プロの暗殺者は学生?   作:☆麒麟☆

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イケメンの時間

「うーむイケメンだ」

 

放課後、前原の誘いで喫茶店に寄った楓達は紅茶を飲みながら1人の人物を観察していた。

 

「いらっしゃいませー!あ、いつもどうも原田さん、伊東さん」

 

その人物は客が来店してくると営業スマイルで元気よく挨拶をしていた。

 

「ゆーまちゃん元気~?今日もゆーまちゃん目当てでお店に来ちゃったわ」

 

「あはは、嬉しいですけど店長の目の前で言わないでくださいね。下手したらグレちゃいますから」

 

お客と他愛の無い話をすると席に案内する。

 

「いつものエスプレッソWでしたよね?本日店長のおすすめでシフォンケーキありますけどどうです?」

 

「あ、じゃあそれ2つ~」

 

客の言葉にその人物はまいど!と言うとてきぱきとした行動して店長にオーダーを言っていた。

 

「実にイケメンだ、うちのリーダーは…………」

 

「殺してぇ」

 

前原と岡島はそう呟きながらその人物……磯貝を皆で見ていた。

 

「ん?ここの紅茶もなかなか美味いな…………」

 

「香りも風味も申し分ありませんね」

 

そんな中、楓と華鎌は磯貝を見ながら紅茶を楽しんでいた。

 

「?紅茶なんてどれも同じだろ?」

 

岡島の言葉に楓と華鎌は、何を言ってるんだこいつと言いたげな冷めた目で見ていた。

 

「温度、茶葉の量、蒸らし時間どの作業もケチったり怠ったりすれば味はガラリと変わってしまうんですよ!

全くこれだからエロにしか興味の無い変態終末期は…………」

 

華鎌はやれやれと言ったポーズをしながら岡島に言う。

 

「はいはい、お客様……熱弁も良いけどあまり大きな声を控えてください」

 

磯貝はそう言いながらハニートースト2つを楓と華鎌の前に置いていた。

 

「お前ら紅茶1杯で粘らないで何か注文しろよなー」

 

磯貝は苦笑いをしながら渚達を見てそう言う。

来店して30分以上経つが渚達は紅茶1杯で粘っているのだ。

 

「いーだろ、バイトしてんの黙ってんだから」

 

「はいはい、揺すられてやりますよ。出がらしだけど紅茶オマケな」

 

前原の言葉に磯貝はそう言うと中身が空になっているティーカップに紅茶を注いでいた。

 

((イケメンだ……))

 

そんな磯貝を見ながら茅野と渚は心の中で呟きほっこりしている。

 

「あいつってどんなことでも卒なくこなすよな」

 

楓は一口サイズにカットしたハニートーストを然り気無く陽菜乃の口に運ばせながら呟く。

 

「そーだよねぇ~。勉強も出来るし運動神経も良いし~」

 

陽菜乃はモグモグと食べながら賛同している。

 

「あいつの欠点なんて貧乏くらいだけど、それすらイケメンに変えちゃうのよ」

 

「へー例えば?」

 

前原の言葉に片岡は興味ありげに聞いてくる。

 

「私服は激安店のを安く見せずに清潔に着こなすしよ」

 

「「イケメンだ!!」」

 

「この前、祭りで釣った金魚を食わせてもらったんだけど金魚料理メチャ美味いし」

 

「「イケメンだ!!」」

 

「後、あいつが使った後のトイレは紙が三角にたたまれてあった」

 

「「イケメンだ!!」」

 

前原の言葉に片岡と茅野は頬を赤らめながら言う。

すると岡島も…………

 

「あ、紙なら俺もたたんでるぜ三角に」

 

「「「汚らわしい!!」」」

 

そう言うと陽菜乃を含む女子3人は汚物を見る目でそう呟く。

 

「この差は何なんだ」

 

「「日頃の行いが悪いからだ(です)」」

 

岡島の呟きに華鎌と楓はハニートースト食べながらキッパリとそう告げてると岡島はシクシクと涙を流していた。

渚と前原が苦笑いしてると前原は見ろよと皆に促す。

そこには先程来店していた客と楽しげに話をする磯貝の姿があった。

 

