私がボッチなのはどう考えても『神(アイツ)』が悪い!   作:ふぬぬ(匿名)

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四巻くらいの第一話

『ぼっち』の定義

 

 ぼっちとは、孤高の人である。

 簡単に言うと友達のいない人のことである。

 

 ぼっちが、ぼっちとなるのは、だいたいその人の自身のせいであるが、親や周りのせいでそうなる者もいる。

 

 過去の彼女がぼっちだった理由は、彼女の創造主が悪い。

 少なくとも――彼女はそう思っていた。たった一人だけいた友達もそう言ってくれた。

 

1・まず名前が悪い。『毒』とか『悪意』とかなんでそんな名前をつけるんだ。

2・容姿も悪い。みんな人型なのになんで自分だけ下半身を蛇にされたんだ。この二つで兄弟姉妹から嫌われた。

3・仕事も悪い。口下手で名前や容姿を気にしているのに、なんで人間の教育係りとか任されたんだ。打ち解けようと思って、ぶどう酒を勧めたら呪われた。そうして人間からも嫌われた。

4・呪いが悪い。蛇や龍とは仲良くなれるかもしれないと思っていた。でも龍殺しの呪いのせいで、誰も近くに来てくれない。

5・戦争が悪い。あれのせいで、たった一人だけの友達が死んでしまった。だからあんなロクデナシと付き合ったらダメだといったんだ。

 

 

 結論、私がボッチなのはどう考えても『聖書に記された神(アイツ)』が悪い!

 

 

 これはとある堕天使……。

『ぼっち』な堕天使の物語。

 

 

 

 昔々のある『地獄の最下層(コキュートス)』――。

 

 やってやる、やってやるぞ。

 私をこんなくそ寒いところに閉じ込めやがって。

 ミカエルめ! アイツに似ているから嫌いなんだよ。

 アザゼルめ! 私の方が先輩なんだぞ。敬えよ。

 ルシファーめ! なんでちゃんと守ってくれなかったんだよ。

 復讐だぞ、復讐してやる。

 長い時間かけて準備したんだ。どれぐらい長いかわからなくなるぐらいハリツケで過ごしながらな!

 転生だ!

 人の子もするという転生で、私は人間になる。

 人間の寿命は百年程度らしいが、同類がたくさん。すなわち、友達がたくさん。

 することのない監禁生活の中、脳内で人間としての生活を何百年とやってきた。

 準備にも抜かりなし。

 くくく、待っているがいい。

 たくさんの友達と一緒に復讐に行ってやるぞ!

 

 

 

 〇〇年後――。

 

 人間になったら友達ができる。

 そんなことを考えていたこともあった。

 出来なかったよ!

 ひとりぼっちだった期間が長すぎて、ロクに言葉がでてこない。

 親、とも上手くいかないし……。

 なんか、感覚がちがうんだよな。

 いいさ、いいさ、いいのさ。

 私は復讐者だからな。孤独で孤高な存在なんだ。誰に理解されなくとも問題ない。

 

 

 

 

 ▼ぼっちの授業参観

 

 

 駒王学園教室――。

 

『バ、バカかぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああっ! な、何を大衆の面前で取り出してんの!?』

 

 でかい声をだすな、エロ兵藤が。

 お前らはいつもいつも、うるさいんだよ。

 エロトリオに、アルジェントだのゼノヴィアだの桐生だのと毎日毎日騒ぎやがって。

 今度はなんだよ。

 避妊用具だと……!

 くそ、ビッチが! 学校でそんなもの取り出してんじゃねぇよ。

 あやしげな部活作って、毎日毎日サバトを繰り返してやがるんだろう。

 男に媚びる尻軽どもめ。

 ふん、勝手にやっているがいいさ。あんな男のことしか考えていないバカ女どもと、それと一緒にいる男なんてクズに決まっているし。

 というか兵藤に松田、元浜とかクズだし。

 せいぜいゴミカス同士でドロドロの青春でも送ってればいいさ。

 死ね、死ね、死んでしまえ!

 

『おい!? どうしたんだイッセー。急に倒れるなんて!』

『いや……。わかんねぇ、急にめまいが……』

『大変です。イッセーさん、保健室に行きましょう』

 

 保健室だと?

