プロの暗殺者は学生?   作:☆麒麟☆

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名前の時間

ある日、木村は風邪を拗らせてしまい近所の病院に来ていた。

 

「…………はぁ」

 

木村は深い溜め息をする。

それは風邪を引いてしまったことでも検査をするからでもない。

 

「次は…………っと、木村さーん」

 

受付の看護師さんは慣れた感じで次の患者のカルテを手に取りながら呼ぶ。

名前を呼ぼうとしたとき看護師の目は大きく見開かれていた。

 

(え!?いや、確かにそう呼ぶけど……こんな名前をつける人いるの!?)

 

看護師は戸惑いながらもカルテの名前を読み上げる。

 

「木村…………“じゃすてぃす”さーん……」

 

そう呼ばれた瞬間、ロビーにいた人達は次々と顔をあげて驚いた表情をしていた。

 

「はぁ…………」

 

今日何度目か分からない溜め息を木村は吐くのであった。

 

 

 

 

「ジャ、“ジャスティス”!?てっきり“まさよし”かと思ってた……」

 

翌日、木村はこの事を話すと茅野が驚いて大きな声を出していた。

楓と華鎌も初めて知ったようで声に出さなくとも顔には出ていた。

 

「って九重は茅野や華鎌と違って最初からいただろ……何初めて知った用な顔してんだよ」

 

「いや……入学式出てなかったからガチで初めて知った」

 

杉野の言葉に楓は鞄から日記を取り出してペラペラと捲っているとやっぱりと呟いていた。

 

「入学式の前の日、仕事で北海道にいたんだけど帰りの飛行機でトラブルあって帰ってこれなかったんだ」

 

「まぁ……楓は置いといて、皆さん木村さんの事を正義(まさよし)と呼んでいたのでてっきりそうだと思ってました」

 

「武士の情けで“まさよし”って呼んでくれてるんだよ。殺せんせーにもそう呼ぶように頼んでるしな」

 

その後も木村の愚痴は続く。

何でも木村の両親は警察官らしく正義感で舞い上がった結果、正義(ジャスティス)と名前をつけられたらしい。

 

「『親の付けた名前に文句言うとは何事だ!!』って親父には叩かれるしよー、子供が学校でどんだけからかわれるか考えたことねーんだろーな」

 

木村の終わりない愚痴に聞いていた皆は苦笑いを浮かべてると狭間が木村の近くに寄ってきた。

 

「そんなもんよ親なんて。私なんてこの顔で綺羅々(きらら)!!きららっぽく見えるかしら?」

 

「い、いや」

 

「そ、そう言えば華鎌君の名前って花蟷螂を当て字にしたものだよね?」

 

「えぇ、そうですよ。殺し屋として生きようと思って前の名前は捨てたんです。前の名前は椎原梢で今の名前は彼女の美樹が付けてくれたんですよ」

 

「そう言えば何で殺し屋になろうとしたの?」

 

すると華鎌は鎌を渚の首筋にピタッと当ててニッコリと笑顔でいた。

 

「潮田さん興味を持つのは良いことですけど時として控え目になることをお薦めしますよ。じゃないと……手遅れな事になりますよ?」

 

渚は黙って首を縦に振ると「けっこう」と呟き華鎌は鎌を仕舞って何時も通りに戻っていた。

 

「そ、そしたら九重も名前は違うのか?」

 

磯貝は話題を変えようと楓に話を振っていた。

 

「んにゃ、俺のは実名。俺が覚えてるなかで実の親から貰った物だから捨てる気になんなかったんだ」

 

「へぇー皆、名前で大変なんだねー」

 

「「「「「!?」」」」」

 

カルマの発言にお前が言うのか!?と言いたげな表情をしながらカルマを見る。

 

「あー俺?俺は結構気に入ってるよこの名前。たまたま親のへんてこなセンスが遺伝したんだろーね」

 

カルマの発言に木村はうーんと唸るように考え込む。

するとカルマの背後に殺せんせーがやって来て口を開く。

 

「先生も名前については不満があります」

 