「アイツのイケメンはマダムすら落とす」

 

「「イケメンだ!!」」

 

「あ……僕もよく近所のおばちゃんにおもちゃにされる」

 

「「「「「しゃんとせい!!」」」」」

 

渚の言葉に思わず楓達も突っ込みをあげる。

 

「未だに本校舎の女子からラブレターしかもらってるし」

 

「「イケメンだ!!」」

 

「あ……私もまだもらうなぁ……女子から」

 

「私ももらいます…………男子から」

 

「「「いけない恋だ!!」」」

 

片岡は女子から、華鎌は男子からラブレターを貰う事に楓達は思わず声をあげる。

 

「ここ最近は無いけど年上の女性に逆ナンされてたし」

 

「「イケメンだ!!」」

 

「俺は逆にガラの悪い男の人たちに人目の着かないところに連れてかれた事がしょっちゅうあったな」

 

「「怖い怖い!!」」

 

楓の呟きに渚と茅野は声を揃えて突っ込みを入れる。

 

 

「イケメンにしか似合わないことがあるんですよ。

磯貝君や……先生にしか」

 

(((イケメ…………何だ貴様!?)))

 

楓達が話していると殺せんせーの声が聞こえてきて振り返って見ると美味しそうにハニートーストを食べている姿があった。

 

「ここのハニートーストが絶品でねぇ。

これに免じて磯貝君のバイトは目を瞑ってます」

 

「そーだよねぇ~。ここの美味しくてついつい食べちゃうよ~」

 

陽菜乃は殺せんせーの言葉に同意しながら楓に物欲しそうな目を向けていると一口サイズにカットされたハニートーストを陽菜乃の口の中に入っていった。

 

「地味にあーんしてもらってる」

 

「自然すぎて気付かなかった…………」

 

「クソッ……爆死してしまえ」

 

茅野、片岡、岡島はそれぞれそう呟いていて渚と前原は苦笑いしていた。

 

「そこのカップルは置いといて……皆さん、彼がいくらイケメンでもさほど腹が立たないでしょ。

それは何故です?」

 

殺せんせーの言葉に前原は当たり前のように答える。

 

「何故って?そりゃあ単純にアイツ良い奴だもん。それ以外に理由ある?」

 

前原の言葉に楓や渚達はウンウンと頷いており殺せんせーも満足な回答が聞けたからか笑顔になる。

 

 

すると店のドアが開く音がして振り向いてみると浅野を含めた五英傑が嫌な笑みを浮かべながら入り口で磯貝を見ていた。

 

「おやおや~?情報通りバイトしてる生徒がいるなぁ~」

 

「いーけないんだぁ~磯貝君」

 

荒木と小山はニヤニヤしながら磯貝を見て言う。

 

「これで2度目の校則違反だ。見損なったよ磯貝君」

 

冷めた笑みを浮かべながら言う浅野に磯貝は苦虫を噛み潰したような表情をする。

すると……

 

「お前らこそ見損なったよ。特進クラスのA組の皆さんが店の出入り口で他の客や店員に迷惑かけてんだから」

 

楓が磯貝の前に立ち浅野達に向かって言っていた。

荒木達は周囲を見ていると客達の視線は良いものとは言えないものでウッとたじろぐ。

 

「そうだね……ここでは周囲の人達に迷惑をかけてしまう外で話をしようじゃないか」

 

荒木達には効いたのだが浅野には全く効果がなく逆に浅野の言葉で荒木達を立て直しており、楓は内心で舌打ちをしていた。

 

一同は外に出ると磯貝が直ぐに浅野に懇願していた。

 

「……浅野この事は黙っててくれないか……今月いっぱいで必要な金が稼げるんだ…………頼む!」

 

磯貝は浅野にそう言うと頭を下げる。

 

「……そうだな、僕も出来ればチャンスをあげたい」

 