 あれか。

 

――「俺、具合が悪いんだ」

――「大変です! どこが具合悪いんですか?」

――「見てくれるか? 実は……ここなんだ」

――「ああ! ダメです。こんなところで!」

 

 こういうことか?

 ふざけやがって! 兵藤め!

 あいつは、私とぶつかってスカートの中を見たときに吐きやがったんだぞ。

 他の女子のは自分からノゾくくせに! 

 

『よう! ラッキースケベ。どうだったよ?』

『吐きそう。てか、吐く。うぇぇぇ』

『ちょっ! おい、イッセー。大丈夫かよ』

 

 あれは、どういうつもりだ!?

 私は吐き気がするほど気持ち悪いって、そういうことかよ!

 呪い、呪う、呪え、呪おう。

 

 

 〇この後、赤龍帝はしばらく学校を休んだそうです。

 

 

 

 

 ▼ぼっちと銀髪イケメン

 

 

 学校帰りだった。

 あの人を初めて見かけたのは。

 帰り道をトボトボと、今日もひとりで歩いていた。

 交差点で信号待ちをしているときに、ふっと顔を上げたらその人がいた。

 暗い色合いの銀の髪。黒っぽい服装。

 正直、あの髪の色はキライだ。ロクデナシと同じ色合いだから。

 でも、どこか懐かしい顔立ち。……イケメンだ。

 やべー、これこのままいくと横断歩道ですれ違いますよ。

 ダメだ。顔、上げられない。顔が熱い。

 これは、あれか? もしかしなくとも一目惚れというやつか? 私にも春が来たというのか?

 フラフラと横断歩道を渡りだす。

 

「あ、おい! まだ赤」

 

 なんか、遠くから声が聞こえるなー。

 

「バカ! あぶねー」

 

 あっ!と横を見れば迫ってくるトラック。

 あれ? もしかしてヤバイこれ? 

 いまの私は人間だから、あんなのに轢かれたら死んでしまう。

 コレは、もうダメだ。

 また、あの寒い世界に逆戻りだ。

 折角、苦労して意識を飛ばしてきたのにな……。

 さよなら、現世。ただいまコキュートス。

 なかなか痛みが来ない。これが人間が体験するという走馬灯状態というやつだろうか。

 嫌だな、さっさと飛ばしてくれないかな。

 

「怪我はないか?」

 

 声が聞こえきた。

 閉じていた目を開くと、そこにはあの人の顔が――。

 いかん、ダメだ。これは死ねる。

 うお! 鼻血がっ!

 

「む? どこか怪我を。ぐっ、なんだこれは……」

 

 うぉぉぉ! 顔が迫ってくるだと! そんな! 出合ったばかりなのに急すぎる!

 こんなの意識がもたないですよ。

 

 気がついたら、病院だった。

 別に、怪我も何も無かった。

 あの人はどこかへ行ってしまったらしい。

 また、会えるだろうか……。

 

 

 〇白龍皇は体調不良のため大事な会談を欠席したそうです。

 

 

 

 

 ▼ぼっちと幼女

 

 

 通学路途中の路地裏――。

 

 なぜだ?

 何故か変態的な幼女にじっと見られている。

 

「我、じっと見る」

 

 なんだあの格好は?

 前が無いぞ。どうなっているんだ!?

 ゴスロリと言うのか? いや違うだろう。胸にシール張って×印とかおかしいよな。

 

「久しい?」

 

 知らんがな。誰だよお前は!?

 こっち見るなよ。

 物陰で苦しそうな人を、じっと観察する痴幼女とかどういう状況だよ。

 私はちょっと気分が悪くて、吐きそうなんだよ!

 見るなよ。こっち見るなよ。

 あっち行けよ!

 

「じーっ」

「み……な、いで」

 

 う、ぐぅうう。

 もう、我慢出来ない。

 アイツに呪われてからこっち、体調の良かった日などほとんどない。

 人間になったら大丈夫かと思ってたのになぁ……。

 見るなよー!

 

「我、気分悪い」

 

 青ざめた顔で去って行く幼女。

 だから、見るなって言っただろうが。

 くそ! 涙が止まらない。

 なんでこんな目に会うんだろう。

 

 

 兵藤家にて――。

 

「食べないのか?」

「我、食欲ない。しばらく眠る」

「オーフィスさん、どうしちゃったんでしょうか?」

 

 〇無限さんは、ご飯が食べられなかったそうです(これはちょっとだけ先の話)。


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