「殺せんせーは茅野が付けたその名前を気に入ってじゃん」

 

杉野の言葉に楓と華鎌はへぇーと声を漏らす。

今まで何の疑問もなしに殺せんせーと呼んでいたが名付け親が茅野だとは全く知らなかった。

 

杉野の言葉に殺せんせーは首を縦に振りながら「はい」と返事をして言葉を繋げていた。

 

「気に入ってるから不満なんです。未だに2名ほど……その名前を呼んでくれない者がいる」

 

殺せんせーの言葉に烏間先生とビッチ先生はウッと声を漏らしていた。

 

「……だって……良い大人が殺せんせーとか……正直恥ずいし」

 

「…………同感だ」

 

ビッチ先生と烏間先生の言葉に皆は苦笑いをしていると矢田は何か思い付いたのか皆に発案していた。

 

「じゃーさ、いっそのことコードネームで呼び合うってどう?楓君や華鎌君、南の島で会った殺し屋さん達って皆コードネームで呼びあっていたりしてるじゃん。

何かそう言うの殺し屋っぽくてカッコ良くない?」

 

「成る程、良いですねぇ。頭の固いあの2人もアダ名で呼ぶのに慣れるべきです」

 

余計なお世話だ!とでも言いたげな烏間先生とビッチ先生の視線を無視しながら生徒達に無数の紙を渡していた。

 

「皆さん各自、全員分のコードネーム候補を書いてもらい……その中から無作為に1枚引いたものが皆さんの今日のコードネームです」

 

「俺と桐のコードネームはもうあるんだけど」

 

「今日くらいは蟲と花蟷螂と言うコードネームは封印して皆さんが決めてくれたもので過ごして見ましょう」

 

殺せんせーの言葉を聞いた皆は其々の席について他の人のコードネームを考える。

 

(アンポンタン、スカポンタン、独活の大木、ジャイアン、…………etc.)

 

楓は思い付いたものを片っ端から紙に書いていく。

中には悪どい笑みを浮かべる者、真剣に確り考える者…………各々が書いたコードネームは殺せんせーがランダムで次々と決めていく。

最初は何だろうと楽しそうにしていた顔もだんだん驚愕の顔に変わっていく。

 

「最後に1つ良い忘れていたことがあります。今日1日……名前で呼ぶの禁止!!」

 

全員のコードネームを選出し終えた殺せんせーは最後にそう言うと皆からえぇー!?と言う声が上がるなか殺せんせーヌルフフフと笑いながら受け流すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

1時間目の体育、この時間は裏山で烏間先生相手に集団戦をすると言う授業だった。

 

「野球バカ(杉野)!!野球バカ(杉野)!!ターゲットの動きはあるか!?」

 

「まだ無しだ美術ノッポ(菅谷)。堅物(烏間先生)は今、一本松の近くに潜んでる。

貧乏委員(磯貝)チームが堅物(烏間先生)の背後から沢に追い込んでツンデレスナイパー(速水)が狙撃する手はずだ」

 

貧乏委員(磯貝)と女たらしクソ野郎(前原)は銃を構えながらジリジリと堅物(烏間先生)の距離を縮める。

堅物(烏間先生)の背後を捉え、射撃位置につくと貧乏委員(磯貝)と女たらしクソ野郎(前原)は撃とうとしていたら堅物(烏間先生)は2人の間を潜り抜け包囲を抜け出していた。

 

「2人とも甘いぞ!!包囲の間を抜かれてどうする!!特に女たらしクソ野郎(前原)!!銃は常に撃てる高さに持っておけ!!」

 

堅物(烏間先生)は2人にそう言うとどんどん距離を離していこうとする。

 

「逃がすか!!アサシンリア充(楓)!!ゆるふわリア充(陽菜乃)!!そっち行ったぞ!!」

 

女たらしクソ野郎(前原)にそう言われた2人は直ぐ様足止めするべく堅物(烏間先生)の前に立ちはだかる。

 

「任して~…………ってあっ!方向変えた!!」

 

「問題ない!」

 

