『怠惰』なリアスは苦労が少ない。   作:ふぬぬ(匿名)

3 / 6
私は敗北が多い。(三巻)

 私は敗北が多い。

 

 

 

 春過ぎて夏の来ないある日、教会の戦士がこう言った。

 

『エクスカリバー奪還について一切関わるな』

 

 こっちに迷惑をかけないなら勝手にどうぞ、と返したところ。

 

『話が早くて助かる。ただ、もしコカビエルと手を組んでいるのなら――そのときはあなたたちを完全に消滅させることになる』

 

 教会の連中は頭がおかしい。

 私は悪魔なんですよ?

 聖剣なんかと関わりたくないに決まってるじゃないですか。

 だいたい、たったふたりで堕天使の幹部に挑むだなんて。勝てるわけが無いと思う。

 自殺だか殉教だか知らないが、そういうことは出来ればよそでやって欲しかった。いろいろ後始末するのはソーナの仕事だから別にいいけれど。

 まったく教会の人間は面倒で困るな。

 人間の寿命は百年程度らしい。ただでさえ短い命、どうしてそんなに死に急ぐのか理解ができない。命短し恋せよ乙女とか言うそうじゃないか。

 私ですらそれっぽい経験をしているというのに、この二人はそういうことも知らずに死んでいくのかと思うと、哀れみを覚える。

 忠告くらいしてあげたらいいのだろうか。

 でも、やっぱり教会は敵だからどうでもいいや。

 

 

 すぐ兄上に連絡をしたら、こう言われた。

 

『急いで向かう。リーアはどこか安全なところに移動しなさい』

 

 もう準備させている、と返したところ。

 

『それならばいい。気をつけて避難しておきなさい。あとは私に任せておいてくれ』

 

 いつも兄上は頼りになる。

 兄上は強いのですよ?

 堕天使の幹部と私なんかが戦えるわけ無いのだ。

 兄上は四大魔王の筆頭、現ルシファーなのだ。兄上に任せておけば強い眷族と一緒に片付けてくれること間違いなし。

 果報は寝て待てとか言うそうじゃないか。実家に帰る電車の中で寝てもいいのかな。

 起きたら全部終わってるといいのだけれど。

 堕天使の幹部とか、ちょっと見てみたいけれど。

 でも、やっぱり眠いしどうでもいいや。

 

 

 移動中にレヴィアタンさまにも連絡したら、こう言われた。

 

『どうしてリーアたんしか連絡してくれないの!?』

 

 恥ずかしいらしい、と答えたところ。

 

『恥ずかしいって……そんな場合じゃないのに! 待っててねソーたん! お姉ちゃんがすぐにいくからね☆』

 

 レヴィアタンさまはいつもテンションが高い。

 私はいつもけだるい気分なので、ちょっとついていけない。

 ライザーには、物憂げでゆったりとしたところが良いって言われるんだけどな。戦う事が前提の眷属たちには無い雰囲気がたまらない、とか言われるのは誉められているのかな。

 今度、レヴィアタンさまとどっちがいいのか聞いてみようかな?

 でも、魔王と婚約者の板ばさみで困らせてしまうかもしれないからやっぱりやめておこう。

 とりあえず堕天使と戦いで役に立たないのはこっちで決まりだけれど。

 なんでみんな戦いたがるのかなぁ。

 ゆっくり寝て、美味しいものを食べて、楽しく遊んで、それで十分だと思うのだけれど。

 そのあたりに困らないひとほど、戦うのが好きな気がする。

 なぜなのかって考えてみよう。

 ああ、こういうのを物思いにふけるって言うのかな。

 しばらく考えてみたけれど。

 でも、やっぱりわからないからそのうちでいいや。

 

 

 数日後のある日、義姉上がこう言った。

 

『コカビエルは始末したのでもう大丈夫ですよ』

 

 どうだったの? と聞き返したところ。

 

『まったく、あなたときたらレヴィアタン様まで呼んでいるなんて。ルシファーとレヴィアタン、さらにそれぞれの魔王の眷属が揃い踏みだなんて、コカビエルが哀れに感じられましたよ』

 

 レヴィアタンさまはソーナの姉上なのですよ?

 私は避難したけれど、ソーナが残るって言うのだから仕方が無い。

 連絡してなくて、ソーナに何かあったらあとで私が怒られてしまうではないですか。

 連絡一つで面倒が回避できるのだから、それをしない手はないのです。

 レヴィアタンさまが怒ると面倒なのですよ?

 まったく義姉上はそのことを覚えていないのかな。

 むかしむかしの大昔、義姉上とレヴィアタンさまはライバルだったと聞いたような気がするけれど、忘れてしまったのだろうか?

 ライザーから父上用の薬をもらったので義姉上にもあげよう。

 また列車に乗るのも面倒だな。

 実家に帰ったついでなのでこのまま夏休みにしたいと思うのだが。

 

『リアスさま?』

 

 で、でも、やっぱり義姉上が怖いので学校に行こうかな。

 

 

 駒王町に帰ったら、ソーナがこう言った。

 

『リアス! レヴィアタン様まで呼ぶことは無いでしょう!』

 

 どうして怒っているの? と聞き返したところ。

 

『コカビエルが私を犯してから殺すなどと言ったせいで、危うく町ごと吹き飛ぶところでした! ルシファーさまと違ってレヴィアタンさまは感情で暴走する事が……』

 

 ソーナはいつもうるさいことを言う。

 結果的に町が無事でコカビエルも始末出来たのは、すぐに連絡したおかげなんですよ?

 レヴィアタンさまは外交担当なのだから、すぐに感情的になって暴走するなんてことあるわけないでしょう。

 だいたい、ソーナもソーナだと思う。魔王の妹っていう重要な立場なのだから、危険だとわかったらすぐに避難するべき。

 その方が眷属たちも安心して過ごせると思うのだけれどな。

 学校が半壊しているけれど、この程度なら一日もあれば修復できるんじゃないかな?

 昔の約束で、そういうことも全部ソーナ任せだから詳しく知らないけれど。

 忙しそうだな。手伝ったほうがいいかな?

 でも、やっぱり約束は約束だからおまかせでいいや。

 

 

 ある授業を受けているとき、先生がこう言った。

 

『グレモリーさん、春眠暁を覚えずとは言いますが、春も夜明けもとうに過ぎていますよ?』

 

 ビクッ!、と反応したところ。

 

『グレモリーさんはいつも眠そうですね? 私の授業はそんなにつまらないですか?』

 

 この先生の授業はいつも眠くなる。

 ここ数日、果報を寝て待ち続けた私なんですよ?

 どうにも我慢出来ないのです。無理に起きていようとすると、机に頭突きをしてしまうのです。もしくはガタン! とか音を出してしまって笑われたりするのです。

 この先生も私なんて放って置けばいいものを、わざわざ危険物に注意するなんて熱心なんだな。

 グレモリーの名前が気になって見て見ぬフリの人も多いのに。

 ちょっと感心したので頑張って起きていようと思うけど。

 でも、やっぱり眠ってしまうのです。睡魔には勝てません。

 

 

 私の敗戦記録は毎日更新されている。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告