必死に頼み込む磯貝に浅野は手に顎を当てながら考える素振りをする。

すると楓と渚、華鎌は浅野が何かよからぬ事を企んでいると悟っていると浅野は思い付いたかのような仕草をしながら口を開く。

 

「じゃあ1つ条件を出そうか。

闘士を示せたら…………今回の事は見なかった事にしよう」

 

「闘志?」

 

 

 

 

 

 

 

「体育祭の棒倒しぃ?」

 

「そう、A組に勝ったら目を瞑ってくれんだとよ」

 

翌日、E組の教室では昨日にあった出来事を前原が皆に話していた。

浅野が提案してきたのは棒倒しでA組に勝ち闘士を示せ……そうすれば今回の違反を帳消しにしてやろうと言うものだった。

 

「……でもさ俺等もともとハブられてるから棒倒しは参加しない予定じゃんか」

 

「それにA組の男子は28人でこっちは17人……とても公平な闘いには思えないけどね」

 

木村と竹林がそう言うと楓が呆れた口調で答える。

 

「『だから君等が僕等に挑戦状を叩き付けた事にすればいい。それもまた勇気ある行動として称賛される』……だとさ」

 

「んだよそれ。赤っ恥かかせる魂胆が見え見えじゃないか」

 

「でも受けなきゃ磯貝がペナルティーを受けちまう。

下手すると退学処分も有りうるぞ?」

 

寺坂と杉野がそう言うと皆はうーんと悩みながら対策を練っていたがそれを磯貝が制止させていた。

 

「いや……やる必要はないよ皆。

浅野の事だから何を企んでるかわかったもんじゃない。

それに俺が撒いた種だから責任は俺が全て持つ。

退学になったって暗殺は校舎の外からでも狙えるしな」

 

磯貝は作り笑いをしながら皆にそう言う。

すると…………

 

「「「「イケてねーわ全然!!」」」」

 

「「「「なに自分で酔ってんだアホ毛貧乏!!」」」」

 

「あ、アホ毛貧乏!?」

 

クラスからは大ブーイングがおこり磯貝に向けて紙屑やら筆記具を投げつけていた。

ブーイングは暫くするとおさまり、前原が対先生ナイフを持って磯貝の机の上にドンと立てつつ口を開く。

 

「難しく考えんなよ。A組のガリ勉どもに勝ちゃ良いんだ……楽勝じゃないか!!」

 

「そりゃそーだ。むしろバイトが奴等にバレてラッキーだね」

 

三村がそう言うとナイフを持ってる前原の手を掴む。

 

「日頃の恨み纏めて返すチャンスじゃねーか」

 

寺坂も続けざまにそう言うと手を掴む。

 

「しかも棒倒しって……堂々とブッ飛ばせるじゃん」

 

「やれやれ……これだから脳筋は……でもまぁ楽しませてもらいましょう」

 

楓と華鎌もそう言い手を掴む。

 

「倒すどころかへし折ってやろーぜ!!」

 

「なぁイケメン!!」

 

E組の男子全員がナイフを持ってる手を掴み磯貝の前に立つ。

磯貝はにっと笑うとナイフを掴む。

 

「よし…………いっちょやるか!!」

 

磯貝の言葉に皆はおう!と返事をして体育祭に向けて準備を始めていく。

 

(日頃の行いですねぇ。イケメンも高い能力も彼の一番の強みではない。

決して傲らず地味な作業も買って出てクラスの調和を第一に考える。

積み重ねて身に付けたのが人徳……リーダーとして最も大事な資質でもあり彼の一番の強みですねぇ)

 

殺せんせーは離れたところで磯貝を見て微笑みながらそう考える。

しかし同時刻 、A組の教室では衝撃の事が起こっていたのであった。




大変遅くなって申し訳ありませんでした!
8月に入ってから夏バテ+お盆で仕事が忙しく執筆出来ない状態でした。

更にこの間、ニコ動でがっこうぐらし!1話~6話を見ていたら興味を持ってしまいがっこうぐらし!の作品も書いていたので余計に遅くなってしまいました。

がっこうぐらし!~俺はここにいます~も是非読んでみてください!

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