ゆるふわリア充(陽菜乃)がそう言うとアサシンリア充は烏間先生の逃げ道を塞ぐように前に出て引き金を引く。

当たりはしなかったものの堅物(烏間先生)の足を止めることに成功する。

 

「フリフリ男の娘(華鎌)!!」

 

アサシンリア充(楓)が叫ぶと木上からナイフを持ったフリフリ男の娘(華鎌)が堅物(烏間先生)目掛けて振りかざしていた。

しかしナイフは堅物(烏間先生)に当たること無く、フリフリ男の娘(華鎌)の手を掴んでアサシンリア充(楓)目掛けて投げ込んでいた。

 

「ホームベース(吉田)!!へちま(村松)!!コロコロ上がり(イトナ)!!」

 

アサシンリア充(楓)は直ぐ様3人を呼ぶと3人は堅物(烏間先生)を包囲するように囲み、銃を構えていた。

堅物(烏間先生)は一瞬、足を止め進路を変えて逃げようとすると突如、発砲音が聞こえて堅物(烏間先生)の背中に1発ペイント弾が付着されていた。

 

「(やるな鷹岡もどき(寺坂))だが足りない!!俺に対して命中1発じゃ到底奴には当たらんぞ!!毒メガネ(奥田)!!永遠の0(茅野)!!射点が見えては当然のように避けられるぞ!!」

 

命中されながらも堅物(烏間先生)は足を止めずに皆に叱咤する。

 

「そっちでお願い凛として説教(片岡)!!」

 

「OK!!行くよギャル英語(中村)と性別(渚)!!」

 

「「りょーかい!!」」

 

永遠の0(茅野)にそう言われた凛として説教(片岡)はギャル英語(中村)と性別(渚)を引き連れ迎撃しようと引き金を引いていた。

その射撃は的確で堅物(烏間先生)の足を止めることに成功させていた。

更に堅物(烏間先生)の背後から変態終末期(岡島)とこのマンガがすごい!!(不破)が距離を保ちながら引き金を引いていた。

これには堅物(烏間先生)もどうしようも無いので近くの岩場に身を潜めていた。

これを好機と思った貧乏委員(磯貝)は中二半(カルマ)に指示を出して堅物(烏間先生)の退路を塞ぎ、ギャルゲーの主人公(千葉)を狙撃位置に移動させていた。

 

パァン‼

 

狙撃位置に着いたギャルゲーの主人公(千葉)が狙撃していたが堅物(烏間先生)は地面に落ちていた木片を拾い防いでいた。

 

「ギャルゲーの主人公(千葉)!!君の狙撃は常に警戒されてると思え!!」

 

堅物(烏間先生)の言葉にギャルゲーの主人公(千葉)はニヤリと笑う。

 

(…………わかってます。だから仕上げは俺じゃない)

 

ギャルゲーの主人公(千葉)は冷静にハンドサインを出すと堅物(烏間先生)の背後にバッと1人の人影が現れた。

 

「「「「「「ジャスティス(木村)!!」」」」」」

 

皆でジャスティス(木村)の名前を呼ぶと同時に複数の発砲音が山の中で響いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………で、どうでした?1時間目をコードネームで過ごした気分は」

 

「「「「「何か……どっと傷ついた」」」」」

 

殺せんせーの言葉に多くの人は顔を俯かせて答えた。

 

「すごいサルって連呼された」

 

「私、途中から男の娘って省略されてました」

 

「俺と陽菜乃なんて途中からセットでWリア充って連呼されてた」

 

すごいサル(岡野)とフリフリ男の娘(華鎌)、アサシンリア充(楓)はそう呟く。

 

「誰だよ……変態終末期なんてつけた奴」

 

「すっごく似合ってるじゃない」

 

変態終末期(岡島)の言葉にギャル英語(中村)はそう答える。

 

「て言うかポニーテールと乳ってつけた人誰?」

 

「そんなの変態終末期しかいねーだろ」

 

ポニーテールと乳(矢田)の言葉に鷹岡もどき(寺坂)が答えていた。

 

