『怠惰』なリアスは苦労が少ない。 作:ふぬぬ(匿名)
私は眷属が少ない。
数年前のある日、父上がこう言った。
『レーティングゲームのために眷属を集めなさい』
なんのために? と聞き返したところ。
『今の悪魔はレーティングゲームの成績による評価が非常に大きい。おまえの将来のためにも、強い眷属を集めて勝利を重ね、良い評価を得るべきなのだ』
まったく父上はおかしなことを言う。
私はグレモリー家の次期当主なのですよ?
父上が決めたことなのにもう忘れてしまったのだろうか?
既にして上級悪魔の名門、元七十二柱のグレモリー家次期当主さまなのだ。これ以上の地位を求めるなんてそんな面倒なこと必要ないと思います。
父上がボケてきているのだとしたら面倒だな。
悪魔の寿命は数万年あるらしい。初代グレモリーのおばあさまからしてまだ死んでいないのだから、父上が逝くのもずーっと先の話のはずだからと三千年くらいはゴロゴロして暮らそうと思っていたのに……ボケられてしまっては働かないといけないではないか。
ああ、面倒くさいな。
頭を若返らせる薬はないだろうか。
でも、探すのも面倒だから後でいいや。
数年前のある日、母上がこう言った。
『次期当主として、見聞を広めるためにも旅に出なさい』
面倒くさい、と返したところ。
『あなたはまだ一名も眷属がいないではありませんか。せめてお付き合い程度でもレーティングゲームに参加できるよう体裁くらいは整えるべきです。あなたがろくに眷属を集めようともしないのは、他の御家の奥様がたにも知られているのですよ。シトリー家のソーナさんなどは……』
いつも母上はうるさいことを言う。
旅先で都合よく優秀な眷族を拾ってくるなんてことあるわけがないじゃないですか?
私は上級悪魔の名門、元七十二柱のグレモリー家次期当主さまなのだ。眷属なりたいって言ってくる下級、中級悪魔はたくさんいるのです。
母上のお小言はいつも面倒で困るな。
悪魔の寿命は数万年あるらしい。なんで他の同期の悪魔達はそんなに急いで眷属集めを頑張るのだろうか? 私は千年にひとりくらいのペースで良いと思うのだけれど、みんなが頑張るせいで母上がうるさいではないか。
まったく面倒だな。
とりあえず、ひとりぐらいは眷属をつくった方がいいだろうか。
でも、探すのも面倒だからまた今度でいいや。
数年前のある日、兄上がこう言った。
『猫の妖怪を拾ってきたんだが、眷属にしてみてはどうだい?』
丁度良い、と返したところ。
『少し訳ありの子なんだが素質はバッチリだよ。その子の姉はとても強い悪魔になったからね。だからその子も強い悪魔になってリーアの良い駒になると思うよ』
いつも兄上は甘やかしてくれる。
兄上は魔王さまなのですよ?
もっともっと甘やかしてくれていいから、その子の姉も連れてきてくれれば良かったのに。
私は四大魔王の筆頭、現ルシファーの妹なのだ。兄上に任せておけばそれなりの眷族を勝手に連れてきてくれること間違いなし。
兄上の眷属くれないかな。
いつも他の眷属にパシリ扱いされて、忙しい、忙しいってあくせくしてるべオウルフなんて、私のところへ来たら一番上の立場にしてあげるのにな。
そうしたら面倒なことは全部任せてしまえるのにな。
ちょっとスカウトしてみたらどうだろうか。
でも、会いに行くのも面倒だしそのうちでいいや。
数年前のある日、白音がこう言った。
『私の姉は主殺しのはぐれ悪魔です。それでもここにいていいのですか?』
どうせなら姉も連れてきたら面倒が減ったのに、と返したところ。
『ありがとうございます。いつか姉さんを捕まえてきます』
白音は姉思いだな。
兄上が言っていた優秀な悪魔なら大歓迎ですよ?
私は名門グレモリー家の次期当主さまで、魔王ルシファーの妹なのだ。わがままを言えば大概のことはなんとかなる。
白音は働き者で助かるな。
義姉にガミガミ言われないように、いろいろなことを片付けてくれて本当に助かる。
ついでなのでいろいろと面倒なことは全部任せてしまおうと思う。
白音の駒はやっぱり"兵士"かな。
数が多くて採用するのも面倒だし、八個全部使ってしまおう。
数年前のある日、ソーナがこう言った。
『私は人間界の学校に通ってみたいのです。そのために人間界にあるグレモリー設立の学校に一緒に通ってくれませんか?』
面倒くさい、と返したところ。
『グレモリー卿にお願いしたところ、リアスを連れ出してくれるのなら許可しても良いと言われたのです』
まったく父上は意地の悪いことを言う。
ソーナはシトリー家の次期当主なのですよ?
妙な条件なんてつけないで、その程度のお願い聞いてあげればいいものを、まったくなんでそんな面倒なことを言い出すのか。
だいたい、ソーナもソーナだと思う。なんで学校を造りたいなんて面倒なことを考えるのだろうか。そういうことは余所の誰かに任せておけばいいと思います。
ソーナにそんなに頼まれたら仕方ないな。
人間界のグレモリー領の面倒なんて面倒くさいから、人間との契約の仕事も、領地の警備も、学校の運営も、全部やってくれるというのなら一緒に通ってあげようではないか。
まったく面倒くさいがしょうがない。
部活とかあるらしいけど、どうしような。
でも、やっぱり面倒だし帰宅部でいいや。
高三の春の日、ソーナがこう言った。
『堕天使とはぐれエクソシストの一団がこの駒王町に入り込んだようです』
全部任せた、と返したところ。
『神器狩りを行なっていたようですが、今は町はずれの廃教会に篭もっているだけですので監視しています』
まったくソーナは頼りになるな。
私のやることなんてありませんよ?
町の住人にすこしばかりの被害が出たようだが、堕天使たちはそのまま何処かへと去っていったそうだ。
堕天使の行動は理解に苦しむ。
堕天使もたまにはよいことをする。
領地に無断で侵入してきたのだから抗議してはどうかと言われたけれど。
でも、やっぱり面倒だししなくてもいいや。
私の眷属は"兵士"の白音しかいない。