『怠惰』なリアスは苦労が少ない。 作:ふぬぬ(匿名)
私は経験が少ない。
数年前のある日、父上がこう言った。
『もっとパーティなどに出席しなさい』
なんのために? と聞き返したところ。
『グレモリー家を継ぐものとして結婚相手の選定は重要だ。おまえとの相性もある。出会いの機会を増やし、顔を広めるためにも出席しなさい』
まったく父上はおかしなことを言う。
そんなものに出たって、私と子作りしようなんて酔狂な男性がいるとは思えませんよ?
兄上のこともあったのに、もう忘れてしまったのだろうか?
魔王で強くてルシファーな兄上ですら、相手をひとり捕まえるのにとても苦労したと聞いている。私と付き合えるような相手がそこらに転がっている筈がないのです。
父上がボケてきているのだとしたら面倒だな。
悪魔の寿命は数万年あるらしい。初代グレモリーのおばあさまからしてまだ死んでいないのだから、父上が逝くのもずーっと先の話のはずだからと三千年くらいはゴロゴロして暮らそうと思っていたのに……ボケられてしまっては働かないといけないではないか。
ああ、面倒くさいな。
頭を若返らせる薬はないだろうか。
でも、探すのも面倒だから後でいいや。
数年前のある日、母上がこう言った。
『あなたがあまりにも表に出ないものだから、良くないうわさがたっています』
どんな噂? と聞き返したところ。
『グレモリーの次期当主はあまりにも醜いために表に出て来られないのだとか。とても太ってしまってトイレに座ったまま生活しているだとか。まだまだほかにもいろいろあるのです。他の御家の方々とお会いしたときに、どうして出てこないのかと聞かれる母の気持ちがわかりますか? だいたいあなたは……』
いつも母上はうるさいことを言う。
太ってはいないけれど、表に出られないような姿というのは当たっているじゃないですか。
私は母上と父上の娘なのですよ? いろいろと大変なのだからそういうことは母上が対処してくれないと困ってしまいます。
母上のお小言はいつも面倒で困るな。
悪魔の寿命は数万年あるらしい。なんで他の同年代の悪魔達は結婚を焦るのだろうか? 私は千年後くらいからの婚活でいいと思うのだけれど、みんなが焦らせるせいで母上がうるさいではないか。
まったく面倒だな。
とりあえず、ひとりぐらいは話す相手ををつくった方がいいだろうか。
でも、探すのも面倒だからまた今度でいいや。
数年前のある日、兄上がこう言った。
『リーアに会って見たいという男性がいるのだが、一度会って話してみてはどうだろうか?』
丁度良い、と返したところ。
『私も苦労したからね。リーアの気持ちもわかるつもりだ。だから少し特殊な力を持った相手を探してきたんだよ』
いつも兄上は甘やかしてくれる。
兄上は、父上や母上よりも私に近い存在なのですよ? 血統的に。
その兄上のお勧めする男性とは一体どんな方なのだろうか?
私は面倒なことは苦手だから、いろいろなことを率先して決めていってくれるひとだといいなぁ。
兄上のお勧めだからひどい相手ってことはないだろうけれど。
あんまりかまわれるのも面倒だけれど、全然構ってくれないのも寂しいだろうし。ほどほどの距離感で付き合える方がいいのかな。
そうしたら、こんな私でも末永いお付き合いが出来るのだろうに。
ちょっとおしゃれもしてみたほうがいいのだろうか。
でも、買いに行くのも面倒だしおまかせでいいや。
数年前のある日、ライザーがこう言った。
『俺は君を縛るつもりはない、君は基本的に自由にしていてくれていい。ただ俺も俺で自由にやらせてもらえるのなら、俺達ふたりはとても仲良くやっていけると思う。君はどう思うだろうか?』
どうせなら領地の経営とかもやってくれると面倒が少なくていいのに、と返したところ。
『本当に良いのかい? グレモリーの当主となるのはあくまでも君だよ? 俺のような余所の家から入ってこようとしている者に領地を任せてしまっても』
兄上のお勧めの男性は流石だな。
私の代理でいいからいろいろとやってみたいだなんて、そんなの大歓迎ですよ?
最近のフェニックス家はなかなか栄えているらしい。三男で家を継ぐことのできないライザーは、本当はいろいろとやってみたかったけれど我慢していたのだとか。
白音に任せられないような問題でも、夫になるライザーだったら任せてしまっても構わないのかな。
自分からやりたがっているようだし、いろいろなことを片付けてくれそうで本当に助かる。
フェニックス家の特性のおかげで私もあまり気を張らずにいられるし。
ライザーはとても良い相手だな。
他の相手を探すのも面倒だし、もうライザーで決定でいいや。
数年前のある日、白音がこう言った。
『ライザーさまの眷属は女性ばかりみたいです。ハーレムを築いてやりたい放題にされているとか』
別に構わない、と返したところ。
『婚約者がありながらあのような振る舞い。リアスさまが軽んじられているようで気になるのです』
まったく白音は潔癖症で困る。
ライザーはフェニックスの男性なのですよ?
そちらの方面でも不死鳥なのだから、ハーレムでも築いてもらわないと私が困る。
今夜は寝かさないよ、とか言われて朝まで相手をしていたら疲れてしまうじゃないか。まったく相手にされないのも寂しいものがあるから、時々来てくれるくらいでいいのだ。
元気が有り余っている男性を縛り付けるなんて面倒くさい。
私が当主になって、ライザーが代理とか代行とかになるのだから問題ない。
面倒を掛ける分、そのあたりは好きにやってくれればいいのだ。
来週は出会って一年の記念日だけど、何か用意しようかな。
でも、やっぱり面倒だしライザーに任せてしまえばいいや。
数年前のある日、ライザーがこう言った。
『君の変異の駒を譲ってもらえないだろうか?』
どうして? と返したところ。
『眷属に加えたい者がいるんだけどね。手持ちの駒では足りなくてさ。申し訳ないのだけれど君の"変異の僧侶"と俺の"僧侶"を交換して欲しいんだ』
まったくライザーは欲張りだな。
私はレーティングゲームなんて興味ありませんよ?
欲しいというのなら使ってくれればいいのだ。使いたいひとが強い駒を使う。適材適所ってことだろうか?
ふと思ったのだけれど、こういう風に変異した駒ばかりを上手く集めてしまえばすごく強い眷族を揃えられるのではないだろうか?
公平性に欠ける気がするのだけれど、開発者の意図はよくわからない。
悪魔の駒を使って悪魔の数を増やしたいのなら、全部の駒が変異するように調整すればいいのに。
どうしてか気になるけれど聞いてみようかしら。
でも、そのうち何かで会ったときでいいや。
私の交際経験はライザーしかない。