「ち、ちげーよ!お、俺じゃねーからな!」

 

変態終末期の動揺した言葉に女子達からは冷たい眼差しを向けられる。

 

「じゃあ永遠の0は?」

 

「それは俺じゃないぞ!!」

 

永遠の0(茅野)の言葉に変態終末期(岡島)は即座に答えていた。

 

「その感じですと矢田さんのは彼ですね」

 

フリフリ男の娘(華鎌)の言葉に変態終末期はしまったぁー!!と声をあげていた。

 

「変態終末期(岡島)君、後で話(物理的な話)があるから裏山に来てくれるかな?」

 

ポニーテールと乳(矢田)の言葉に変態終末期(岡島)はガタガタと震えるが彼の自業自得なので誰もフォローをしなかった。

そんな中、ジャスティス(木村)は殺せんせーに質問していた。

 

「何で俺のだけ本名のままだったんだよ」

 

「今日の訓練内容は事前に聞いていました。君の機動力なら活躍すると思いそのままにしたんですよ。

先程の用にカッコよく決めた時ならジャスティスと言う名前でもしっくりきたでしょう」

 

「うーん…………」

 

「安心のために言っておくと君の名前は比較的簡単に改名手続きが出来るはずです。

読みづらい名前に加えて君は普段から読みやすい名前で通している。

改名の条件はほぼ満たしています」

 

殺せんせーの言葉にジャスティス(木村)は嬉しそうな表情をする。

 

「でも、もし君が先生を殺したら世界は君の名前をこう解釈するでしょう……“地球を救った名に相応しい”と。

親がくれた名前に正直大した意味は無い。

意味があるのはその名の人が人生で何をしたか。

名前は人を作らない。人が歩いた足跡の中にそっと名前が残るだけです。

もう暫くその名前……大事に持っておいてはどうでしょう」

 

殺せんせーの言葉にジャスティス(木村)は銃を手に持ちながら照れくさそうに答えていた。

 

「…………そーしてやっか」

 

ジャスティス(木村)の言葉を聞いた殺せんせーはウンウンと頷くと黒板の方を向いていた。

 

「…………さて今日はコードネームで呼ぶ日でしたね。先生のコードネームも紹介するので皆さんは先生の事をこの名で呼んでください」

 

殺せんせーはそう言うと黒板に自身のコードネーム“永遠の疾風の運命の皇子”と書いてドヤ顔をしていた。

しかしアサシンリア充(楓)と中二半(カルマ)、フリフリ男の娘(華鎌)は黒板の前に立つとその文字を消して“バカなるエロのチキンのタコ”と書いていた。

 

「さて皆。今日1日、バカなるエロのチキンのタコと呼ぶのに意義の無い人は拍手を頼む」

 

アサシンリア充(楓)の言葉に皆は迷うこと無く大拍手をしていた。

 

「にゅや!?皆さんこれはあまりですよ!!」

 

バカなるエロのチキンのタコ(殺せんせー)の言葉に皆からは大ブーイングが起こっていて、殺せんせーに一斉攻撃が行われていた。

 

 

 

 

 

放課後、何時もより精神的に疲れた皆は放課後の訓練を行わないで帰りの支度をしていた。

楓も鞄を持って陽菜乃と帰ろうとしていたら前原に呼び止められていた。

 

「九重、今日の放課後暇か?」

 

「あぁ、今日は色々と疲れたから訓練しないで帰るつもりだし」

 

楓がそう答えると陽菜乃もウンと頷く。

 

「そしたらこの後、渚たちとお茶してくんだけどお前らも来ないか?」

 

前原からの意外な誘いに2人は驚いていたが即決で行くと答えると渚、片岡、華鎌、茅野、ボロボロの岡島と合流して移動するのであった。




この度、リクエストに答えてくださった皆様本当にありがとうございましたm(_ _)m

アサシンリア充……M.Kさん

フリフリ男の娘……ケチャップさんの案を採用させていただきました。

これからもプロの暗殺者は学生?をよろしくお願いします!

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