロっぽい。無口系で鍛えてる感じの転校生でもある。

 てことは、私はリリー(ヒロイン)な役ってことでいいわけですか?

 

 これは告白されたと考えていいのか!?

 マジなのか?

 ネタなのか?

 笑えばいいのか?

 早く私を殺しにいらっしゃい、と返せばいいのか?

 どっちなんだ……。

 どどどど、どうすればいいいいいんだ。

 

「あっ、よ、よろしくおねがいしますぅ……」

 

 無難。

 すごく無難に返してしまった。

 でも、わからないんだよ!

 というか、結構まともに話せた気がする!

 

「そうか…………何を考えているのかわからないが、余程の覚悟があるのだな」

 

 ありますとも。

 告白されて、返事するとか!

 初体験!!

 すげーぞ、私。やったぞ私。

 て、ちょっと待てヴァーリ君。

 なぜ背を向けて去っていこうとするんだ。

 ここは男から来てくれないと困るじゃないか。

 キミがそこまでやりたくて仕方ないと言うのならば、受けて立つのもやぶさかではない。

 というより、むしろ興味津々です。

 さぁガバッっと……。

 

 返事を外したのか?

 

 ちょっとまて止まらないか、ヴァーリ君。

 あくまでこっちから言わせる気なのか……。なんという試練。

 でも、ここが正念場だぞ、行くしかない!

 

「待って! あっ、が、学園祭。いいい一緒にまわ、まわ……」

「ああ……」

 

 おおおお、キターー!

 ぼっちよ、さらば。

 おはよう、リア充!

 

 フハ、フハハハハハ!

 見たかジャージ女め! これが私だ! 

 ぼっちの名は貴様にくれてやるわ! フハハハハハハ!

 

「……行かないのか?」

 

 行きますとも!!

 

「あっ……うん」

 

 

 

 

 ▼ぼっちじゃない学園祭

 

 

 素晴らしい。

 世界が輝いて見えるぞ。

 今なら聖書に記された(アイツ)が出てきても、土下座しながら三回回ってワンと言って見せたら許してやれそうな気がする!

 わたし、ひとりじゃないから。

 もう、なにも怖くない!

 いかん、いかんぞ。同じ方の手と足が動いてしまう。

 

「あわわわ……」

「お前、大丈夫か?」

 

――お前。

――お前。

――お前。

 

 え?夫婦? 夫婦なの? もうそこまで進んでいたのか!

 あああ、あなたとか呼んじゃっていいのか!? 

 

「あ、ああ」

「ん?」

 

 定番だ!

 こういうときは定番に頼るんだ!

 たしか、お化け屋敷とかやってたな。

 そこだ、そこでキャーとか言って抱きつくんだ!

 

「おば、お化けやしき……」

「ああ……一応、顔を出すぐらいはした方がいいのか……」

 

 

 

 役立たずだよ!

 本当につかえねーな!オカルト研究部。

 あんまりにも怖さが足りなさ過ぎて、逆に笑えてきたわ!

 もっとこう、コズミックで外宇宙なヤツを用意しとけよ。

 ハーデスのジジイ以下とか、怖さをなめてるのか? やる気あるのかよ!

 

 んん? 外宇宙(クトゥルフ)……ああ、たこ焼きだ。

 ひとりで喰ってもマズイだけだったけど……ふたりだったら……。

 

「……うまい……」

 

 主に心で味わっているんだ。

 

「ふむ……」

 

 ヴァ、ヴァーリ君がたこ焼きを、もきゅもきゅしているだと!

 ほ、保存だ。保存せねば!

 

 そんな風に今年の学園祭は過ぎていった。

 

 

「もう、死んでもいいかもしれない……」

 

 

 

 

 〇総督と白龍皇

 

『よう! デートはどうだったよ?』

『デート? 特別なんともないが?』

『かぁー。教育を間違えたかね、俺は』

『しかし、わからないな。俺の殺気を受けてもまったく怯まないくせに、訳の分からないところで慌てだす……』

『あー。アイツが俺の考えてる通りの存在だとしたら、並大抵の殺気なんぞなんとも思わないかもしれないな』

『アザゼル、アイツは何者だ?』

『まぁ、まだ予想の段階だからな。ヴァーリ、お前アイツに名前を言ったんだろ? だったらまぁ、お前はたぶん大丈夫だ』

『どういうことだ?』

『まだ、なんともな』

『アザゼル、お前はいつも回りくどい』

 

――リリスはサマエルの嫁。そう記されてたりする書物もあるんだよ、これがな。アイツたぶん、お前のひいばあちゃんの親友だぞ。


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